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『おかあさんとすずのおと』 作者:アッド / 未分類 未分類
全角949文字
容量1898 bytes
原稿用紙約3.3枚
 火照った顔が、河原から来る涼しい風で少し冷えた。
 いつからここにいるんだっけ。
 少なくとも、一時間はいるはずだけど……って、まだほんの十分しか経ってないじゃない。
 あー暇だと、ほんっとに時間経つの遅い。
 心の中で誰が悪いわけではない悪態をつくと、火照っていた体が十分冷えてしまった――もちろん、これだけで寒くなるわけなんてないのだけども。
 ……お父さんには悪いことしちゃったや。怒鳴っちゃったのは、私の責任だ。
 ……横には誰もいないし、それどころか、周りには誰もいない。
 きゅっと、自分自身を抱きしめるようにして、急ごしらえで仕立て上げた喪服を見ないようにした。
 だって。
 悲しくなるから。

 ある朝、私のお母さんは布団の中で冷たくなっていた。
 昨日までは元気だったのに、そんなありがちな言葉が頭をよぎり、すぐに消えた。
 鼻元に手を当てても、生温かい息はかかってこない。
 胸に手を当てても、鼓動が無い。
 ああ、死んでるや。お母さん。
 頭の中が冷静すぎて、悲しみなんて湧いてこなかった。
 ただ、お母さんは死んでいた。

 私は、お母さんが大嫌いだ。
 だって理由もないのによくぶつし、こき使うし、用事を押し付けておいてまた新たな用事を押し付けて、できないというと、ご飯はなくなった。
 でも、そんなんでも私のお母さんはお母さんしかいなかったわけで。
 悲しみは無いけど、ポッカリと穴が開いたみたいだ。
 こういうのを『悲しい』というのかは、私には分からない。

 お母さん。
 いつか、大人になったら“ふくしゅう”してやろうとしていたのに、何で死んじゃったのさ。
 私、自堕落すぎる生活するよ、あなたが命令した分を返すように。
 お母さん、じゃあね、悔やんだりしないから。
 だから、忘れないであげる。

 立ち上がって、お父さんのとこに行こうとした時、お母さんが小さい頃に私にくれた、ポーチにつけた鈴が、ちりん、となった気がした。
 悲しい、という気持ちは、どうしても湧いてこない。
 けど、ポッカリとした穴が、心に開いた気がした。
 これは、かなしいのかな。

 すずのおとは、こんなにきれいなのに、すんでいるのに
 どうしてわたしたちのこころは、こんなにも、きたないんだろう、よごれているんだろう
2004/09/14(Tue)21:25:33 公開 / アッド
■この作品の著作権はアッドさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
 パッと思いついた言葉を並べたようなものです。
 そのため文法が変なところがありますが、ご容赦ください。

 ストーリーについてはあえて突っ込まない方向で。
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