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『「SORROWFUL KILLER」あらすじ〜第7章』 作者:Start・luckybook / 未分類 未分類
全角6159.5文字
容量12319 bytes
原稿用紙約23.4枚


〜前回までのあらすじ(第1章〜第6章)〜

「紫月の街エレル」で、殺し屋稼業ゾルド・クレリアを営むエンジュは、初老の富豪アルフから、要人の殺害と、囚われた娘も救出を依頼される。

人助けに気乗りしないまま、殺人を終え、少女を見つけ出すと、その少女は父親を異常に恐れていた。説得に応じない少女を、用心棒サディアの襲撃を退け、無理矢理父親の元へ帰したエンジュは、帰って来た恋人リヴァから、アルフの恐るべき研究を知らされ、少女の心情を悟る。

その頃アルフの屋敷では、アルフと研究員達が、少女の研究を行っていた。「クロス」「戦争への実用化」など、妖しい言葉が飛び交い、少女の体調が急変しても、欲望を叶える事しか考えないアルフは、野心に満ちた目を少女から離さなかった。

少女を助け出す為、リヴァと二人でアルフの屋敷へ乗り込んだエンジュは、使用人の女性ライヌを案内に、アルフの元へと急いでいた。その最中、ライヌがゾルドであるエンジュから少女を守る為、彼に刃を向ける。しかし、エンジュはそれを軽くたしなめ、誤解を解いて、アルフの研究室へと向かった。襲い来る怪物を辛くも退け、黒いカプセルの森を抜けると、アルフと、薬で自我を失ったリーナが二人を出迎える。少女はアルフに言われるまま、エンジュに襲いかかるが、エンジュの決死の呼びかけに、少女の過去の記憶……狂人アルフに両親を殺されると言う酷い記憶が呼び覚まされる。







第7章「DEATH」






RED







 気がつくと、リーナはエンジュの腕の中で、止まらない涙を流し続けていた。閉じ込めた過去は全て表に浮き出し、それは涙となって彼女の頬を伝う。そんな少女を、エンジュはその腕で優しく包み込み、美しい金色の髪をさらりと撫でた。そしてその光景を見て、アルフは言葉を失って、その場に座り込んだ。

「そんな、バカな…。強力な催眠薬だぞ…!」

力を無くし、まるで老人のように座り込んでしまったその強欲な男を、エンジュは今その存在に気が付いたかのように、情けないものを見るような目でじろりと睨むと、自分にすがり付いて泣くリーナと共に立ち上がり、ゆっくりと、何かを惜しむように、アルフに近付いて行った。


「貴方のような人間が生きていると、世界の崩壊が早まるばかりだ。生憎、今の世
には『ノアの方舟』は存在しないんですよ。今、この場で覚悟を決めて頂こう」


エンジュはそう言うと、収めていた短剣を鞘から抜いた。それを見た瞬間、アルフの蒼白な顔から血の気が完全に消えた。そして、疲れ切った豚のように呼吸は荒くなり、今にも泣き出しそうな赤子のように表情はくしゃくしゃになった。しかし、そんな哀れな姿にも、エンジュはためらう事無く短剣を振るった。








「あーぁ…、やっぱりガキには荷が重過ぎたようだねぇ…」







エンジュは突然、服の中に大量の氷を流し込まれたような感覚に襲われた。短剣はアルフの首を跳ね飛ばす寸前の所で止まり、そのまま方向を変えて突然襲い掛かって来た攻撃を防いだ。



 きぃん、と言う金属同士が接触する音が、静寂に包まれていた室内に響き渡った。エンジュは少女をしっかりと抱えて後退し、突然の襲撃者の姿をキッと睨み付けた。

 襲撃者は少年だった。(「今日はガキによく襲われるな」と、エンジュは心密かに苦笑した。)暗闇でもはっきりと判る、燃えるような紅い髪に、まるで血で染めたかのような真っ赤なマント、そして銀色に輝く、細身の長剣を右手に握っている。そして意外にも、少年の表情は穏やかで、突然襲撃して来た者とは考えられなかった。しかしエンジュは、その無邪気な表情の奥に、黒い炎が燃え上がっているのを見透かしていた。



「久し振りだね、エンジュ。相変らず反応が鋭いなぁ」



少年はエンジュに笑いかけたが、エンジュはニコリともしない。どうやら少年は、エンジュの事をよく知っている様子だったが、エンジュの表情は明らかに、「お前は誰だ?」と言った感じだった。

「久し振り?何言ってる。俺はお前など知らない」

エンジュは冷たく突き放すように言った。少年はしばらく、少し驚いたようにエンジュを凝視していたが、突然狂ったように笑い始めた。その光景を見て、リーナは恐がって更に強くエンジュの黒いマントを握り締めた。


「そうか…!記憶を無くしたって言う噂は本当だったのか!『カンパニー』の諜報
課の奴らも、たまにはやるじゃないか!」


リーナには少年の言う事が理解出来なかった。しかし、エンジュは何故か過敏に反応し、今までのクールフェイスを掻き消し、取り乱した様子で少年に向かってこう叫んだ。

「お前、俺の過去を知っているのか!?このタトゥーの意味を!」

エンジュは額にまいていたバントを引き千切るように取り去り、刻まれた黒椿のタトゥーを見せた。しかし少年は、その「死」のトレードマークを見ても全く動じず、むしろ不敵な微笑を口元に浮かべた。それはまるで、子供が遊び相手を見つけたような、そんな感じだった。

「勿論知っているよ。教えてあげてもいいけど、条件があるんだ…」

そう言って、少年は剣を頭上高く掲げた。


「僕を楽しませてくれよ」






死闘






 そう言うと、少年は火がついたようにエンジュに突進して来た。そして、間合いに入るや否や、剣を力一杯振り下ろした。エンジュは間一髪の所でそれをかわし、隙だらけの少年に攻撃を加える。しかし、少年は鉄の床に深々と突き刺さった剣をいとも簡単に引き抜き、エンジュの短剣の襲撃を防いだ。しかしエンジュは食い下がる事無く、短剣の一本を素早く鞘に収め、代わりに腰に収めてあったボウガンを取って少年目掛けて発射した。一気に三本の矢が少年の体を貫こうと迫るが、少年は、何と剣を握っていない方の手で全ての矢を叩き落とした。素手ならば、矢のスピードに肉を裂かれていたが、肩まで装着された鋼鉄製の篭手が身を守っていた。エンジュはそれを見て、チッと舌打ちすると、大きく後退して、相手とも間合いを取った。


「どうした?本気で来いよ!そんな小娘を抱えたままじゃ、戦いにくいだろう?」


少年は、エンジュとの激しい攻防を繰り返していたにも関わらず、余裕の様子だった。エンジュは、少年を憎々しげにじろりと睨むと、自分の腕の中で震えるリーナを、ガラス細工を扱うように、ゆっくりと身体から引き離した。リーナは涙に潤んだ目をエンジュに向け、逸らそうとしない。その目は明らかに、「一人にしないで」と必死に訴えていた。

「しばらく、隠れていろ。後で必ず迎えに行く」

エンジュは少し気取った仕草でそう言うと、リーナの髪を惜しむように撫でた。するとリーナは、目にたまった涙を拭い、無言のまま踵を返すと、カプセルの黒い森の中へ隠れて行った。


「ククク…、カッコイイねぇ、エンジュ」


その行動の一部始終を見ていた少年が、ちゃかすように言った。


「『必ず迎えに行く』か…。キザな所も変わっちゃいないんだね」


「悪いが、今の言葉を撤回する気は毛頭ない。嘘つきは嫌いでね」


エンジュは冷たくそう言い放つと、収めていた短剣を再び構え、少年目掛けて剣を思いっきり振るった。すると、切先から衝撃波が生じ、凄まじい速さで少年に迫った。



「無駄だね」



少年はそう言うや否や、剣を横に大きく振った。すると、エンジュの発した衝撃波が、剣の風圧によって掻き消され、跡形もなく消え去った。エンジュは驚いたように、呆気に取られた様子で少年を見据えた。


「こんなものかな?じゃあ、今度はこっちから…」


そう言うと少年は、今度は剣を縦に勢い良く振るった。すると、ちょうど斬られた跡がついたように、切り傷にも似た形の炎が出現し、それが巨大な炎の矢となってエンジュに襲い掛かった。エンジュは短剣で防ごうとしたが、矢のあまりのスピードに動作が追い付かず、矢は何の障害もなくエンジュの胸を貫いた。







死体







「…がはっ!!」




エンジュの胸から、おびただしい量の鮮血が溢れ出す。傷口の周りは真っ黒に炭化し、傷口付近の臓器も焼けただれていた。そして、裏社会で最強の名を欲しいままにした殺し屋はその場に倒れ、やがて動かなくなった。




「残念だよ、エンジュ」




動かなくなったエンジュに、少年が歩み寄る。



「出来れば僕も、こんな事はしたくはなかった…」



少年は呟くように、殺し屋に語りかける。その声は届いているかどうかも定かではなかった。見ると少年の目には、大粒の涙が溢れ、頬を伝ってエンジュの身体に落ちた。

「イーシャンさん!いやぁ、助かりました!」

突然背後から、強欲な富豪アルフが駆け寄って来た。その表情は、命の危機を脱した喜びをたたえ、笑顔に醜く歪んでいる。

「貴方がやってくれなければ、私はこのドブネズミに殺される所でした…。いや、本当に…」




「僕は彼を殺していないよ」




歓喜に酔ったアルフに目もくれず、イーシャンが言った。すると途端にアルフの顔から喜びの色が掻き消えた。

「な…、どうしてです!?」

アルフが顔を真っ赤にしてイーシャンに訴えかけた。しかしイーシャンは、意外な程あっさりとこう答えた。



「彼は僕の親友だからですよ。昔からのね…」



アルフはしばらく、信じられないと言った表情でイーシャンを見ていたが、やがて歪み切った笑顔を取り戻すと、懐から銃を取り出し、銃口を瀕死のエンジュに向けた。

「貴方が殺(や)らぬと言うのならば、私が自分で…」






しゅっ








どすっ!






突然、鋭利なものが空気を切り裂く音と、肉に何かが突き刺さる音が、ほぼ同時に聞こえた。アルフが恐る恐る視線を下に落とすと、自分の首から銀のナイフが生え、真っ赤な鮮血が噴水のように噴き出しているのが見えた。アルフはその光景を認識する間も無く、その場に倒れ、やがて息絶えた。






「勝手な事をするな。エンジュを傷付ける者は、僕が許さない」















 目を覚ますと、エンジュは暗闇の中にいた。何もなく、誰もいない。ただ闇だけが視界を支配し、エンジュはその中に一人で立っていた。


「死んだのか…」


そう思うのも無理はなかった。胸に空けられた風穴も、痛みもない。むしろ健康な時よりも、身体がずっと楽だった。

 しかし、心に残ったものだけは、ぎりぎりとエンジュを締め付けている。俺が死んだら、リヴァはどうなる?「ジジイ」が殺されてから、二人で生き続けて来た。あいつが旅立っても、連絡が来なかった時などない。エンジュとリヴァの関係は、もう恋人で測れる尺度を越えていた。


 エンジュは暗闇で必死にもがいた。ある筈のない光を探した。しかし、完全な闇に、光が射し込む隙はなかった。それでも、エンジュは待っている恋人の為に、一生懸命光を求めた。





「無駄だ…」





突然、何処からか声が聞こえた。どすのきいた、低くしわがれた声だ。しかしその声には、確かに悪意が見え隠れしているのを、エンジュは感じていた。


「無駄なもんか。待っている奴がいるんだ」


エンジュは冷徹にそう言い放ち、光の捜索を再開した。しかし、声は執拗に、エンジュに語り掛けてくる。


「リヴァだな?彼女なら心配要らぬ。あれ程のいい女だ。お前がいなくなった所で、また新しい男を作るだろう」


「悪いが、俺はあいつを信じてるんでな。戯言は通じない」


「どうかな?バラは美しいが、毒のトゲを持つ物も存在する。信じて迂闊に触れて、後で痛い目を見るぞ」


「暗闇で貴様と永遠にお喋りするくらいなら、リヴァの持つ毒のトゲに冒されている方がずっといいな」


見知らぬ声との攻防が、しばらく続いた。するとやがて声は、次第にいらつきをあらわにして来た。



「ならば貴様の大事な物を、跡形もなく消すまでだ」



すると突然、煙が晴れるように、エンジュの目の前にリヴァの姿が現われた。それは真っ直ぐエンジュの方を見ているが、その表情は悲しみに沈んでいた。

「幻か…、何のつもりだ?」

「見ていれば判るさ」

声が意味ありげに言うと、突然リヴァの幻が、足元から消えていった。最初は足から始まり、次第に腰、そして腹へと、消滅は侵食して行った。すると驚く事に、それに従って、何とエンジュの記憶の中から、リヴァの事が少しずつ消えて行った。

「リヴァを俺の記憶から消去するつもりか?」

エンジュが無理やり平然を装って言った。声は意地悪くクスクスと笑った。


「その記憶が消えた時、貴様も他の者と同様、この闇と溶けて混ざるのだ」


そう言っている間にも、リヴァの身体は次々に消えて行く。エンジュは、どうにか記憶の消滅を防ごうと、必死に元凶である声の主を殺そうと捜した。しかし、どんなに闇を引っ掻いても、剣で切り裂いても、殺す事はおろか、手応えを感じる事も出来なかった。そして遂に、リヴァの顔だけが残る頃にさしかかった。エンジュの記憶の中には、リヴァと初めて会った時の記憶だけがうっすらと残っているだけで、エンジュはリヴァのほとんどを失っていた。そして、エンジュのポーカーフェイスが絶望に色付き、悪魔の声の高笑いが響くその時、信じられない光景がエンジュの目の前で起こった。







 消えかかったリヴァの幻が、突然眩いばかりの光を放ち出した。その光は、暗闇に慣れ過ぎたエンジュには眩し過ぎたが、溢れんばかりの希望を、その光は持っていた。





「光…か」






エンジュは、その光に向かって歩き出した。光の奥から声が聞こえる。それはさっきのどすのきいた声とは明らかに違い、必死にエンジュを呼んでいた。エンジュの足は、次第に速くなった。そして、後一歩と言う所で、エンジュは突然歩みを止め、くるりと後ろに振り返った。


「世話になったな。二度とここには来ないようにするよ」


光に反応して隠れたのか、もう聞く事のない声の主に向かって、最後の捨て台詞を残し、エンジュは光の中へと消えていった。



 光に入った後、再び暗闇がエンジュを包んだ。しかし、さっきとはまるで違って、身体に虚脱感が感じられなかった。エンジュは試しに、少し手を動かしてみた。やはりさっきまでとは違って、何処か自然な感じがする。そしてエンジュは、自分が目を閉じている事に気付いた。エンジュは、まるで目の前に広がる光を恐がるかのように、ゆっくりと目蓋を開いた。



 暗闇が掻き消え、目の前にはあの地下研究室の天井が広がっていた。エンジュはゆっくりと身体を起こし、長い黒髪をさらりと掻きあげた。そしてエンジュは、突然思い出したように、イーシャンに貫かれた胸を抑えた。しかし、そこには致命傷と思われた傷はなく、元の状態に戻っていた。



「何で…?」



エンジュは不思議に思いながらも、ふと横に視線を流した。すると、そこにはリーナが倒れ込み、静かに寝息を立てていた。エンジュは、その少女と、原因不明の完治を遂げた自分の胸を交互に見た。


「この子が…?」


エンジュは不思議に思ったが、この胸糞悪い空間から一刻も早く出たいと言う心境は変わらず、傍らで眠るリーナを軽々と抱えた。

2004/08/19(Thu)21:43:58 公開 / Start・luckybook
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■作者からのメッセージ
DARKESTから改名致しました。Start・luckybookです。

今回も第6章に引き続き、少女が過去の凄惨な記憶を取り戻した所から始まります。

自我を取り戻し、エンジュにすがるリーナ。そして、そんなムードなどお構いなしに、襲いかかって来るイーシャン。何とかリーナのお陰で事無きを得ましたが、果たしてエンジュは、このまま引き下がるのでしょうか?

これからの執筆活動も、更に力を入れて、精一杯頑張りますので、これからの展開にも、どうぞご期待下さい!
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