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『<夢のつづき>』 作者:不知火 / 未分類 未分類
全角3060文字
容量6120 bytes
原稿用紙約11.55枚



 
 
 その日は朝から風が強かった。
 小学校の低学年ぐらいなら飛ばされそうな風だ。
 おまけに横殴りの雨つきときた。
 周りの看板やらゴミ箱やらが吹き飛ばされている。
 はっきり言ってかなり危ない。
 そんな中をオレは走っていた。
 向かい風に向かって、ひたすらに走っていた。モノが飛んできて何度か直撃しそうになった。
「あぁもう! なんで今日に限ってこんなに風が強いんだよ!」
 風に向かって叫ぶ。声は風の轟音にかき消され、もちろん答えは何も返ってこない。虚しすぎて涙がでそうだ。
 こんなことをやっていてバカだと思う。
 だが、走るのをやめる訳にはいかない。
 足を止めたら、そこで大切なものを失ってしまう———正確には大切な人が死んでしまう。
 相手がどう思っていようと関係ない。オレにとっては大切な、大切な人だ。死なせるわけにはいかない。
———頼む!間に合ってくれ。
 体勢を低く保って、全速力で目的地へ走る。
 目的地というのはオレの通う工業高校のことだ。
———あともう少し・・・・・・

 商店街にさしかかる。
 商店街は閑散としていて、人は誰もいない。
 こんな天気だからというのもあるが、平日でも人はほとんどいない。
 昔はかなり繁盛していたらしいが、今ではその面影もない。
 原因はおそらく、最近近くにできたショッピングモールだろう。
 
 そんな商店街を抜けると国道を挟んだ位置に高校が見えた。
 その無骨なコンクリート造りの建物が、ゲームに出てくる悪魔の城のように見えた。

 ちなみに、オレがこんな事をしている理由は昨日の放課後にある。



—————夢を見た。
 

 
『大切な人』が死ぬ夢をみた。
 学校で、原因はわからないが死んでいた。血だまりの中に横たわっていた。
 ようするにそんな夢だった。
 と、そのまま本人に話したところ、
「・・・プッ。アハハハハハハハ・・・」
 盛大に笑われた。
 恐らくこうなるだろうと予想はしてたけど、実際に目の前でやられると腹立つなあ。
「シグレ、あんた、本当に、そんなこと、信じてんの?」
 冬月ミナはヒィヒィ言いながら目には涙を浮かべている。
「信じてなけりゃ言わねぇっての。」
 人が親切で言ってやってんのにコイツは。
「ゴメン、ゴメン。だって、あんたがあんまりにも真剣な顔でそんなこと言うから。」
 そう言いながら人差し指で涙をぬぐっている。
「だから、これは実際に起こることなんだよ。頼むから明日は家からでないでくれ。」
「それは無理。明日は文化祭の準備があるの。」
 中学、高校にとって九月、十月は、やれ体育会だ、やれ文化祭だと何かと忙しい時期だ。うちの高校もその忙しい時期に突入している。加えて、ミナは今年の文化祭の実行委員長だ。昔からこういう行事はほとんどしきっていた気がする。
 だから、明日の準備も行かなくてはいけないのだろう。
 事情はわかる。ミナがこういうことに手を抜かない性格だということも知っている。
 しかし、だ。
「いいや、それでも行くな。」
 ここはゆずる訳には行かない。
「はぁ〜・・・・・・あんた、変なとこで頑固だよね。」
 片手を頬に当て、やれやれといった表情を浮かべている。
「オレの夢は一〇〇%当たるんだよ。」
 これがただの夢ならオレも必死に説得したりはしない。
 だが、オレの夢は一〇〇%当たる。見た夢が二日後に現実になる。
 これは嘘や悪い冗談などではない。まして怪しい壷なんかを売っているインチキ霊媒師なんかとも違う。
 何でそんな夢が見えるようになったのかは解らない。
 でも、いままで見た夢は二日後に全部が現実となってきた。
 だから、オレは今、必死に説得している。このままだとミナは確実に夢のとおり死んでしまう。
「あぁ、そういえば前にもそんなこと言ってたね。」
「それ。その夢に今回はお前がでてきたんだよ。」
「だから、私が死ぬって?」
「そう。」
「あんたねぇ・・・そんなの偶然だって。」
「偶然・・・・・・」
———偶然か。偶然にあんなことが何度も起こるはずが・・・・・・いや、今は思い出にふけっている場合じゃないな。
「なんでもいい。明日は家から出ないでくれって。」
「わかった、わかった。覚えてたらそうするよ。」
「お前、全然信じてねぇだろ?」
「ん?信じてるよ?」
 誰が聞いても嘘だとわかるほどに白々しい答えが返ってきた。
「あ、シグレ、ゴメン。これから準備があるんだ。」
「ちょっと待てい。オレの話はまだ終わってねぇ。」
「また今度聞くよ。じゃあね。」
 そう言って足早に教室から出て行ってしまった。
 後ろから見たセミショートの黒髪がやたらと印象に残った。
 
 信じてもらえるとは思っていなかった。
 でも、じっとはしていられなかった。
 たとえ無駄だとわかっていても自分のできることなら何でもしたいから。
 もう、嫌なんだ。
 オレが夢で見たとおりに人が死んでいくのは・・・・・・

———あの様子だと絶対に明日も学校に行くだろうな。明日になったらオレの話なんざミジンも覚えてないだろうし。いや、覚えてても行くか。
「はぁ〜」
 自然とため息がもれる。
———やっぱりオレがどうにかするしかないか・・・・・・


 というわけで、オレは今どうにかするために学校に向かっている。
 ミナが想像以上に早く学校に行っていたのは誤算だったが、今さら愚痴ってもしょうがない。


 夢のとおりにはさせない。絶対に。
 

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
 

 学校に到着。
 かなり疲れたが足を止めている暇はない。
 校門をくぐり左折。そのまま一直線に体育館を目指す。
———無事でいてくれ。
 体育館には数十秒で着いた。
 中では何人かの生徒たちが準備を行っている。
———ミナ、どこだ?
 入り口から中を見渡す。
 視力二・〇は伊達じゃない。
 すぐに見つけることができた。
 しかし、立っている位置が最悪だった。後ろに大型の看板が立てかけてある。
 その看板には見覚えがあった。
 先生に言われて体育館まで運んできたモノだ。見た目以上に重かったのを覚えている。
 それが窓から吹き込んでくる風のせいでグラグラ揺れている。
———あんなモノが直撃したら・・・・・・
 思うと体は走り出していた。
 あと約十メートル。
 周りには他にも数人の生徒がいるが看板が倒れても巻き込まれない距離だ。
———危ない!ミナ、逃げろ!
 叫びたかったが情けないことに疲労で呼吸するのが精一杯だった。
 
——その時

 看板がゆっくり倒れ始めた。
 
 ミナは気づいていない。

「!」
「シグレ?」
 こちらの足音に気づいたのか、振り向いたミナと目があった。
 
「冬月、危ない!」
 誰か男の声が響く。

 右足で思いっきり床を踏み切り、ヘッドスライディングをするように飛び込む。
 ぶつかる寸前にそのまま、両手でミナの体を前方に突き飛ばす。 
「痛い!」
 ミナは突き飛ばされた勢いで尻餅をついていた。
 
 看板はミナの手前を空振り。倒れているオレの上に襲いかかってきた。
 
 直後、頭に衝撃を感じ——プツン、テレビの電源が切れたように意識が途切れた。



2004/04/03(Sat)23:02:00 公開 / 不知火
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