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『プロポーズ T』 作者:湖東 千草 / 未分類 未分類
全角1443.5文字
容量2887 bytes
原稿用紙約4.45枚
人が心を通わすことなど在り得るのであろうか。
人が人を信じることなど出来るのであろうか。
邪知暴虐の繰り返しの人間が。

ましてや人と人同士の恋愛なんて私はただの形式上のような付き合いに思える。結婚して家事に疲れる主婦達。大好きな人からプロポーズされた時なんて最高の至福のときだろうけど、今の苦労から言えばそんな曖昧な記憶の中にあるプロポーズの言の葉なんて、ただの野良猫がゴミ箱からあさってきた干物の様なものである。
人間なんてそんなもんだから。

こんな私は外見からも性格からも「冷たい」と言われる。それは別に悔しくもなければ嬉しくもない私に対する言葉なわけで。
私には愛を教えてくれる両親がいない。生まれたときから施設に入れられていたらしい。私を捨てた両親は偉いと思う。なすことなかれど両親が死別したにせよ、私がいらない子供だったにせよ、私はこうして愛を知ることなく生きてこれたのだ。真実の友情や正義感、溢れ来る愛情などにはまったく関心のなく、そして私は18歳となった。いやなってしまった。と言ったほうが先決なのだろう。

何にせよ私は人を信じれないでいるのだ。
私は施設にいたときから1人だった。1人で全てを乗り越えてきた。
仲間に迫害されていても、これは私に対する神様から与えられた、運命なのであると信じていたからだ。運命なんて変えられると、よく施設に来ていた神父が言っていたけど私は別に変えたくなんてない。生まれてきたときからただ一つの道を真っ直ぐに歩いてきたんだ。その道の名が運命ではないのであろうか。 私は丸で人との接点がないがために、その運命という名の道はどこかしらに真っ直ぐであるのだ。曲がっていないのだ。それは心がストレートだからではない。その真っ直ぐな道は私の心ではない。運命だから。




「ハッピーバースデートゥーユー。ハッピーバースデー、ディア、智香ー・・・」


今日来た18度目の誕生日。施設の部屋で一人電気を消し、一人で歌を歌う。自分自身の為に。それは自分の為なのであろうか。まだ知る由もない。

「智香ちゃんが一人で歌歌ってるよぉ〜変なの!!」
隣の部屋からせせらせせらと笑い声が聞こえる。皮肉交じりの作り笑いの声が。隣の部屋は私、智香を人間の屑のように扱う。扱い方が上手い。
イジメグループのメンバーが隣の部屋に集まっていたようだ。
隣の部屋はグループのリーダー格、瞳の部屋である。
瞳は私を苛める。近日あった事と言わば、窓から瞳の部屋のゴミが私の窓に投げつけられていて、私の部屋はゴミ屑だらけ。
折りたたみ式の携帯が、真っ二つに割られていた事。
私の部屋にかけている服がズタズタに引き裂かれていたこと。
全てとは語りつくせないほど惨めで。
でも私は人が信じられないから、瞳が「きっとイジメをやめてくれる」とは全然思ったこともないし、施設の人に相談しても「瞳ちゃんと仲直りしなさい」と言うに過ぎない。人は人を傷つけ、その傷をなめあうだけの人種であるのだから。私はそういう人種にはなりたくない。ただ一人の「冷たい」という称号を神から司った存在でいいのだ。

私はどうしようもなくなり、そのままベットに寝転んだ。瞳はトランプに夢中なのか、私に掛ける罵声の声が聞こえなくなっていた。


「人を信じる事ができる人なんて、単純な馬鹿じゃない。」

そう中声で話す。話すとはいえ、誰もいないけど。
人は人を信じたら絶対に誰かに裏切られるんだ。そうだから。
瞼が重くなってきたのでそのまま眠りに着いた。
2004/07/09(Fri)21:55:26 公開 / 湖東 千草
■この作品の著作権は湖東 千草さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
人を信じることのできない少女の話です。
信じるって何?愛するって何?当たり前のようでそうでないことを智香=ともかを通して書いていきたいです。
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