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『そこで、一言。』 作者:杉山 / 未分類 未分類
全角7720文字
容量15440 bytes
原稿用紙約30.25枚


 あんたが死ねばこの無間の地獄も終わるのよ。

 と、湯気の立つ炒飯を盛った皿を食卓に放るように置いた妻が、冷淡な色の浮かぶ瞳を旦那に向け、そう言い放った。

 激情でもなく、嘲弄でもなく、ただ事務的な声音だった。

 山の形に盛られた炒飯をスプーンで崩しながら、旦那は答えた。

「逆に言えば、お前が死んでも結果は同じ、て事だよな」

 ごもっとも、と、妻は納得せざるを得なかった。

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 いきなり目の前に立ちはだかった男が、嬉々とした表情を浮かべ、着ていたコートをばっと開いた。コートの下は裸であった。

 リンダは、男の一物をしばらく凝視した後、言った。

「犬に喩えたら座敷犬、て感じですね」

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 ウゼェ、というのが菅原さんの口癖だ。

 宿題を出されればウゼェと呟き、掃除の時間になればウゼェと独りごち、下校時間を知らせる校内放送にはウゼェと応える。

 そんな菅原さんに対し、クラスの誰もが一度は言ってみたいと思っている一言がある。

『お前がウゼェ』

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 駅へと連なる通勤通学者の列を眺めながら、まるで葬列のようだ、と女は連想した。

 誰もが沈痛な面持で一様にうつむき、どこから集まってくるのか不思議に思うほどの大勢の人混みから聞こえてくるのは、規則的な足音だけ。

 女は、おもむろにその列へと近付き、目の前を通り掛かった若年のサラリーマンにこう尋ねた。

「ねぇねぇ、あんた社会の犬なの」

 女は、若年のサラリーマンに無言で殴り倒された。

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「おっおおっ、おいっ、人が死んでるぞ」

 第一発見者である彼の第一声は、その場に居合わせた仲間の誰にも、間抜けな印象を与えるものだった。

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 完成がいつになるかも知れぬ開発途中の発明品を目の前にして、堅く腕組みをした博士が自嘲気味の笑みとともにぽつりと呟く。

「もうここらで止めちゃおっかなぁ」

 そうして博士は、腕組みを解く。

 開発に着手してから既に二十余年が経過している。今からではもう、中止するには遅過ぎる時機だ。

 その独り言を切っ掛けに、博士は、その日一日の開発研究に取り掛かる。しかし、その日一日を終えても依然、発明品が完成する目処は立たない。

 そんな一日を、既に二十余年間も続けている。

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 きゅん、と胸が高鳴るのを、恵美は感じていた。少女時代に夢想していた白馬の王子が、今まさに迎えに来たのだ、とさえ思った。

 目の前の、羽織ったコートを広げその下の裸体を晒し何をか伺うような視線を向けてくる男に対し、恵美は言った。

「犬に喩えたら座敷犬、て感じですよね」

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 クリスマスの夜、サンタクロースの扮装で現れた彼氏に向かって、彼女は言った。

「バカみたいよ」

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 決闘を申し入れにきた、と、戸口の前に座り込む若者に向かって、老齢の武芸者は言った。

「バカみたいよ」

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 子供の頃からの悲願であった、大作ロールプレイングゲームを一時の中断もなくクリアする、という夢を実行して果たし、男は独りごちた。

「満足だ」

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 サンタクロースの扮装をした自分が映る鏡を覗き込んで、彼氏は思わずの笑みをこぼした。

「きっと彼女、びっくりするだろうなぁ」

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 萎んでいるそれは、まるで、座敷犬のように見えた。

 しかしその感想をそのまま述べたら、目の前の男はきっと悲しむのだろう、と聡美は思った。

 しばらく考えた後、聡美は言った。

「犬に喩えたら土佐犬みたいですよね」

 聡美からしたらそれは誉め言葉のつもりだったが、男のそれは萎んだままだった。

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「すっごぉーい、犬に喩えるなら土佐犬みたぁーい」

 男のそれはしかし、萎んだままだった。

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 世界の中心で、男は叫んだ。

「俺のチンコを犬に喩えるのはもう止めてーっ」

 叫ばずにはいられなかった。

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「それでも地球は回ってる」

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 棚から落ちてきたボタ餅を、大口を開けて直接受け止めた男。

「んがっぐっぐ」

 窒息して死んだ。

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 血の海が床の上に広がっていく。それが何かの形に見えた時、少年はようやく、己のしでかした事の重大さに気が付いた。

 首にナイフを突き立てられ絶命している、己の母親。

 少年は、母親を、殺した。

 血の海が母の乳房の形に見えた時、少年は、己が行為の生んだ結果が取り返しのつかないものだと気付いたのだ。

 後悔の念が湧いて出る。あたかも傷口から流れる朱血のように。

「ごめん、なさい」

 血塗れの少年の口からこぼれ落ちた掠れた言葉は、しかし、誰の耳にも届かなかった。

 この先自分が赦される事はないのだと、少年は覚った。

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 綱渡りのようだな、と男は思う。

 眼下、奈落の底は深すぎて見えず、前方に広がる虚空が足元から伸びるロープの先端を隠してしまっている。

 いつ終着点にたどり着けるのか知れない、綱渡りのようなものだな、と男は思う。

「疲れた」

 と、呟いてみるが、男の言葉を拾う者はどこにも居ない。

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 哲学者は今日も笑う。

「わはははは。無駄だよ、無駄だぞう」

 哲学者は今日も、笑う。

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「土佐犬、ですね。犬に喩えるならば」

 女の口から出た言葉は、男を喜ばせ得るものではなかった。

 今日もだ。

 今日も、だ。

 それでも男は、明日もまた同じ事を繰り返すのだろう。

 素肌の上にコートを一枚だけ羽織り、夜の街へと出掛け、無造作に選んだ女の前に立ちコートを開いて見せるのだ。

 欲するものを得られる保証が何一つなくとも、男はそれを欲し続けるのだ。

 男は、仲間内では、その求道者的態度への敬意の表れとしてドクターコートと呼ばれている。

 今日の失意が癒えようとも癒えなくとも、男は、明日も、夜の街へと繰り出すだろう。

 明後日もまた。

 明々後日も、また。

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 何でもないような事が、幸せだったと思う。

「そう錯覚したいだけでしょ」

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 ニッSAYのおばちゃん今日もまた、笑顔を運んでくるだろな。

「仕事上の愛想笑いでしょ」

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 ぬから始まる言葉を、一文を、そこから派生する物語を、そしてたどり着く落ちの一言を、男は随分と長い間、考えていた。

 ぬ、ぬ、ぬ、と。

 ぬ、ぬ、ぬ、ぬ、ぬ、と。

 おそらくは、成人男子が一日の内でぬから始まる言葉を考える為に使う時間の平均値の十倍、いや、五十倍は費やしたのではないだろうか。

 ぬ、ぬ、ぬ、ぬ、ぬ、ぬ、ぬ、と。

 男は、それはもう真剣に、ぬから始まる言葉を、一文を、考え続けたのだ。

 そうして、果たして、至ったのが以下の一文だ。

「ぬび太さんのエッチー」

 入浴が趣味の少女がそれに興じている場に、突如として扉が現れ、それが開かれ、その向こうから顔を覗かせたのが級友の少年だった、そんな状況を思い浮かべて欲しい。

 いや。

 正直、スマンかった。

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「眠いんだよ。私も寝てないんだよ」

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 飲んでも飲んでも飲み切れない飲み物ってなぁーんだ。

「考えた事もないな、そんな事」

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 晴れてるのに土砂降り、そこはどんな場所でしょーか。

「考えても無駄だよ、そんな事」

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 引いても押しても開かないドアなんてドアじゃねーよ。

「って、仕舞いにゃ逆ギレかよ」

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 二人きりで過ごす、初めての夜。

 緊張と高揚とがない交ぜになって興奮覚め止まず、高子は夜が更けても寝付けずにいた。

 見慣れない薄闇の中に、少し前に過ごした恍惚の刻が甦って浮かぶ。

 それは恥ずかしくもあり、嬉しくもあり、形容し難い至福の刻だった。

 独り、自分の為だけにスクリーンに映し出される、自分だけが愉しむ事の出来る映画を観ながら、高子は潤いもまた甦ってくるのを、感じていた。

 その潤いを、そっと、指先でなぞってみた。生まれて初めて高子は、自分が女である事の意味を知れたような気がした。

 もう少しこの感覚を味わっていたいな、と、高子がそう思った時、隣で寝息を立てていた裕樹の寝言がその秘かな願いをぶち壊した。

「寝っ屁だよ。わはは、寝っ屁だよ」

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「ヘンタイ! へへっ、変態っ!」

 女が浴びせ掛けたその一言が、男の萎んでいた心を復活させる恵みの雨となった。

 時には座敷犬と、時には土佐犬と、何故だか犬に喩えられ続けた男の一物が、数年振りに怒張していた。

 男は、ドクターコートは、その日涙を流した。

 仲間たちと競うように祝杯を空けながら、欲し続けたものを手に入れた喜びに溢れ出る涙を、流れるままに流した。

 明日、男は、日課になっていた夜の街へ出掛ける事を止めてしまうのか、それは本人にさえも判らない。

 しかし、とにかく今は、数年振りに味わう男性器の勃起する感覚に、快哉を叫ぶのみだ。

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「勃起したっ。俺のチンコが勃起したぞおーっ」

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 マンションの九階、二十六メートルの高さから下界へと飛び降りた男は、駆け付けた救急隊員の呼び掛けにこう応えた。

「痛い、痛いよ」

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 みんなが笑ってる。お陽様も笑ってる。

「失敬極まりないな。笑ってんじゃねーよ」

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 蒸れて痒いんですよ。

「陰金ですね」

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 目を真っ赤に腫らした彼氏が、興奮に我を忘れて何をかまくし立てている。

 普段は言葉数の少ない彼氏のその態度に、暁美は驚きを感じると同時、どこか嬉しくも思った。

 互いの間に存在する壁の幾つかを、壊したのか乗り越えたのか、とまれ、二人の間の距離が確実に縮まっていると実感出来たからだ。

 機関銃を撃ちまくるように喋り続ける彼氏の、放った言葉を拾いあげていくと、以下のように要約出来た。

 不眠不休でテレビゲームをクリアした。子供の頃からの夢だった。嬉しい。

 と。

 喋り疲れた彼氏が言葉を途切らせた機に暁美は、餌をねだる仔犬のような瞳で覗き込んでくる彼氏に向かって、言った。

「バカみたいよ」

 破顔一笑、彼氏はのし掛かるように暁美に抱きつき、暁美もそれに応えた。

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「もうテメェとはお終いだよおっ」

 激昂して声を荒げる彼氏は、ご丁寧に白い鼻髭まで着けて、サンタクロースの格好をしている。

 それはこっちの台詞よ、と、彼女は思った。

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 屋根に登ってみる。

 スモッグで曇る夜空には消え入りそうな星が幽かに揺らめいているだけで。

 地上、人工の光は規則的に並んでいて一見綺麗だけれど。

 少女の目には、そのどちらも、偽物のように映った。

 自分を導いてくれる光は何処にもないのかな、と少女は思った。

 煙草に火を点ける。

 憧れの先輩に近付きたくて少女は喫煙するようになった。愛用のジッポライターは、中学の卒業記念にと、先輩がプレゼントしてくれたものだ。

 昼間、駅前で友人たちと駄弁っていた時の事を思い出す。

 胡散臭げに大人たちが素通りしていく中、警ら中の警官が近付いてきて、喫煙を咎められた。一度は煙草を取り上げられたが、職務質問に答えてアルバイトをしている事を告げると、警官は少女に煙草を返して寄越した。

 法律はともかく、自分の稼ぎで買ったものならば没収する謂れはない。

 とそう言って、俺ルールだけどな、とそう言って、警官は笑って立ち去った。

 何とはなしに、ジッポの火を点してみる。

 空にも地上にも、目を向ける場所がなくて少女は、ゆらゆらと形を変えながらも点り続けるジッポの火を見るとはなしに見詰める。

 オイルの焦げる匂い、それにまだ馴れずに強い刺激と感じてしまうのは、先輩の背中に追い付けない自分には不釣り合いだからなのかな、と少女は思う。

 突風が火を消した。

 もう一度、左手で風を防ぎながら火を点ける。

 果たして少女は、突然に、理解した。

 今の今まで、ずっと、手の内に在り続けていた光の存在に気付いたのだ。

 嬉しくて表情がほころんだ。叫びたい気分、走り出したい気分だ。居ても立っても居られず思わず立ち上がった。

「あ、でも、バイクを盗むのは犯罪よね」

 自転車で夜の町へと飛び出す少女。

 向かうのは先輩の家。

 少女の足がペダルを踏んで、車輪が回って、前照灯が進む先を明るくする。

 進む先が明るく照らされているのは、少女の足がペダルを踏んでいるからだ。

 そんな単純な事を、今まで難しく考えていたのは、自分が背伸びをしていたからかな、と少女は思う。

 全身に受ける風は、少女を爽快な気分にさせた。

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 夢だけど起きてる時にしか見られない夢、これなぁーんだ。

「病院行け」

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 余計なものなど無いよね。

「あるよ、幾らでも」

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 落日とともに心がざわつき、空に月が輝いた時にはもう、衝動を抑えられなくなっていた。

 一日も空ける事なく男は、夜の街へと帰ってきた。

 全裸にコートを一枚羽織っただけの姿、今までと変わらぬ出立ちで。

 しかしそれは見た目だけの話、今日の自分は確実に変わっている、と男は自信をまとっていた。昨日まで自分を覆っていた負の感情を脱ぎ捨てて、男は爽快な気分で夜の街に立っていたのだ。

 勃起不全は治った。

 勃起不全は治った、と。

 道往く女の中から獲物を定め、その眼前に立ちはだかり、コートをはだけて見せ付ける。

 昨日までのそれは哀願のようなものだったが、今日からのそれは、暴力でさえもある。

 どうだ、と。

 どうだ、と、男は自信を見せ付ける。

 目を見開いて固まっていた女が、やがて我に返り、ぽつりと呟いた。

「しめじ?」

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 流血沙汰の果てに、男と男が手を取り合う。お互い、浮かべているのは、照れくさそうなはにかんだ笑み。

 そんな時に男たちが交わすのは、いずれどんな時代でも、こんな言葉だ。

「痛い、痛いよ」

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 る、る、る。

 る、る、る。

 る、る、る、る、る、る、る。

「るび太さんのエッチー」

 正直、スマンかった。

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 憐憫の情をその顔に浮かべて、女は言った。

「しめじ?」

 男は、ドクターコートは、再び勃起不全に陥った。

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 老害と罵られ、町の外れへと追いやられた。

 それでも哲学者は、笑う。

「わはは。無駄だと言ったろう、わはははは」

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 わはは、と、誰かの笑う声が頭の中に響いた。それは愉快に誘われた笑いではなく、嘲笑だった。

 完成の目処が立たない発明品、その前に堅く腕を組んで立つ博士。

「やっぱ、ここらでもう止めちゃおっかなぁ」

 そう呟き、一日を始める儀式を終えて、開発研究に取り掛かる。

 頭の中に響いた声などどこ吹く風、自分に出来る事は、目の前の課題に取り組む事だけだ。

 二十余年間そうしてきた。

 気狂い、と陰口を叩かれようとも、自分に出来る事をするだけだ。

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「をるあっ」

 旦那が手にしていたスプーンを妻目掛けて投げ飛ばした。

 それは、妻の口腔内にすっぽりと納まった。

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「んがっぐっぐ」

 妻は窒息して死んだ。


(おしまい)

2004/06/13(Sun)07:55:30 公開 / 杉山
http://www.geocities.co.jp/Bookend-Ango/4594/
■この作品の著作権は杉山さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
前回の投稿作品に感想をくださった皆様、ありがとう御座いました。
遅くなりましたがお礼申し上げます。

今回の作品は、見方によってはお戯けが過ぎて映るかと思いますが、私は大真面目です。
お叱りの言葉でも真摯に受け止める所存ですので、どうか遠慮のない感想を賜りたく願います。
宜しくお願いいたします。
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この作品の投稿者 及び 運営スタッフ用編集口
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