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『犠牲者は殺された人だけですか?』 作者:鈴原 / 未分類 未分類
全角1360文字
容量2720 bytes
原稿用紙約4.35枚
18XX年、日本国とC国による戦争が勃発した。
戦争とは名ばかりで、圧倒的優位な立場の日本軍の侵略といったほうが適切だろう。そして多くの若い男達が徴兵されていった。私もそのうちの一人である。
事件が起きたのは、私がC国に出兵してから半年がたった暑い夏のことだった。

ジリジリジリ。ジャングルの中で、夏の日差しは容赦なく私の浅黒い肌に突き刺さる。しかし、私は今、真冬の海よりも冷たく、黒い気持ちで満たされている。
目の前には言葉の通じない少女がいる。肌は私よりも黒く、髪は真っ黒で腰まで無作為に伸びていて、とても怯えた目で私の姿を捕えている。
私はその少女に銃を突きつけたまま静止している。
「どうした、早く撃て。道草をくっとる時間なんぞないぞ」
きびしい口調で上官が私をせかす。そう、私は今、この少女を射殺しろと命令されている。いつもなら一瞬の躊躇くらいはするが、それでも幾度となく人を殺してきた。しかし、今私の目の前にいるのは兵隊でもなんでもない、ただの少女なのだ。
手が震え、鼓動が高鳴る。少女は怯えたまま小刻みに震えている。
「いいかげんにしろ。早くやらんと変わりに貴様を殺すぞ」
上官の尖った言葉が私を追い立てる。
私にも家族がいる。今死ぬわけにはいかない。だが・・・私にはこの少女と同じくらいの娘がいる。私にこの少女は殺せない・・・。
「貴様それでも日本兵か。もういい、小汚い娘と一緒に貴様も死ね」
上官がすばやく私に向けて銃を構えた。自分でもわかるくらい呼吸が乱れ、体が震えている。今私は少女と同じ顔をしているのだろう。

ジリジリジリ。少しの間硬直状態が続いた。次の瞬間思いがけない上官の言葉の旋律が広いジャングルに響き渡った。
「家族まで反逆者になってもいいんだな」

   ドンッ・・・。

私の銃口から白煙が上がっている。目の前には無残な姿の少女が倒れこんでいる。私は少女を打ったのだ。殺したのだ。この手で・・・。

その年の冬、日本は戦争に勝利し、私は日本に無事帰国することができた。しかし、私の帰るところは日本にはなかった。家族は空襲で逃げ送れて全員亡くなったそうだ。手作りの墓に花を供えて、私は故郷を後にした。
どこへ行くでもなく、私は汽車に揺られていた。
あの時少女を殺していなければ家族は生きていただろうか。私が死ねば家族は死なずにすんだのはないだろうか・・・。そんなはずはない。そんなはずはないのに。
終着駅に着いた時にはすでにあたりは暗かった。それから私はさまよいながら歩きつづけた。月の光だけが頼りになる時分まで歩きつづけると海が見えた。
私は海岸の一番高いところまで上った。
ザザーザザー。冬の海の音がする。景色は暗く、突き刺すような寒さなのに、私のこころはジャングルのように温かかった。
私は今から自殺する。償いではない。自分でも理由は定かではない。

この戦争で多くの犠牲が出た。私は少女と家族を殺した。
これでよりよい日本が設立されたのだろうか。
私たちはよりよい日本のために貢献したのだろうか。

考えるのももうよそう。そろそろ終焉か・・・。
 
 私は少女を殺した。
 私は家族を殺した。
 私は私を殺す。

 多くの犠牲の上に立つよりよい日本国家。

真冬の海に一人のヒトが散った。彼も戦争の犠牲者だろうか?


2004/01/27(Tue)01:38:15 公開 / 鈴原
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はじめまして。
小説の書き方の決まりなどはあまり分からないのですが投稿させていただきました。
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