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『輝く真紅の希望 0〜1』 作者:冴渡 / 未分類 未分類
全角5108文字
容量10216 bytes
原稿用紙約16.7枚
【0.序章】

 僕は世界で一番ついていない男だ。
 一歩あるけば、目のを黒猫が横切り、靴の紐が数本ブチ切れる。それにひるまず、さらに一歩進めば、鳥の糞が降り、バナナの皮で滑るという荒行を成し遂げるほどに。
 知人は皆、僕に向かってこう言う。
「君は、いつもついてないね。」

 そんな僕の一日の中で、一番ついていて、一番ついていなかった日がある。
 僕はその日を忘れないだろう。

 輝く真紅の希望に出会ったあの日を。

□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
【1. 赤】

 夏の蒸し暑い日のことだった。

 僕は、カッターシャツを汗でぬらしながら、道を歩く。おばさんに水をかけられ、鳥の糞を腕に落とされ、てりつける熱風と戦っていた。
 暑い。
 とにかく、暑すぎる。
 何で世界はこんなにも暑いのだろうか。温暖化とはいえ、こんなに暑くしなくてもいいんじゃないか、と思う毎日。
 あー、やっぱ二酸化炭素は駄目だ、緑を多くしないと、と木陰で休む。思わず、息を止めて、窒息寸前になって慌てて呼吸する。いつもより酸素を多く吸い、二酸化炭素を多く吐いてしまったような気がして、申し訳ない、と心の中で呟く。


 なぜ僕は道の端の日陰で死にかけているのか。その理由はいたって簡単だ。

 最近、僕の町は妙ににぎわっている。
 それは、最近僕の町にできた、狭い日本の土地を贅沢に使った、ものすごく巨大なショッピングモールができたからだ。大きなショッピングモールは、駅から徒歩三十分と少し離れた場所にあるが、相変わらず人気は高く人は多い。電車に乗っていても、人が多くてウンザリすることがよくある。
 きゃぴきゃぴと騒ぐ女子高生。プリクラ何枚とる〜?などといいながら、短いスカートをひらひらさせる。

 今日は、そのショッピングモールに僕は初めていくことにしたのだ。
 なぜか?
 それはただの気まぐれ。風まかせ。
 というようなカッコイイ理由ではない。
 残念ながら、そこに僕はバイトの面接に行く。高校生になったのだから、バイトでもしてみよう、という安易な考えからだった。学生服で行くことも無かったと思うが、わざわざ着替えるのも面倒臭かった。

 僕は電車に乗り予定の駅で降り損ね、帰りの電車のために引き返す事もできず、離れた駅からショッピングモールに向かって歩いていた。

 そうして今、日陰で呼吸困難になっている。

「はー…こーこどーこだぁー?」
 そして、迷子になっているわけだ。

 暑い…死んでしまう。
 水分不足で、死んでしまう。
 せめて、ベッド下の宝物集を廃棄処分してから死にたい。

 人通りの全くない道の端の木の下、走馬灯のように流れるような記憶は何も無かった。
 暑さと、水分不足と、体力不足で、僕の力はもう残っていない。

――アンパンマンよ、今お前が僕に顔をちぎってくれたとしても、僕はそれをのどに詰まらせて死ぬだろう。
 ふ、と僕は笑った。

「アンタ、何やってんの?」
 突然の頭の上から声が振ってきた。
 僕はハッとなって覚醒する。
 目の前に現れたのは、髪の長い女性らしき人。赤いバイクにまたがって、赤い服を着て、前進真っ赤。かなり、かっこいい。顔は逆行でよく見えないが。
「死んでるの?生きてるの?」
 僕は慌てて返事をする。
「生きてます!生きてますとも!」
「寝てたの?」
「いいえ、違うんです!」
 僕は必死で話をした。水分不足で死にそうなこと、アンパンマンが身を削ってくれたパンですら、食べたら窒息死してしまうほど喉が渇いていること、ショッピングモールに行きたい事、バイトの面接があるという事。全てを、あらいざらい喋った。
 そしたら余計に、喉が渇いた。
「ほら、あげる」
 ぽい、と投げられたのは、ペットボトル。僕は大喜びでそれを飲み干した。
「あと、ここを真っ直ぐ行けば、お目当てのショッピングモールにいけるわよ。あれだけ大きいものを見失って迷子になるヤツも珍しいけどね」
 指差す方向を見てみれば、明らかに大きなショッピングモールらしきものが見える。
 あぁ、僕はやはりバカだと今更ながら思う。
「あっ、ありがとうございました…」
「別に、お礼を言われる筋合いなんてないわ。その水だって、水道水だし」
「あ、そうなんですか? それはまた、おいしい水道水でした」
 僕は頭をぺこり、と下げる。
「変な男。アンタ、名前は?」
「なっ、名前ですか?! 安井 仁です」
「ジン…ねぇ。ま、頑張れ。早く帰るのよ」
「へ?」
「じゃあね、バイバイ」
「ありがとうございましたー!!」
 バイクのお姉さんは、バイクを一気に走らせた。僕は手を振ったが、お姉さんは一度も振り返らない。
「あー、助かった。とりあえず、早く行こう」
 僕は足を踏み出した。とたんに、もらって半分しか飲んでいない水を用水路に落とした。
 
 天才だ…!
 ここまでこれば、僕は天才ではないだろうか?!

 思わず目にたまる涙を拭いつつ、僕は足を進めた。
 大きなショッピングモールに向かって。


「ごめんねー、残念だけど、もうついさっき決まっちゃったの」
「は、はぁ。そうですか…」
「ごめんねー、それじゃあ」
 バタン、と強引にドアは閉められた。このドアの向こうで、あの綺麗な店長らしきお姉さんが何を言っているのかくらいはわかる。
 もー、やる気がないやつを雇うほど、こっちだって暇じゃないのよねー。第一、こんな大きな建物があるのに迷うやつがあるかっつーの。もっとまともな嘘をつけって感じー。遅れてきたなら、遅れてきたなりに、誠意ってものがあるでしょうが、誠意ってものがさー。それが欠片も感じられないのよねー。
 と、いうところだろうか。
 少し、厳しすぎたかもしれないが、大体はあってる。絶対、こんな所だ。
 でも、事実、僕は迷ったわけだし、大きな建物は僕には見えなかった。仕方ない、きっとこの店と僕は縁がなかったのだと思い、端にある小さな店で乾いた喉を癒した。
 頼んだのは、確かメロンソーダであったはずなのに、いつの間にかコーヒーになっている。あたりをうかがうと、僕と同じように不幸な人が一人。
 あぁ、可愛そうに。きっと、彼はコーヒーを頼んだに違いない。だが、突然目の前に置かれたメロンソーダに驚きを隠せない顔をしている。
 ごめんよ、僕が悪いんだ。きっと君はメロンソーダというか、炭酸系は苦手そうだ。でも、頑張って飲んでくれ。僕は、違う、といえるほど勇気はない。
 苦いコーヒーに、牛乳と砂糖を死ぬほど加え、コーヒー牛乳にして飲む。
 上手い。やっぱり、甘いものはいい。
 向こうは、とりあえず口をつけてはいるが、微妙に嬉しくなさそうだ。コーヒーブラックを頼んだあたりから、たぶん甘いものは苦手なんだろう。
 彼は、違う、と叫んだりしなかった。どうやら、僕と同じ種類の人間のような気がした。


□■□■□■

 目覚めて、僕は驚いた。
 真っ暗だ。
 僕は、一体どうしたんだろう?あのまま、倒れこんで病院に運ばれてしまったんだろうか?やはり、コーヒーに八杯の砂糖は多すぎたのかもしれない。
 日頃から糖分には気をつけていたものに…と悔やむ。
 病院にしても、人をこんな狭い場所に体操座りで入れることもあるまい、と思う。全く、これだから日本の医療機関は…と、悪態をつきながら、様子を伺う。
 僕は、どうやら黒いビニール袋に包まれているようだ。
 もしかして、隔離?!何か、感染する病気にかかってしまったんだろうか、と僕は自分の身が心配になった。慌てつつも、障子に思わず指を突っ込んでしまう要領で、黒いビニール袋にも指を突っ込んだ。しばらくビニール袋が伸びる感覚が指に伝わって、破れる音がした。
 あぁ!やってしまった!いつもいつも、障子に穴をあけちゃあいかん、とおばあちゃんに怒られていたにもかかわらず…!
 心の中で何度もあやまりながら、その穴から外の様子を伺う。それでも、まだ外は真っ暗だ。仕方なく、穴を広げて黒いビニール袋から体を出す。すると、さらに大きなダンボール箱が僕を包んでいた。
何だ?!人身売買か?!ようは、僕はプレゼントか?!

 ぼかっ、と段ボールを強引にあけると、ラッピングは施していなかった。よかった。どうやら、人身売買ではなかったようだ。
 僕は、ゴミの塊の中から生まれた。今の状態を見た人に、そういったら絶対に信じたと思う。ゴミの真ん中にあるダンボールの中。そこが、目覚めた場所だった。
「僕は…生ゴミだろう?」
 分別の悪さに悪態をつきつつ、燃えるものの中から脱出した。
「でも、ある意味、正しい分別だな。人間、最後は燃やすし」
 一人頷きながら、ゴミの中から抜け出した。周りは暗く、人はいない。静まりかえった何処か。僕は、ゆっくりと歩き始めた。

 そしてようやく、僕はここがショッピングモール内だとわかった。
 どうやら、僕は捨てられたらしい。可愛そうな子猫というわけだ。ただ、子猫と少し違うのは、尻尾がない所と、耳がない所、拾ってくださいとも書いていなかったであろう段ボール箱の中でビニール袋に入れられていた事と、雨の中、黄色い傘をさして“お前、一人なの?”などと言いいながら抱きしめ“お前はあったかいね”と言ってくれる可愛い幼稚園児もいない、という所だけだ。
――とりあえず、ここから出よう。
 そう思った僕は、入ってきた玄関に向かう。真っ暗な道を黙々と歩きながら、気味の悪さを感じた。誰もいないって、案外怖いことだ。
 玄関のドアを思い切り引く。
 ガチ、ガチ、と、鍵がかかっている音がする。 出られない。窓も大きく開くところは無かった。
「あー、どうしよー?僕ピンチかも?」
 玄関に戻って、どうしようか迷う。大きい声を出すのは、何となく怖い。警報が鳴って、いかつい警備員さんが飛んでくるのも嫌だ。

「おい、誰だ?!」
 眩しい光が僕を包んだ。
 助かった!これで、僕は無事家に帰ることができる!僕は安堵感で一杯になった。
「あのー…」
 僕が言い訳をするよりも先に、光は僕に近づいてくる。
「てめぇ、どこから入ってきやがった!?」
「あのー、僕はゴミ箱、に…」
 
 僕の思考回路は完全に停止した。
 悪い夢だ。きっと、これは夢なんだ。本当は僕はあのカフェでまどろんでいるだけに違いない。だって、おかしいじゃないか。
 この光は懐中電灯の光なんかじゃない。
 
 いかつい銃についている、ライトだなんて。 
 
 待て待て待てよ、ここは日本だろ?銃刀法違反じゃないか、ほらみろ、おかしいぞ。僕の単細胞な頭で見る夢なんて、こんなものさ。
 さ、夢ならはやく起きなきゃね。お店の人の迷惑になっちゃう。

 僕は、頬をぎゅっ、とつねる。
「痛いじゃないか!」
 思わず叫んだ。
 向こうの男が、あぁ?!と声を震わせる。
「あ、あの、その…」
「まぁ、お前が何でここにいるかなんて、今となっちゃあどうでもいい事だ」
 がしゃ、と何かが外れる音がした。
 それが、どんな行為なのか、どうしてどうでもいいのか、それは僕の小さな脳みそでも用意に想像がついた。
 つまり、この男が指を少し動かしただけで、僕はこの世からバイバイになってしまうのだ。
 
 動かなかった。
 足が、固まって動かなかった。
 現実なはずなのに、現実じゃないような気がした。男の笑い声が、静かなホールに響き渡る。

 立っているのかやっとで、僕は声を出すことすらできない。
 何だ?どうした?何が、起こった?
 そんな僕の様子を見て、男は銃を構えた。

 男はニヤッと笑って、ついてないねぇ、ガクセーサン、と言った。
 突然何もかもがスローモーションになった。
 
 笑う男の顔。
 それと共に、響く声。
 ゆっくりと、動く指。
 眩しいライト。
 僕はゆっくりと目を閉じる。
 最後の瞬間を、待つために。









「ついてないのは、アンタの方ね」

 突然、声が降ってきた。
 僕はまた慌てて、目を覚ました。

「なっ…――がっ!」
 
 目の前に現れた物体は、銃を構える男の喉元に平然とナイフを付き立てる。
 叫ぶ暇もなく男は絶命し、物体は当然のごとくナイフを抜いた。

 かつては生きていたモノから、一斉に赤い液体が吹き出す。
 
 赤い服を、さらに赤く染めて。
 その女性はすべての頂点に立つかのように僕を見下ろしている。

「アンタ、ついてるわね」

 人生の中で初めて言われる言葉を聞きながら、僕は見つめ返した。

 今日、初めてあったばかりの、あの赤いお姉さんを。
2004/06/21(Mon)20:03:14 公開 / 冴渡
■この作品の著作権は冴渡さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
 こんにちは。
 行き詰まりを打破するため(?)に、暇にまかせて新しい小説を書いてみたりしています。
 暇に任せすぎです。すいません。ミステリーではないです。
 さー、どうなるんでしょうねー。というか、どうする気なんでしょうねー。
 自分でもドキドキです。
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