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『世界の滅びかけた日』 作者:色即是空 / 未分類 未分類
全角2038.5文字
容量4077 bytes
原稿用紙約7.4枚

序章:『ミッド』


 此処は魔法の国『ヘルビン』
人々は魔法を唱え、剣を翳し、槍を突き、大地を駆使する世界
そんな世界だからこそ、戦も後を絶えない
特に、『ミッド』の存在が信じられていた頃は尚更だった
『ミッド』と言うのは、手に入れたものに時代をも操る力を授けるといった伝説の宝玉だ
今ではただの“伝説”に過ぎないが、一部では存在が信じられ、それを求めて小さな戦いが起こる事も少なくは無い
一説には魔法学校『マジュリア』に保管されていると言う説もあるが、
実際に確認した者は居ない
危険すぎるのだ
『マジュリア』の学校長『シリウス』は、世界で最も強いとされる魔法使いだ
実際に、学校に1000の兵が攻め込んだ時にも、『シリウス』の手により、あっけなく全滅させられた
しかし、やはり『ミッド』を手に入れようとする者は、あらゆる手段で『ミッド』を探した
 そして100年後の今
『シリウス』は134歳に成り、『ミッド』も伝説と化した
魔法学校『マジュリア』は平和な学校となり、入学者も厳選しない為、100年経った今でも賑わっている
 だが――…
この『入学者を厳選しない』行為が、後に世界中を恐怖のどん底に突き落とす事になる……

 辺りには沢山の屍が転がっている
生臭い血の臭いがするこの部屋に、一人の少年と老人が居た
「終わったんじゃよ……
 100年前に……!
 『ミッド』は伝説なのじゃ!」
生臭い部屋の四隅に追い詰められた老人は、体を震わせながら、目の前に立っている少年に言った
「だが、弱者が強者の為に身を滅ぼすのは当然だろう?」
少年は老人にそう言った後、右手に持った剣を老人に向け、更に告げた
「所詮この世は弱肉強食
 強ければ生き、弱ければ死ぬ
 何時の時代も、それは絶対に変らない真実だぜ
 ミシュア校長さん」
少年は剣を振りかざし、老人に襲い掛かった
「た……たす……
 …………助けて!!」
ザシュゥッ…
生々しい音と共に血の臭いが辺りに広がった
少年は、カバンから一本の杖を取り出し、地面に水平に持った
「……『ユウダイ』より『ミスリア様』へ報告
 此処、『ミルジャクト魔法学校』には『ミッド』の存在が確認できない
 おそらく此処には無いと思われる」
少年はそう言うと、杖を拾い、カバンに入れた
「やっぱり『ミッド』は『マジュリア』にあるのか……
 ま、『ミスリア』がどんな作戦で『マジュリア』を攻めるか知らんが、
 何れ分かるだろう
 この世界を手に入れるのは……」
少年はそう言うと、剣を腰に収め、
「この俺だと言う事をな」


第一話:動き出した運命の歯車


 大きなシャンデリアの吊るされた天井……宝石の散りばめられた扉……
その大きな屋敷の一室で、少女は目を覚ました
「ん……」
むくりと体を起こすと、暫く暖かいベッドの中で丸くなり、そして起き上がった
茶色いショートへアに、大きな青い瞳の少女、『マジュリア魔法学校』に通っている『ナジャラン』だ
「ふわぁぁ……
 今日から二年生かあ」
そう、『マジュリア魔法学校』は、昨日で春休みが終わり、今日から二年生としての新学期が始まるのだ
ナジャランは大きく伸びをした後、豪華なクローゼットを開け、中から青いローブと、黄色の大きなイヤリングを取り出し、身に着けた
ナジャランはそのまま洗面所に行き、顔を洗い、身だしなみを整え、階段を駆け下りた
「おはよ、パパ」
濡れた顔をタオルで拭いながら、ナジャランは食堂の椅子に腰掛けた
「おはよう、ナジャ
 早く食べないと遅れるぞ」
「はあい」
気の抜けた返事をすると、ナジャランはテーブルに置いてあった豪華な食事を済ませ、まだ口の中をもぐもぐと動かしながらカバンを背負った
「行ってきまあす」
ナジャランは大声で言うと、駆け足で屋敷を出て行った

 五人の少年が立っている森は、とても人間が近寄れるような場所では無かった
一歩入れば魔物達が襲い掛かり、数々の罠が仕掛けられ、常人なら5秒も生きてられない森だった
「聞いたか?『ミスリア』の野廊、もう少しで『マジュリア』に攻め込むらしいぜ」
背の高く太った体に、大きな斧を背負った少年が言った
「聞いたぜ、やっと決心したようだな」
整った顔立ちの、弓を手に持った少年が答えた
「んじゃ、そろそろ俺達も動くか?」
黒い髪に、鋭い黒瞳をし、腰に剣を携えている少年が言った
……そう、あの『ミルジャクト魔法学校』を全滅させた少年『ユウダイ』だ
「そうだな、じゃあ誰が行く?」
5人の中で一番小さな体に、槍を背中に背負った少年が言った
「俺が行くよ
 魔法学には自信があるから、すぐに一目を置かれ、信頼される存在になるぜ」
前髪を眉毛の上で整えた少年は、胸をドンと叩いた
容姿よりも、背に背負った大きな鎌の方が真っ先に目に入ってくる少年だ
「自分で言うなよ」
他の四人は声を合わせて言った

 決して顔も知らず、声も知らず、互いの存在さえ知らない少女と少年達の運命の歯車が、ゆっくりだが確実に動き始めていた


第二話へ……
2004/07/03(Sat)19:50:26 公開 / 色即是空
■この作品の著作権は色即是空さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
少し短めですが、時間が無いので……;
次からはもっと長めに書くので……
感想ありがとう御座いましたw
時間がある時にお返事書きます
では
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