オリジナル小説 投稿掲示板『登竜門』へようこそ! ... 創作小説投稿/小説掲示板

 誤動作・不具合に気付いた際には管理板『バグ報告スレッド』へご一報お願い致します。

 システム拡張変更予定(感想書き込みできませんが、作品探したり読むのは早いかと)。
 全作品から原稿枚数順表示や、 評価(ポイント)合計順コメント数順ができます。
 利用者の方々に支えられて開設から10年、これまでで5400件以上の作品。作品の為にもシステムメンテ等して参ります。

 縦書きビューワがNoto Serif JP対応になりました(Androidスマホ対応)。是非「[縦] 」から読んでください。by 運営者:紅堂幹人(@MikitoKudow) Facebook

-20031231 -20040229 -20040430 -20040530 -20040731
-20040930 -20041130 -20050115 -20050315 -20050430
-20050615 -20050731 -20050915 -20051115 -20060120
-20060331 -20060430 -20060630 -20061231 -20070615
-20071031 -20080130 -20080730 -20081130 -20091031
-20100301 -20100831 -20110331 -20120331 -girls_compilation
-completed_01 -completed_02 -completed_03 -completed_04 -incomp_01
-incomp_02 -現行ログ
メニュー
お知らせ・概要など
必読【利用規約】
クッキー環境設定
RSS 1.0 feed
Atom 1.0 feed
リレー小説板β
雑談掲示板
討論・管理掲示板
サポートツール

『父の思い。』 作者:花井ハルミチ / 未分類 未分類
全角4031.5文字
容量8063 bytes
原稿用紙約11.95枚
 父は母とあたし達兄姉を置いて交通事故で死んでいった。あたしが6歳の夏だった。そして父が死んで10年経った今日の出来事は、あたしの人生を変えた。

 あたしは原本友日、高校1年生。あたしが知っている『父』というものは、朝家を出るのが早く、帰りが遅い。土日も仕事であまり家にいない等々……。滅多に父の姿を見ることは無かった。でもたまの休みには、あたし達兄姉を連れて色々な所へ連れて行ってくれた。
ある日、父の仕事が休みだったので、家族総出で遊びに出掛ける予定だった。あたしは前日からわくわくして眠れなかった。いつの間にか眠りにつき、朝が来ると父の姿はなかった。あたしは泣きじゃくって母や兄姉達を困らせた。仕方なく、父抜きの家族で出掛けることになった。
 行った場所は、大きな公園だった。色々な遊具があったり、芝生広場や遊べる川があった。その日はとても暑かった。あたしと兄姉達は川に入って遊んだり、ボールで遊んだり、バドミントンをした。昼は母の手作りのお弁当を食べた。あたしも兄姉達も楽かったけれど、やはり父がいない寂しさがどこかにあった。だんだん日が沈んできた頃、あたしは眠ってしまい、兄におぶられていた。そして帰ろうとなった頃、母が兄姉達に言った。
「良いところへ連れていってあげる」
 兄姉達はワケが分からないまま、母に付いていった。そこは、確かにさっきまでいた芝生広場だったが、ステージができていたという。眠っていたあたしは覚えていない。ただ、大きな音がして起きたら、ステージには父がたっていたのだ。
ジャズコンサート…当時のあたしには分からなかったが、ステージに立つ父は、いつも家にいる父ではなく、とても格好良く見えた。兄におぶられながら、父の演奏を見ていた。そして聴いたことの無い音楽に、6歳ながら聴き入っていた。
ステージが終わり、家族みんなで父の元へ行った。あたしは思わず父に抱きつき、
「パパ、格好良かったよ!」
 と言った。そして滅多に笑わない父が、あたしに微笑み頭を撫でながら、
「ありがとう」
 と言ってくれた。それから、父は片づけがあるから先に帰ってと母に行った。母の車の中でまた眠りについたあたしは、次の日まで起きなかったという。
 次の日、あたしは保育園に行くために起きると、家の中がシーンとしていた。いつもあたしは、兄姉で一番遅く起きるので、朝は賑やかなはずだった。まだ兄姉は起きていないのかな?と思った時、母はキッチンのテーブルに伏せて泣いていた。何があったんだろうか、と心配したあたしは母にきいた。
「ママ、どうしたの?」
 母はあたしに気付き、抱き寄せた。母の目は赤く腫れ上がっていた。
「お父さんが……お父さんが死んじゃったの……」
 当時6歳のあたしでも、『死』というものは一応理解できていた。しかしあたしは泣かなかった。父は物心ついた時からあまり家にいなかったし、喋ったのも、昨日が久しぶりだった。葬式の間も、あたし以外の家族はみんな泣いていた。父という存在は、あたしの中ではむしろ『嫌い』だったのかもしれない。
 
 父が死んで10年経った。あの時の記憶は、あたしの中にはほとんど無かった。あたしも16歳になり、普通に高校生活を送っている。
 今は夏休みだけど、毎日部活に行っている。あたしは吹奏楽部でサックスを吹いている。最近定期演奏会も終わり、今は基礎練習に励んでいる。あたしが吹奏楽を始めたきっかけは、小学生の時にテレビでジャズを見てから。特にサックスが輝いて見えたあたしは、その瞬間から「サックスがしたい」と思い始めた。そのことを母親に言ったら、
「あなたもやっぱり、お父さんの子なのね……」
 と言われた。あたしはこの意味が分からなかった。母親はそれだけ言って、あたしの頭を撫でた。このことについて、反対はしなかった。
 それから中学に入学。そして吹奏楽部入部。楽器は学校のを使用していた。さすがに自分のを買う余裕は無かった。吹奏楽とジャズは違ったけれど、吹奏楽も楽しかった。
 そして高校に入学してからも、吹奏楽とサックスを続けている。高校は自分の楽器が無いと希望のパートにつけないときいていたけど、あたしはすんなりサックスを吹けることになった。それも、今年の1年生にサックスの経験者は、あたしともう一人、しかもバリトンサックスだったからである。あたしはアルトだったので、運が良かったと思っている。
 部活から帰ると、母親がある部屋の前に立っていた。その部屋は、あたしも今まで何の部屋か、中がどうなっているか知らなかったし、何があるのかも知らなかった。
「ただいまぁー」
「あ、友。おかえりなさい」
「何やってんの? その部屋……」
「あぁ、ここはお父さんの書斎よ。もう、10年も経っちゃうのよねぇー……だから、ちょっと整理でもしようかなぁって……」
「ふーん……あたしも入って良い?」
「えぇ、良いわよ」
 あたしはリビングのソファーに鞄を置いて、部屋に入った。部屋の中はカーテンが閉まっていて埃っぽく、暗かった。母親がカーテンを開き、窓を開けた。夏の爽やかな風が入る。部屋が明るくなり、眼がチカチカする。やっと眼が慣れてきた時、あたしは……
「何、これ……」
 棚に並べられた、すごい数のレコード・楽譜の山、山、山…その数に圧倒されてしまったのだ。
「お母さん、これ……全部お父さんの?」
「そう、全部ジャズの物よ」
「?!」
あたしは驚いた。
「お父さんがジャズしてたなんで、あたし知らなかったよ?!」
「やぁねぇ、覚えてないの? 一回だけ見に行ったでしょ。丁度お父さんが亡くなった日に……」
 あたしはその時、頭の中にあの時の記憶が過ぎった。

 あの時……そう、家族みんなで見た、父の最後ステージ……
確かに父はジャズをしていた。そして、あたしと一緒の楽器・サックスを吹いていた……今ハッキリと思い出した。それまであたしは、すっかり忘れてた。でも、父の影響でサックスを始めたワケではない。自分の意志だった。そしてあたしは、サックスをしたいと母に言った時の、あの言葉の意味をようやく理解できた。
「だから、お母さん……」
「ん? どうしたの?」
「あの時あたしに、お父さんの子ね……って言ったの?」
「……そうよ。まさか同じ道を行くとは思ってもいなかったもの」
「あたし、すっかり忘れてた……お父さんがジャズしてたなんて……」
 母親と話しながら、棚の埃をはたいたり、棚のレコードを眺めていた。そしてふと床の方に眼をやると、古びた楽器ケースを見つけた。
「これ……もしかして……」
「……そうよ。お父さんが使ってたの」
「ふーん……まだ音出るかなぁ。吹いても良い?」
「良いわよ」
 楽器ケースを開けた。古びた外見からは想像が付かない位、意外と綺麗だった。シルバーの本体が、やけに眩しかった。あたしは慣れた手つきで、楽器を組み立てた。母親は、あたしがサックスを組み立てるとこなんか見たこと無いものだから、すごく驚いてた。
「へぇ……さすがに4年もやってたら慣れてるものなのね」
「でも、まだ下手だよ。もっと上手い人学校にいるし……」
組み立て終えたあたしは、おもむろに楽器を構え、そして吹き始めた……
……柔らかい音色が辺りに響いた。
「はぁー……古いけどまだ音出るんだ。それともあたしの腕かな?」
 あたしは笑いながらふざけ気味に言ったが、母親は真面目な顔をしていて、涙をこぼしていた……
「ど、どうしたのお母さん?」
「あ、ごめんなさい……あなたの吹いている姿、お父さんと被っちゃって……」
「あたしと、お父さんが……?」
 涙を拭い、母親はそそくさと部屋を出ていってしまった……部屋に一人残されたあたしは、父の楽器を持ちながら、楽譜の置いてある棚を眺めていた。
 それにしても本当にすごい数の楽譜やレコード達…父がこんなに持っていたとは知らなかった。それに、この楽器……あたしが使っているのよりもかなり古いもので、とても重みがあった。父の重みなのだろうか……10年も吹いていないのに、ここまで綺麗だとは思ってもいなかった。
 日が暮れてきた頃、あたしはそろそろ楽器を片づけようと思い、ケースを開けた。その時窓から強い風が吹き、ケースの中から、何やら紙みたいものが飛んだ。あたしはそれを急いで追いかけた。その紙を見ると……
「これ……写真?」
 それはあたし達家族の写真だった。それも、10年も前の……その写真に父の姿は無かった。
「お父さんは…忙しくてあなた達に構ってあげられない時、いつもその写真を見てたそうよ。」
 あたしの後ろから、お母さんが言った。
「あなた達には、何もしてあげられなかったこと、すごく後悔してたわ。何でもっと大切にしてあげられなかったんだ、って……」
「…………」
「あなたに格好いいって言われた時、あの後お父さんすごく喜んでた。何もしてあげられなかった俺が、あんなこと言われると思ってなかったって…友はお父さんのこと、嫌いだったかもしれないけど、お父さんはいつも、あなた達のことを考えていてくれたのよ……」
 そんなの知らなかった。知らないくせに、お父さんのことを勝手に嫌いになってた……そんな自分が申し訳無かった。申し訳無さ過ぎて、涙が出てきた……
「お父さんの夢、何だったか知ってる?あなた達子供達にも、ジャズを知って欲しかったんだって。お姉ちゃんとお兄ちゃんは、違う道を進んだけど…きっと天国で喜んでるわ。あなたが自分の意志でジャズをすることを決めてくれたから……」
 あたしはまた涙が出てきた。涙が止まらなくなった。きっとこの涙は、父への償いの涙だろう……
 この時あたしは決意した。償っても償っても、父は許してくれないと思う。でも許してくれなくて良い。その変わりに、父がくれた深い思いと、あたし自身の夢を胸に、ジャズと、ずっとずっと一緒に生きていく……
2004/03/13(Sat)00:20:17 公開 / 花井ハルミチ
■この作品の著作権は花井ハルミチさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
初めまして!自分の好きな『ジャズ』で話を考えてみました…読み辛いところが多々あると思います。汗
初めての作品なので、是非A辛口での批評・感想をお待ちしております…
この作品に対する感想 - 昇順
感想記事の投稿は現在ありません。
名前 E-Mail 文章感想 簡易感想
簡易感想をラジオボタンで選択した場合、コメント欄の本文は無視され、選んだ定型文(0pt)が投稿されます。

この作品の投稿者 及び 運営スタッフ用編集口
スタッフ用:
投稿者用: 編集 削除