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『幸福論〜隼人〜』 作者:来夢 / 未分類 未分類
全角1968文字
容量3936 bytes
原稿用紙約7枚
夢なんてもんじゃない。
ただ的を一つに絞っただけ。
一番当たりそうな的を選んだだけのことだ。

高校3年生になって、俺の生活は今まで以上に勉強一色になった。
週3日は予備校、2日は家庭教師。
それ以外の時間も必死で勉強した。

医者になって金持ちになる。
そう決めたのは中学校1年生の時だった。
親父が先生をやっていたことで幼稚園の時から続けていた剣道も、そのとき止めた。
俺の剣道ではお金にはならない、そう思ったから。
誰に命令されたわけでもなく、自分で決めたこと。
絶対にやり遂げてみせる。
俺はくだらない夢を見たりはしない。


「まぁ、この調子ならなんとか大丈夫だろう」
放課後の進路指導室は、調べ物をする3年生で生徒で騒がしい。
受験まであと一年もないことに焦っているのだろう。
もっとも俺は受験する大学は1年生の時から決めていたから、今さら焦ったりはしない。
「はい」
担任が進路部の先生だったことは幸運だった。
相談もしやすいし、情報も入りやすい。
「問題は尚樹だよな」
「…尚樹ですか」
一番聞きたくない名前だ。
「お前ら仲いいんだからさぁ、同じ大学行こうぜって尚樹のヤツを誘ってくれよ。まぁ、あいつなら、本番当日に引っ張って行っても余裕で合格だろうし」
「はぁ・・・」
「どうせあいつの実力じゃ、大した美大いけないんだしさ」
先生は、俺だけに聞こえるように小声でそうささやくと、がははは、と豪快に笑った。
粗雑で下品な男だ。先生と呼ぶほうの身にもなって欲しい。
先生でなかったら、絶対こんな人間には関わったりしないのに。
だいたい仲がいいなんて冗談じゃない。
あいつは勉強しなくても余裕で、俺は勉強してなんとか合格、なんて。
無神経にもほどがある。先生なんて無神経で嫌なやつばかりだ。

けれどそう思ったままを口に出すやつはただの馬鹿だ。
俺は余裕を見せるように笑って答えた。
「そうですね、話してみます」
「おう、サンキュ。じゃあ、気をつけて帰れよ」
「はい、失礼します。ありがとうございました」

進路室を出ると、廊下がオレンジ色に溢れていた。
眩しいのは光だけのせいじゃない。
オレンジ色は嫌いだ。
暖かい日差しは幼かった頃に過ごした、甘ったるい幸福な日々の記憶を思い出させる。
夜明けの青のほうが、今の俺には楽だ。
5時か。余計な事なんて考えてないで、早く予備校に行こう。
あぁ、その前に、尚樹の愛しい梨子を美術室までお迎えに行かないと。
俺の口から自然に笑みがこぼれる。
梨子は俺の彼女だ。
梨子といる時間は楽しい。
あいつの曇った顔が見れるからな。
尚樹のあの顔はたまらなくいい。
あいつのせいでたまったストレスも、勉強の疲れも一気になくなる。
すっきりする。心が晴れやかになるんだ。


尚樹は最初から目障りなヤツだった。
県内で一番のこの高校も、受かるのは当然、トップ入学も絶対に俺だと思っていた。
入試で一番だった者は、入学式で挨拶をする。
前に立って、この学年で一番なのは俺なのだと、堂々と宣言できるのだと思ってわくわくしていた。

なのに入学式で挨拶したのは尚樹だった。

俺がどんなに勉強しても、テストが始まってすぐに居眠りをするような尚樹に敵わなかった。

馬鹿みたいだ。

みんなが影で言っていることも知ってる。
『隼人は必死って感じがするけど、尚樹はまだまだ余裕って感じでかっこいい』

俺はあいつといるといつも二番だ。
尚樹は余裕を見せ付けるように、描けもしない絵をずっと描いてる。
そんな尚樹は女にもよくモテた。
なのにあいつは誰とも付き合わなかった。
そしてそれが余計女の人気を集めた。
あいつはいつも余裕で俺の前を歩く。
俺は追いつくことさえ出来ず、どうがんばってもあいつには勝てない。

いらいらした。

俺は美術室の前で足を止めた。

この仲であいつは幸せ時を過ごしている。
そして今から俺はそれを壊すんだ。

優越感。
いつも心のどこかで尚樹が感じているはずのもの。
それは俺にとっては、『精神安定剤』のような役割をしている。
この行為は復讐ではない。
逆恨みだということは分かってるんだ。
それでも俺には意味があるから。

俺は尚樹にたった一つ、勝てるものを見つけた。

「梨子」
俺はわざと部屋の外から名前を呼ぶ。
「隼人、もう用事終わったの?」
尚樹、わかるだろ。
お前の大好きな梨子は俺を好きなんだ。
よく見ろよ。
俺のもとに嬉しそうに駆け寄っていく梨子の後姿を。
「尚樹、まだ絵なんか描いてんのか?」
どうせ受験が近くなったら、止めるんだろ。
そして嫌味のように俺より上の大学に行くんだろ。


「まぁ、がんばれよ」
いつも余裕なお前の恨めしそうな顔が見れれば、それでいい。
もう好きなようにすればいい。
だけど梨子は渡さない。

お前が梨子を好きでなくなるまでは・・・。



〈END〉
2004/03/23(Tue)00:30:20 公開 / 来夢
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■作者からのメッセージ
ここまで読んでくださってありがとうございました(*^^*)
続編ではないんですが、関連性のあるお話にしてみました。
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