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『死顔』 作者:名も無き詩人 / 未分類 未分類
全角2539.5文字
容量5079 bytes
原稿用紙約8.5枚
【1】

人は一生のうちにどれくらいの死顔を見るのだろうか?

人は死ぬ時一体どんな顔をするのだろうか?

あなたは考えたことはないだろうか?



僕の祖母が亡くなった。それは唐突な事だった。電話のベルと共にそのことが知らされた。

僕にとって叔母は優しい人だったことを覚えている。良く僕の頭をあやしてくれたことがあった。
その手はとても優しく、温かかった。僕が覚えているのはそれぐらいだ。

そして、両親に連れられて叔母のうちへと向かった。
叔母の家は古くさい感じの家で、一昔前の様な家だった。

でも、僕に取ってはこの家はとてもワクワクするような家だったんだ。
まるで、お化け屋敷か何かのような気配があって子どもである僕の心を魅了した。
だから、僕はこの家に来るといつもワクワクする。

けれども、今日の僕にはこの家が妙に淋しい場所に見えた。
玄関に入ると奥の叔母達の寝室に連れて行かれた。

その部屋に入ると親の顔が歪んでいるように見えた。いや、本当に歪んでいるのだ。
その時の僕はただ呆然としているだけだった。

小さな部屋の中央にフトンがしかれており、中央には顔に布をかけられた叔母が横たわっていた。
叔父がその布を取るとそこに叔母の顔があった。叔母の顔はしわくちゃで瞼をしっかりと閉じている。
安らかな眠りについているような顔だ。

ただ、僕にはその顔に違和感を感じた。それが一体どこなのかその時の僕には理解できなかっただろう。

その後、父と母は叔父達と話し始める。何ともしんみりとした食事の後、僕は一人寝かされた。
僕は天井を見つめ続けて考え続けた。叔母の顔が浮かんできた。
しかし、あの顔は僕が知っている叔母のどの顔とも似つかない。

いや、あれは叔母の顔では無いのかも知れない。
人は死ぬと同時にその時の顔を残す。

けれども、その時の顔は一生で最後の顔であり、この世の名残ともいう存在なのかも知れない。
いや、人はやはり何かを残して死んでいく。人の死とはそう言うものだと思った。
死とは不思議なものだ。僕はその時朧気にそう感じた。

次の朝、僕はもう一度叔母の死顔を見た。その顔は何故か嬉しそうだった。


【2】

あれはいつの事だっただろうか?たぶん、私が小学校の高学年になる頃だったと思う。
友人の父親が病気で亡くなったと聞かされた。

私は母に連れられて友人の家に向かった。友人の家は白と黒の垂れ幕で覆われて、鼻にはお寺の様な臭いがした。
母は黒い服に包まれていた。周りの大人達も皆黒い服を着ている。私は不安になりながらも母に連れられて奥へと進んだ。

家に入ると大きな部屋へと連れてこられた。目の前には亡くなった人の白黒写真が飾られていた。
その写真の男は穏やかそうな笑みを浮かべている。そして、写真の目の前には大きな木の棺が置かれていた。
棺には小さな窓があり、たぶんあそこから亡くなった人の顔が拝めるんだろう。

けれども、私はそれを覗こうとは思わなかった。

一つはやはり死んだ人を見るのは幼い私に取ってはとても恐ろしい事に思えたこと。

もう一つは私は過去に人の死顔を見ていることだ。
一つの死を体験しているから人の死に敏感になっているのかも知れない。

私は母が人と話している間、他の友だちを捜すことにした。
私以外にもお通夜に来ている友だちがいた。

そこでこんな話しをしたことを覚えている。お父さんを亡くしたゆうくんをどうやったら慰められるか。
そして、自分たちはゆうくんに何が出来るかを幼いながらに考えたと思う。

子どもに出来ることはたかが知れていると思う。
でも、周りが支えてやらないとその子はきっと一人ぼっちになってしまう。
そんな、正義感が私たちにはあった。

今思えば、たぶんお節介というヤツだろう。その後、彼はどうしているだろうか。
私は時々そんなことを考えるが、今にして思えば結局彼には何もしてやれなかったと思う。
ただ、彼が今でも元気でやっていることを願う。


【3】

時々ふと思い出すことがある顔がある。その顔はどこか朧気で鮮明ではなく、まるで曇ったガラスの中の顔に見える。
私には昔仲の良い友だちがいた。あのころの自分はその友だちと良く遊んでいたと思う。

その友だちがある日を境に突然いなくなった。幼い私にはそのことの意味が分からなかった。
いや、もしかしたら、薄々は感じ取っていたのだと思う。

あの子にもう会えないと言う意味をどこか遠いところへ行ったという。
大人の悪意の無い嘘を信じていたのかも知れない。

大きくなるに連れて彼がどうなったのかを鮮明に思い出してきた。
確か、あの時は私の楽しみにしているアニメを見ていた頃だろう。
アニメの途中で番組が変わり、背広を着た男が真っ赤な顔で懸命に何かを伝える。

画面は切り替わり、飛行機がぐちゃぐちゃになって燃えている画像が流れた。
そして、その画像も終わり漢字で書かれた何人もの人の名前が、画面いっぱいに表示される。

私はそれをじっと見ていた。そして、私と同じようにテレビを見ていた母の手から皿が落ちる。
大きな音が部屋に響き、母は乾いた笑みを浮かべるがその顔には明らかに何かに動揺していた。

母は割れた皿を片付けすぐに元の顔に戻った。そして、数日後母に連れられて友だちの家へと連れて行かれた。

私は久々に彼と遊べる思いでワクワクしていたが、目の前にあったのは三つの棺桶と三つの写真だった。
その写真の一枚が彼の顔で、写真の彼は満面の笑みを浮かべていた。

三つの棺桶の窓は開いており、その中はうっすらと陰っていたが中は空っぽだった。
何故中身が殻なのかは私には分からなかった。今思えば、遺体は原型をとどめてはおらず灰になってしまったのだろう。
そう思ったのはずいぶんと時間が経った後だった。

私が彼を最後に見たのが遊んだ後のバイバイというさよならの言葉だけだった。
彼の顔はまた遊ぼうという思いでいっぱいで大きく手を振っていたのだろう。
たぶん、あれが彼の最後の顔だったのだろう。

だから、私は彼の死顔は見ていない。いや、正確には見られなかったと言うべきか。
だけども、私は彼の最後の顔を覚えている。朧気だけども彼の最後の顔は笑っていたと私は思う。



2004/04/10(Sat)22:41:25 公開 / 名も無き詩人
■この作品の著作権は名も無き詩人さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
人の死とは何かを題材にした小説は何度か書いているが、何度書いても私の心に何かを残してくれる。それはたぶん、私が死というものに深い関心があるからだろう。突然自分の周りの人が死んだ。そして、その顔が人に何かを残す。人とは死んでもなを人の心に残ろうとする。人とは不思議なものだとつくづく感じる。さてと、長々と書きましたがこの物語はまだまだ続きます。いくつかの小説を掛け持ちしているので不定期的に書きますが、全ての話しは一話完結なのでどこから読んでも構いませんのでどうぞこれからも読んでやって下さい。それでは、今日はこの辺で。
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