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『赤ずきん』 作者:のじこ / 未分類 未分類
全角2148.5文字
容量4297 bytes
原稿用紙約8.75枚


――鳥が、鳴いていた。


特に珍しいといったわけでもない。むしろありふれた下らない音。
その鳥はきっとカラスで、私の不幸を笑ったんだ。
なんて意地悪なんだろう。
死んじゃえ。


「…………えへっ、えへ、えへへへへへっ」


笑いが漏れた。
不覚だなあ。不覚というのは正にこの状況を指すんだよねえ。なんて素敵な言葉だろう。口癖にしようかな。


薄暗い森の中で、少女が笑っていた。
まるでこの世の全てを見通した上でどうやって壊そうかと思案しているような微笑で、ただ佇んでいる。

それだけだ。
実際彼女はどうやってヒトを殺そうかと考えていたし、どうやってこの状況から脱そうかと思案していた。
だから、ただそれだけの少女。

森の緑とは反対色になる紅い服に身をつつみ、髪の毛は茶色に近い金でツーテール。様々なモノの入ったバスケットを手にぶら下げている。顔は美少女と言ってよかったが、非人道的な雰囲気を隠せない。
部分だけならギリギリ『正常』だと言えるだろう。
だが本来左眼があるべき場所には禍々しい眼帯があてがわれ、バスケットの中には刃物が見え隠れしていた。

少女の名前は『赤頭巾』。
今は森の狼『研ぎ爪』に売り渡された少女だ。
そう、売り渡された。
金貨と引き換えにして、両親が売ったのだ。
なので今ここにいる。
「森の中のおばあさんに会いに行きなさい」という大義名分つきで。


「えへへへへへへ――――えへっ」


とりあえず腹いせに両親を殺してきたが、手元には金がある。
自分と同じ値段の金貨だ。
等価交換。狼はそれをちゃんと守り、両親にこれを渡した。
なんてバカな犬ころだろう。殺してしまいたい。
殺して。
殺して殺してころして――――



「あ、なぁるほど!」



親が死んだからといって、金貨は残っているのだ。狼が見逃すわけはない。
むしろ金貨と肉が手に入って予想外の一石二鳥。
至極簡単、単純明快。

自分を狙うモノがあるなら、そいつを殺してしまえばいい。

そうと決めたら即実行だ。



「えへっ……狼を、殺しに行こう」






【同時刻、森の中、でも違う場所】



「ヒャハハハハハハ!!死ねっ!死ね死ねしねぇえっ!!」



疾走し、爆笑する男。
森の保護色となる緑の服を着て、亜麻色の長めの髪を後ろで結んでいる。帽子も緑だ。
手には弓が握られ、口には矢、背中にはべっとりと血のついた獣の死体を無数に下げている。
それが、眼前の木々に向かって弓矢を連射していた。
異常な男だった。
変態と言ってもいい。
というか変態だった。



「ヒャハっ……ん?ん、んんんんー、んー?ヒャハハハハハ!終わり?死んだ?死んだあっ!?」


最後に放った矢が止められた場所に向かって走り寄る。
男が手馴れた手つきで草をのけると、そこには巨大な狼の死体があった。
それを心底満足げな表情で見て、背中に背負う。
どうやら背負っている獣はすべて狼らしい。狼のみを狙っているのか、たまたま狼が連続して獲物になったのかは不明だが。


男の名は『殺獣中毒』、本人は狩人だと思っている。
幼いころに母親を目の前で狼に食い殺されたという暗めの過去を持っているが、その光景を目の当たりにしたとき感じたのは恐怖ではなく『恍惚』だったと言われている。
そして何故か、狼を狙って殺すことを生きがいとした『殺獣中毒者』になってしまったのである。



だから、それだけの男だ。


そして長年の憧れは、この森の主『研ぎ爪』と呼ばれる大狼を殺すこと。

「ヒャハ」
ひとつだけ、笑った。


僕は僕の本能には従わない。
僕は僕の本質には動かされない。
僕は僕に従う。


僕は僕を従えているんだから。





【同時刻、森の中、でも違う場所】



「研ぎ爪さん、研ぎ爪さん」
一匹の山猫が、狼に話しかけていた。
もちろん襲われないように高い高い木の上から。


「はぁ?何?何なワケっすか?俺の名前は研ぎ爪ってんだけどぉ?」
狼は顔を上げて、気だるく言う。

狼『研ぎ爪』は、人間の形をしていた。
背が高く、均整の取れた身体の男だ。
動きやすいようにという意図しか感じられない、極度に洗練されたタンクトップとズボンという服装をしている。
それだけならば、まだ普通だった。

顔が、半分だけの狼だった。
それは本物の狼の生皮を剥いで、皮が剥がれた自分の顔に縫い付けたような。
生々しいほどにそれは見事に縫合されていて、本当に生まれてからすっとそんな具合だったのかとさえ思わせる。

だが、山猫を見上げた瞳は、片方だけ微動だにしなかった。
しかも人間の顔の瞳。
もしかしたら、人間の皮を狼が被っているのかもしれない。


「研ぎ爪さん、お友達の『切り裂き』さんが狩人さんに殺されたそうですよ」
山猫は何とも思っていないような声で言った。
途端に研ぎ爪の顔が狂喜に歪む。

「死んだ?死んだっての?やったね!今日は素晴らしい日だ!」
一応は『友達』であるはずの狼の死を喜ぶ研ぎ爪に、山猫は怪訝そうな視線を向けた。


「どうして笑うのですか?」

すると研ぎ爪は笑みの形の顔で、にこにことにやにやと言う。


「殺されたんだから殺し返していいって事じゃん!?」



こうして、赤頭巾と殺獣中毒と研ぎ爪の殺戮劇が、ほとんど1時間以上の誤差なく開催されたのだった――――
2004/09/18(Sat)00:16:10 公開 / のじこ
■この作品の著作権はのじこさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
というか「赤ずきん」もうろ覚えだったりするんですが……

登場人物に、狩人っていますよね?
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