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『心の欠片  第一話“出動命令” 』 作者:輝アーキ / 未分類 未分類
全角4284文字
容量8568 bytes
原稿用紙約17.5枚
今から数千年前もの昔、平和だったこの世界を変えようとした
過激派の人間達によって一つの兵器が作られた。

恐るべき破壊力を持ったその兵器は究極破滅兵器“オメガ”と呼ばれ、
数百年に亘って平和に暮らしていた人々に恐怖を与え続けた。

その後、何千万人という犠牲者を出した戦いの末、
オメガは最果ての地に封印され、再びこの世界に平和が訪れたのだった。

しかし・・・・・




















オメガが封印されてから数百年のときが流れた・・・・・


ここはオメガに影響された人々が
世界の平和と秩序を護るために作られた軍「ピース・ナイツ」本部である。今日、急遽ピース・ナイツの戦士全員に緊急集合がかけられた。

続々と集まる戦士たちの前にある台に立っているのは、ピース・ナイツ総長ダル・ヴィラン。

全員が整列し終えたころ、
“ピース・ナイツ四軍将”と呼ばれる強者たちの一人で、
“旋風の戦士”の異名を持つファンヌ・オーファーがダルに

「全員、揃いました。」

と報告した。ダルは小さく頷いて話を始めた。


「ピース・ナイツの戦士の諸君、
 今私が緊急で皆に集まってもらった、その訳は」

ダルは少しの間を空けた。戦士たちは皆、息を呑んだ。
ダルが話の間に間を空けるということは、
内容がただ事ではないということがわかっていたからである。
ダルは気持ちを落ち着かせ、こう言った。

「先日、究極破壊兵器“オメガ”が封印を破り、復活した。」

あまりに突然の出来事に、戦士たちは言葉を失った。

「総長!それは一体如何いうことですかっ?!」

ファンヌがダルに問う。ダルは眼を瞑り、

「・・・オメガの中に残っていたエネルギーが覚醒してしまったのだ。
 その結果、
 エネルギーと共にオメガ自体も完全に覚醒してしまったのだ。」

と言うと、目を開けてファンヌを見た。

「何ということだ・・・!」

ファンヌはいつもより深刻な表情で言った。
ダルはファンヌの表情を見て皆のほうを見た。

「オメガは復活してしまった。
 だが、オメガの破壊活動による被害はまだ出ていない。
 被害が出る前に奴を、オメガを倒すのだ。奴は今、南西に向かっている。
 恐らくオーゾの村に向かっていると思われる。
 旋風の戦士ファンヌ!お前はオーゾに向かってくれ。
 たとえオメガを倒すことが出来なかったとしても、
 被害を最小限に抑えるように努力してほしい。よいな?」

ダルはファンヌの目を見て命じた。

「はっ。旋風の戦士ファンヌ、たとえこの命が尽きようとも、
 必ずやオメガを倒し、再びこの世界に平和を取り戻して参ります!」

命を受けたファンヌはダルに向かって敬礼し、高らかに言った。
ダルは、うむ、と頷くと、もう一度皆のほうを見てこう言った。

「他の戦士たちも、オメガ対策に全力を尽くしてほしい。
 私も出来る限りのことはする。
 全ては、この世界の平和のために!!」

ダルの言葉に続いて、戦士全員がオォーッ!!と叫ぶ。



ピース・ナイツとオメガとの戦いが今、始まろうとしていた・・・。



             
















“襲撃”





「おーい!兄貴、早く来いよ。」

「まあ、そう急かすな。時間はまだある。」


ここはオーゾの村。
山々に囲まれた小さな村で、人は滅多に来ないが農作物に恵まれ、村人達は穏やかに暮らしている。

この兄弟、ティアス(兄)とアミス(弟)は村の端にある石碑に祈りを捧げにいく途中だった。

しかし、皆の知らないところで悪夢はもう、すぐ近くまで迫っていた…。





“ラーナ、世界に平和在り続けることをここに願う”
と刻まれた石碑に祈りを捧げるティアスとアミス。
丁度この日は“祈りの日”と呼ばれる特別な日で、このオーゾの村で世界の平和を願った
勇者ラーナに村人全員が祈りを捧げる日なのだ。

「…よし、これでいいな。アミス、行くぞ。」

「ああ。」

祈りを終えた二人は、家のほうに向かって歩き出した。



家に着いた二人は昼食の準備を始めた。

「さぁて、今日は何にしようか。」

兄のティアスが飯の内容を考えている。
その時だった。


ドオォォォン!!という爆音が響き渡ったのだ。

ティアスとアミスは驚いて顔を見合した。

「おれが見てくる。」

と言ってティアスがドアに向かった。



ティアスは家のドアを開けて辺りを見回した。他の人たちも辺りを見回している。
ティアスは山のほうに目をやった。

「!?」

ティアスはその方向を見ていた。
そこには、山の一部が完全に破壊されて土煙が上がっていた。
その土煙の向こうには、微かだが何かの影があった。
人の形をしているが、人ではない何かの影が。

一人がその影に近づき、話しかける。

「てめぇ…何者だ!?」

「…ワレ、ハカイノミ、シメイ」

何かの影はそう答え、腕と思われる部分から砲撃を一発放った。
またドオォォォン!!と爆音が響き、横の山々も破壊されてしまった。


並ならぬ予感を察したティアスは、一度家の中に戻った。

「兄貴、さっきの爆音は?皆は大丈夫か?」

入った途端にアミスがティアスに聞く。

「ああ。」

ティアスはそう答えてから少し間をおいてアミスに言った。

「アミス、すぐ近くに緊急避難用の裏山道があるだろう?
 おれが外に出たら、そこから逃げるんだ。敵はただものじゃない。」

「逃げろだって?
 冗談じゃない、俺だって戦うぜ!」

ティアスから突然逃げろと聞いたアミスは即反論した。
しかし、ティアスはアミスの顔を見て、

「だめだ。」

と言った。アミスはまた反論しようとしたが、ティアスの様子がいつもと違うことに気づいた。


厳しい顔をしているが、その瞳には涙がたまっている。
今のティアスの顔は、厳しさと優しさ、そして恐怖の三つを表していたのだった。

「…わかった。でも兄貴、絶対来いよ。」

「ああ、勿論だ。」

ティアスは無理に笑ってそう言った。
その誤魔化しが、アミスの心を傷つけた。



二人はドアのすぐ傍に身構えた。物音はまだ一切しない。

「アミス、いいか?
 このドアを開けたら、全力で裏山道に走るんだ。」

「わかった。」

少し、間が空いた。物音はまだしない。

「…行くぞ。」

「ああ。」

そう交わすと、ティアスは思いっきりドアを開けた。
その瞬間、アミスは裏山道へ、ティアスは影の前に走った。

「おい、さっき“ハカイノミ、シメイ”って言ったよな。
 この村を荒らす奴は、許さねえっ!!」

ティアスはそう一言叫ぶと、影に向かって剣を振り下ろす!!






その時アミスは裏山道を通っていた。


凄まじい爆音の中、入りくねった裏山道をアミスは全速力で走りぬけていく。

「(兄貴…絶対生きて来いよ…!)」

アミスは走っている最中も、ティアスのことを心配していた。



三年前に両親を無くしたアミスにとって、兄であるティアスはたった一人の家族であると共に、
心の支えでもあった。
アミスにとってティアスはかけがえの無い存在。ティアスがいなくなってしまった時のことなど
怖くて考えることも出来なかったくらい、アミスはティアスを大切に思っていたのである。



アミスは走った。
ティアスのことを心配しながらも全速力で走った。


そして、遂に出口へとたどり着いた…!




出口を抜けると、眩しい光が射し込むと共にドオォォォン!!と爆音が鳴り響いた。
アミスが後ろを見ると、丁度左側の山が崩れていった。

「!!…兄貴っ…!!」

アミスはただただティアスの無事を祈るだけだった。





その頃、ティアスや村の人たちは、完全にあの“何か”にやられてしまっていた。

「く…っ、こいつ、一体…
 …!まさか…」

ティアスはある話を思い出した。
数百年前、最果ての地に封印された究極破壊兵器“オメガ”の話を。



そう。
この“何か”こそが、先日最果ての地より復活を遂げた“オメガ”だったのだ。
オメガはダルの予想通り最初のターゲットとしてここオーゾを襲ったのである。

ティアスは、こいつがオメガだということに薄々気づき始めていた。

「…ハカイ、スル。
 ワレ、ハカ‥イスルタ…メニ…アリ…」

「!?」

ティアスは何かに気づき、オメガを見た。
何とオメガは、先程まで撃っていた砲撃をやめ、その場に立ち尽くしているのである。

ティアスはこの隙にオメガに近づいた。

「(こいつ…何か変だぞ。)」

オメガはまだ行動を起こさない。すると、オメガは突然表情を変えてこう言ったのである。

「……我、悲し。」

「(!?…何だっ…“悲しい”!?)」

ティアスもさすがに驚いた。


先程まで“心無き者”の如く平然と村を破壊してきたオメガが、突然「悲しい」と
感情を言い表すとは誰が予想したか。


しかし、オメガは間も無く無表情に戻り、右腕を左手でつかみ、村の中心に向けた。
止めを刺すつもりだ。

「!?
 やめろぉっ!!」

ティアスはオメガに剣で鋭い一撃を与えた!!

…はずだった。しかし、オメガに命中した剣は跳ね返り、ティアスの後ろに飛んだのである。

「!!」

「ワレ、ハカイシナケレバナラヌ、サラバダッ!!」

オメガは目に涙を浮かべると、巨大なエネルギー体を右手から発射した。




例えようの無い轟音と爆風が生じ、オーゾの村は轟音と共に吹き飛んだ。


「!!
 うわあぁぁっ!!」

すぐ近くにいたアミスは轟音と爆風で吹き飛ばされた。


「……うっ……」

アミスが起き上がって村のほうを見るが、もう遅かった。
山々は崩れ去り、村は跡形さえ残っていなかった。

「そんなっ…兄貴っっ!!」

アミスは村の址に向かって走って行った。


崩れた山々を越えると、そこはある意味地獄だった。

家は吹き飛び、大地には罅が幾つも入り、まともに真っ直ぐ歩けない。
そして、辺りには人の死体。

アミスはティアスを探して走った。

「兄貴!!どこだよっ!!兄貴っ!!」

アミスは必死に叫ぶが、返事は返ってこない。


走り回るうち、アミスはある光景を目の当たりにした。

そこにはティアスの剣が突き刺さっていたのだ。しかし、ティアスの姿は無い。
剣だけが突き刺さっているだけだった。

「!!」

アミスは剣に駆け寄った。アミスは事態を悟ると、剣の柄に両手を掛け、その場にしゃがみこんだ。

「兄貴…必ず来る…って、言っただろ?
 おい…うっ……うわあぁっ!!」

アミスは泣き崩れた。
最も大事だった人を亡くしたアミスは暫くの間、その場を動くことさえが困難だった。
2004/09/21(Tue)19:18:26 公開 / 輝アーキ
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■作者からのメッセージ
初めまして輝アーキです。
とりあえず全力で(??)書いたので
読んでいただければうれしい限りです。
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