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『ハナヒラリ』 作者:あき / 未分類 未分類
全角5334.5文字
容量10669 bytes
原稿用紙約18.05枚
 いつも河原の土手で、私達が遊ぶのを眺めている少年がいた。
 私は、この頃から、近所でも有名な元気っ子の力持ちで、喧嘩なんかは日常茶飯事。
 本当は、その少年とはぜんぜん繋がりなんてなかったのだけれど、どうしても気になって声をかけてみた。
「あんたって、いつもつまんなそうな顔してんのね?」
 少年は俯いて、何も答えなかった。
「暇なら一緒に遊びましょうよ」
 手を差し伸べてそう言うと、少年は整った顔を崩して、初めての笑顔を見せた。
 七宮原と出会ったのはもう10年も前、私達はまだ小学生だった。
「七宮原〜!!今帰りかい??一緒に帰ろう??」
 校庭を歩く七宮原を呼び止める。
「いいけど、ハナは、方向逆じゃないか?」
「うん!!いい!今日は七宮原の家に遊びに行くから!!」
 そう勝手な台詞を言って、私は昇降口ではなく、廊下の窓を飛び越え七宮原の所へ走った。
「お待たせ!」
 そう言って、歩き出した私の腕を七宮原がつかむ。
「なにさ?」
 不信に思って七宮原の顔を見ながら問いかける。
「なにさ?じゃないよ!ハナ!!もういい年頃の娘さんが、窓を飛び越えて来るなんて、みっともないじゃないか?」
 ちょっと怒った顔で言う七宮原が少しかわいい。
「大丈夫さ!下に短パンはいてるし」
 ケラケラと笑って七宮原の頭を撫でた。
「ハナ!!真面目に聞いてよ!?だいたいハナは・・・」
「はいはい!!お説教は充分ですよ〜!さっさと行こう!!」
 七宮原の話を遮り、走って、振り向く。
「七宮原!!早く来なさいよ!!もう時間がもったいないわよ?」
 ため息をつき、諦めたようにゆっくりと七宮原は走りだした。
 和らぎ始めた夏の色と、少し肌寒い秋の空気が、混ざっている。そんな日だった。 

 女に生まれてこなければよかった。
 最近特にそう思う。女って面倒くさい。
 私はただ、七宮原の隣に居たいだけだった。いつも無愛想な七宮原がたまに、とてもかわいい顔をするから、それを守ってやりたいだけだった。
 河原で初めて話した時から、七宮原の隣には私が居なくちゃ駄目だったし、七宮原の隣はとても気持ちが良い。
 私は、七宮原の出す。空気に包まれるのが好きだ。
 いつまでも側にいたい。ただそれだけなのに・・・
 どうして世間はそれを許さないのだろうか。
 出会った頃は、一緒にいることが出来たのに、どうしてそれを変だというの。
 ただ、男と女というだけで、私と七宮原の世界を壊したがるのだろうか。
 どうして私は女なんかに生まれてきたのだろうか。
 不公平だと思った。
 生まれてから変えられないもので、七宮原と私が一緒にいることを咎められるのは、凄く嫌だ。
 私は、私なんだから。

「春野って、変ってるよね?」
 クラスメイトの突然の言葉に、ご飯を食べる箸を止めた。
「え??そう?」
「変ってるよ!なんか不思議な感じがするわ、1組の七宮原くんと凄く仲がいいみたいだし、そういえば、なんで「ハナ」って呼ばれているの?」
 なにか言葉に嫌な感じを受けながらも、笑顔で答える。
「七宮原とは、腐れ縁なのだよ。呼び方は・・・昔からついているあだ名みたいなものさ」
 彼女は、嘘だぁ〜!と言って、私に耳打ちをした。
「七宮原くんと、付き合っているわけではないの?」
 最近この手の質問をよくされる。
「そんなのではないよ!どっちかっていうと・・・兄弟みたいなものよ!!」
 私がそういうと、彼女は、そっか。と言ってキレイに笑った。
「春野には私がいるものね」
 そんなかわいいことをいって誤魔化しているこの娘は、きっと、七宮原の事が好きなのだろう。
 七宮原は、高校へ入学してからモテるようになったらしい。
 そして、そんな七宮原となんの条件もないのに一緒にいる私を気に入らない人も沢山いるのだ。
 私が七宮原と一緒に居られるようにするためには、私が変らなくてはいけない。
 今の私にとって七宮原と一緒にいるのに、自分の全てを犠牲にするのはとても簡単な事なのだ。
 それぐらい一緒にいたい。
 そんなことを考えて歩いていると、七宮原の姿が見える。
 声をかけようと近づいて、私はその足を止めた。
「おいっ!てめぇ、少しぐらいモテルからって、いい気になるんじゃねーぞ」
 あれは、3年生の杜松先輩だ。暴れん坊で有名な。哀れ、七宮原・・・。
・・・などと思っている場合ではない。こういう時は、私の出番だ。
「やめな!七宮原に話があるなら、まず私に勝ってごらんよ!?」
「ハナ!!」
 七宮原が私の名前を叫んだのと同時に杜松先輩がふりむく。
 七宮原の顔の横にあてられた手を離し、こっちへ近づいてきた。
「なんだ・・・テメーは!?」
 この杜松とやらは、どうやら私の嫌いなタイプの人間らしい。絶対、こいつは女を平気で殴れるやつだ。
「・・・うぜぇーんだよ、杜松っ!人を見下ろして馬鹿にしてんじゃないわよ!」
 私がこういい終えると同時にこいつのパンチが右から飛んでくる。
 自慢じゃないけれど、私は幼稚園から喧嘩には負けたことがない。こんな根性曲がったやつのパンチがあたるわけない。
 そう、余裕満々で、構えていると、ふっと目の前が暗くなる。
 ドカっ・・・という鈍い音の後。目の前を七宮原が飛んだ。
 なにが起ったのかわからないまま、少しの時間言葉を失う。
「い・・・痛って・・・」
 あんまりにも、七宮原が見事に飛んだからか、杜松もビックリして止まってしまっているらしい。
 こいつにも、少しは人としての心があるのだな。と頭の隅で思いながら、この状況をもう一度、しっかり確認する。
 とりあえず、七宮原は殴られたらしい。この目の前にいる、杜松に。私をかばって。
「・・・杜松・・・覚悟はできてるな?」
 私は余裕で、杜松先輩をぶっとばした。圧勝で。
「二度と七宮原に絡むんじゃないわよ!!」
 そういいながら、逃げる杜松先輩を、見送った。杜松の姿が見えなくなると、私はまだ座りこんでいる七宮原の所へと行く。
「七宮原!なにやってんのよ?大丈夫?」
 顔を押さえ込んでいる七宮原の手をつかむ。
「・・・ハナ」
 顔を抑えながら、七宮原は私の名前を呼んだ。その呼びかけを無視して私は続けた。
「いいから、その手離してみな?痕になってない?」
 七宮原の手は私がいくら引っ張ってもはずれなかった。
 私は少々パニック状況に入っていた。こんな事をする七宮原は初めてみたから。小学、中学と、七宮原に絡んできたやつは、私の恐さを知っているから、殴りかかってくることはなかったのに・・・。
「ああっ!もう手はずしてよ!!」
 それは、少し悲鳴のような叫びに近かった。
「っハナ!」
 今までで、一番力強く名前を呼ばれて、すこし肩がビクっとなる。
 七宮原は、顔から手を外しながら私の顔をまっすぐに見る。
「大丈夫だよ」
 いつもと変らない優しい微笑みが、やけに胸に響く。動揺を隠すように私は続ける。
「大丈夫じゃ、ないじゃない!赤くなってる・・・ちょっと、まって今、ハンカチ濡らしてくるから!」
 立ち上がった私の腕を七宮原がつかむ。振り向くと七宮原の顔からは、優しい笑顔が消えていた。
「ハナ、もういいよ。ハナが危険なことをするのを見ているのはつらい」
 七宮原の言葉に、私は少しふざけた感じに返した。
「・・・危険ではないじゃないか?むしろ危険なことしたのは七宮原の方でしょ?それとも、七宮原は、私があんな奴に負けるとでも思ったのかい?」
 こんなに真っ直ぐに私を見つめる七宮原は、なんだかいつもと違うみたいで、へんな不安心が出てきた。
「七宮原・・・?」
 ずっと、黙ったままの七宮原に問いかける。
「・・・もういいよ。ハナがずっとそんなのなら、一緒にいても意味がない。一緒にいて欲しくないよ」
 ただ淡々と言った七宮原の言葉が胸にささる。
「・・・それは、私と一緒に居るのが嫌になったて事?」
 下を向き、問いかけた。
「そうじゃないよ、ただ・・・」
「迷惑なら、そう言えばいいのに」
 七宮原の言葉をさえぎり笑顔で言うと、上を向く。
「七宮原は・・・」
 七宮原の顔を見て、なにか気の利いたことを言おうと思ったのだけれど、出てきたのは、気の利いた台詞なんかではなくて、タダの。涙だった。
「ハナっ?」
 ちょっと、びっくりしている七宮原、そういえば七宮原の前で泣いたのは今までなかったかもしれない。こんなの柄じゃないな。涙を止めようと思いながらも、口が先に動いた。
「・・・っ七宮原のっ!!ばかやろ〜」
 捨て台詞を残して、私は走り去った。
 七宮原の止める声なんてのは聞こえないフリを通して、七宮原の近くにこれ以上いるのは耐え切れないと思った。
 私は今までどのくらい、七宮原のことを困らせてきたのだろうか。
 私はいつから、七宮原に迷惑をかけてきたのだろうか。
 わけもわからずただ走る。
 七宮原が追いかけて来たけれど、絶対に止まってなんかやらないんだ。
 校内中を逃げ回っていると、そこは、裏庭の前の廊下だった。
 廊下は、紅く染まってた。ふと、外をみる。
 ああ、紅葉の色ね。凄くキレイ・・・。
 吸い込まれるような空間に窓を飛び越え、廊下を背にそこに座った。
 そういえば、最初に七宮原と話した時も、こんな風に、夕日が赤かったわ。
 夕日の色が写ったのかってぐらい、七宮原の顔も赤く染まって、凄くかわいいと思った。
 この時から、こんな七宮原をずっと守りたいって思ったのよ。
 本当はね、本当は・・・。もう何年も前から気付いていたのよ。
 ずっと気付かないふりばかりしていたけれど、今の七宮原には私なんて必要ないのでしょ? 七宮原にはもう敵わなかったのでしょう?
 いつか、七宮原が離れてしまう前に、私の方から離れてしまえば良かった・・・。
 そうすれば、いくらかは、こんな胸の痛みにも耐えられた筈でしょう。
 もう、ひとりでも大丈夫にならなくちゃいけないのは、私の方ね。でも、きっと大丈夫。
 七宮原と一緒じゃなくても、ちゃんと時間は過ぎている。
 七宮原のそばじゃなくても、こんなにおだやかな気持ちになれるわ。
 きっと、ちゃんと笑える。
 ・・・ーでもきっと・・・涙も出るわ。
 秋には似合わないように、晴れているから、紅葉の色もすごくキレイで鮮明で。
 今の私も染めているので。
「・・・っふぅ・・・」
 私の頬を涙がつたう。
 突然の衝動に自分を隠しきれないまま、ただ無防備に思いを散らした。
「っう・・・ひっく・・・うぇっ」
 まるで、小学生が泣いているみたいに泣きじゃくる、自分の声を、遠く聞いた。
「うー。・・・七宮原の・・・ばかやろ・・・」
「・・・だから、いい年した娘さんが、そんな口をきくんじゃねーよって」
 突然、頭の上から七宮原の声が聞こえた。
 私はすぐたちあがり、かけ逃げようと身を翻す。
「ハナ!!まてって!」
 とめる声を無視して、足は止めない。
「どうしてハナは、僕をちゃんと見てくれないんだ!」
 ドキっとして、足が止まる。
 七宮原が窓に足をかけたのが見える。まるでスローモーションのように、その情景が流れた。
 こっちに飛び越えてこようとして、足をひっかけて、頭から、地面に突っ込んだのが見えた。
「七宮原っ!!?」
 びっくりして、とっさにかけよる。大丈夫?と、聞きながら肩に触れようと手を伸ばす。
 すると、突然七宮原の手が私の手をつかんだ。
「やっと、つかまえた・・・」
 そう言うと、七宮原は、昔と変らずかわいく笑った。
 それをみて安心した私は、引っ込んでいたはずの涙をまた漏らした。止め方なんてわからなくて、下を向いて項垂れる。
「ハナは今日、泣いてばっかだなぁ」
 そう言って頭をポンポンと叩かれた。それにちょっと、イライラして、怒ったように言う。
「なっだって・・・コレは・・・七宮原のせいじゃない!!」
「・・・・・・」
 少しの沈黙に、不安になり、目線を地面から上へとうつす。
「−・・・うん。ごめん」
 そういって七宮原は、やさしく微笑み話を続けた。
「本当は、こうなる前にちゃんと言っておくべきだったんだ」
 七宮原の真剣な表情。
「ハナ・・・。好きだよ。だからもう・・・。ハナはハナらしくいて欲しい」
「・・・七宮原?」
 もう、涙は引っ込んで、口をついた七宮原を呼ぶ声だけが、とられようのない空間に漂う。
「ハナは、いつも小学生の頃のハナで、僕の隣にいてくれようとしているけど、・・・いつまでもそれでは嫌だよ。今のハナ、そのままで、僕を見てほしいんだ」
 私は、下を向いた。
「・・・・・・七宮原はずるいわ・・・」
 七宮原の隣にいるのは心地良かった。いつかそれを壊すのは嫌だと。ずっと、臆病なのは私のほうね。
「私は自分を押し殺してもいいくらい。七宮原と行きたかったのよ」
「ハナ・・・?」
 七宮原の手を握り返す。
「もう、何年も前から。女として、七宮原の隣に居たいと思っていたわ・・・」
 反対の手で、七宮原の頬をなぞる。
「七宮原に、ずっと側にいて欲しいわ」
 一瞬の沈黙のあと、七宮原はただ、ちいさくうなずき。一言。
「ハナの隣以外は考えられない」
 と告げた。
 ヒラヒラと舞い落ちる紅葉が、テレくさそうに笑う、七宮原の頬を紅く染めてた。


2004/12/29(Wed)00:14:13 公開 / あき
■この作品の著作権はあきさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
2回目の投稿でございます。
あきと申します。よろしくお願い致します。
もう季節はすっかり冬ですが、このお話の中では「秋」です!
では、ご感想&批評お待ちしております。
なお、厳しい本音募集中です★
それでは……
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