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『ある日の12時の公園の』 作者:須賀 / 未分類 未分類
全角2037文字
容量4074 bytes
原稿用紙約6.4枚
「ねえ、今日のお昼から映画見に行かない?」
携帯電話の向こうから恋人の嬉々とした声が聞こえる。オレは寝ぼけ眼を擦りながら何か返事をした。自分で何を言ったのかわからなかった。
「もう、そんなこと言って―――」
彼女は照れているようだった。頬を染めてはにかんでいる様が容易に想像できた。何か言っているようだったけれど、眠たさの所為かオレにはよく理解できなかった。
適当に返事を返す。
「うん、それじゃ十二時にいつもの―――」
いつものってどこだったっけ。そう思ったが、深く考えないようにした。いつものようにちゃんと時間通りに行けるだろう。

オレは電話を切った。

いつからオレはこんな人間になってしまったのだろう。
昔はもう少しマシなヤツだった気がする。
初めてできた彼女のことを四六時中考えて、電話一つするのに無意味に心臓を圧迫させていた。やたらと記念日を作ったりした。
今では、その中のひとつも思い出せない。
しかし、その日になると何故か彼女に会っている自分がいた。その自分の脇には何かしらプレゼントが抱えられていて、目の前にいる彼女と笑顔で交換するのだ。暗闇の中から白い仮面越しに、オレはそれを眺めていた。

不意に、隣で何かが動いた。

「ねぇ、今の電話だれ……?」
全裸の女が白い指をオレの胸に這わせていた。おぼろげながら昨日、家に呼んだ記憶があった。いつからそういう関係になったのか覚えていなかった。
オレは、恋人の名前を言った。
その女はくすくすと笑った。
「ふふ……あの娘ったらアタシたちが何をしてるのか知ったら、きっと心臓止まっちゃうわよ」
女の指がオレの胸の上で滑っている。白い、蛇に見えた。
「―――――」
何も聞こえないけれど、女が何を求めているのかわかった。
オレが彼女としていないことを、この女はしたいのだ。
ベットの軋む音が聞こえて、オレの意識は無くなった。

オレは、何をしているのだろう――――。
黒い、タールのように重たい闇に埋もれて行く。

気づくと、オレは公園に立っていた。周りは真っ暗だった。電球の切れた街灯がオレを見下ろしている。

………サラサラ………

音がして、オレは後ろを振り向いた。暗い、影の中に砂場があった。あたりは真っ暗だというのに小さな男の子が何か作っていた。
オレは近寄って何を作っているのか聞いた。自分でも吐き気がするような甘ったるい声だった。
男の子は、オレの声が聞こえないかのように、黙々と何かを作り続けた。暗くて作っているものも男の子の顔もわからなかった。オレはため息をついてその場から去ろうとした。可愛げの無いガキがどうなろうと知ったこっちゃ無かった。
子供から視線を上げる。
そこには二階建てのアパートが建っていた。
六つの窓があって、上の段の真ん中の窓だけ明かりがついていなかった。
そこそこ5メートルくらいの高さのそれが、途方も無く高く思えた。心臓が締め付けられるような感じがした。
これだけ電気がついているのに、何故子供の顔が見えなかったのだろう。
オレは再び足元の子供を見た。
作っていたものはすでに壊されていた。
子供はアパートの明かりが点いていない窓を見上げていた。表情は無かった。ただ、暗い窓を見つめていた。
その子供の顔は、昔のオレだった。ずっと昔ののオレの顔だった。
公園に、真夜中だというのに鐘の音が鳴り響いた。
時計を見上げる。
針は、十二時を指していた。意識が途切れた。

音量のボリュームを上げていくように、音が聞こえてきた。視界もだんだん明るくなっていく。
目の前をサラリーマンが汗を拭きながら足早に通り過ぎる。ベンチでハトが老人のエサに集っている。噴水の周りでOL達が小さな弁当箱を広げている。さっきとは違う公園だった。空で太陽が輝いていた。
公園の中央にある時計を見上げると、針が十二時を指していた。
魂が抜けたように、その場で棒立ちになる。

「―――――」
オレの名前を呼ぶ声がした。後ろを振り返ると、彼女が手を振りながらこっちに小走りで近寄ってきていた。その手にはバスケットが握られている。
「ごめんごめん、サンドイッチ作ってたら時間掛かっちゃって。でも電話で食べたいって言ってたカツサンド、上手にできたんだよ?」
彼女がバスケットの中を見せてながら舌を出して笑っている。
「そういえば、さっきカナコにデートの事言ったらからかわれちゃった」
はにかんだその顔はとにかく無垢で―――
「カナコもいい人いればいいのにねー」
疑うことなんて知らない顔で――――
「………あれ? 泣いてる、の……?」
心配そうな顔で彼女がオレの顔を覗き込む。頬に熱いものがつたっていた。
「どうしたの? どこか痛いの? 今日は帰ろうか? ―――あっ」
オレは彼女を抱きしめた。バスケットが落ちる音がした。オレはひたすら彼女に謝った。強く抱きしめて、周りの目も気にせず、嗚咽を漏らしながらゴメンと言い続けた。

彼女は戸惑いながらもオレの背中をそっと撫でてくれた。
2004/01/05(Mon)12:27:50 公開 / 須賀
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■作者からのメッセージ
初書きです。駄文で申し訳ないです。
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