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『Invisible Distance』 作者:ユウジ / 未分類 未分類
全角10621文字
容量21242 bytes
原稿用紙約35.75枚




木々の葉は新緑から濃い深緑へと姿を変え、道の脇に生えている草は夏の太陽を浴びるため背伸びをしている。

風はジワリと掻いた汗を乾かすように額を通り過ぎて行き、少し涼しく感じた。

高校に入学して3ヶ月。新しい生活にも慣れ、わりと楽しい生活を送れている。

1学期最後の学校行事とも言える、丸一日かけての期末考査が終了し、俺は大きく深呼吸した。

「一護〜!どうだった?テスト!」

深呼吸した後、目の前に出てきたのは深川慎二。

「まぁまぁだ。」

「そぉか〜。俺は、ダメだ〜!やっぱり1夜漬けで期末攻略は無理や。」

と、頭をボリボリと掻きながら慎二は苦笑いをして言った。

そこへショートカットヘアーの女が、俺が座っている隣に立った。俺は瞬時にこの女の正体が分かった。

「一ちゃん。テストおつかれさま!」

と笑顔で言うこいつは白水沙菜。俺とは中学2年のときから同じクラスで、なぜか高校も同じ。

しかも1年には6クラスあるのに、同じクラスの1年6組。・・・ようは腐れ縁ってわけだ。

「おい沙菜。もう一ちゃんはやめろって前から言ってんだろ。もう中学のとき見たくいかないんだよ。」

と、強く言うが、

「いいじゃない。なおらないものはなおらないの!」

と、笑顔。そのやり取りをみていた慎二は、

「なんだよ一護〜。お前沙菜ちゃんに『ちゃん』なんてつけてもらえるなんて幸せじゃんかよ〜。」

ホントに悔しそうに言うのだった。

「・・・。」

慎二はいっつもこのペースだ。俺は無言で立ち上がり、教室を後にする。

「おい一護!・・ったく。悪いな沙菜ちゃん!また明日!」

慎二は沙菜にそう言った後、俺の後を追いかけてきた。

そして、少し真剣な顔つきで言う。

「一護ぉ。少しは仲良くしてやれよ。沙菜ちゃんかわいそうだぜ?」

「・・・別に普通だ。」

「・・・そうか。でもなんか最近妙にー・・。」

「なんでもないもんはなんでもない。」

と、慎二の顔を見て言う。

「わかったよ。」

と言って、慎二はまたボリボリと頭を掻いた。



部活に所属していない俺と慎二は学校を出て、何かをする予定もないのでまっすぐ家に帰ることにした。

慎二とは学校を出て、少し川に沿って歩いた所にある小さな橋でいつも別れる。

「それではみなさん、また来週〜!」

「・・・明日だろ。」

「・・・ばれた?」

と、慎二は自分で自分の頭を叩き笑顔を作り、「じゃあな」と言って帰って行った。

学校、というより俺が住んでいるこの町ははっきり言って、田舎だ。

街と呼べる街に行くには電車で30分はかかるし、もともと電車はこの町で終電なのだ。

町をほんの少し離れると山があり、その山が1本の大きな川を作っている。その川はいくつかの細い川に分散し、

いろいろな町へと分かれていく。その1つが学校の前を流れているのだ。

一言に田舎。と言ってしまえばそれまでかもしれないこの町。けどこんな町、俺は嫌いじゃない。

綺麗な山、川、草木。田舎育ちの俺にとってはどれも大切なものだと感じているからだ。

それはおそらく慎二も同じなんだと思う。

俺と慎二は中学の時からの友達、というよりは小さい頃からの幼馴染だ。

慎二は俺のことならほとんどと言っていいほど知っている。

性格は無愛想な事とか、物事にたいして敏感でないこととか。

俺も慎二のことはよく知っているつもりだ。

いつもテンション高くて、お節介な奴。でもまぁ、そんなお節介は嫌いではなかった。

さっきの慎二の発言も、そのお節介から来たものだと分かっていた。



帰り道、俺はまたいつもと同じことを考えていた。

沙菜の事だ。

俺は沙菜と中学の時同じクラスだったせいか、まるで兄弟のように仲がよかった。

その当時は、沙菜を『恋人』となんて見るはずもなくそのまま刻々と時は進んでいった。

しかし、高校に入学したときの俺と沙菜におおきな『違い』生まれた。

沙菜は中学の頃と何一つ変わらず、ドジで、泣き虫で、鈍感で。それでも意地っ張りなまま。

でも俺は、高校に入学した人が誰でも味わう心の進化を堪能し、それに順応させるかのごとく変わって行った。

そう。大人への第1歩という心の進化を。

周りの目を気にしてはその目を避け、自分1人の世界を心の中で築きあげていた・・・。



俺が沙菜のことを意識し始めたのは高校に入ってから。

高校に入ったばかりの俺は、中学のときと何一つ変わらない行動をとり、沙菜とよく一緒に帰ったりしていた。

そのことが別に悪いことなんて思うはずもなく、そんな日々をすごしていたある日、新しくできた友達に

「お前白水さんと付き合ってんだろ?」

と言われ、その言葉に俺はすぐに答えることはできなかった。が、

「そんなはずねーよ。」

と白を切ったかのように、答えた。

その瞬間から俺は、沙菜と見えない距離を作った・・・。

そう。この瞬間から俺は心の進化を遂げたんだと思う。恥を怖がり、自分の殻を作るために。

それ以来、沙菜とはあまり話さなくなり一緒に帰ったり、遊んだりすることはなくなった。

沙菜もそんな俺を感じてか、一時期話さなくなった。が、それでも笑顔で話しかけてくる。

そんな俺の気持ちを知らない沙菜を見ると俺はなぜか辛くなる。沙菜はただ昔のように仲良く話したいだけなんだろう・・。

それなのに、俺は自分のプライド保持のために沙菜を犠牲にしてるようでならなかった。

沙菜を好きなのに・・・。そんな素振りさえ見せず、逆の態度をとってしまう・・・。

しかし、気づいた頃にはもう遅かった。

素直になろうとしても、自分の中にできた殻からをそう簡単に破ることはできない。

「人間は、変わってしまったものをそう簡単には変えられない。」

それが今の俺の中にある現実・・・。

「・・・。」

無言で空を見上げる。夕陽は朱色の光を町一帯に降り注ぎ、幻想的な光景を作る。

人の影は長く伸び、遊び道具を持った子供達は笑いながら家へと帰る。

「あの子供達のように素直になれたら、俺も気持ち楽になれるんだろうな・・・。」

そんなことをつぶやきながら家路を急いだ。





「っあぁ〜・・・。」

期末考査の終わった次の日の朝。

家を出てから伸びをし、浅く履いていた靴のつま先をトントンと地面にたたきつけてかかとをあわせる。

外の気温はここが田舎のせいかニュースで言っていたほどに暑くはなく、風を幾分か涼しく感じることができる。

俺は川沿いに走っている長い道をただ黙々と歩き、学校へと足を進める。

校門をくぐり、ゆるい坂に入ったところで後ろから声が飛んできた。

「一ちゃん。」

この声の主はもちろん、沙菜だ。

「おはよう。」

と笑顔の沙菜。

「おう。」

そう言ってまた前を向き歩き出す。そんな俺の後ろをついてくるかのように歩いている沙菜。

校門の坂には登校してくる生徒が次々と教室を目指し、歩いている。

その中の女子達の目が突き刺さってくる。はっきり言うと、・・・嫌な感じだ。

俺は後ろに沙菜がついてきていることを黙認しつつも、あえて話しかけることなく教室へと向かった。



授業中、窓際に座っている俺は外を眺めていた。

幸い太陽が俺を照らすことはないのだが朝に比べると少し気温が上がったことが肌を通して感じることができる。

「高校1年生だ。何も授業に集中する必要性もない。」

俺はそう思い、座ったままの体勢で目をつむり授業を終えた。

昼休み。つい1ヶ月前までは友達とわいわい楽しく弁当でも食べていたのだが。

最近は親が弁当を作るのがめんどくさいらしく、金を渡され、

「学食で済ませて。」

なんて無責任なことを言う。

まぁ、学食はいろいろとメニューがあるし、定食の内容は毎日のように変わるので栄養面で片寄ることはないだろう。

それに、弁当を作るために早く起きてもらうのもいい気分じゃない。

「おい一護。行こうぜ。」

んで、最近は慎二と2人でよく学食に食いに行く。慎二は弁当だったり学食だったり。

こいつが弁当の日は、学食に弁当を持参して2人で食べる。今日もいつものように2人で学食へと向かった。

俺は毎回のように定食を注文する。問題はその後。

「今日も空いてないな〜。」

と舌打ちをして慎二が言う。

「まぁ、待っときゃ空くだろ。」

そう言って見ると、すぐに席が空いた。

「ほらな?」

そう言って慎二のほうを向き笑顔を作った。

慎二は待つことが嫌いなのを俺は知っていたので、なだめるかのように言った。

そんな些細なことで楽しい昼食のひと時を壊されたらたまったもんじゃないからな。

席は人が一列に10人、向かい合いに座れる長机だ。俺達は向かい合わせに空いた席に素早く座った。

「あ〜腹減った!」

そう言って慎二は持ってきた弁当箱を素早く開け、プラスチックの箸でがっつくように食べ始めた。

そんな慎二を見ているといつも笑みがこぼれる俺だった。俺も目の前にある定食に箸を進める。

「なぁ一護。帰ってきたテストどうだったか?数学と英T。」

口にご飯を入れたまま、慎二が言った。

「ん〜、数学は84で英Tは89。」

「え〜っ!?」

どっひぇ〜の慎二。

「そんなに頭よかったっけか?お前いっつも授業中ボーっとしてんじゃん。」

「あぁ。俺ら部活入ってないだろ?だから家に帰って何もすることねぇし勉強してんだよ。」

さらにどっひぇ〜の慎二。

「・・・しらなかった。お前がそんなに秀才だなんで。」

「秀才じゃねぇよ。」

そう苦笑いする俺。

「そういえば慎二はどうだったんだ?」

「・・・聞くな一護!俺はお前の足元にもおよばねえ。」

と悔し顔。・・・なんだかな〜。

そんなことを言って、また箸を進めようとしたその時、隣の女子4人組の話が自然と聞こえてきた。

「ねぇねぇ。6組の白水さん、奥野先輩と付き合ってるって本当かな?」

・・・え?沙菜が?・・・付き合ってる?

俺は進めようとした箸を止めた。

「あ〜、私も聞いたことがある〜!確か、奥野先輩が告ったんだってよ?」

「え〜?奥野先輩から〜!?いいな〜。」

「奥野先輩カッコイイからね〜。」

・・・奥野先輩?そういえば、沙菜が入っている吹奏楽部の部長・・・。

部活動紹介のときにそんなのがえらそうに話していたな。

慎二もその話が聞こえたらしく、何も言わず俺を見ていた。

沙菜が・・・付き合ってるのか?どうなんだろ?

気にしないフリはしていたものの、好きなことには変わりない・・・。

わからないな。自分の気持ちが本物なのかどうか。

何も言わず俺を見ている慎二を無視し、止めていた箸をまた進めた。



学校は何もなく終了し、いつものように川沿いの道を歩いて帰る。

「期末も終わったし、あとちょっとで終業式だな。」

隣を歩いていた慎二が言った。

「おう。そだな。」

俺は慎二の言葉をあまり気にせず、そっけなく答えた。

「・・・なぁ。沙菜ちゃん、ホントに付き合ってんのかな?その先輩と。」

慎二が唐突に聞いてきた。が、なにかいつもと様子が違っていた。

「わかんねーよ。だいたい、その奥野って奴が告っただけで付き合ってるとは決まってないだろ?」

「・・・そうだな。」

そう、慎二はおそらく俺の気持ちを知っているんだろう。さっき聞いたときの慎二はいつもとは違い、

なんかこう、申し訳ないって言うか、なんかそんな感じがした。

「じゃあな。」

そう言って手を振る慎二。だがその顔はぎこちなかった。

手を振って後ろを向く慎二に声をかけた。

「慎二。」

振り向きかけた体を戻し、

「どうした?」

と聞く。

「・・・なにもお前が気にかけることじゃない。普通にしてろ。普通に。」

慎二は何も言わず、ただ笑顔を作った。

俺は自分の気持ちを慎二にすべて言ってしまおうかと思うが、

それは逆に慎二に余計な心配を増やしてしまうだけだと分かっていた。

「じゃあな。」

俺はそう言ってその場を後にした。



その夜。俺は今日の昼の話を思い出していた。

俺は高校に入って今まで、沙菜とまともに話してなかった。

いっつも沙菜が話しかけてきては俺がそっけなく流して・・・。

周りの奴らにはもう何も疑われることはなく、のんびり学校生活を送ってる。つもりだった。

けど内心違っていたんだ。

自分のプライドを保持しようとして、堅苦しい自分の決まりみたいなものを作って自分で自分を苦しめていた。

沙菜のことが好きなのに、今までまったく反対の行動をとって自分の殻にこもっていた・・・。

けど、今日の昼聞いた話で俺は気づいた。

俺は本当に沙菜が好きだという事を。

その話を聞いて焦りを覚えた自分の気持ちはウソじゃない。

しかし今更どうしろっていうんだ?今まで沙菜を突き放しといて、また元のように戻ってくれなんてむしのいい話だ。

沙菜もそんな俺にあきれかえってるころだろう。友達以下なんだと思ってるだろう。

「・・・・。」

窓から見える初夏の夜は、静かに時を刻んでいた・・・。





今日は午前中授業があった後に終業式。やっと待ちに待った夏休みを迎えられるはずだった。

なのにおれの気持ちは晴れ晴れとしない。その理由はただ一つ。

沙菜の事だ。あれから自分も変わろうとした。けど、結果話しかけることすらできなかった。

それに加え沙菜が学校を休みだして、もう3日になる。

俺は校長の長い話に耳を傾けることなく、沙菜のことばかり考えていた。

担任の話によると、沙菜は夏風邪をひいたらしく、寝込んでいると聞いた。

たしかに夏風邪というのは治りが悪い。そのせいで結局沙菜は終業式に出れなかったのだ。

1学期最後のHRが終わり、それぞれが楽しい夏休みの計画を頭に描きながら教室を離れ、家路につく。

しかし俺はそんなことを頭で考える余裕なんてなかった。沙菜は今どうしてるのか。風邪はどのくらい治ったのか。

そんなことを、自分の席のからいつものように空を見ながら考えていると、慎二が俺の目の前に来て言った。

「行ってやれよ、一護。沙菜ちゃんの事、考えてんだろ?」

俺はその言葉にいつものように反論しようとした。

しかし、開きかけた口は浅い息が漏れただけで、言葉をだせなかった。慎二は続けて言う。

「俺、気付いてたよ。一護の気持ち。お前のことだ、自分の気持ち隠して何もないように装ってたみたいけど、

小さいときからの付き合いの俺からしてみれば、お前が自分の気持ちに素直になってない時のことぐらい分かるよ。」

「・・・。」

俺は慎二の言葉を黙って聞いていた。

「お前が思ってることは誰もが抱くものじゃない。けど、そんな気持ちをもつだけ苦しくなるのは事実だ。

自分の気持ちにウソついて、そっけない態度を取っちまう・・・。そんな気持ちは決して悪くはないとは思うぜ?

けど、いつまでもそんな気持ちを自分の中に持ってたら、いつか自分のほうがつぶれちまう。

一護、お前は行かなきゃなんないんだよ。沙菜ちゃんのところに。沙菜ちゃんもまってるんじゃないのか?お前の事を・・・。」

俺は空を見たままだった。

「沙菜・・・。」

俺は自分の心に素直になっていいのか?こんなバカで惨めな自分なのに?

「慎二・・・。俺・・・。」

「ほら!待ってるぜ!沙菜ちゃん。」

そうやって笑顔で俺の肩をバシバシと叩く。

そのとき瞬間、俺はカバンを手に取り教室を出ようとした。

その教室から出ようとする足を止め、

「・・・慎二。・・・サンキュな。」

そう、慎二を見て言った。

慎二は何も言わず、俺を追い出すように手を振って、「早く行け。」と笑顔で言った。

俺も無言で笑顔を作り、教室を後にした。・・・慎二。ありがとな・・。





俺は走った。沙菜の家は中学校の時何度か遊びに言ったことがあるので、だいたいは分かる。

走っている間、俺は考えた。

沙菜の事を好きだったのに、なんでお見舞いにもいってやれなかったんだ。

慎二に言われるまで俺は自分で行動をとらなかった。なにもしなかった・・・。

なんてバカなんだ・・・。

沙菜は俺のことをどう思っているんだろう?

やっぱり友達としか思ってないのか?本当に奥野先輩と付き合ってるのか?

俺は沙菜にとって『友達』と言う存在までなのか・・・?

とにかく!いまの自分の気持ちそのものを沙菜に伝えたい!もう自分の殻にこもる事なんでうんざりだ!

周りの目なんてどうでもいいじゃないか!自分の気持ちに素直になってなにが悪い?俺は俺だ!

その時俺は自分の殻にこもる事を止め、昔の自分に戻ろうとしていた。

このままの素直な気持ちを沙菜に伝えたい!そう思い沙菜の家へと急いだ。



俺は沙菜の家に前にいた。沙菜の家は昔と変わらず、そこ立っていた。

俺は沙菜の家の前で立ち止まり少しためらったが、少し考えた後すぐにインターホンを押した。

「はい?」

インターホンに出てきたのは沙菜のおばちゃんだった。

「あの、一護です。沙菜の見舞いに来たんですけど。」

少し緊張した感じになってしまった。が、

「あら一護くん?わざわざありがとう。さ、上がって。」

と言われ、俺は遠慮なく沙菜の家に上がった。

「・・・お邪魔します。」

沙菜の家に上がると沙菜のおばちゃんが出迎えてくれた。

「一護君、こんにちは!沙菜今部屋にいるのよ。勝手に入っていいから。」

と笑顔で言った。

俺はその言葉に甘えて沙菜の部屋に続く階段を上って行った。

沙菜の部屋のドアには昔と少し変わっていて、「沙菜の部屋」という立て札があった。

そのドアを静かにノックする。

「・・・沙菜。俺だ。一護だ。」

しかし返事がない。

俺はゆっくりと沙菜の部屋のドアノブを回す。

静かに沙菜の部屋に入ると、沙菜はベットで眠っていた。

俺に気付いた沙菜は目を覚まし俺を見た。

俺はそんな沙菜の前に行き、何も言わず見ていた。

沙菜もはじめ驚いていたが、俺の姿を確認すると俺がいる方向とは反対の方向に寝返りうった。

俺は沙菜のうなじを見ながら言った。

「・・・風邪、大丈夫なのか?」

そんな俺の問いかけに沙菜は何も言わない。

俺もそんな沙菜になにを言っていいのか分からず、黙って目の前の沙菜のうなじを見ていた。

すると沙菜が突然、

「何しに来たの?」

と言ってきた。俺は本当のことを沙菜に言った。

「お前の見舞いに、来たんだ。」

すると舞は俺の顔を見ずに答えた。

「・・・なんで?」

沙菜の声は消え入りそうな、それでもしっかりした声で言った。沙菜は続けた。

「何で今ごろ来たの?私が風邪引いたってしってたくせに・・・。」

「・・・・・。」

俺は沙菜の答えに何も答えることができなかった。沙菜の言ってることに、間違いはなかったから・・・。

「・・・帰って。」

沙菜のその言葉が俺の心に「グサっ」と突き刺さる。

俺は沙菜の答えに何も答えることができず、ただ舞の言葉を聞いていた。

それもしょうがない。俺が、悪いんだ。

けど・・・。帰るわけには行かない。今帰ったら、沙菜とはこのままの関係になってしまう・・・!

「・・・嫌だ。」

俺は何とか言葉を振り絞って言った。

そのことばを聞いた舞は急に起き上がり、両手で強く俺の服をつかんで壁に押し付けた!

そして顔を俺の胸に埋めて、言った。

「何で一ちゃんに心配される必要があるの!?来てくれるのが遅いよ!

いっちゃんは高校に入って変わったよ!周りを気にして、いつの間にか私を避けるようになって・・・。

私、一ちゃんにとってなんだったの!?単なるお友達なの!?」

「・・・ぇ?」

俺は沙菜のいっている意味が理解できず、沙菜の言葉を待った。

「私は一ちゃんに、中学校の頃からいっぱいいっぱいアプローチしてきたのに・・・!一ちゃんは全然知らない顔して!

・・・私は怖くなった。一ちゃんが高校生になった時、カワイイ子を見つけて好きになっちゃうんじゃないのかな?って・・・!

私は中学校の時から一ちゃんの時好きだった!好きだったの・・・!だから私は一ちゃんの好きな女の子になりたい!

って思った。でも!どんなにがんばっても一ちゃんは私の事を振り向いてはくれなかった・・・。

私、こんなに一ちゃんの事が好きなのに・・・!」

「沙菜・・・。」

「私はその時思った。私のこの気持ちは、一ちゃんにとって邪魔なんじゃなのかもしれない・・・。

だからわたしは一ちゃんとただの友達でいようと思った。・・・でも、なんか自分の気持ちを抑え切れなくて。

悩んで悩んで、自分なりにものすごく考えた。そんな時、風邪引いて・・・。

一ちゃんは私が風邪引いてるのしってるはずなのに、すぐには来てくれなかった。

私はその時確信したの・・・!一ちゃんにとって私は、ただの友達なんだって・・・!」

「・・・。」

胸のなかで泣いている沙菜。俺は何も言うことができなかった。

俺の胸元は沙菜の涙で濡れた。そして沙菜はせきをきるように続けた。

「一ちゃん、私の事嫌いならはっきり言ってよ!ねぇ!そうじゃないと・・・そうじゃないと!

私ずっと一ちゃんの事思い続けちゃうじゃない!・・・そんなの、辛いだけだよ・・・!うぅ・・っ!ぇう・・。」

沙菜の嗚咽。

沙菜の涙。

そして沙菜の気持ち・・・。

俺はいままでその気持ちに答えないでいた。

でも俺も同じ気持ちだったんだと思う。

沙菜に嫌われること。自分の汚い部分を見せて嫌われるんじゃないかという恐怖・・・。

このとき気付いた。

お互いが好きだったのに・・・。

ただその一言を言うことができなかった。

『好きだ』と言う一言が。

沙菜は自分の気持ちを示すために精一杯だったのに。

その一言を言えなかったがために俺達は苦しんでいたのか・・・。

「・・・。」

俺は熱っぽい沙菜の体をゆっくり、そして優しく抱きしめた。

俺の目からも、大粒の涙が零れ落ちた。

そして、沙菜の頬へと流れ落ちる俺の涙。

俺はそんな沙菜をギュっと抱きしめて。

そして涙で濡れた沙菜の頬に。

そっと唇を近づけ、キスをした。

そしてその後、沙菜のの耳元で言うたった一言。

気付いていて言えなかった一言・・・。

近すぎて言えなかった一言を・・・。

「好きだ。・・・沙菜!ごめん・・・!ほんとに・・・。」

夏の夕日が降り注ぐ沙菜の部屋、

「私も・・・一ちゃんのことが・・・ぇう。・・・大好きなんだからぁ・・・!」

壁に寄り添って抱き合いながら、お互いがお互いの気持ちを確認しあった。

そして今度はお互いキスをした。



俺と沙菜は2人、ベットの上に並ぶようにして座っていた。

お互い自分の中に秘めていた思いをすべて出し切り、話すこともなかった。

「沙菜。・・・お前付き合ってるんじゃないのか?部活の先輩と。」

唐突な俺の質問に少し動揺していたが、顔に苦笑いを浮かべ、

「あ。奥村先輩のこと?」

俺は黙って頷いた。

「告白されて、断っちゃった。」

と、また笑顔。それに付け加えるようにして沙菜は続けて言った。

「それに、・・・一ちゃんがいたから。」

と言って俺のほうを見て言った。

そんな沙菜を見て、涙が出そうになる自分の気持ちをグッとこらえる。しかし、止められないものはしょうがない。

「・・・?一ちゃん?どうしたの!?」

俺はこらえきれず涙を流していた。

「俺、ダメだよな・・・。ホント、・・・なんにも気付かなくて。お前の気持ちも・・・知らないで・・・。傷つけて。」

今まで言えなかった思い。言いたくても言えなかった思い・・・。

「もうなにも我慢することはないんだ・・・。」

そう思うと、沙菜にかけた苦労の重さと、自分への怒りにも似た感情が押し寄せてきた。

そんな俺の手に、優しく手を伸ばしてくる沙菜。

「もういいよ。お互い言いたいこと、全部言い合えたんだから・・・。」

日落ちの遅くなった夕陽の光が朱色を帯び、沙菜の部屋の窓から降り注いでいた。

静かに、そしてしっかりと・・・。



「じゃあ、早く風邪治せよ。」

俺と沙菜は玄関の門を挟み、向かい合っていた。

「うん。今日は・・・ありがとう!」

と、笑顔。

「もう俺はもの笑顔を素直に受け止めることができるんだ。」

沙菜の笑顔を見てそう思った。

「来週の課外には治すんだぞ?風邪。」

「大丈夫!」

と、ガッツポーズ。

「じゃあな。」

そう言って沙菜の家を後にし、少し歩いたその時。

「一ちゃ〜ん!」

呼ばれた声に振り向くと、沙菜は、笑顔で大きく手を振っていた。

俺は最初唖然と見ていたが、自然と笑顔がこぼれ、手を振り返し再び家路へと足を進めた。





夏もいよいよ中盤を向かえ、太陽が昇っている間は蝉の鳴き声があちこちから騒がしく聞こえる。

小さい子供たちは川で泳ぎ、農家の人は腰を低く構え、田んぼの手入れをしている。

家の屋根には、気持ちよさそうに布団が太陽の光を浴びている。

課外が始まり、終業式前となんら変わりのない日々が始まる。

ただ、俺にとっては一部を除いて。

堅苦しい課外は午前中で終了し、家に帰ろうとする。

俺は授業が終わり真っ先にある人物のもとへ向かった。

「おい沙菜。」

沙菜は突然現れた俺にビックリしていた様子だった。

「どうしたの一ちゃん?」

「帰るぞ。」

「え?」

沙菜は、「どこへ?」といった表情を見せていた。

「一緒に帰るぞ。」

その言葉に最初は呆然としていたが、すぐに顔を真っ赤にしてうつむいた。しかし、

「うん!一緒に帰ろう!」

と、笑顔で言った。

校門をくぐり、川沿いに走る道を歩く。

「えへへ。」

「なんだよ、気持ち悪い。」

「えへへ。いいの!」

「そうか。」

隣で意味もなく笑っている沙菜をみて、俺も知らずのうちに自然と笑みがこぼれた。



真上から照りつける太陽。どこからか吹きつける心地よい風。

相変わらず一生懸命背伸びをしている草木。さらさらと流れゆく川の水。

一層深緑を身につけていく山々。雲の白さを際立たせる空・・・。

つい昔まで一人だった俺の心の中。

しかし今は、もうひとつの姿を俺の心に確認しながらゆっくりと進化を遂げる。

この町の、自然のように・・・。




>> END 
2004/01/29(Thu)18:53:53 公開 / ユウジ
http://feelingmind.sunnyday.jp/novel.htm
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■作者からのメッセージ
第3作目にあたるこの作品は、自分の中でかなりの力作だと思ってます。表現、描写、キャラクターの個性をフルに使用し、無駄な言語ははぶきながら、そのキャラクターを表現、など、できる限り小説の読みやすさ、伝わりやすさを重視して書きました。

この作品は「現代の恋愛感」をもう一度見直し、考えてもらいたい。そんなメッセージをこめた作品です。
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