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『例えばの話し(序〜一話)』 作者:新先何 / 未分類 未分類
全角6193文字
容量12386 bytes
原稿用紙約19.5枚

 序

●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●

 俺、川西 健は就職難の荒波を突破し、一流とまでは言えないが見事二流会社に就職ができた四月は烈火の如く駆け抜けて行き気が付けば七月に入っていた。七月はやな季節だ、嫌な思いでが蘇ってくる。
 夏休みに入る前だった、俺は放課後に学校の不良グループに呼び出され集団リンチを受けた。身体のきしむ音、目の前に飛んで来た右ストレート、俺の口から出る血の臭い。理由はわからないが喧嘩やいじめなんてそんなもんだ。とにかくそのせいで俺は夏休みを病院で過ごす事になり。どこにもいけなかった。
 その次の夏休みでは、前々から気になっていた、ちょっと親しい女の子を夏祭りに誘った、けど返って来た返事は「その日は用事があるからごめんなさい」そのまま高校二度目の夏休みがやって来た。夏祭りの日、俺はひとりで夜店で遊んでいると人垣の向こうにあの、女の子を見た。そのまま夏が終わってくれれば良かった。しかし彼女のとなりには俺をリンチした不良グループの一人がいて、二人は手を握りあい川のむこうの花火を見ていた。
 兎に角、夏には悪い思い出しか無く毎年俺を憂鬱にしていた。
 そして二十歳になってまた夏が来た。どうせことしも嫌な事が起きるに決まっている。空はどうしようもなく青くて、ビルの隙間から見えた入道雲がいつもより青く見える日だった。
「ピロロロ、ピロロロ、ピロロロ」
 携帯がなった。ディスプレイには知らない番号が写しだされている。
「はいもしもし」
 通話ボタンを押して携帯を耳にあてた。すると電話の向こうから聞こえて来たのは、まさしく夏らしかった。

「頼む、お前が後二日以内に人を殺さないと世界は無くなるんだ」

 今年も夏が来る。

○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

 夏は嫌いだ。
 晴れて課長になった俺は、吸い終わったタバコを灰皿に押し付けブラインドの外に目をやった。
 スクランブル交差点には何人もの人たちが何かしらの目的を持ち歩き回っている。そんな様子をみながら川西はクーラーのきいた部屋で何かする事も無く、椅子にもたれ掛かる。
 この会社に入って十年、とうとう俺も三十か、三十と数字を考えると背中が重くなってくる。この世界に俺と同じ年のやつが何人いるのだろうか。そいつらは俺と同じ事を思うのだろうか。
 俺は椅子から立ち上がり社員食堂に足を運んだ。
「あ、課長。小包が届いてますよ」
 部下が呼び止め、おれに茶色い袋に入った小包を渡す。
 その小包はなぜか懐かしい臭いがした。
 食堂のかかりにカツ丼の食券を渡し小包の中を確かめる。中には黒い手帳が入っていた。
 俺はカツ丼を受け取り席に着く。手帳の一頁目をあけてみる。
『7月8日午後12時24分、川西 健がこの文章を見る、そして驚く』
 食堂の壁に掛かった時計は12時24分を示していて、その下の日めくりカレンダーは七月八日と書かれていた。俺は驚く。どんなトリックだ?
 次のページには、
『トリックなどはない』
 俺は手帳を閉じた。しかしもう一度さっきのページをあけてみると、その隣に、
『川西は手帳を閉じもう一度開きこの文を読む』
 どうやらこの手帳は俺の行動を予測しているらしい。なぜだかは解らないが、この手帳は俺の行動を予測している。次のページを開いた。
『信じてもらえたかな?次はお前に頼みがある。この電話番号に以下の内容を伝えろ』
 その下には電話番号と俺が告げる言葉があった。そしてその下には一言。
『そうしないと世界は救われない』
 冷えきったカツ丼を片付け会社の外に出て携帯を取り出す。手帳に書いてある番号に電話をかけた。
「はいもしもし」
 他愛も無い応答があった。俺は言ってやった。

「頼む、お前が後二日以内に人を殺さないと世界は無くなるんだ」

 俺の頬をいつのまにか降っていた雨がかすめた。

 第一話 殺され屋と川西

●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●

 突然の電話は俺に犯罪者になれと言っていた。
 多分この不幸は俺の人生のなかでも一番ひどい物かもしれない。
 頭の上の入道雲と地面を叩き付ける雨を睨みながらおれは、この前見たアメリカ映画を思い出した。タイトルは思い出せなかったが、主人公の立場が俺の立場と似ていて見終わった後も真っ黒な画面を見ながら涙を堪えていた。
 主人公は人より何倍も不幸な人生を送って来たがあるとき、ひょんな事から殺し屋になってしまう。が、人を殺す事が出来なくて最後まで殺し屋らしい事を出来ぬまま殺されてしまった。今思えば、自分と似てる所なんか一つも無かったかもしれない。けれど主人公と自分が重なって見えたんだ。
 多分あの映画は、今この状況を予言していたんだろう。俺は雨の中駆け足で会社に戻る。その間、頭の中にはあの映画の主人公が殺されるシーンを何度も写しだしていた。

「いいか、今日のうちにお前は沖野洋子という人物と会う事になる。その女を殺すんだ」
「でもそれじゃ俺は犯罪者じゃねえか、警察につかまるのは嫌だ。ってゆうか、お前誰だ?世界が無くなるとか変な事がいいやがって」
「名前はまだ明かせないが世界が無くなるのは本当だ、そこでお前に人殺しをしてもらいたい。だが大丈夫だ沖野洋子は『殺され屋会社』の一員で、『殺され屋会社』っていうのはプロの殺され屋集団だ、こいつらは死にたいやつばっか集めて、殺人をしたいが警察には捕まりたく無い馬鹿どもに被害者を提供してる会社で、他殺でも完璧に自殺に見せるプロ集団だ」
「……じゃあ沖野って奴を殺しても警察にはばれないんだな」
「ああ、だがもしもお前がそいつを殺せなかったら世界が無くなる。じゃ、又後で電話をかけるから」
「おいっ、待てよ」
 それ以上携帯からは「プープープー」と無機質な音が流れて来るだけだった。

 いかれてやがる、世界はここまで落ちぶれたのか。俺は会社のパソコンの前でさっきの電話の内容を思いかえしていた。もちろん俺は人殺しをする気は全く無くて、精神異常者が俺の携帯に電話をかけてくる世界に絶望しながら、ただひたすらキーボードを叩き続ける。
 雨は激しくなる一方だった。

 会社が終わり、俺は財布の都合により吉野家で晩飯をすませる事にし、俺の席の隣に座ったのが沖野洋子だった。
「あれ?健ちゃんじゃん」
 声をかけられ横を向くと一人の女性がこっちを向いていた。だが、俺の知り合いにこんな美人はいない。彼女はとても美しく、俺は呆然としていた。
「……どちら様で?」
「うっそ、覚えてないの。ホラ、私よ」
 彼女はおもむろに手帳を取り出し何かを読み上げる。
「最後に勝つのはヒーローだけ、じゃあ君はヒーローか」
 忘れていた記憶が唐突に戻る。そして言葉を返す。
「俺はヒーローじゃ無い、けど心はヒーローだ」

「最後に勝つのはヒーローだけ、じゃあ君はヒーローか」
「は?唐突に何だよ、サッチー」
「健ちゃんあの不良グループにリンチされたんでしょ、悔しく無いの?」
「別に、俺はもっと穏やかな高校生活を望んでいたんだよ。例えば彼女と授業さぼって一日中屋上で喋ったりさあ」
「彼女いないのにね」
 そう言ってサッチーは笑った。
 僕はサッチー、佐藤洋子と放課後、部室でタバコをふかしながら喋っていた。俺はサッチーの事が好きで、彼女の笑顔がいつまでも続いてくれれば良かった。
「嫉妬かもね、リンチされた理由。あの人、いつも私があなたと喋ってるから」
 あの人とは不良グループの頭の事だろう。そいつとサッチーが付き合ってるのはこの前の夏休みに知っている。
「まさか、単なるストレス発散でしょ」
 俺は少し考えてからさっきの答えを言う
「俺はヒーローじゃ無い、けど心はヒーローだ」
「え?」
「だからさっきの答え、確かに俺はヒーローじゃ無いよ、けど好きな人の前ではヒーローでいたいんだよ」
「ふーん」
 サッチーはあのとき俺の気持ちがわかったかもしれない。しばらく窓の外の校庭を走るサッカー部を眺めてた。
「その時はいたの、好きなひと」
 俺はその問には答えなかった。
 このやり取りがいつまでも続けばいいと、夕焼け空に願っていた。

「ああサッチーか、久しぶり」
「やっと思い出したか、相変わらずだね健ちゃん」
 確かに高校生の頃から彼女は綺麗だった、しかしこんなに綺麗になるなんて思いもしなかった。
「でもなんで手帳にそんな事書いてんの?」
「いや、健ちゃんがまた合うときの合い言葉にしようっていったじゃん、卒業式の日に」
「むう、記憶力無いからな俺」
「でも言葉だけは覚えてたんだ」
「サッチーは今、何やってんの」
「んーと雑誌の記者、それから私ね結婚したんだ」
「え、いつ?」
「去年、相手はなんと美容師さんよ」
「へー、おめでとう」
「がっかりした?」
 当然だ
「いや別に」
「そう言ってくれると思った」
「上手くいってるの、その美容師さんと」
「実はあんまし……倦怠期ってやつ」
「サッチーも大変だね」
「あっ私もう結婚したからサッチーじゃ無いよ」
「なんて名字?」
「沖野、沖野洋子よ」

 嘘だろ

 俺は沖野洋子に出会った、電話のとうりに。

○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

 胸にポッカリと穴が空く、っていう気分はこの事だなあ。俺は喫煙室の中、三本目のタバコに火をつけながら思った。
 手帳を手にした今、十年前の事件の真相を初めて知った。
 あの日、俺は最愛の人を殺した。それが何の意味があるのかはわからなかった。あの事件は俺の心の中で十年間もの間封印していた、それが一気に押し寄せてくる。
 電車の車輪による無惨に引き裂かれた体、目玉は飛び出て誰の顔か区別が付かない程にぐしゃぐしゃになっていたが、あの時飛び下りたのは確かに沖野洋子だった。俺が押したんだ、自殺の手助けとは言えど人を殺した罪悪感は未だに消えていない。ただ最後に言ってくれた彼女の言葉がいくらか俺の気持ちを軽くしてくれた。
 煙は未だに俺の周りをうろついている。

 手帳には命令以外書いてなかった。
 とりあえず俺は体験してる以上、従うほかない、これが俺の存在する理由だから。

 一夜あけ、俺は一つの墓石の前に立っていた。
 彼女の好きな向日葵とあんぱんを置きながら君の顔を思い出しその顔に俺は語りかける。
「久しぶりだな、いまでもサッチーの顔覚えてるよ。実はさああの後サッチーご自慢の美容師さんに会いに行ったんだよね、あの人凄い泣いてたぜ。最愛の人を失うって凄い悲しいんだと思うよ、俺も同じ思いだった。死んだのはお前なんだよね、俺さ、今でも信じられなくて、まだサッチーがヒョコッと出て来るんじゃないかっていっつも思ってるんだ」

●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●

 彼女の終わりを告げる電車が向こうから音をたててやって来た。

「サッチー、自殺したい……のか?」
 豚丼の特盛りを豪快にほおばる佐藤洋子、いや沖野洋子に訪ねる。
「……」
 彼女は箸を止めたが何も答えず。
「よし、店員さん勘定お願い」
「いや質問に答えてくれよサッチー」
「……外の空気が吸いたくて」
 俺とサッチーは勘定を済ませ足早に店を出た。
「どこで知ったの?私のこと」
「調べた訳じゃ無いけどさ、今日変な男から電話がかかって来てね、『お前は今日中に殺され屋の沖野洋子に出会うことになる』って」
 かかって来た声をいつのまにか真似して喋った。
「なにそれ」
 彼女の声は笑っていたが、声は笑って無く夜空の星を見つめていた。
「さっき話したけどね、実は夫と上手くいってないのよ。それでねある日ネットを見ていたら殺され屋っていう会社を見つけたの、そんで登録しちゃった」
「登録しちゃったって、そんな気軽に」
「そこで、健ちゃんに殺してもらいたいの」
「誰を?」
「私を、私を殺して」
 真っ暗な夜空は俺たちの会話吸い込む様な黒だった。

「これが計画表ね」
 そう言って彼女は会社から送られて来たであろうファックス用紙を見せた。
 そこには、方法から手順まで、さらに事件後の行動など事細かに書かれていて、気分のいいものではない。
「まだ、手伝うって言ってないんだけど」
 俺たちはビジネスホテルの部屋を借り、いわゆる打ち合わせってやつをしていた。話をすすめるほど俺の気持ちが沈んでいくのが分かる。言葉で言い表わせない様な絶望感、それよりももっと黒いものだ。それは俺の身体を徐々に、徐々に占拠していった。
 彼女は死に対する恐怖が無いのだろうか、それともその気持ちを隠しているのかわからないが彼女の顔は説明してる間ずっと笑顔で、見てるこっちはずっと泣き顔だった。ただ彼女の笑顔は無理矢理やってるような気がした。
 内容をまとめると、殺害方法は轢死、俺は駅でホームの端に立っている彼女を押すだけ、周りには人が沢山いてその人込みにまぎれて押すのである。ちなみにその周りの人はどうやら業界用語で「劇団」と言うらしい、そいつらはまあ「さくら」だ。そいつらが俺の周りに五十人ぐらいで囲み一般人に見せないようにする。全く頭が上がらない。もしかしたらテレビで見かける事件もこういう「業界」によって証言者や加害者が作られてるのかもな。
 その後、二人で飲み明かしたのちサッチーを殺す日の太陽が窓の外で輝いていた。

 彼女の終わりを告げる電車が向こうから音をたててやって来た。

 最初はなまった声で「まもなく一番線に電車がまいります」とアナウンスが告げる、俺の鼓動がドンドン早くなる。頭に昨日の彼女の言葉が浮かんだ。
「健ちゃんはずっとレールの向こうを見ててね。そんで健ちゃんの視界に電車のライトが二つ見えたら前に出てね、そんで2両目が完全にホームに入ったら私を押して」
 全ての動きがスローになる電車の車体がゆっくり、ゆっくり見えてくる。見えた、一個目のライトだ鼓動がまた激しくなる。もうすぐ2個目のライトが見える、ヤバイ、ヤバイヤバイ、そのまま動くなよ電車。でも電車は動く、今さらだが後悔していた。すべてあの電話のせいだ、あの電話さえ無ければ。そして、2個目のライトが姿を表した。一歩足が前に出た、彼女と密着した状態になる。周りの雑音がふいに途絶え、彼女の声が聞こえて来た。
「ずっと言いたかった事があるの」
 1両目がホームに収まった、続けて2両目が入る。もうすぐだ、俺は人を殺す。神様、お前は誰の味方だよ。やりきれない思いが両手を彼女の背中に持ってこさせる。サッチー、言いたい事があるなら早く言ってくれ。気が狂っちまう。
 そして2両目が完全にホームの中に入ってきた。
 これが彼女の為だ、言い訳がましく心の中で叫んだ。
 背中を押す。彼女はホームから体勢を崩し身体が斜になる。そのとき、やっと彼女は言葉の続きを言った。
「好きだったよ」
 瞬間全ての動きが元の早さになる。ホームの下に身体が消えていく。電車の急ブレーキの音、周りの劇団のやつらが思いっきり騒ぐ、そして肉と骨が押しつぶされ砕ける音が聞こえた。
 目をつぶったまま俺の泣き顔は劇団により隠されていく。
 電話が来て二日目の事だった。

                      一話 終、二話へ続く
2005/02/21(Mon)20:01:17 公開 / 新先何
■この作品の著作権は新先何さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
やっと一話終わりました。
二話は未来編が主体となります。
毎度言ってる気もしますが駄目駄目っすね。
読んでくださった皆様、感想、御指摘お待ちしております。

><某会社の課長、川西は灰皿にタバコを押し付けてブラインドの外に目をやる>という文だけが三人称でした。
>メイルマンさん
ありがとうございます。
書いてて気づかなかった…
直させていただきました。御指摘ありがとうございます。
以上新先でした。
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