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『ほわっとどぅーゆーせい?』 作者:メイルマン / 未分類 未分類
全角1333文字
容量2666 bytes
原稿用紙約3.55枚

 午後3時、彼の体が突然に、少しずつ溶け出したかと思うと、一瞬の逡巡のうちに彼は目に涙をため、どこかへ駆け出し、その足が止まることはなく、汗がぽたぽたと地面に跡をつけ、それと同時に彼は少しずつやせ細るのだったが、それに少しもかまう素振りを見せず、むしろ時間を惜しむかのように加速していき、疾風迅雷とはまさにこのことか、あらん限りの力で走り続けるうちに、汗は上着をびっしょりと濡らし、急激に彼の体はうすっぺらぁくなってゆくが、己の姿形にはすでに関心がなく、道行く人の恐怖の視線も何のその、ただただ目的地へと、目的地へと向かうのみと、必死の形相で道を往き、強烈な風がひとたび吹けば、彼の体から大量の汗が、風に流され飛んでいき、それによって出来あがった、骨が透けて見えそうな己の左腕の皮膚を見るに、悲しさと同時に沸きあがるのは笑いだろうか、死人よりひどい顔をさらして、公園の砂利道で前のめりになって転べば、全身からの汗は地面に染み込み、己の間抜けな姿が砂利にくっきりと、あははと笑った口の中の舌はすでに一本の糸、からからに乾いた口に固い歯の感触を確かめる間にも、汗は彼から異常に流れ出て、彼はなくなっていくのだった。
 あれは確かに3年前、謎の奇病にかかった彼が、医者に言われたあの言葉、嗚呼嗚呼何とむごいことか、余命はたったの2年であった、奇病特有の発作が起こると、体の細胞がそれぞれ分離を始め、滝のような汗が彼の体を抜け出でて、その汗に彼の体の細胞が乗っかるように、徐々に彼は溶けていくうえに、少しの風でも細胞達は、垢のように舞っていってしまうが、解決策は何一つなく、ひたすら薬を飲んで耐えるのみで、それも体に抗体ができてしまえば役には立たず、概算2年で彼の人生は終わる予定であったのだが、2年が過ぎて抗体ができ、次の発作が別れの時と思った時から、発作は全く起きず鳴りを潜め、これは天が与えた褒美かと、1日でも多くの時を生きようとしてきた彼なのだが、今日ついに、最後の発作が突然起こった次第。
 いつ自分が溶けきるかわからない、名状しがたい恐怖の中で、それでも彼は懸命に走るが、もう顔には生気があるはずもなく、四肢は骨に皮がぱらりとかぶさっている状態で、すでに筋肉も消えた体の、どこから走る力が沸くのだろうか、人にあらざるモノになっても、彼はひたすら走り続け、気付いてみればもうすぐ夕暮れ時で、この世の最後に夕焼けを、と思うがそんな時間はかけらもなく、せめて空でもと思い、ちらりと上を見上げると、灰色の雲の下を飛ぶ2羽の鳥に幾分満足し、己の死を間近に控えた時の世界は、こんなにも美しく見えるものかと、思った瞬間見えた生鮮果物屋の、中に急いで入ろうと、駆け込む2秒前に吹く突風で、彼の体からついに細胞が消え去って、もう皮すらも認められず、ただの骸骨となった彼に残された意識は、急速にしぼんでいったのだったが、最後の気力を見事振り絞り、悲鳴をあげる買い物客を無視して、彼の人を見つけ出すと、最後に一言ありがとう、と呟いて崩れ落ちる彼に近づく女性は、涙を流して泣き叫びつつ、遠く周りを囲む人々にもかまわずに、息子の骨をそれはそれはきつく、ぎゅうっと抱きしめたのだった。

 完
2004/04/19(Mon)23:58:41 公開 / メイルマン
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■作者からのメッセージ
色々と試行錯誤しましたが、これで一応の完成としたいと思います。
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