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『慎重な男』 作者:まこちゃん / 未分類 未分類
全角3929文字
容量7858 bytes
原稿用紙約10.9枚
 朝起きると洗面台へ向かう。いつものように軽くシャワーを浴びて眠気を醒ますと、タオルで髪を拭きながら食卓の椅子に坐る。丁度、妻が朝食の準備を終えようとしていた。今年から中学に入った長男がのっそりと起きてきて食卓に顔を出す。長男は、朝の挨拶をきっちりと済ませてから顔を洗いに言った。こういう躾はしっかり身につけさせるのが私の主義だ。
 私は、長男が食卓に来るまで新聞を読んでいる。最近は犯罪の増加が目立ってきた。今日も残忍な事件の記事が載っている。何とかならないものかと憤りを感じる。
 長男が食卓についてから、家族揃っての朝食をとった。朝は時間がないのでもくもくと食べ続ける。その後、私はスーツに着替え、ネクタイを妻に締めてもらった。今どき、これほど気が効く女など珍しいが、妻は私が職場で注目の人材だということを人づてに聞いているのだろう。そのせいか、面倒がる様子は一切見せず、いつも良妻でいてくれる。
 ビジネスバッグにノートパソコン、新聞、眼鏡入れ等々を入れたかを確認し、玄関の鏡の前でネクタイがずれていないかをチェックする。続いて、スーツの内ポケットの膨らみを触ってみる。愛用のスーツには大きめの内ポケットが付いていて、中には小型の銃が入っているのだ。
 今日の予定をもう一度確認しようと手帳を広げる。そこには、私にしか分からない暗号でスケジュールが書いてある。解読すると、となり町の教会付近のN氏宅に午後2時、とある。
 自宅を出ると駅前で電車に乗り、となり町に向かった。約束の午後2時まではまだ時間が大分ある。適当な喫茶店を見つけると、バッグからノートパソコンを取り出してメールチェックをする。はたから見れば、営業マンが出先で待ち時間を潰しているようにしか思えないだろう。
 
 昼過ぎまで喫茶店で悠々と過ごした。腕時計を見るともう午後1時半だ。そろそろ仕事へ向かうか。目的地までは歩いて30分くらいだ。今から店を出ればちょうどいい按配にN氏宅に到着するだろう。
 目的の家までいくと、周囲をぐるりと一周する。ここからは慎重に進めなくてはならない。そっと植木越しに庭の縁側を覗くと、窓が半開きになっている。まったく不用意なものだと苦笑してしまった。これなら今回の仕事も楽そうだなと気持ちが少し軽くなった。
 私は庭に回りこみ、猫が様子をうかがうようにして、半開きの窓から部屋の中を覗き込んだ。
案の定、男が居間のダッシュボードを物色していた。私は、スーツの内ポケットから銃を取り出すと、一気に部屋へ踏み込んだ。
 
 先ほどから家主であるN氏の奥さんがしきりに頭を下げて、私にお礼を言っている。悪い気はしないが、それが仕事なのだから当たり前のことをしたまでだ、と思うようにしている。
 私は刑事だ。それも署内では有名な敏腕刑事である。今までに、詐欺、空き巣、強盗等の数々の犯人を逮捕してきた。署から表彰されたことも何度かある。このままのペースで定期的に活躍すれば、早い出世も間違いない。
 同僚は私の活躍振りを褒めてくれる。仲間の中には恥もかえりみず、犯人を見つけるノウハウを教えて欲しいと頼んでくる人もいるくらいだ。そういう時私は、念入りな聞き込みが一番ですよ、良かったら今度協同で捜査してみませんか、と愛想のいい言葉を並べるよう心掛けている。職場で悪い印象を持たれては出世は難しいからだ。
 もっとも、ノウハウなんて言えるはずも無い。なんせ私は犯人が現れる場所と時間を前もって知っているのだ。
 私が新米刑事だったころ、1人の空き巣を偶然捕まえたことがある。そいつは、妻や子供がいるので頼むから見逃して欲しい、と地べたに這いつくばって懇願してきた。私が、それは出来ないと手錠をかけようとしたところ、男は面白いことを言った。自分は近日中にある犯罪組織の計画班に異動することになっている。私を逃がしてもらえれば、犯罪の計画を前もって貴方に教えるので、刑事の貴方は苦労無く犯人を捕まえることができるだろう。だから、今回は見逃して欲しいと…。私は空き巣のいうことなど信用出来なかったが、余りに不憫だったので、盗んだものを全部出させると、男を逃がしてやった。
 暫くしてから、一通のメールが届いた。あの空き巣からだ。この前の恩返しがしたい、今週末に仲間が空き巣に入るので、あなたは待ち伏せておいて捕まえればいい、という内容だった。場所、時間、実行犯の人数を事細かに記してある。しかし、どうせウソだろうと思った私は無視しておいた。
 はたして、あの空き巣が指定した日に本当に被害がおきた。被害状況を調べるとメールしてきた通りの内容だった。

 それからというもの、彼とはメールベースで交信をしている。自然と私達の間には一定のルールが出来ていた。私が余り連続して犯人を捕まえると、彼が組織から情報を漏らした疑いをかけられる。また、私自身も不自然なほどの活躍ぶりから、署内であらぬ嫉妬を買うかもしれない。
 だから、基本は無理をしないことだ。頃合をみて、彼が犯行計画をメールで教えてくれる。もっとも、空き巣などの軽い犯罪についての情報が多いので、麻薬取引といった大型犯罪がメインの彼の犯罪組織では、下っ端の空き巣がたまに捕まろうが意に介する様子もなさそうであったが。
 私は逆に、署内の捜査計画を彼に伝えている。来週は△△繁華街で麻薬取引の大型捜査を行うので注意されたし、という具合だ。この情報を元に、彼は彼で組織内の地位を高めているのだろう。世の中、ギブアンドテイクで成り立っているのだからしょうがない。
 
 今日も1通のメールが届いた。今回は今までに無いくらいの大物のようだ。
「今回は殺人の計画です。今月末の日曜日夜9時ごろ、場所は××駅前の雑居ビルの6階です。実行犯は1人です。」
 胸が高鳴る。殺人事件は捜査の経験こそあれど、犯人逮捕まで漕ぎ着けたことは一度も無い。危険が付きものだが、ここで活躍すれば更なる出世が見えるかも知れない。
 意を決した私は、月末までの間に雑居ビルの周辺を何度も下見した。ひょっとしたら罠かもしれない。彼が情報漏洩したことが組織にばれてしまい、組織がニセのメールをよこして私を誘き出し、邪魔者を消そうと企てている、とも考えられる。ことは慎重に運ばなくてはならない。

 ついに、その日がやってきた。私は前日から雑居ビルの向かいにあるビジネスホテルに部屋を取った。部屋の窓から雑居ビルに出入りする人間をチェックするためだ。もし、私を消すつもりなら、組織は何人かを伏せておくに違いない。しかし、怪しい人影はとくに見かけなかった。
 指定の夜9時前に、見るからに怪しげな男が雑居ビルに入っていった。どうやらメールの内容は本当だったようだ。私は、銃を取り出し弾の装填を確認してから、雑居ビルに向かった。6階まで階段であがり、指定された部屋の前に来た。いよいよ胸が高鳴ってくる。ドアの鍵は開いたままのようだ。早くしないと犯人が逃げてしまうかもしれない。折角の出世のネタなのだ、ここで逃がすのは余りに惜しい。
 銃を構えて、静かに部屋に踏み込む。男は金庫のナンバーを照合している最中だった。私に気がついたが、すでに遅い。
「警察だ、床に伏せろ!」
 犯人はなぜ見つかったのか、気が動転して目をぐるぐる回していたようだが、観念したのか渋々と床に這いつくばった。犯人の腕を捻り上げると、手錠でカチャンと挟んでやった。意外なほどあっけないものだ。部屋のソファーの上に、部屋の主らしい人物が倒れていた。銃で胸を撃たれたらしい。急所をやられたのではもう助からないだろう。
 そのとき、私のこめかみに冷たい金属器が押し付けられた。後ろから別の男の低い声がする。「銃を捨てて床に伏せろ」。やはり組織の罠だったのか…。このままでは連行されて、跡形も無く消されてしまうに違いない。私は、男に懇願した。私は刑事で捜査計画を知る立場にある。あなたには役に立つ情報のはずだ、それを逐一教えるから命だけは助けて欲しいと。
 男は少し笑った様子で、おとなしくしていれば命はとらないと言った。こうなってしまっては、私は男の言葉を信じるしか方法が無い。
 男は、私が捕まえた殺人犯の手錠を外すと、そいつを逃がしてやった。そして、携帯でどこかに電話をしている。きっと仲間を呼ぶのだろう。
 5分もしないうちに、見慣れた服装の連中が入ってきて私を逮捕していった。
どうやら、この男は私と同類の刑事のようだ。しかし、この刑事には見覚えが無い。少なくとも私の所属する警察署の人間では無いだろう。自分は犯人じゃない、何かの間違いだと大声をあげたが、どうにも信じてもらえなかった。


 男は一仕事を終えて、自宅に戻っていた。夜遅くに帰宅したというのに、優しい妻は嫌な顔一つせずに、スーツをハンガーにかけてくれている。居間では子供がテレビゲームに夢中だ。今日は仕事がうまくいったので、特別に夜遅くまでゲームをさせてあげようか、と男は思った。
 男は、書斎に戻るとタバコを一服させて、こみ上げてくる笑いを噛み締めた。
「あいつもつくづく不運なやつだよな。今ごろ現場では俺が用意しておいたあいつの銃の薬莢が見つかるだう。射撃場であいつが練習した後に、俺が拾っておいたものだ。後日に疑いが晴れたとしても、あいつの出世に傷が付くのは間違いない。俺と同じ警察署に異動にならなければ、こんな酷い目に合わずにすんだものを。一つの警察署にエースは2人と必要ないからな」
 男はノートパソコンを開けると、情報をくれた組織の人物へお礼のメールを打った。
2005/01/30(Sun)00:34:17 公開 / まこちゃん
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