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『Grasses 〜序章〜』 作者:向葉 旭 / 未分類 未分類
全角2112文字
容量4224 bytes
原稿用紙約8.2枚
 
       
   同じ年の、同じ月の、同じ日に、同じ身体から、

   たった二分足らず早く生まれていた、性別の違うもう一人の自分。

   僕の、沙生<すなお>に対する認識は、そんなものだったと思う。


 
 僕と沙生が五歳の時、交通事故で両親が死んだ。・・・らしい。
 
 夫婦で買い物に出かけた帰りに、誤って崖から車ごと転落したそうだ。

 下は、底深い真冬の海。死体は発見されなかったらしいが、

 99.9%の確率で、二人は天国へとドライブに行ってしまったのだろう。

 帰り道なんかないのに・・・。

 それでも、僕が0.01%の可能性を残しているのは、沙生がよく

 『有り得ないなんてことは有り得ないのよ』

 なんて、ちょっとわかりにくい事を確信にあふれた口調で言っていたからだろ 

 う。

 僕たち二人は両親が死んだと聞いた時、「うそ・・嘘だよね!!??嘘って言っ

 てよ!!」

 なんて事をわめいて、親戚の連中を困らせることはしなかった。

 ただ、なんとなく、他人事のように、

 僕はキョトンという顔をしながら、こう言った。

 「ねぇ、夕ご飯、まだ?」

 食べること。寝ること。沙生と遊ぶこと。

 これが僕の行動の三大原則だったのだ。

 
 別に、寂しいとは思わなかった。

 だって僕には、 

 沙生がいたから。


 


 まもなく孤児院に移された僕らは、生活習慣がガラリと変わった。

 僕は屋外で、他の子供たちと球技に勤しみ、

 沙生は屋内で、なにやら僕には到底理解出来そうもない分厚い本を読んでいた。

 それまでは、晴れの日も、雨の日も、いつも一緒だったのに。



 「ずいぶん対照的な双子ね・・・。」

 先生がポツリとつぶやく声を聞いた。

 まぁ確かに、その通りだったと思う。

 肌がいつも日に焼けていて、健康優良児の見本みたいに元気なサッカー少年の

 僕。

 一方、フランス人形みたいに白い肌、整った顔立ち、全てを見透かすような不思

 議な光をたたえた瞳を持った(ちまたじゃ有名な美少女だった)沙生。

 もともと、顔立ちが似ていた訳ではないが、時を重ねるにつれてさらに、

 二人が双子だと気づく人はいなくなった。

 

  

  そしてもうすぐ・・・この孤児院に来て、七年がたとうしていた。

日中会話する機会はめっきり減ってしまったが、夜だけは別だった。

両親がいた当時からそうしていたように、日が暮れて、子供たちが皆寝静まろうと

していた頃になると、二人で屋根の上に上った。

夜空を見上げながら、二人でたわいのない話をするこの時間。

誰にも・・・沙生にも言ったことはないが、

 僕はこの時間が一番好きだった。




そしてこれは、中1のある夏の夜のこと・・・。


「奈緒。」

いつもの屋根の上の時間。沙生は透き通るように綺麗な声の響きで、

僕の名を呼んだ。

「ん?」

思わず隣に顔を向けると、沙生は漆黒の夜空を仰いでいた。

最近見せるようになった、以前とは少し違う様な大人の表情に、

心中ドキッとさせられる。

「馬鹿ね、奈緒。何マヌケ面してるのよ。」

無意識に、少しボーっとしていたらしい。いつの間にか、呆れたように笑みを浮か

べる、いつもの沙生の姿があった。

『馬鹿ね、奈緒。』これも沙生の口癖だ。端正な顔に、悪戯好きだった幼い頃の面

影を見て、少し安心した。

「マヌケ面で悪かったな。で、何だ?」

「・・・奈緒の一番大切なものって何?」

「・・・はぁ??」

なんだ突然。突拍子もないのはいつものことだとしても、沙生にしては珍しい質問

だと思った。

そして、沙生の顔に、いつになく真剣な色を感じて、ますます不思議な気分

になった。

「何だよ、いきなり。んなもん突然言われたって・・・。」

「いいから、考えなさい。」

・・・考えろったって・・・。

答えなんて、考えるまでもない。

そんなの、ずっと昔から、たった一つに決まっている。

「・・・もしも、よ?もしも、その一番大切なものが、無くなってしまうとしたら

?もう二度と、取り戻せないとしたら・・・。奈緒は、どうする?」

・・・無くなる?俺の前から??

俺の、一番大切なものが・・・?



そんなの、絶対いやだ。



「いやだ。絶対いやだ。何がなんでも守る。・・・例え、自分の命に替えたとして

も、絶対に・・・。」

無くなるなんて。想像もしたくない。

奈緒は、これが「もしも」の話だと言うことも忘れ、沙生の瞳をジッと見つめてい

た。



フッ。



沙生が小さく笑った。

「・・・・そ。」

「・・・そ、って。それで終わりか!?」

「えぇ。・・・そういえば、今日は少し冷えるわね。もぅ入りましょ。

おやすみ、奈緒。」

一方的にそう告げると、あっという間に、部屋の中に姿を消していた。

・・・・・・・・・・。

・・・は?何だったんだいまのは??

いつもよくわからんことを言っているが、

今日は格段に意味不明だ。

「・・・変な沙生。」

奈緒がポツリとつぶやいた声は、夜の闇に吸い込まれるように消えていった。















沙生が行方不明になったのは、

その次の日の事だった。


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2004/04/30(Fri)01:26:12 公開 / 向葉 旭
■この作品の著作権は向葉 旭さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
創めまして。
改めて紹介させて戴きますと、
主人公は(一応)奈緒<なお>♂です。   で、ヒロイン(?)が沙生<すなお>♀と申します。     
感想など頂けたら本望でございます。
それでは、また・・・。
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