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『「俺に一週間近づかないでくれ」』 作者:藍 / 未分類 未分類
全角1874文字
容量3748 bytes
原稿用紙約6.15枚
「俺に一週間近づかないでくれ。」

彼の言葉に私は耳を疑った。 そりゃぁ、彼が麻薬密売人の極秘捜査官で。捜査が架橋に入るため、彼女の私に被害が及ぶことを危惧してそんな台詞を吐いたならさぞかしカッコいいだろう。
しかし残念ながら彼は極秘捜査官でもなければ、町の裏路地に事務所を構える私立探偵ですらない。ただの、四月から高二になる学生だ。
では、私が彼に近づくなと言わせるような何かをしたのかと言えば、それもNOだ。
たった今、私の家に泊りに来ている甥が水疱瘡(みずぼうそう)にかかったと、そう言っただけだ。
「なんで?」
私はいささか、不機嫌な調子で聞いた。
「だって染ったら困るだろ?」
彼は涼しい顔で言った。
「まだかかってなかったの?」
「じゃぁ、えみは?」
私が聞いたのに、彼が切り返してきた。
「私は予防接種受けてるから平気なの。隼人は?」
私が顔を覗き込むと、隼人は顔を少しそむけてこう言った。
「俺は一回かかったけど、念のため。」
「はぁ? かかったんならいいじゃない。少しくらい近づいたって。」
私は明らかに不機嫌な顔をして、明らかに不機嫌な声を出して言ってやった。
「…じゃぁ、近づくくらいはいいよ。」
少し経って、隼人が言った。この少しの間に彼の中でかなりの葛藤があったのだろう。
はっきり言ってかなり腹が立った。 
―何?その態度は。私はバイ菌じゃないのよ?―
しかし、隼人の性格から考えて、ここで怒ってもコトは動かない。
…どうする?
ここで私の脳はいち早くコトが円滑に進む方法をはじき出す。
私は何も言わずにまるで我慢できなかったって風に隼人に抱きつき、ちょっと頬を膨らませて上目遣いに隼人を見た。
隼人は私の計算どおり、しかたないなぁこの子はって顔をして私の頭をなでた。
私はしばらくじっとしていた。それから顔を上げて口を尖らせる。 いつもなら、キスしてくれる。でも、隼人は無表情で私の頭を撫でつづけた。
また、私の頭はすばやく動く。 この間の基礎学力判定テストで情報処理能力の項目だけが、いやに優れていたと判定が出たのはあながち嘘ではないかもしれない。
私は隼人の腕からするりと抜けて、しゅんって顔をして、ちょっと首をかしげて言った。
「キスしてくれないの?」
隼人は私を無視した。 
―くっ。
仕方ないので私はまた次の作戦に出た。
食べ終わったお弁当を片付け、とぼとぼと教室に戻るふりをした。 隼人が止めてくれるのを期待して。 でも、相手はなかなか手ごわかった。
「えみ、自習室に戻るの?」
そう言って隼人も手早くお弁当を片付けると私の後を追ってきた。
はぁ…、こうなったら、隼人が私のことを心配するまで落ち込みモードを保ってやるんだから。 
そう心に決めて、私は無言で自習室の個別ブースにむかって歩き出した。


私の落ち込みモードはいつも長続きしない。 隼人のつめたい言葉に傷ついて、怒って、「もう口きかないんだから!」って行った時でさえ、一時間くらい経つと隼人に甘えたい病でが発症し、自分を抑えられなくなってしまったのだ。 
ましてや、今日みたいなちっちゃいことでは三十分足らずで病気は発症してしまう。 隣のブースをちらっとのぞきたくなる…。私と隼人を隔てている薄っぺらな板に、ちょっと手をかけてそこから頭をのぞかせて、隼人のわき腹をちょんちょんってつつきたい病が、波のように私を襲い、私は身を硬くして時が経つのを待った。
――――。
「えみ、そろそろ電車の時間じゃないのか?」
ビックリして目を覚ますと、私の後ろに隼人が立っていた。 外を見ると空の下のほうがぼんやり赤くなっているのが見えた。
「えみ、ちゃんと勉強はしたのか? 春休みの課題テストは追試付きだぞ?」
隼人のえらそうな態度で、私は自分が落ち込みモードであったことを思い出した。
「うん…。」
私は即座に頭を切り替え、おとなしく下を向いて答えた。上手くいけば、帰り際にキスしてもらえるかもしれない。 
私たちは荷物を持って外に出た。
私が暗くなってるのを知ってか、隼人は無言になった。 触らぬ神にたたりなし、いざと言う時には黙る作戦にでる奴なのだ。
「ねぇ、隼人ぉ?さっきは何でキスしてくれなかったの?」
作戦変更。黙った隼人はテコでも動かない。
「…」
「ねぇ、なんでぇ?」
私は甘えた声で隼人の顔を覗き込む。

隼人は、ため息をついてからこう答えた。

「念のため。」








夜、隼人から来たメールには「水疱瘡は感染者からしか感染しないことがわかった。ごめん。」と書かれていた。

メール、返すべきかしら?
2004/04/04(Sun)22:15:42 公開 /
■この作品の著作権は藍さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
本文には書きませんでしたが、このあとえみは「隼人の馬鹿。今日の分のキスどうしてくれるん?」とメールしました。。

初めて書く短編なんで、ちょっと不安です。。読んでいただけると光栄です。
今、暗めのモノを書いてるんで、気分転換みたいに軽めで書いてみました。 批評、感想、指摘があれば、ビシバシお願いします。
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