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『向日葵』 作者:よもぎ / 未分類 未分類
全角2254文字
容量4508 bytes
原稿用紙約8.1枚


 だいじょうぶ 君ならきっと 乗り越えていける


 
 まぶしい太陽が真上に来る時間
 背後に聞こえるのは 不規則な風鈴の音と子供たちの声
 夏休みに入ったから遊びに来たのかな 遠い街からこの村へ
 独り暮らしのおばあちゃんは喜んでるね
 その証拠に いつもあんなに無愛想なあの人が はにかみながら笑っているよ 
 まるで少女に戻ったみたい きっと照れているんだね
 少し前におじいちゃんを亡くしてから ずっと独りぼっちだったもんね
 「おばあちゃん」て呼ぶ子供たちの声は あなたを癒す最高の薬だよ
 他人の言葉や干渉よりも 長い時間よりも ずっとずっと効く薬だよ 
 人間は時が経てば傷は癒えるって言うけれど ボクらは知っている
 どんなに時間が経っても その人が自分で立ち直らなければ 何も変わらないってこと
 あなたもたぶんわかってる もう二度とおじいちゃんには会えないってこと
 でも その事実を受け入れられるほど あなたは強くなかったんだよね
 おじいちゃんもそれを十分に知っていた だから ボクらを託したんだよ
 「自分がいなくなったら お前たちがアイツを励ましてやってくれ」
 おじいちゃんは毎日そう言ってた だからボクたちの責任は重大なんだ
 古いタンスの奥で ボクらはずっとその時を待っていた
 

  あのおばあちゃん ボクらを大切にしてくれるかな
  
  強い風が吹いたときはどうしよう 倒れちゃわないかな
 
  毎日水をくれるかな

  雨の日は傘を差してくれるかな

  時々でいいから 声をかけてくれるかな

  笑ってくれるかな


 黒いお布団に包まれて眠っていたボクたちを 早く起こしてほしかった
 でもあなたは中々出してくれなくて ちょっと焦ったんだよ
 おじいちゃんがいなくなった寒い季節から 暖かい季節に変わっていって
 ボクらの仲間も少しずつ目覚めてくる
 早く出して 早く出して 早くボクらを起こして
 あなたは何度もボクらを手に取るんだけど もうちょっとのところでくじけてしまうんだ
 このままじゃ ボクら一生ここから出られないんじゃないかな
 ずっと暗い殻の中で おじいちゃんみたいに消えてしまうのかな
 そんなことを考え始めていた その時――――――――………


 「出ておいで」


 おばあちゃん やっと起こしてくれた
 そしてボクらはおばあちゃんの手の上に乗せられて 綺麗なお庭に連れて行かれた
 その時ボクらは はじめて「外」を見た
 ああ なんて素晴らしいのだろう こんなに綺麗な世界に ボクらは生まれたんだ
 おばあちゃんは優しく微笑むと ボクらを土のお布団で包んだ
 土の中にはミミズさんやアリさんがいて とても仲良くしてくれた
 そしてボクらはおばあちゃんがくれるお水を飲んで ぐんぐん大きくなった
 しばらくして土の中からひょっこり頭を出すと おばあちゃんは「久しぶり」と言って撫でてくれた
 それからも暖かい太陽の光を体中にあびて ボクらの背はどんどん伸びていった
 太くて固い足を見せると おばあちゃんは喜んでくれた
 時々横に倒れそうになると 細い棒を巻きつけて支えにしてくれた
 一度だけタイフウに襲われたけど そんな時もおばあちゃんはボクらを守ってくれた
 青くて大きなビニールシートをかぶせてくれて おかげでボクらは倒れずにすんだ
 それからは良い天気の日が続いて ボクらは順調に成長していった


 そして7月……

 ボクらは黄色い大きな花を咲かせた
 色の濃い影を後ろに作りながら まぶしい太陽だけを見つめている
 おばあちゃんはポロポロ涙を流した
 おじいちゃんが残してくれたボクたちを育ててよかったって
 こんなに綺麗な花を見せてくれるボクたちを育ててよかったって
 嬉しかったなぁ みんなでおばあちゃんに微笑みかけたよ
 「育ててくれてありがとう」って伝えたくて みんなであなたに微笑みかけたよ
 それからおばあちゃんも 少しずつみんなと話すようになっていって
 近所の人たちとも時々お茶するようになって みんな「変わったねぇ」って驚いてた
 でもそれは違うよ おばあちゃんは変わったワケじゃない
 戻ったんだよ 元の明るいおばあちゃんに 今 戻ったんだよ
 おじいちゃんが自分をどんなに大切にしてくれていたか それに気づいたんだよ
 ボクらと同じくらいまぶしい笑顔が見える よかったね ほんとうによかったね
 

 ミンミンゼミの声と混じって聞こえる 笑い声
 その笑い声に混じって聞こえる 風鈴の音
 ボクらもそっと耳を傾ける
 来年の今頃には ボクらの子供もこの音を聞いているだろう
 おばあちゃんの優しさに包まれながら 少し大きくなった子供たちを見つめるのだろう
 ボクらの命はおばあちゃんよりも儚く 短い
 ボクたちは自分たちに定められた運命をよくわかっている だからこそ種を残すんだ
 その種はけしてボクら自身じゃない 
 同じ命は二度と生まれないから
 ボクらの子供たちを どうか可愛がってあげてください おばあちゃん
 今ボクらが立っているこの場所で この子たちにも花を咲かせてあげてください
 おばあちゃんの小さな背中が ゆっくりと揺れて
 優しい顔がこっちを向く
 

 「だいじょうぶだよ」


 

 

 まぶしい太陽が真上に来る時間
 ボクらは大きな花を咲かせる
 
 だいじょうぶ 君ならきっと 乗り越えていける

 その言葉を 伝えるために
 あなたに勇気を 与えるために…




 
 
2004/04/08(Thu)23:51:39 公開 / よもぎ
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■作者からのメッセージ
植物が主人公の話なんてはじめて書きました(^^;)
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