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『SNOW BLIND - piece 00-01 -』 作者:境 裕次郎 / 未分類 未分類
全角7471.5文字
容量14943 bytes
原稿用紙約24.55枚
(piece 00 boy's side) 


 俺は帰ってきたんだ。この街に。
 年中雪が降り積もっているかの様な、冬が何処よりも長い長い街に。
 窓の外に、時折白いものがはりつく。まだ十一月だというのに。
 ハァ、と息を吹きかけてみる。
 曇る窓ガラス。ゆるゆると水色の水滴になって溶け出す結晶。その向こう側に広がる銀色の街並。
 短い嘆息と共にゆっくりと湧き上がる懐郷の念。
 氷点下を越える世界に、幾つもの年を越え、俺は帰ってきたんだ。
 たくさんの思い出は、この雪の欠片の様に淡く消えてしまったけれども。
「……あいつ、元気にしてるかな……」
 この街に残る、数少ない思い出を手探りで探している内に脳裏に浮かんだ、一人の少女のコトを想った。
 ……名前は、もう忘れてしまった。どんな顔をしていたのかさえ雪景色の向こうに隠れておぼろげにしか思い出せない。だけど、この街に居るはずの少女。
 指で触れていた、窓ガラスを隔てた向こうにある結晶がまた水滴になって流れ落ちた。
 触れる温もり。そんなモノが俺に存在するんだろうか?
 いつか、そんな温もりをもらった様な記憶がある。遠い遠い、気が遠くなるほど遠い時の流れの中で。
 おそらく其れは俺の両親ではなく、彼女にもらったモノ。
 親父もお袋も共働きで、しかも二人ともエリート街道まっしぐらの仕事人間だったから、構ってもらったり、遊んでもらったりした記憶が全く無い。 そんな両親から貰えるのが温もりであるはずが無い。
 いつも家に居たのは冷たいお手伝いと、ひとりぼっちの少年。
 ”誰にも愛されなていない”
 そう思い込めるようになるまで、そうそう時間は掛からなかった。
 アイツ等は俺の事をただ、ただ……。
「いまさら考える事でもねぇよな……」
 そんな両親も俺が十六歳の誕生日を迎えた日に交通事故で死んでしまった。
 俺の誕生日を祝うために二人で一緒に仲良くプレゼントを選んでいた時に事故にあったなんて暖かい理由じゃなく
 ”仕事で”
 それだけの理由で、それぞれが違う場所で最後の瞬間を味わった。
 偶然。偶然というにはあまりにもでき過ぎた話だが、現実は現実だ。
 それまでひとりぼっちだった少年が、本当にひとりぼっちになってしまった日。
 だけど、結局ひとりぼっちのまま、何も変わらない生活を始めたそれだけの日。
 悲報が耳に届いても、涙すら流せず、痛みすら感じなかった。あるのはただの空虚な喪失感だけだった。
 だが、だがそんな俺にだって温もりに触れた瞬間が確かにあった。
 さっきから必死に思い出そうとしているのに浮かんでくるのは相変わらず遠い遠い、寒くて真っ白な世界に二人だけの情景。そして、両手に残った灯火の様に今にも消えそうな柔らかい温もり。
 窓の外の景色を目で追いながら、ため息をついた。
 久しぶりの雪の街に……少し昔のコトを色々考えすぎたみたいだ。
 一眠りしよう。目的地まで、あと1時間。


(Piece 00 girl's side)
 

 鼻先にヒンヤリとした感触をカンジた。気づいて空を見上げる。
 思った通り薄くにごった空から、時折見えそうで見えない
 小さな結晶が舞い降りてきていた。
「雪……。もう11月だもんね……」
 私は買い物帰りだった。今日は彼がこの街に帰ってくる予定だった。
 長い間待っていた、片時も忘れた事のなかった彼。
 私の初恋の人で、それは今も続いている。
 この10年間私は誰も見ていなかった。
 心の中に存在しているあの日のままの彼だけを見ていた。
 私が最初で最後に温もりを与えた彼。
 その彼が帰ってくる。
「もう、私の事なんか忘れてるかな……」
 胸が痛んだ。
 私が育ててきた想いが全て無駄になる瞬間のことを思い描くと、泣きそうになるぐらい、ズキリとした痛みが胸を襲った。
「でも、大丈夫だよね。大丈夫」
 そう、忘れられていたとしても大丈夫。
 この想いが消えない限り私は私で居られるし、彼との思い出はまた作っていけばいい。
 それが恋とか、愛とか、そんなものじゃなくても。
 お互いが信頼し合い、小さな温もりを分け与えられるようなそんな関係でいい。
「そりゃ、本音は違うけど……」
 雪が段々と強くなってきていた。
 この街が本当の姿に着替え始めていた。
 雪の街。
 冬が一番多い街。
 寒くて、時に凍えそうで。
 でも、包み込む雪の感触は優しくて。
 時折雲間から差す太陽の光がとても綺麗で。
 私の生まれた街。多分一生離れないだろう街。
 右手の腕時計を覗き込む。
 淡く残った結晶が陽の光に煌いてまぶしかった。
「12時……。あと1時間か……」
 彼があと1時間で帰ってくる。
 改めてそう思うと嬉しくなってきた。
 先に駅に行って待っておこう。
 ここからだと多分、彼の到着30分前に着いてしまうだろうが
 今すぐにでも走って行きたかった。
 私は買い物カゴを”ギュッ”と握り締めると、いつもより少し早く歩き始めた。
 高鳴る胸の鼓動を落ち着かせながら。


(piece00 boy's side second scene)


”プシュー”
 軽い音がして列車のドアが開く。
 1時間前に降り出した雪が屋根に薄く積もっていた。
 あれから、窓をカーテンで覆っていたので気づかなかったが、どうやら大降りになっているようだ。
「すぐにたどり着ければいいけどな……」
 俺はゆっくりとホームへと降り立った。
 いきなり吹き付ける冷たい風の匂いに肩を竦ませ、コートの裾をあげる。
 寒い。あの頃よりずっと寒い気がする。
 本当にこの街で暮らしていけるだろうか。
 いや……、この街で暮らしていかなきゃならないんだ。
 何時までかは分らないが。
 そう思うと余計に寒さがつらくカンジた。
 さっさと、俺の新しい住処まで移動するとしよう。
「其の前にとりあえず、どっかの自動販売機で缶コーヒーでも買うか」
 零下の空気に肺を凍りつかせないように小さく呟いて俺は歩き出す。
 寂しげなホームを、肩に小さな荷物一つと古びたギターケースを下げて。

 改札を出て空を見上げる。
 灰色の空が広がっていた。
「雨が降らない分マシ……なんだろうな。」
 舞い落ちる白い結晶を見ながらそうつぶやいた。
 目をゆっくりと前に戻す。
 少し先に広がる繁華街と、今立っている駅前の公園が存在する空間。
 動と静のコントラスト。
 果てしない静寂が俺の周りから広がっている様だった。
 この場所に立っているのは俺一人……、では無かった。
 俺と反対側に一つ、誰かを待つように、首を傾げながらポツンと立っている人影があった。見覚えが、有る。
 肩にさげた大きな三つ編み。儚げな雰囲気を醸し出す存在感。そして小さな身体。雪が誰より似合う少女。記憶が激しく揺さぶられる。
 ”俺が少年だった頃に出会った少女だ”
 俺は強く確信した。だが、俺は彼女に近づこうとはしなかった。
「もしかしたら彼女じゃないかもしれないから……」
 小さい独り言を意図せず口走ると、彼女とは反対方向へ歩き出す。
 全くの言い訳だった。自覚している分、厄介な言い訳。
 温もりを与えられた昔に思いを馳せると、少年で無くなってしまった俺が話しかけるべきではない。
 何処かでそう思ってしまったから。
 僕は、彼女との道を一歩づつ遠ざけて雪の街に消えた。
 照れと迷いと悲しみと後悔と寂しさ。
 ただ、ただそんな感情に支配されながら。


(piece 00 girl's side second scene)

 
 今日という日が終わらなければ、彼に会えるのかもしれない。今日という雪の降る日が永遠に続けば、彼に会えたのかもしれない。私は、彼が駅に到着するはずだった時間から一時間過ぎても、二時間過ぎてもずっと待ち続けていた。待つことにもう意味なんてないのかもしれない。だけど、私にとっては大切なコト。
 会いたくて、会えなくて、それでも思い続けてきた彼をただひたすら待つこと。それこそが私がここまで歩いてきた証になるから。
 コートの襟に雪が層を成して積もっていく。視界をかき消すように降り積む雪。買い物籠を握る手が手袋の下で痛いほどかじかんでいる。このまま雪と一緒に消えてしまうのだろうか。そんな幻想的な世界の下で、私は待ち続けている。
 
 彼を……君を
 
 また一つ近づいては遠ざかる列車の音。その音色は渡り鳥が遠くいななく声に何処か似ていた。北から南、南から北へと。遠い遠い距離を越え、いつしか同じ場所に帰る渡り鳥。私が雪で、彼がその鳥ならば一年に一度短い間でも、絶対会えるのに。ねぇ、どうして、どうして君は居ないんだろう。
 君は今日、この街にやってくるんだよね。それは分かってるのに。どうして会えないんだろう。
 頬を伝う温もりもすぐ凍り付いて、痛く胸を焦がす。あんなに綺麗に見えた水色の雪空も今はもう遠すぎて何も見えないよ。君がいなければ私は始まらないんだよ。あの時から止まったままの時も動かない。
 
 はぁ……
 
 息が白く、雪の一欠けらになって消える。時折人が通りかかる公園に私は佇み続ける。夜が来ても、夜明けが来ても、明日が来ても。純白の銀世界の絨毯の上で。私は見つめ続ける。この景色を。
 この景色の遥か向こうからやってくるはずの君を。
 私は買い物籠をしっかりと握り締めた。少しだけ手に温もりが戻ってくる。私が此処に居なければ、君は多分気づいてくれないよね。私は君のコトを忘れてないけど、君は私のコトを忘れているかもしれないから。だから、忘れても、私が思い出させて上げる。この街の冬の温もりと一緒に、遠い昔の思い出も。
 今度はあふれ出した涙が止まらなかった。
 
 『愛とか恋じゃなくていい』
 
 あんなの嘘だった。全然私は君の事を諦めきれてなかった。
 君が私に触れる瞬間が、刻々と近づいているのが怖くてついた嘘だった。
 
 本当は
 
 片時も離れず一緒に居て。
 一緒に笑って、一緒に泣いて。
 そして疲れたら抱きしめあって眠って。
 朝起きたらおはよう≠チて笑いあって。
 ずっと、ずっと、ずっと……
 
 私は声を押し殺して、小さく嗚咽をかみ殺した。そして小さく呟く。
 
「君がずっと大好きだったんだよ」
 

(piece 00 last scene)
 

 缶コーヒーを右手に携えた俺は、普段なら余り感じることの無い葛藤を胸の奥底に覚えていた。駅前の公園から、たった数分のトコロにあった人通りの少ない小道脇の、自動販売機とベンチ。俺は其処に座って、数分、数十分、いや、もう何時間も経っているかも知れない。全て雪が覆い隠して見えなくなってしまったブラインドの果てで、ずっと黙想していた。目を閉じ、俯いたまま。半分以上残っている缶コーヒーの温もりは随分と前に体温に奪われ、いまは凍てつくような冬の寒さを俺に伝えているだけだった。
 
 葛藤……それは
 
 彼女を置き去りにしてきたことに対する罪悪感。
 彼女に会わないで置くことが一番良い方法だと想えてしまう自分への嫌悪感。
 彼女に変わってしまった自分を見られたくない痛み。
 彼女に会いたいと切に願う苦しみ。
 彼女に…
 彼女に…
 
 繰り返し、繰り返し、脳裏をよぎっては霞み消える雪と想い。
 共に儚く消えそうで、消えやしない、冬の温もりを享受し続けていたい存在。
 俺は其の中をただ霧の中を彷徨うように、見えやしないものを追い駆けるしかないのだろうか。だとしても、いつかはどこかに辿り着いてしまう。その先に待っているものが後悔だけなら俺はどうすればいいんだろう。彼女に出会ってしまうことが、その果てなら俺はその時どうすればいいんだろう。
 今はまだどちらが其れに続く道なのかは分からないけれど。
 それだけが俺を迷わせていた。
 その時、何処か遠くから声が聞こえた。

「明日は知ることができないから、明日なの。知ることができたのなら、それはもう明日じゃないの」
 
 俺はハッとして顔を上げた。相変わらず、目の前には降りしきる雪の色が全てを埋め尽くしていた。回りを見渡しても、在るのは雪、雪、雪。人の影すらも見えなかった。
 だが、その声は迷いに終止符を打たせた。
 俺はベンチから緩慢に立ち上がり、膝上に積もった雪を払う。
 全く、どうかしていた。その通りだ。
 明日は知ることができないから、明日だ。
 そして、明日を知りえることができないように、何処かへ続く長い道程も歩き始めてみなければ何も分かりはしない。
 
 当たり前だ。
 
 いつしか其のことを忘れていた。人に触れることを極力避けてきた臆病さで、そんな簡単な事すら忘れていた。自分が何処に向かっているかなんて誰にだって分かりやしない。だから迷うんだ。迷うから迷うんじゃない。迷うために迷うんだ。
 缶コーヒーを金網製のゴミ箱に投げ入れた。ちょうど真ん中に落ちてカラン、と乾いた音を立てる。その音を合図に俺は歩き出す。今度こそは、真正面から彼女に会うために。
 ふと、俺は立ち止まって自動販売機と向かい合う。
 すぐ後ろを列車のドップラーが駆け抜けていった。
 こんなモノにさえ気づけないほど俺は悩んでいたのか。笑ってしまいそうだった。
 軽くしゃがみこんでポケットに二つ、体中を捉えるかのようなココア色の温もりをしまいこむ。
 準備は十全。あとは彼女へと続く道の上を歩き出すだけだ。
 はじめの一歩は柔らかく俺を包み込んだ。  
 今年の冬はまだ終わらなくて、これから過ごす季節は、幾分俺に優しいみたいだ。


(sketch piece 01 boy's side start now)

 
 俺はあの後数分掛けて、時折来た道を引き返そうとしてしまう歩みを、前に進めて駅前のあの静寂の広場にたどりついた。
 息大きく吸い込み吐き出すと肺に薄い氷が張り付いた感触。辿り着いたその先には。
 
 誰も居なかった。彼女は居なくなっていた。
 
 天を一つ仰ぐ。小さく降りゆく季節の欠片が辺り一面を覆い尽くして、彼女を隠してしまったのかもしれない。そんな馬鹿げたコトを考えるまでも無く、彼女はくるかどうかもわからない俺のコトをそんなに待っているはずもない、という結論に達した。
 あれは俺が生きてきた中でたった一つの偶然でチャンスだったかもしれないが、さっきまでの俺はそれをみすみす逃して放棄した。いや、さっきまでの俺ならあれをチャンスと思い込むコトはできなかった。ただ生きている内に在りえる小さな障害だとしか考えなかっただろう。

「……俺って駄目だな」

 空から仄かに差し込んできた太陽の光に手を翳し、目を隠す。その下で生まれて弾け、目頭を熱くさせる36℃。
 せっかく会いにきてくれた温もりを、心の扉隔てた壁一つ向こうで追いやってしまった。この広い雪の街の何処か遠くに溶け込ませてしまった。
 本当はこれから待つ一人ぼっちの生活を思うと、寂しかったんだ。誰も俺を知らなくて、俺も誰かを知らないこの街の冬は長すぎるから。寒くて、遥か彼方の春を待つには、一人ぼっちは切なすぎるから。
 右肩にのしかかるギターケースの重みが増す。ポケットに隠れた二つの想いも、限りなく体温に近づいていた。雪はいつの間にか止んで、俺一人残して空遠くへ消えてしまっていた。
 力なく両手をだらり、と下げる。
「さて、何処へ行こうか」
 まっすぐ新しいねぐらへ向かう気にはなれなかった。先月、地元の家を引き払う前に賃貸した小さな共同アパートの一室。窓の外に見える鬱蒼と茂る山際の景色が妙に気に入って借りた、本当に小さな部屋。いまじゃ、其処が帰るべき場所になっている。
 いや、もう其処にしか帰れなくなっていた。
 生ある日にも、死した日にも帰るべき場所は其処だけだ。
 魂が凍てついた日にも辿るべき場所は其処だけなんだ。
 俯いて力なく歩き出す。
 足元にまとわりつく雪にさえ重みを感じてしまう。
 
「すみません」

 後ろから突然話しかける声。驚いて振り返る。
 立っていたのは……深く年輪を刻み込んだ顔をした一人の老婆だった。 
 話しかけられる理由も無いはずなのに、などと思索していると老婆がしゃがれた声で話しかけてくる。
「先程まであなたが待ってらしたのは、これぐらいの背丈の女の子ですか?」
 老婆は声とは印象の違う柔和な物腰で、俺に向かって皺だらけその手で身長を指し示す。自分の背丈の少し上の方に手を持っていった。
 若干驚きつつも、その通りだと短く答える。
 すると、老婆は細い目を更に細くして物悲しげに潜める。
「あなた、今待っていてもその子は此処には来ませんよ」
 何かを知った風なモノの言い方。老婆に詳しいことを尋ねてみることにした。
「その子はね、三年前の丁度今頃から姿を見せてるんです。この季節この黄昏時になると、毎年必ずといって良いほど。見ての通り此処に人通りは余り無いから知ってるのは、多分数人だけなんだろうけどね。とりたてて噂になることも無く、あの子はずっと寂しそうに小さな手提げ籠一つ下げて待ち続けていたんだよ。何かを。誰かを。可哀想にねぇ」
 老婆は杖を突いていないほうの手て目尻をごしごし拭うと、今度は細い目を細いなりに大きく見開かせてこちらを向いた。先程とはうってかわって今度は頬を綻ばせていた。
「だけどね、やっと待ってた人が来たみたいだねぇ。これでもうあの子も待たなくてすむ。あの子が待ち続けていた人は、あなたなんだよねぇ。ううん、言わなくても分かるよ。少し冷たそうなところはあるけど、体中からほんとは優しいんだっていう暖かさが滲み出してきてるから。あの子が待っていた人に相応しいんじゃないのかねぇ」
 内心大きなお世話だと思いつつも、老婆に感謝した。明日も此処に来れば、彼女に会える。それは確かなものらしい。
 また降り出した雪。上を見上げる。一面がオレンジ色に染まり始めていた。雪も仄かに色づき始めている。このままじゃ、暗くなるのもそう遠くは無いだろう。
 俺は隣に立つ老婆に微笑んで別れの挨拶を交わす。
 老婆も微笑んで俺に別れの挨拶を告げた。

 ……行く先に繰り返し降る雪は、今思えば全ての始まりを俺に告げていたのかもしれない。が、そんなことをこの時の俺は知る由も無く、冬の街へと足並みを残し溶け消えた。


(sketch piece 01 girl's side start now)


 私は夜が来て、空が真闇に染まっても佇んでいた。街頭の光が小さく漏れ出して、地面に薄く影を描く。彼は来なかった。
 
2004/02/19(Thu)22:47:53 公開 / 境 裕次郎
■この作品の著作権は境 裕次郎さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
人の目に留まる作品であるか、そうでないかに関わらず、キッチリUPを目標に頑張ろうかと思ってます(当たり前  短編が苦手で長編が多くなってしまいがちではありますが、長らくお付き合いいただけると嬉しく存じます では(=゚ω゚)ノシ
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