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『優しすぎる彼』 作者:蘇芳 / 未分類 未分類
全角3074.5文字
容量6149 bytes
原稿用紙約11.1枚
彼は優しすぎる。
自分を蔑ろにし、他人を重んじる所がある。
いつか彼がそれで傷つくのではないか。
私は。私は、ただ其れだけが恐かった。

鼻腔をくすぐるパンの焼ける匂い。
見た目にも瑞々しい野菜の数々。
ほのかに湯気を立てるコーヒー。
私は、いつも《ティリア》で朝食を摂る。
「おはよう、モーニングセット一つね」
「おはよう夕ちゃん。モーニングで良いんだね?」
「ええ」
短いやり取り。
ここの店主である斎藤老人とは、すでに顔見知りであった。
顔にかかった髪の毛を後ろに流し、欠伸をかみ殺す。
化粧が崩れないように、ハンカチで涙を押さえる。
さすがに私も年頃である。
両親が家を空けがちといえど、私事に時間を費やさない訳ではない。
いつもの席に座ろうと思い歩き出す。
「?」
いつもの席。窓際であるが小さなガーデンに面しており、眺めもさることながら
外を行き交う通行人に、じろじろと見られることも無い最高の席だ。
しかし今日は、そこに先客がいたようだ。
「おはよう、意外と朝は早いんだ」
据付の灰皿から上がる紫煙。
手持ち無沙汰に持った雑誌。
彼、向井雄二が座っていた。彼は私の顔を見るなり、露骨に嫌そうな顔をした。
私は彼の苦手とする人間だ。直接聞いた訳ではないが、直感的にそう感じ取れる。
「ああ」
彼は短く答えて、再び雑誌に目を落とした。
「相席しても良い?」私は性格が良いとは言えない。
他人の嫌がることは嫌いだけど、ちょっとからかう程度の事は好きだ。
「・・・どうぞ」
灰皿の半分ほどの長さになったタバコを消し、彼は私にそう言った。
その小さな心遣いが嬉しかった。
彼は食事をとったら、ここを去るつもりなのだろう。
でなければ私の相席を、許すはずがない。
彼は雑誌を読んでいる。表紙は覗えない。
「なに読んでるの?」
「・・・・・・」
彼は無言で表紙を私に見せる。
表紙には大きく、“Rock”と書かれ、上半身裸でギターを弾く外人が写っていた。
「意外だね。音楽、好きなんだ?」
わざと問い掛ける。
口数が少なくポーカーフェイス。いつもダルそうな眼。
彼は教室でも、あまり喋らない。
まるで喋れないかのように黙っている。
一見したら不良なのに、誰ともつるまない。馴れ合わない。
そのくせ、端々で気づかぬほどの気遣いをする。
そんな彼とコミュニケーションをとってみたい。
そう思ったのは、いつ頃からだろう。
「まあ、好き・・・だな」
「ジャンルでは何が好き?」
「・・・最近は昔のロックとかパンク」
「へー」
そして彼は雑誌に目を落とす。
彼にとって、私との会話は大した意味を持たないのだろう。
毎日毎日繰り返す日常のサイクル。その中で生じた小さなイレギュラー。
これくらいの意味合いしか持っていない会話も、私にとっては大切なひと時だ。
「お待たせしました」
斎藤老人が、銀色のトレイに二人分のモーニングをのせて、私達の方へ来た。
「・・・俺、モーニング頼んでないですよ」
「サービスですよ。お代は結構です」
斎藤老人が柔和な笑顔を浮かべて、彼と私の前にモーニングを置く。
狐色に焼かれたトースト。瑞々しい光沢を放つサラダ。トマトソースで煮込んだ豆。
そして香ばしい薫りのコーヒー。
ほぼ毎日、私は朝にこれを食べる。
コーヒーを一口すすり、パンを一口かじる。
彼は困惑した様子だったが斎藤老人の笑顔に負けて、おとなしくトーストをかじり始めた。
斎藤老人はカウンターへ行き、古びたレコードプレイヤーに針を落とした。
ルイ・アームストロング、What a wonderful world(この素晴らしき世界)。
ラジオから聞く、フィルターを通したような音。
私がこの店で聴いた曲で、一番好きな曲だった。
斎藤老人と私。そして彼しかいない店内に、優しくサッチモの低い歌声が響く。
彼がコーヒーをすすり、鞄の中に雑誌を突っ込む。
後ポケットから財布を取り出し、1000円札を取り出す。
無造作に机の上にそれを置き、立ち上がる。
律儀な人だな。そう思った。
カランカランと、ドアにつけられた土鈴が鳴る。
「又のお越しを」
半分開いたドアの向こうの人間に、斎藤老人が丁寧に頭を下げる。
一連の流れの中に、彼の丁寧さ。そして優しさが滲んでいた。
ドアを閉める時はゆっくりと。ドアの向こうでは軽く会釈。
服装と人相。それだけの事でしか彼を判断できない人間もいるのだろう。
私は、いつも勿体無いと思う。
先ほどのように彼は優しく丁寧で、そして優しい。
いつも無愛想で無表情。
私は一人、微笑んでいる。
コーヒーをすすり、無造作に置かれた千円札を手に取る。
「おじさん。彼から」
レジで自分の代金とは別に、千円札を置く。
「なかなかの好青年ですね。また来て下さいと、伝えてください」
斎藤老人が、にっこりと柔和な笑みを浮かべる。
「わかりました、伝えておきます」
私はそれに、微笑で返す。
今日は朝から、とてもいい事があった。
今日は良い日になるだろうな。
ドアを開けると土鈴がカランカランと鳴る。
私は今日も、学校へ向かう。


わけわかんねえ。
なんだって偶々入った店に、橘がいるんだよ。
俺はタバコを吸いながら、頭をバリバリと掻いた。
足元にはタバコの吸殻が7個転がっており、彼が苛ついている事を示している。
俺の苛ついている原因。それが橘夕だった。
彼女は俺が苦手とする人間だった。
見た目や性格ではない。
なんというか、苦手なのだ。
「〜〜〜っ。クソッ・・・」
タバコを地面に投げつける。
渇いた音と、ぶわっと上がる煙。
“ちっ・・・”と舌打ちをし、懐からセブンスターを取り出す。
一本咥え、火をつけようとライターを探す。
見つからない。ポケットの中を探すが、一向に見つからない。
「・・・・・・」
ふと視線をおとすと、そこに転がっているのは、無意味にデカいジッポ。
「・・・」
キンッ、ジカッ・・・。
ジッポを拾い上げ、タバコに火をつける。
「・・・ふー・・・」
学校、ダルいな。
帰るかな。帰ってもウザイか・・・。
居場所が無い。
そうなったは、いつの頃からだろうな。
ガキん時は、親父がいねえから虐められたな。
母親も今でこそアレだけど、昔は男遊びで家にいなかったしな。
今年も進級ギリギリかな。単位は足りてそーだし。
バイト何時からだ? めんどくせえ、サボるかな。
そういや昨日も行ってねえな。クビんなりたくねーな。
でも、めんどくせえ。

キーンコーンカーンコーン・・・。

ああ、あと一時間か。
直行でバイトだな。ああ、めんどくせえ。
「ぺっ」
唾を吐き、タバコを地面に落とす。
爪先で消火し、ポケットからガムを出す。
一枚取り出し包み紙を捨て、口の中に入れる。
くちゃくちゃと噛みながら、出口へと向かう。
屋上の出口は、ドアではなく梯子だ。
錆付いた鉄板をどけて、梯子を降りる。
この学校の屋上は、十年位前に閉鎖されている。
年に一回するかしないかで、屋上の掃除をする時にだけ開くのだが、
なぜか半年ほど前から開いている。
多分、誰かが忍び込んで、そのままになっているのだろう。
階段を下り、教室へと向かう。
―・・・・・・や・・・・・・れ・・・け・・・・・・
「ん?」
どこかで、誰かの声が聞こえた気がした。
気のせいかな、そう思い歩を進める。
「・・・いやっ・・・誰か・・・!!!」
はっきりと、聞こえた。
女の声だ。
それに混じって「黙れボケ!!」「騒ぐと殺すぞ!!」という、罵声が聞こえる。
「・・・ふざけんなよ、オイ・・・・・・」
なんで俺って、こんななんだ?
ああ、畜生。
どーでもいいや。はやく行ってやんねーとな。
俺は走り出していた。声のする方へ、声のする方へと。

つづく
2004/04/29(Thu)19:02:18 公開 / 蘇芳
■この作品の著作権は蘇芳さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
思ったよりも早く、くだりが思いつきました。汗
やっぱ12時間以上寝ると違いますね!!(?
とりあえず今欲しい物。
1・バイキルト
2・スクルト
3・パルプンテ

3はなんとなく。(爆)
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