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『月護物語〜混沌からの脱出〜』 作者:姫神 神奈 / 未分類 未分類
全角9098文字
容量18196 bytes
原稿用紙約29.55枚
この作品はフィクションです。
人物・宗教・団体名・場所は一切関係ありません。
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7月9日(月)

そこは・・・・にぎやかな街通り・・・
俺は、親戚の上村 美幸さんに呼び出されて、東京から月護町の駅までやってきた。

ジージジジジジー

セミがやけにうるさい。まぁ、仕方ないか・・・夏だからな・・・
俺の名前は上村 護。そこ辺りにいる、ただの高校3年生の18歳だ。

こんな日光が肌を突き刺すような暑さなのに、眠りについてしまった俺は、クーラーを付け忘れてしまった。最悪だ・・・
それにしても、暑い・・・俺は、アイスクリームのように溶けかかっていた。

「美幸さん・・・まだかな・・・」

俺は、途方にくれていた・・・本当に美幸さんはここに来るのか?そんな疑惑という心の闇を作り始めていた。

と、その時、遠くから透き通った綺麗な声が聞こえてきた。
間違いない!これは美幸さんの声だ!
俺は、待ちに待った、美幸さんの声がする方を見た。美幸さんは手を振ってこっちに向かってくる。

「護さん・・・ごめんね・・・待たせちゃった?」

背はあまり高い方ではないが、肌が白く、細縁の眼鏡をかけており、ストレートパーマを掛けた長髪の女性だ。殆どの男性が見ると、『綺麗だ』というに違いない。

「いいよ。結構待ったけど・・・・でも、俺こういうの慣れてるから」

俺は、美幸さんをかばうような言い方をしたつもりだったが、第3者から見ると厳しい言い方かなと思っていた。

「どれくらい待ったの?」
「えーっと・・・1時間位かな?」
「えーーーっ!!そんなに待ったの!?ごめんね・・・・」

美幸さんは驚愕の表情を隠しきれないでいた。
無理もない、なんせ、車の中にいる俺は熱射病になっていないことが不思議だった。車の中は外の気温よりも数倍高い。そこについて、美幸さんは驚いたのだろう。

「美幸さん・・・質問良いですか?」
「えっ?あっ、はい。いいですよ」
「あの、どうして、俺を月護まで呼んだんです?」
「それは・・・・」

そこで美幸さんの言動がとまった。俺なんか悪いことでも言ったかな?

「あの・・・美幸さん?嫌だったら言わなくてもいいんですが・・・」
「あっ、いいえ・・・大丈夫です・・・」
「そう・・ですか・・・」
「実はですね、護さんにはやって欲しいことがあるんです」
「なんですか??」
「ここの月護に代々伝わる、月護姫伝説という伝説の中に登場する魔物を倒して欲しいのです」

俺は、美幸さんの言うことが理解できなかった。いや、理解できるわけがない。
伝説の中に出てくる魔物を倒す?そんな、馬鹿げた話があるか?
伝説の魔物なんて、元々現代にはナンセンスな生き物だ。
仮に、存在するとしても、どこにいるんだ?それに、武器なんて持ってないし・・・そこ辺りにある包丁で対抗しろと?もしそうなら、ただの足掻きにしかならない・・・・美幸さんは一体何を考えてるんだ?

「あの・・・つまり、どういうことでしょう?」
「護さんには、その魔物を倒して欲しいのです・・・云々、ここの月護町には毎年打ち払い祭りが行われているんです。その魔物の飢えを鎮める為の・・・」
「へぇ〜・・・でも、それで治まるのなら、その魔物を倒す必要なんかないんじゃないですか?」
「いいえ・・・毎年、その魔物は力を上げています・・・永遠の螺旋階段を上るように毎年強くなっていってるんです・・・だから、打ち払い祭りでも鎮める事は困難になってきたということなんですよ・・・」
「そうなんですか・・・でも、武器もないし、どこに居るかも分からないのに、倒すんですか?実際、存在するか分からないのに・・・」
「魔物は存在はします。それに、居場所も分かっています。ただ・・・武器の居場所が分からないんです。どこにあるのか・・・それと、現に、その魔物のせいで、何人かが死んでるんです・・・」
「!! えっ!?死人が出てるんですか!?」
「はい・・・」

信じられない・・・ナンセンスな生き物が人を殺す?どうして・・・鎮魂祭で鎮めるのじゃないのかよ・・・どうして??それに、死人が出てるって事は、本当に実在するのか・・・・?

「じゃ、何で鎮魂祭を行うのに出てくるんですか?」
「毎年力を上げているとはさっき言いましたよね・・・その、鎮魂でも、制御が出来なくなってるんです。つまり、災害などが、その魔物によって引き起こされる・・・だから、護さんを呼んだんです」
「・・・・つまり、俺が、その魔物を倒せば良いって言う事だな?」
「はい、そういうことですね」

俺の思考回路はショート寸前だった。どうすればいいか分からない・・・
俺は、腕を組んだ。その時、右手に何か冷たい金属物のようなものが触れた。
俺の首には、ネックレスが掛かっていた。

「(あれ?俺、どこでこんなものを・・・)」

俺にはそのネックレスは買った覚えがない。俺は、さらに考え込んだ・・・
頭が痛い・・・やはり、熱にやられたか・・・

「あっ、言い忘れてたけど・・・その、ネックレスが、魔物を倒すための武器です。危険になったら、生きるという気持ちを強く念じてください。そうすれば、それが、強い味方になるでしょう」
「?? えっ、まぁ・・・わかりました」
「それに、武器はもう3つ町のどこかにあります。それがないと、魔物には勝てません・・・」
「そ、そうなんですか・・・」

俺は、不信ながらそう応答した。しかも、これが武器だなんて・・・・信じられない・・・どこにでも売ってあるただのネックレスのようにしか見えないが、どこかに何かの力などが働いているのか?まぁ、難しく考えても無駄か・・・俺は思考を停止させた。

「美幸さん、これからどこに行くんです?」
「えーっと・・・月護旅館に行きましょう。そこに、護さんは泊まってください」
「へ?ってことは、宿泊代は・・・?」
「当然、必要ありませんよ。あそこの女将とは、親戚みたいなものなので、料金はタダにしてもらうことにしたんですよ」
「そうなんですか!なんか、得した気分・・・」

俺は、そんな気分に乗っていた。

「それじゃ、行きましょうか」
「はい!」

俺が乗っていた車から降り、美幸さんと一緒に月護町を散歩した。

・・・・・・。
・・・・。
・・。

俺たちは、旅館に向かって歩いていた。それにしても、歩きはつらい・・・かといって、さっきの車に乗っていくのは暑すぎてダメだ・・・
俺は、次第に眩暈を覚えてくるようになった。やばい!完璧に熱中病の症状じゃないか!うわ・・段々、意識が・・・なんて言っている暇なんてない!早く、着いてくれ・・・

「大丈夫ですか?護さん・・・?」
「え?あっ、はい・・・多分、大丈夫かと・・・」

全然大丈夫じゃなかった・・・この暑さは異常だぜ・・・全く・・・

「あっ、旅館見えてきたよ」
「あっ、あれか・・・やっと着いた・・」

俺は、旅館が天国のようにも見えた。その旅館の前にある海が三途の川で・・・って俺何考えてるんだ・・・
そこは、周りが海で、海の陸と陸の上には大橋が掛かってる。
海塩の香りが本当に良い刺激を持つ匂いになって俺の鼻腔まで達する。
そうこうしているうちに旅館に着いてしまった。

「こんばんは〜。女将さん居ますか〜?」

美幸さんは叫んだ。と突如ドドドドッ!っという効果音とともに女将さんが現れた。俺は、一瞬何かがぶつかったのではないか?と思ったくらいの大きい音だった。失礼な発言だが・・・・

「こ、こんにちは。僕、上村 護といいます。よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします。お待ちしてたのですよ。さぁ、上がってください」
「はい」

俺は女将さんから促されて奥に進んだ。

「やっぱり、美幸さんの頼みは断りきれないですよ」
「あはは・・無理言ってすみませんでした」
「いえいえ。良いんですよ〜。私も、男の子の子供が増えたみたいですし・・・」

こんな会話が続いた。う〜ん・・・親戚同士はいいもんだ、とこの時改めて実感した。

「それでは、そろそろ私は・・・護さん、私はそろそろ帰るからね」
「あぁ、またね」
「もう帰っちゃうのですか・・・それじゃ、また来て下さいね」

俺は、美幸さんと挨拶を交わして、美幸さんは旅館から出て行った。
出て行った瞬間、奥の方から何かがくる音が聞こえた。

「ん?」

そこには、長髪で、前髪を切り揃えた女の子が立っていた。
その子の名前は、上月 凛。とてもかわいらしい女の子だ。

「こんばんは・・・・」
「あっ、こんばんは」

その女の子は何処となく暗い感じだった。

「(こんなに暗い子なのか??何かあったのかな?)」

俺は、いろんな事を思考した。しかし、思い浮かんでくるのは、殆どがワンパターン。段々、考えるのがだるくなってきた。

「・・・・・・」
「・・・・・・」

二人の間に気まずい沈黙が続いた。やばい・・・何か話さないと・・・
沈黙を破ったのは、第3者の女将さんだった。

「家の凛にはそっとしておいてください」
「どうしてですか?」
「ちょっと、10日前に事件があってね・・・・」
「事件?」
「はい・・・凛の友達が殺されたんです・・・」
「!!?」

それは、あまりにも突飛だった・・・俺は、結構呆然としてただろう・・・

「誰に殺されたのです?」
「それは、わからないんですよ・・・警察も動かないですし・・・」

警察が動かない!?人が殺されたのに、警察が動かないのか??そんな、無責任且つ非現実的な話があるのか?

「だから、今はそっとしておいてください」
「わ、わかりました・・・」

俺は、腹の底から何かが出てくる感じがした。何にも関係がない俺なのに、苛立ちという暗黒で包まれた感情が芽生え始めていた。人が殺されたのに、警察が動かない・・・つまり、犯人も捕まらない・・・それなのに、この凛ちゃんは・・・。
クソっ!冗談じゃない!凛ちゃんの笑顔を奪った奴を捕まえたい・・・。
今日会ったばっかりなのに、こんな感情を持つのは当たり前なのか・・・いや、俺の性格が体の思考を変えたのだろう・・・絶対に捕まえてやる・・・

と考えているうちに、女将さんが不思議なことを言い出した。

「凛はねぇ・・・犯人が魔物だと思ってるんですよ・・・」
「えっ??」
「だから、その魔物を捕まえるために、いつも暗くなると家から飛び出して、探しに行くんです・・・」
「そうなんですか・・・」

魔物。それは、聞き覚えのある、危険な存在。そう、美幸さんが言っていた、この町に代々伝わる伝説に存在する生き物だ。俺は、何を思いつめたか、女将さんに一礼して、凛ちゃんの部屋に向かった。

トントン。

単調なリズムが広い廊下を響かせた。
部屋の中から、「は〜い・・・」という暗い声が聞こえてきた。
きっと凛ちゃんの声だろう。

「あ、あの〜・・・凛ちゃん、居ますか??」

俺は、不慣れな言葉をかけた。
こんな感情を持ったのは生涯の内に何回あることだろう・・・きっと多くも少なくもないと思う。

その時・・・

ガチャ。

扉の開閉音。先ほどのノック音よりも良く響いた。
目の前には瞳が潤んだ凛ちゃんが立っていた。

「・・・・・何か用ですか?」
「いや、これといった用はないんだけど・・・」
「じゃ、帰ってください・・・・」

突飛な冷たい表現。俺にはその言葉が心に鋭利な傷をつけた。
勝手な妄想だが、昔はこんな風な子じゃなかったと思う・・・。
俺は、両手を血の滲むくらい握り締め、手の痙攣の如く、フルフルと震えていた。

「・・・・凛ちゃん・・・」
「まだ何かあるのですか・・・?」
「凛ちゃんの友達・・・殺されたんだってね・・・」
「・・・・・」

沈黙。そう、悲しげな沈黙の世界・・・。先手を切ったのは俺の方だった。

「女将さんから聞いたよ・・・・凛ちゃんの友達が10日前に殺されたって・・・。犯人はまだ捕まってないんだよね・・・」
「・・・・・」

凛ちゃんは沈黙を守ったまま。一向に口を開こうとしない。俺は、良かれと思った行動が逆に落ち込ませちゃったかと悔やむ気持ちもあった。
と、その時、怒涛の罵声が飛んだ。

「何が言いたいんですか・・・・」
「俺は、凛ちゃんを・・・」
「貴方に何が分かると言うのですか!!ほっといてください!!私の前で・・・その話はしないでください・・・」

凛ちゃんは瞼に透明の雫が溜まっていた。

「俺は、冷やかしに来たんじゃない・・・それに、最後まで話をさせろ・・・」

俺は、冷たく言い放った。凛ちゃんだけがこんなに悲しんでいるのではない。

「凛ちゃん・・・自分が悲劇のヒロインだとでも思ってるのか・・・?」
「・・・・」
「ふざけんじゃねーぞ・・・確かに、凛ちゃんも悲しいかもしれない。だけど、凛ちゃんだけ、悲しんでいるわけじゃないだろ?話は女将さんから詳しく聞いた。犯人は魔物だと思ってるんだろ?それに、毎日この時間帯になると家を飛び出して、魔物を探しに行ってる・・・そうなんだろ?」
「・・・・はい・・・。でも、信じてもらえないですよね・・・・魔物なんて・・・」

凛ちゃんの穏やかな口調。俺はここに来てから初めて聞いた。何か知らないけど、ここの旅館は初めてじゃない気がする・・・。

「・・・・俺は信じるよ・・・その魔物・・・。」
「えっ・・?」
「よく考えてみろ・・・警察が動かない、捜索や事件について何も調べない。どう考えてもおかしいんだよ・・・だから、もし人間の手でやられたのなら、調べを進めるはずなんだ・・・でも、調べを進めない。つまり、非現実的生物なんじゃないかな〜なんて、女将さんの話を聞いててそう思ったんだよ」

突飛良しな嘘。明らかに嘘だといっているような言葉・・・・俺は、ここに魔物を倒すために美幸さんから呼ばれた。俺は心の奥で凛ちゃんの友達を殺した犯人は魔物だと確信したことは確かだ。しかし、警察が動かないからって、魔物だとは限らない・・・・なのに、あんな言葉を発してしまった。俺は、しまった!と心の中で言っていた。

「上村さんは私の言うことを信じてくれるのですか・・・?」
「あぁ、当たり前だよ。こんな優しい顔をしている人が、嘘をつくはずがないしな」
「私、こんなこと言われたの初めてですっ!」

凛ちゃんは笑顔を見せた。そう、とっても可愛い笑顔を・・・この笑顔を魔物は一瞬にして奪った。嬉しい気持ちを苛立ちの気持ちが混ざり合って、とても複雑な気持ちになった。

「それに、一緒にその魔物探し、手伝うよ。凛ちゃん一人じゃ危ないから」
「えっ?いいんですか??」
「あぁ、当たり前だよ」
「あっ、ありがとうございますっ!!本当に約束してくださいねっ!」
「あぁ、わかったよ。それに、上村さんって言うのはちょっと堅苦しいから・・・名前で呼んでもいいよ」
「あっ、はい!護さん!」

俺は、一瞬頬が紅潮した。な、何考えてるんだ・・・俺・・・俺はただ凛ちゃんを助けようと思っていただけだ・・・何、赤くなってるんだ・・・

「どうしたの?護さん」
「あっ・・な、なんでないよ」

俺は慌てた。こんなことがバレたら恥ずかしい。でも、俺は嬉しかった。凛ちゃんの本当の姿が見れて・・・俺はただ嬉しい気持ちで一杯だった。

「本当になんでもないのぉ〜?」
「そ、そうだよ・・!」
「なんか、怪しい〜」

凛ちゃんは微笑んでいた。俺は、その笑顔を見るだけで幸せだった。さっきまでのあの堅苦しい表情は何処に行ったのか?と思うくらい表情が変わったからだ。

「だから、なんでもないよ・・・」
「そうなの?何か怪しいけど・・・まぁ、いいよ。それで・・・今日は魔物を探しに行くの?」
「う〜ん・・・今日は止めようよ。夕飯も出来ていることだし・・・明日からにしようよ」
「うん、分かった!」
「よし!良い子だ!」

俺は、その長い髪に手を掛けナデナデと凛ちゃんを撫でた。

「護さ〜ん、凛、夕食の準備が出来ましたよ」

女将さんがわざわざ部屋まで来てくれてそう告げた。

「あっ、はい。直ぐ行きますので!なぁ、凛ちゃん?」
「はい!護さんっ!」

凛ちゃんは満面の笑みを浮かべた。こんな生活、毎日続いて欲しい。いつか、凛ちゃんも魔物に・・・いやいや!そんな縁起でもない事考えたくない!俺が凛ちゃんを守る!俺は心の奥底でそう誓った。

「あら、凛元気でたのね」
「うんっ!護さんが励ましてくれたよぅ〜」
「そうなんですか?護さん?」

疑問の笑み。女将さんは嬉しそうに俺の方を見てそう言った。

「いえいえ、俺はただ凛ちゃんに元気を出してもらいたくて、やっただけであって・・・」

俺は謙虚にそういった。これが俺の絶対的に変えることが出来ない本能なのだろう。

「それでは、下で待っていますね」

女将さんはそう言って、1階へ向かった。俺たちはそれの後を継ぐようについて行った。
食卓には魚づくしの料理がびっしり。殆どが高級な食材だった。ここの父親は漁師らしい。だから、こんな料理がつくれるのだろうな〜など感心に浸っていた。

「初めまして、上村 護と言います。長い時間お世話になると思いますがよろしくお願いします」

俺は、凛ちゃんの父親に向かって一礼し、挨拶をした。これが、世間的一般マナーなのだろう。

「自己紹介も終わったことですし・・・さぁ、食べてください」
「あっ、はい!いただきま〜す」

俺は電光石火の如く、その料理にむしゃぶりついた。
案の定、凛ちゃんはポッカリ口を開けて、俺の方を見つめてる。
女将さんや凛ちゃんの父親は俺の方を見て、クスクスと微笑していた。

「あ・・・」

俺は、一気に頬を紅潮させた。恥ずかしい。見知らずのところに来て、いきなりこれはないだろう、と食べてからそう思っていた。

「あっ、気になさらずにどんどん食べてください」
「えっ、でも・・・・皆さんが食べる分、無くなっちゃいますよ・・・」
「大丈夫です。それに、元気がある食事は見ていて食欲が増しますからね」

女将さんは優しく微笑み、俺にそう言った。俺も、こんな家庭的な生活をしてみたい。俺も昔はやっていたと思うが、記憶に全く無い。でも、今は今のことを考えないと、と俺は自分に言い聞かせ、そのまま食を進めていった。

俺はガツガツと放り込むようにご飯と食べた。胃袋の中は宇宙の如くいつになっても食べるのを止めない。すごい食欲だな、と我乍ら感心に浸っていた。

「ごちそうさま〜」

俺は、ついに食すのを止めた。そろそろ限界だ・・・昔から腹八分目と言うけど、今の俺は、腹十二分目まできてると思う・・・無性に気持ちが悪い・・・;;
そうこうしているうちに、凛ちゃんも食べ終わったようだ。俺は、凛ちゃんと一緒に二階の俺の部屋に行った。

「ぐはぁ〜・・気持ち悪いぞ〜・・これ・・」
「食べすぎだよぅ〜♪護さんっ」
「だって、美味しかったから・・・」
「欲張りはダメっ♪」
「あぅ・・痛いところ付かれた・・・」

俺たちは優々な時間を過ごしていた。いつまでもこんな日が続いてくれればいい。
でも、俺は魔物と戦わなければならない・・・この町のために、それに、美幸さんのために・・・それに、凛ちゃんやその家族のために・・・俺は戦わなければならない・・・俺は美幸さんを回想していた。


『護さんには、魔物を倒してもらいます』


俺に出来るのか・・・?そんな、重要な仕事を俺が出来るのか?魔物との戦いで、俺は死んじゃうかもしれない・・・そうなると、凛ちゃんや美幸さんとも会えない・・・ならば、一層のこと、この仕事を降りよう・・・。って、ダメだ!
俺が倒さないと、誰が倒す?武器が無い市民に何が出来る?魔物は市民を狙ってる。対抗した市民はただ死に行くようなものだ・・・でも、凛ちゃんや美幸さんに会えなくなるのは嫌だ・・・

俺は、途方にくれていた。なぜなら、武器がネックレスしかない。これでどうしろと?俺はそう思っていた。これで、魔物を倒せるのなら、苦労はしないだろう。
俺は、美幸さんの言っていた事を思い出した。


『それに、武器はもう3つ町のどこかにあります。それがないと、魔物には勝てません・・・』


もう3つの武器?何だろう・・到底予想もつかない・・・深く考えてもしょうがないか・・・明日、美幸さんに訊いてみよっと・・・

「護さん?ボーっとしてたけど、どうしたの?」
「ん?あっ、なんでもないよ、ただ考え込んでいただけだから」

やばい・・・。どのくらい黙ってたんだろう・・・まっ、いいか・・・深く考えてもしょうがない。明日、美幸さんに訊き忘れないようにしよう・・・

「凛ちゃん?もう、遅いから、俺寝るよ・・・」
「うん。分かったよぅ〜おやすみね、護さんっ」

俺たちはおやすみの挨拶を交わし、俺は床についた・・・


7月10日(火)


・・・・・・。
・・・・。
・・。


「・・・・るさん!起きてくださいよぅ〜!」
「うぅ゛・・・」
「う〜・・・もぅ!護さんってば!起きてくださいよぅ〜!」
「・・・あっ、おはよ〜・・・」
「おはよ〜じゃないよぅ〜!いくら呼んでも起きてくれないんだもん!」
「ごめんごめん・・・ちょっと、眠くて・・・ふぁぁ・・」

一般的な朝。そう、何も無い平凡な朝。俺はこんな平和な朝を願っていた。
でも、小さい頃の記憶が飛んでる。自分の脳の後頭部付近の海馬に記憶されているはずの記憶が無い。そう、常識的に考えて有り得ない。

俺も、こんな平和な生活をしていたのだろうか・・・俺は、何者なのか・・・・?
それとも、熱中症の後遺症で記憶障害になってしまったか?
まぁ、どうでもいいか・・・

「あっ、言い忘れていたけど、今日から学校だって。今、美幸さんから電話がきたよ」
「へ!?それ、マジっすか!?」
「うんっ!マジ!」
「やばい・・・準備もしてないし・・・」
「それなら、大丈夫だよ。美幸さんが宅急便で月護高校の制服と学校指定鞄を送ってもらったから」
「でも、教科書は?」
「今日はテスト返却日だから、授業は無いよ。ただ、定期考査の結果を渡されるだけ」
「じゃ、俺は黙ってるだけか・・」
「そういうことだねっ」

だるい・・・学校に何もやりに行かないなんて・・・意味無いじゃないか・・・まぁ、勉強がない分だけ良しとするか・・


                                続く・・・
2004/04/15(Thu)19:55:35 公開 / 姫神 神奈
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■作者からのメッセージ
こんにちは、姫神 神奈ですw
利用規約を読んで少し変更いたしましたw
いや〜、ちょいと、違反を犯していたようです^^;すみませんでした;;
それでは、ゆっくりと続編をお楽しみくださいw
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