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『絆 後編』 作者:渚 / 未分類 未分類
全角1024文字
容量2048 bytes
原稿用紙約4.95枚
達也は冷たくなった桜の頬にそっと触れた。彼女はまるで眠っているようだった。
桜は達也が病室に来る20分ほど前に絶命していた。達也が病室にやってきて異変に気づき、病院の関係者を呼ぶまで彼女の死は知られていなかった。
余命2ヶ月、というのは桜への気休めだったらしい。本当は、もういつ死んでもおかしくないほど彼女は弱っていたのだという。今まで生きていたことさえも奇跡的だったらしい。


桜は、どんな気持ちで死んだのだろう・・・。
























桜の通夜にはクラスメイトも来ていた。興奮したささやきがあちこちから聞こえる。
「なんかさぁ、別れの言葉って言うのあたしが言わなきゃいけなくなっちゃった。」
「え〜なんで絵梨が?」
クラスの女子たちの声が達也の耳に入ってきた。その中の一人は、桜にノートをコピーしてやってた長野絵梨だ。
「あたしさ、百瀬さんにノートコピーしてあげてたじゃん?あれ見てさ、担任があたしが百瀬さんと仲良かったって勘違いしてんのよね・・。」
「え〜バッカじゃないの?」
くすくすという小さな笑い声。その声が、達也の神経をぴりぴりと刺激した。
「ただ担任の評価上げようと思ってしたことなのにねぇ〜。」
いきなり頭をガツンと殴られたようだった。達也には長野の言葉が何度も木霊して聞こえた。それと同時に、何も知らずに死んでいった桜のことを思うと悲しくなった。心の中を黒く塗りつぶされたような気分だった。
クラスメイトから一粒の涙もこぼれぬまま、桜の通夜は終わった。















「達也君、いろいろありがとうね・・・。」
目を赤く泣き腫らした母親は、達也に礼を言って、静かに帰って言った。
達也はただ桜の墓の前にただずんでいた。たった一人で死んでいった桜。寂しかっただろうか。苦しかっただろうか。誰もいない闇の中で、不安に怯えながら死んでいったのだろうか。




「・・俺が、ここに、いるよ・・。」




そうつぶやいたとたん、体の力が抜けた。涙があふれ出してきて、止まらなかった。小さいときの会話が、ふと脳裏に読みがえった。




『ねえ、達也って誰が好きなの?』
『絶対教えてやんない。』
『え〜、どうしてもぉ?』
『お前が死んだらお前の墓の前でいってやるよっ!』
『ひっど〜い!!先生、達也が〜・・・』















「好きだよ、桜・・・。」













冷たい風が吹いた。今は夏なのに、なんとなく、冬のにおいがした。達也は桜の墓に背を向けて、歩き出した。
2004/01/27(Tue)11:24:08 公開 /
■この作品の著作権は渚さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
ようやく完結です。ここまで読んでくださった方、ありがとうございました。
感想、意見などお待ちしております。
この作品に対する感想 - 昇順
[簡易感想]セリフが多すぎる気がします。
2014/05/30(Fri)08:55:150点Azamzhon
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