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『長く、永い。』 作者:C℃(シド) / 未分類 未分類
全角3983文字
容量7966 bytes
原稿用紙約15.7枚
サラサラと 秋の匂いを感じさせる風が 窓の外の木の葉を揺らしている。


今私はそれを見ながら 白いベットの上にいて


何も考えず 風を見ようとしていた。


コンコン。

「金井さーん、お母様がきてくださったわよ。
 今通すからね」

「はい」

ニッコリと私は、白い白衣をまとった女性に薄い笑顔を返した。

そう、ここは病院。今私は病室のベットで日々暮らしている。



1週間前、私はいつものように友達の家から自転車にのり帰ろうとしていた。

いつもの同じ道をいつもとおなじように ただこいでいただけ。

気づけば目の前は赤と黒で 今までに味わったことのない痛みが体を突き抜け

次、気づいたときにはベットの上にいた。

どうやら私は居眠り運転の車と衝突事故を起こしたらしい。

怪我は奇跡的にそこまで悪くなく、あとは体の内部に異常がないか調べるだけだ。

医者の人には「本当ラッキーだよ君は」と言われた。

事故にあったことが果たしてラッキーなのだろうか。


母親はいつも毎日おなじ時間にきてくれる。

「お隣のなおちゃん、予備校に通い始めたんですって。
 あなたも何か塾とか行かないの?」

「私は就職だからいいもん」

「ったく、高校3年生なんだからもっとしっかり考えなさいよ!!」

「はいはい」

いっつもこの話ばっか。何かもっと話すことはないの?

お兄ちゃんに彼女ができただとか、

向かいの奥さん実は不倫してるのよ とか、

あんたの担任セクハラ容疑でつかまったんですって とか・・・

考えるだけで笑えるような話ないわけ?

「そういえば、さっき看護婦さんが言ってたんだけど、
 今日の夕方からこの病室あんただけのものじゃなくなるらしいわよ」

「エッ誰か入ってくるってこと?」

「って看護婦さんはゆってたみたいね。あんた仲良くしなさいよ」

「きったないおじさんだったらどうする?私ヤダヨ」

「コラッ。そういうことゆうんじゃありません」

私はクスッとわらった。

ちょっとはヒマな時間もなくなるかな?

 
 ――夕日が出てきたころ。


あたりの木の葉はきれいな紅色に染まっていた。

私はさっき母親が話していたことが気になってしょうがなかった。

どんなひとがくるんだろう?

そのひとは若い人?

悪い人?いい人?もし芸能人だったら?


暇つぶしにはいい話だ。かってに色んなこと想像して遊んでれば1日が過ぎてゆく。

コンコン。

「金井さん、はいるねー」

きたきた。

ちょっと寝たふりしてみよ。もしかしたら看護婦さんが新しい人に、

金井さんは冷たくてあんまり人とはかかわらないタイプよ、なんて言ったりして・・・。

「ハイ今日からここが高屋さんのベットだから。
 何かあったらナースコールしてね」

「はい、わかりました」

男だ!!でもすごく細くて力のない声。

バタン。

 
 ・・・・・・


看護婦さんが出てく音を聞いたあとにバッとあき上がった。

「私金井絵里。あなたは?」

そこには色素の薄いサラサラな髪の毛と

透明がかったような美しい白い肌に

長い睫毛の綺麗な少年がいた。

「・・・高屋です。高屋慎也」

「・・・なんさい?」

「16」

「あたし18」

「・・・・・・・・」

もう会話は続かない。

高屋慎也となのる少年は少し話しただけでも崩れてしまいそうなほど華奢だった。

少年はふと窓の外を見、どこか遠くを見ているようだ。

今まで1人だった病室にもう一人人間が住むことになった。

とてもきまづい環境に思えた。

絵里は、気を紛らわそうとさっき親がもってきてくれた雑誌に目を通した。

この雑誌をみおわってもまだあの紙袋の中には漫画がある。


・・・・・・。


「あのさ・・・高屋・・・くん?さっきからずっと外見てるけど・・・暇じゃないの?」

雑誌を一通りみおわったつもりだったが、

実は目の前のベットにいる少年が気になって雑誌の内容は40%くらいしか

わかってなかった。

少年は窓にずっとむけていた顔を絵里のほうにゆっくり向け、

「ほら、さっき見てた空より暗くなりました。」

と薄い唇をニコっとしてみせた。

絵里は一言「つまんないっ」

といって雑誌をまた顔の前にやり読んでみた。

雑誌の裏にある彼女の顔は何か衝撃を受けたかのように赤くなっていた。


その次の日も、またその次の日も二人に会話はなかった。

1つ何かあったといえば母親が少年のことをみてカッコイイカッコイイと

嘆いていたくらいだ。

そんなのわかってる。私だっていま自分がスッピンンなのが恥ずかしいぐらいだ。

あともうひとつ―――。

なぜだろう、高屋慎也と名乗る少年の親は?兄弟は?友達は?

まだ一回も誰もお見舞いに来ていない。




―――この日外は雨だった。

さっき母親が切ってくれたリンゴ。

「・・・あのさ、高屋くん?」

自己紹介以来、話した。

「何か用?」

「さっきウチの母親が持ってきてくれたリンゴ、食べる?」

「看護婦さんに病院の食べ物いがい食べちゃダメっていわれてるから。」

「そう・・・」

また会話が終わりそうだった。

外では暴雨で木がスゴイ揺れていた。

「・・・高屋くんはさ、なんで入院したの?」

どうにか暇をつぶしたくて誰かと話したくて話し掛けてみた。

というそぶりで話し掛けてみる。

本当はただ高屋少年と話したいだけの絵里がいた。

「なんでだろうね、僕にもわからないんです」

高屋少年はケロッとしたかんじで絵里に微笑みながら話した。

「・・・でも気づけば左手首にキズがあって・・・」

絵里は驚いたが、冷静を装った。

「・・・自殺したの?」

「うん、そうみたいですね。」

そしてまた沈黙―――。


聞いていいことだったのかダメだったのか

でも普通に話してるし・・・普通のことなのか?

すると今まであまり発言しなかった薄い唇からある言葉が飛び出してきた。

「なんで人って自殺したいと思うとき手首を切るか知ってる?」

絵里は答えに戸惑った。自殺未遂した人を目の前にしてそんな話していいのだろうか・・・。

「さぁ・・・。手首には脈が通ってるから・・・???」

高屋少年はフッを笑ってみせたあと、

どこか視点のあってない遠い目を窓に向け言った。

「本当はね、手首切ったって死んだりできないんだよ。
 もちろん、切れば赤い血が流れる。
 自殺願望者はそれを見て幸福を得るだけなんだ。
 自分は生きてるんだ、ってね。
 脈っていっても手首の手前にあるわけじゃない。
 奥深くにあるんだ。本当に死にたいならそんな不便な手首なんて選ばないの。
 心臓一突きしちゃえばいいじゃん。
 だから死にたいと思って手首切る人は、
 本当は生きたいと願っている、かわいそうなもんだよ。」

絵里は何も言えなかった。言葉が見つからなかった。

その代わり、なぜか涙が止まらなかった。

なぜ自分は涙を流しているのかわからなかった。

でもはっきりわかる事は同情の涙ではないということだった。

どこか自分もわかる気がして・・・・不思議な涙だった。

そして目の前にいる少年もひとつぶ、ふたつぶ、透明な涙を流していた。

もう一言、少年は発言した。
「この窓の外の木・・・多分いつか切られる気がするよ。」

涙ぐみながら絵里は言葉がちゃんと伝わるようハッキリとした口調でゆった。

「どうして?とても綺麗な木なのに・・・」

「さぁ?でも無くなりそうな《気がするよ》」




  ―――その日夢を見た。

自分のベットの向かいが慌しかった。

看護婦さんが4、5人?

医者の人もいた。

なんか赤かった。

母親が忘れていったくだものナイフもなくなっていた。


そして


窓の外にあの少年が立っていた
どんどん  どんどん  遠くなっていた

でも金縛りのように動けなくて

ただそれを見ているだけの私だった。



とても



長く、



そう、



永い夢だった。





――――――ふと、目覚めたとき私の前には人が何人かいた。


お母さん―――?

お父さん―――?

お兄ちゃん――?

どうやら自分の母親が泣き崩れている様子。

看護婦さんらしき人が何人かいて

どこか懐かしい感じのする病室のベットに私は横たわっていて

鈍い痛みが左手の手首から感じた。



どうやら私は家のお風呂場で手首から血を流しながら倒れていたらしく

意識を取り戻したらしい。

ガバっと起き上がると向かいにあるベットに目をむけた。

誰もいない―――――。


「お母さん!!向かいにいた人はどこいっちゃったの!?」

母親はキョトンとした顔をしながら

私のほほに手をかぶせ、涙ながらに言った。

「な、何ゆってるの?最初っから、誰もいなかったわよ・・・
 夢でも見てたのかしら?この子ったら・・・」

放心状態になった。

よく覚えていないが、誰か、男の子、そう、男の子が目の前にいた気がする。

たしか私は白いベットに横たわっていて・・・窓の外の木を見ていたはずで・・・


「・・・・木がない・・・」

絵里の目からは涙がこぼれた。

遠い目をしている我が子を見て母親は大丈夫なのかと医者に聞く。

「木って何のことかしら?先生・・・この子どこかおかしく・・・」

「木は・・・木はどこなの!?」

自分でも何をゆってるのかわからなかった・・・。

先生は重く口を開いた。

「よくわからないけど30年前、この部屋の窓の外にに大きい木はありましたよ。
台風で折れてしまったので切ってしまいましたが・・・。」

「30年前なんて・・・うまれてないはずなのにどうしてこの子がそれを・・・?」

「私にもわかりません。が・・・彼女は何か見たのでしょう・・・・。」




――――彼女に長く頑張って生きてほしいという意味だったのでしょうか?

    少年の意味、

    
    それは

    
    長く、永い夢――――。




2005/01/07(Fri)16:20:44 公開 / C℃(シド)
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■作者からのメッセージ
始めまして☆この話はメリハリがない話になってしまいました。でもこのメリハリのなさっていうか、つかみにくさがまたこの話の味を出してるのかな?と思います。人それぞれ捕らえ方は違うと思いますが色々考えていただけたらいいと思います〜↑
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