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『終結の刻』 作者:crocell / 未分類 未分類
全角2777文字
容量5554 bytes
原稿用紙約9.55枚
終結の刻

 第1章
 彼はいつのまにかそこにいた。何もすることなく立っていた。
 誰も声をかけようとはしなかった。彼がボロボロの服を着ていたからだ。
 「外見がみすぼらしい者に話し掛けても意味はない」皆こう思っていたから。
 だが、はたして本当にその時彼に声をかけても意味はなかったんだろうか……?
 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
[アルク・J・ライト]それが俺の名だ。通称はアルク。
 日本人の血は混ざっているが、見た目はほとんど外人っぽい。
 実際間違えられたこともある。
 だが俺は別にこの名前が嫌いではない。
 何故か? それは名前によって何か悪いことが起こるわけでもないし、
なんとなく かっこいいからだ。
 今俺は、あるひとつの依頼の為に日本にすんでいる。
 ……あ、そうそう、俺の仕事は何でも屋だ。
 何でも屋といってもすることはだいたい「用心棒・暗殺・破壊活動」などが仕事 で、そこそこの実力はある。
「斬光のアルク」《アルク・オブ・スラッシュライトニング》とも呼ばれている。(振った剣の斬光が見えたらもう戦いは終わっている・・・それ程に早いアルクの 斬撃からついた二つ名だ。)
 この実力があるからこそ、この世界で生きていける。
 危険な依頼も請け負える。
 簡単な仕事で莫大な報酬が手に入る時もあるし、命の危険にさらされるような仕 事で雀の涙ほどの報酬しかもらえないこともある。
 だが別にいいのだ。俺は闘うのが好きなのだから。目の前にある物すべてを破壊 している時は、とてつもないほどの高揚感を感じる。
 闘うこと、それは俺の生きがいだ。報酬など、自分の強さを表すいわば「おま  け」のような物だ。もらえなくていい、闘えるなら。
 俺は今までこの愛用の魔剣【バルバトス】と共に、数々の依頼をこなしてきた。
 そして今日も俺は依頼についての調査を終え隠れ家に戻る処だった……。


「……ん?」
 家の前に誰かいる。
(……外見がみすぼらしいな。)
 そう思いながら、だんだん近寄っていく……。
「!?ッ」
 立ち止まってしまう。何故だろう、この男から殺気が……。
「…………あ……」
「……おい。お前何してるんだ?人の家の前で。」
 男は焦点の定まらない目で下を向きながら、
「……あ…………うぅ……」
 微かな声でうめいた。
「何者だ? なぜこんなところに?」
「…………」
 何を聞いても答えない。まるで何も知らないかのようだ……。
(……こいつ、記憶が無いのか?……)
「……何ッ!!」
 いきなり、男が斬りかかってきた。隠し持っていた剣を振り上げて。
 ……ガキィィンッ…………パタッ……
 とっさに斬撃をかわし、手刀で男を気絶させる。
「ッたく、いきなりかよ……」
 男の体を抱えあげる。
(……これが女だったらなぁ……)
 そう思いつつも、家へと入っていく。
「……これはッ!?」
 男の持っている長剣が目に映る。
 その剣が過去にも見たことがあるのを覚えている。
 そう、これを見たのは……全世界で一斉に起こったテロ。
 アメリカの傭兵として戦っていたその時に、戦ったテロの首謀者とも言える人  物。そいつが振るっていた剣が今、目に映っている剣だった。
「……何でこれがここに……」
 そして……アルクはその剣を男の手から奪うと、家の中に入っていった……。
<---------------------3日後--------------------->
 1日間男を看病した後、目を覚ました男を路地に戻し、
 何もしないか密かに監視した。
 男は何も無かったかのように路地にいた。男の周りの環境で、ただひとつ変わっ たのは、若い、14、15歳ぐらいの娘が男の側にいるようになっただけだ。
 娘は、男が記憶を無くしているのに気付き、気にかかったのだろう。ずっと喋り かけていた。男が答えを返してくれるわけは無いが。
 男の顔は相変わらず下を向いている。格好もみすぼらしいままだ。
 男の顔は(元気があれば)ハンサムなのだろう。顔立ちも整っている。
 普通の人生を歩んでいたら、多分女に黄色い声を浴びせられながら、とても良い 人生を歩んだだろう。ふとそう思った。 
 二人から目を離し、男が持っていた長剣に目をやる。刀身の部分には 「T・S・ K」とアルファベットが彫ってある。
 この文字の意味を知っているものはそう多くない。
 「T・S・K」とは「TRICK・SNIP・KILL」の頭文字で400年程前、これを名乗った 暗殺者がいた。その男は尋常ではない身体能力を持ち、《闇の現人神》と呼ばれ たりもした。そしてその男が使っていた剣がこの剣だ。
 その剣はこの世に一本しかなく、
 その剣は持つ者に絶対なる支配力をもたらすと言われている。
 (何故あの男がこんな物を……)
 男に何か聞いてみよう。少しでも何か思い出してもらわなければ……。
 そう思い、窓から男の姿を探す……。
「ッ!?」
 男と娘の姿がない、いや人影すらない。
「ちくしょう、何が起こった!?」
 路地に出た……生物はいない、もはや死骸と化したものが無残にも路地中に広が っている。
 「…………」
 あまりの光景に息を呑む。
「何なんだこりゃあ……異常すぎる……」
 路地の隙間から聞こえるかすかな物音に気付く。
(……ん?)
 愛用の【バルバトス】を構えながら、路地を進む……。
(いた。娘だ。だがあれは……?)
 娘が路地に横たわっている。(気を失っているのか?)そして……その上に人にあ らざる形をした物が娘に手を伸ばしている。
「ちッ!!!」
 舌打ちしながら、体中の力をこめて剣を振るう。
 ……だが攻撃が効かない。振るうだけで鋼鉄をも両断できる、【バルバトス】の 攻撃がだ。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァーーーー!!」
 連続攻撃をかます。今までこれに耐え切れた奴はいない。
 斬撃が全て当たった。
「……やったか!?」
 だが[それ]は無傷で立っていた。
「くそッ……」
 目にもとまらぬ速さで斬撃を繰り出す。受けきれる筈がない。
 だが斬撃はむなしく、[それ]に傷ひとつつけられない。
 ……次の瞬間、目の前が逆さになった。
「!!??ッ」
 [それ]の攻撃だった。視覚情報が脳に伝わる前に、攻撃は体に届いていた。
 路地の壁まで吹き飛ばされ、あとから襲ってくる痛みに耐え、急いで体勢を立て 直すと、[それ]に斬りかかろうとする。が、[それ]が見つからない。もはやその 場から消えていた。娘も一緒に。
「…………」
 一瞬のうちに、言いようのない敗北感が体中を駆け巡った。
 何も出来なかった。娘を助けられなかったことよりも、人外なる物にあっけなく やられてしまった。そのことのがショックだった……。
 敗北感に身を包み込まれながら、隠れ家に戻った……。
 第1章 終わり
2004/06/13(Sun)19:07:12 公開 / crocell
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■作者からのメッセージ
初投稿です。いろいろと指摘お願いします。
なんとか訂正してみました。
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