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創作小説 投稿掲示板『登竜門』 『戦場に咲く花』
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- 『戦場に咲く花』 作者：深月セナ / 未分類 未分類
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全角1265文字時は２１４０年。
容量2530 bytes
原稿用紙約4.75枚
増え続けた人口は、土地を足りなくさせた。
そして人類は、土地を巡って戦争を始めた。
私はユウナ。
と言っても。本名じゃないけれど。
戦場では、敵に情報が漏れるのを防ぐ為に本名は捨てるから。
「ユウナ、こっち！」
今私の手を引いて、岩陰に隠れたのは、私のパートナーのタクマ。
「タクマ、あっちに敵が居る・・・。」
私は指差した先には、私達とあまり変わりない男の子が居た。
しかし、男の子の瞳には、殺意が溢れていた。
「テントに戻るには・・・少し厄介だね。
・・・あの子、倒してくるよ。」
タクマは銃を持って、男の子の方へと駆けていった。
私は、ずっと耳を塞いでいた。
「ふう・・・何とかテントに戻れたね。」
タクマは、血が少し付いた銃を、布で拭いている。
「タクマ・・・。」
「何？」
「私達、何で殺し合いなんてしてるのかな・・・。」
「・・・土地を手に入れる為だよ。」
「・・・。」
私は無言で自分の服を握り締めた。
『この世界は 狂ってる』
それしか頭に無かった。
何故ココまでして土地を手に入れなければいけないのか？
無性に悔しくなった。
「何か・・・悔しい・・・。」
思った事を、そのまま口に出してみる。
「僕もだよ。」
タクマは苦笑する。
「僕達、本当何やってるんだろうね・・・。」
私は頷く。
「タクマ、私これからも・・・人を殺さない。」
そう、私は、戦争が始まって２ヶ月。
一度も人を殺さなかった。
殺したら最後、自分が自分じゃなくなってしまう様な気がしたから。
「それがいいよ。」
タクマはニコリと笑った。
その笑みは、何処か悲しげで。
「・・・ごめんね。」
私は俯く。
「何で謝るのさ。それが普通なのに。」
タクマは、私の頭に手を置いた。
「これじゃ、タクマが苦労するんじゃないかと思って。」
私はポツリと呟く。
「そんな事ないよ。」
私は、タクマの服の端を掴んだ。
「ありがとう、タクマ。」
私は微笑した。
「どういたしまして。」
タクマも微笑する。
「ユウナ・・・もう夜だし、寝たら？」
時間はあっと言う間に過ぎて、もう夜。
「今日は私が見張る番でしょ。」
私は無理矢理に笑顔を作る。
タクマは、そっか、と言って布団に入った。
私は、外に出て月を眺める。
「こんな戦争、何になるのよ・・・。」
私は消えそうな声で呟いた。
「早く終わってよ・・・。」
こんな戦争、もう終わって欲しい。
たがが土地なのに、何故殺し合いまでしなければいけない？
その事だけが頭の中を支配していた。
自然と涙が出てきた。
声を押し殺して泣いた。
タクマに聞かれるかもしれないから。
私は、腰から小さなナイフを取り出した。
ナイフの刃を、左手の甲に当てる。
そして、少し引き抜いた。
「痛ッ・・・。」
チクリとした痛みと共に、赤い液体が流れる。
こうする事が、自分を抑える唯一の方法だった。
ナイフに付いた血が、月の光で輝いて見えた。
今 夜 は 赤 い 月
ま る で 血 の 様 な
綺 麗 な 赤 い 月・・・
そんな事を考えながら、月を見た。
涙を流しながら、無理矢理作った笑顔で。 -
2004/08/20(Fri)12:10:49 公開 / 深月セナ
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