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『真夏の待ちぼうけ』 作者:織方誠 / 未分類 未分類
全角2971.5文字
容量5943 bytes
原稿用紙約10.25枚




   眩暈を覚えるような、空の青。
   手を伸ばしても、永遠に届くことの無い場所。

   君は空に希望を見て、
   僕は空に絶望を見た。

   泣き叫ぶ声が響く。
   声を嗄らすのは、だれ?





 夏の空は爽やかなように見えて、どうにも暑苦しさが拭えない。
 目で見るものと肌で感じるものを切り離すことは、それはそれで難しいようだ。
 モクモクと成長を続ける入道雲を眺めながら、木陰に寝転んだ僕は溜息をついた。
 待ちぼうけ。
 それも、一時間。
 いくら僕が待つことに慣れているとは言え、この暑さ。みんな大好き夏休みの、ど真ん中ストライク真夏日。気温・湿度、ともに知りたくも無い。知れば余計に暑くなりそうだ。
 そう遠くない場所から聞こえてくる部活動の声も、更なる暑さを演出してくれる。
 あれは多分、サッカー部だろう。50メートル走用のコースを、妙な動きをしながら行ったり来たりしている。最初は面白がりながら眺めていたのだが、野郎どもが集団で動いているところを見るだけで暑苦しいと言うことに気付き、やめた。
 僕がいるのは校庭の隅、校舎から一番遠い場所にある大木の根元。茂った緑から木漏れ日が降り注いでいて、なんとなく詩人になりたいような気持ちになる。なれないけれど。
 広い校庭に足を向けて寝転んでいるので、軽く上体を起こせば青空を望むことができる。
 ―――青空は希望の象徴だと、言っていたのは未だ来ぬ待ち人だ。
 どんなに手を伸ばしても届かないから、いつか掴んでやろうと夢を持つことが出来る。
 見果てることのない夢がそこにあるから、未来に希望を持つことが出来る。
 大きな瞳を輝かせて明るい未来を語る人は、とても幸せそうだった。そんな人を見ているだけで、たいして幸せを感じたことの無い僕でも『ああ、幸せってこんな感じなのかな』と思うことが出来た。
 優しい気持ちに満たされる。そんな雰囲気を持つ人。
 おっとりし過ぎて、こうして待ち合わせの時間に遅れることは喜ばしくないことだが。
 それにしても、遅い。時計を見ると、すでに一時間半が経過している。
 またどこかで転んだのだろうか。いや、まだ家を出ていないのかもしれない。家の鍵が見つからないとか、時計をどこに置いたか忘れたとか。いや、もしかしたらまだ起きていないのかもしれない。それとも、待ち合わせの時刻を間違えているのだろうか?
 考えられることが多すぎて、考えるだけで時間を潰すことが出来てしまう。けれど、一時間半もあればさすがにネタも尽きる。
 さて、次はどうしようか。
「……こんな場所で何してるの、裕香」
 不思議そうに、というよりは訝しげに尋ねてきたのは、同じクラスの高須賀チサだ。
 背中に『石原高校陸上部』と書かれた白いシャツに、白いラインの入った赤いジャージ。
「客観的に見て、何しているように見える?」
「帰宅部の麻生裕香が優雅な夏休みを練習に勤しむ運動部の方々に見せびらかしてる」
「当たらずとも遠からじって感じだね」
 笑いながら答えて、僕はゆっくりと上体を起こした。
 つややかなショートカットの黒髪と、利発そうな顔立ち。すらりと伸びた長い手足がなかなかに魅力的な高須賀は、小さく溜息を吐く。
「一週間くらい前からそうやって其処にいるでしょう。何か目的でもあるの?」
「目的ならあるよ。ここで待ち合わせをしているんだ」
「待ち合わせ? 誰と?」
「彩奈と。」
 そう答えると、高須賀は驚いたように目を見張った。
 どうして驚くのだろうか。僕と嘉田彩奈の仲の良さは、クラスメイトである高須賀だって良く知っている筈だ。夏休みに入るまで、毎日目にしていたのだから。
 それとも、相手が彩奈であることに驚いたのではなく、互いの家が近いのにわざわざこんな場所で待ち合わせしていることに驚いたのだろうか。
 ここで待ち合わせをしているのは、彩奈の指定。目的は恐らく、学校の図書室。なぜなら、夏休み延滞手続きを取っていなかった本を返しそびれたと言っていたから。職員室で日直の先生にでも頼んで、図書室を開けてもらうつもりなのだろう。
 そして僕はその付き添い。兼、用事が済んだ後の遊び相手。
 ―――それにしても、遅いなあ。
「ねえ、本気で言ってるの?」
「何が? 質問の意図が良く判らないんだけど……」
 本当に判らなくて尋ね返すと、何故か高須賀は哀しそうに俯いてしまった。
 そして、涙を堪えるように唇を噛み締める。
「た、高須賀?! どうしたのさ?!」
 驚いて跳ね起きた僕は、そんな高須賀の両肩に手を添える。
「あの、その……高須賀?」
 オロオロしながら顔を覗くと、急に顔を上げた。
「彩奈、来ないんでしょう。もう、どれくらい待ってるの?」
「一時間半。えっと、正確には一週間と一時間三十六分……二十七秒、かな」
 後半は腕の時計を見ながら答えると、高須賀は口元で小さく笑った。
「そっか。……早く来るといいね」
 何故か、とても哀しそうな笑顔だった。
 その理由が判らなくて首を傾げる僕を見て、再び俯いてしまった高須賀は「それじゃ。」と言って走って行ってしまった。
 さすが陸上部。そのまっすぐな背中はすぐに遠ざかって行く。
 ……結局、何だったのだろうか。彼女の言いたかったことが、さっぱり判らない。
 そういえば、この一週間、判らないことがたくさんある。
 食事の時やテレビを見ている時、家族が僕の様子をちらちらと窺っているように感じるし、出かける時も必要以上に心配している。何か、不安にさせるようなことでもしただろうか。
 それに、どういうわけか一週間以上前の記憶が曖昧だ。頭でもぶつけたのだろうか。
 とにかく、判らないことが多すぎる。考えることを放棄してしまうほど。
 ―――なんだか、気分も滅入って来てしまう。
 それにしても遅いなあ。早く来てくれないだろうか。
 彩奈が来れば、こんな気持ちは吹っ飛ぶのに。
 彩奈が笑ってくれれば、幸せな気持ちになれるのに。




 だから早く来てよ。
 そして、笑ってよ。

 真夏の待ちぼうけは、辛いから。



















 結局、彩奈が来ないまま夏休みは終わってしまった。
 どうしてだろう。彩奈の席は、何故か誰も座っていない。
 どうしてだろう。始業式で校長が、沈んだ顔で何か話している。
 どうしてだろう。その校長の話がまったく判らない。
 どうしてだろう。友人たちの会話も少しも判らない。
 どうしてだろう。どうして彩奈は笑ってくれないんだろう。
 どうして、そんなに冷たいの?
 どうして、何もしゃべってくれないの?
 どうしてどうしてどうしてどうして。
 判らない判らない判らない判らない。
 ―――――判りたくない。





 青空は、希望なんかじゃない。
 どんなに手を伸ばしても届かないのなら、最後に得るものは絶望だけだ。
 だって、あの日。黒い服を纏った人々の中で空に向かって泣き叫んだ時。
 希望など、持つことは出来なかった。
 青空は、無情に絶望を突きつけるだけだった。


 僕はもう、希望を持つことはできない。
 幸せを感じることも出来ない。

 君の笑顔を失ってしまったから。




                                   [Fin]
2003/12/21(Sun)21:42:55 公開 / 織方誠
http://www.geocities.co.jp/Bookend-Ryunosuke/5263/
■この作品の著作権は織方誠さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
お久しぶりと言うか何と言うか……織方です。
先日、ハッピーエンドな話は難しいと改めて痛感し、今日も今日とてバッドなエンドの話となりました。
リハビリ第二弾。深い意味はありません。
読んでくれた方それぞれに、何か思うことがあればそれで良いかと。
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