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『だから僕らは空を飛ぶ−3−』 作者:柳沢 風 / 未分類 未分類
全角2387.5文字
容量4775 bytes
原稿用紙約9.85枚
涙が止まらなかった。
あのことは、
どうしても忘れることができない。
いや、
むしろ忘れちゃいけなかった。
最愛の姉の『死』が、
私を決心させてくれたから。




「私は『空を飛びたい』の」
アリアはぼそりとつぶやく。
「お姉ちゃんは私に、『空を飛ぶ』ことが『自由』いうことに繋がると教えてくれた。
だから私は・・・、この星全体を自由にさせるために来たの。
お姉ちゃんが『このままだと世界がなくなる』っていってたから」
クロウは聞いてから少しため息をついて言った。
「あのなあ・・、そんな話をなんの関係もない俺に言ったら、
俺まで『空を飛ぶ』ことに巻き込まれるかもしれないかも・・・」
それを聞いてから、アリアは少し考えてからはっとした顔になった。
「あ、そう言えば」
クロウはげっそりとした。
そんなクロウを見ながらアリアは少し考えた。
クロウに話してもいいような、
それより、言ったら味方になってくれるように思った。
でも、
世の中そんなに甘くない。
アリアはゆっくり立ち上がった。
そして頭をゆっくり下げた。
「ありがとう。聞いてもらえてよかった。
もしも何か出来るようなことがあったらよろしく」
と言って自分の小さなバックを漁りだす。
するとクロウが評し抜けた顔になった。
「な、何やってるんだ?」
クロウが眉間にしわを寄せながら言うと、
アリアはバックから小さなネックレスを取り出した。
「・・・お礼、これ位しかないや」
クロウはそれをしげしげと眺める。
「これ、あんたの親の形見じゃねえか?」
アリアは少しぎくりとした顔になる。
クロウは深くため息。
「俺はこんなのいらない、それにこれ大事なものだろ?」
「でも・・・!」
アリアが言いかけた時、
 カシャーンっ
アリアの手からネックレスが自分から動くように落ちていった。
その時、
「うあああああああ!!!」
道具屋の玄関から店主の叫び声。
ふたりはばっと玄関へ向かう。
玄関に着いたとき、
ふたりは顔を真っ青にさせた。



「父さん、母さん!?」
クロウが叫ぶ。
アリアは目を丸くさせた。
そこにいたのは、
真っ黒いひらひらした服を身にまとった人間だった。
そしてその服に付いたマーク、
それは空を飛ぶことを夢見た人間を処分するためにいる軍隊のマーク、
『デモント・スカイ』のマークだった。
その中のふたりが進み寄って話し掛けてきた。
「クロウ、知ってしまったんだな」
クロウが愕然とした顔で前の男女に言う。
「なんなんだ、意味わかんねえ・・・、
今まで自分たちが『デモント・スカイ』っていう素振りだって見せたこと・・!」
「気付かれないためだ。『極秘』だからな」
男が言う。
その顔は無表情だ。
そして男はまた口を開く。
「それでそこのガキ、そのネックレス・・・、
『空を飛ぶ』ことを思う愚かな人間どもの印、
『ブルー・スカイ』のネックレスだな・・・?」
アリアは、いつの間にか握っていたネックレスをバックに急いで入れた。
男はにやりと笑う。
「クロウ、別れだな。
『ブルー・スカイ』の人間と関わってしまったからには、
・・・殺すしかない」
その顔は、
いつまでも無表情。
アリアは漠然とした。
そして震えた声で言う。
「あんた・・・、それでも親!?
自分の子供をどう思ってるのよ!」
「ア・・リア・・・」
クロウの震えた声。
アリアは、身代わりになって死んだ親のこと、姉のことを思い出していた。
親は子供のことを心配して当然だ。
それなのにこのふたりは、平気でクロウを殺そうとしている。
そんなの酷すぎる・・!
そのとき、
「撃て」
アリアの前にさっと誰かが腕を出す。
バーン!




気付いたとき、
アリアはクロウの背中に乗って、
草原を走っていた。
「・・・・ここは?」
アリアが聞くとクロウはアリアを降ろす。
「ここは村のはずれの草原」
クロウは無愛想に言う。
アリアはそのとき、
不思議と頭が回った。
「両親は?・・・『デモント・スカイ』は?」
クロウは軽く頭をかく。
「親は多分死んだ」
「・・・・え?なんで・・!」
アリアが叫ぶとクロウは下の石を拾って投げる。
「自分が『撃て』って言ったとき、
撃とうとした兵士を反対に撃ったのさ」
アリアはぽかんとする。
「なんでそんなこと・・・!」
「・・・・・わかんねー・・。
意味わかんねえよな、・・・なにをしたかったんだ・・」
クロウは動きを止める。
アリアはなんとなく思ったことを言った。
「もしかして『分かってた』?こうなることを・・」
クロウは目を見開く。
「は?どういう意味・・・」
アリアは少し頭をひねる。
「わかんないけど」
クロウは軽く舌打ちする。
変わりにアリアは言った。
「クロウ君って優しいねえ」
「な!?」
クロウは大声を出す。
アリアは笑う。
「だって、撃たれそうになったとき、
私をかばってくれたでしょう?」
そのとたん、クロウの顔が赤くなった。
アリアは言う。
「ありがとう。
・・・このネックレスの意味がわかったし、
私、行くよ。
クロウ君、両親のこと・・・、なんとも言えないけど・・」
するとアリアが言う前にクロウがアリアのバックを取り、
すたすたと歩き出した。
「な・・何!?」
「行くんだろ」
アリアは少し頬を染めて笑った。
「じゃあ、一緒に行ってくれるの!?」
クロウは返事をしない。
でもアリアは笑ってついて行った。

『お姉ちゃん、
仲間が出来ました。
少し無愛想だけど、優しい人です。
あなたの言葉に少し近づいていっています。
私は、いつか『空』を飛びます。
あなたの分まで・・・』



俺は、今はじめて『空を飛びたい』と思った。
何でかはよく分からないが。
あの少女に付いていったら、
両親の謎がわかるような気がした。
あいつは、
なにか人を引き付けるところがある。
俺も、
あいつの何かに惹かれているのかもしれない。






これが、
ふたりの出発までの物語。


2003/11/13(Thu)22:08:44 公開 / 柳沢 風
■この作品の著作権は柳沢 風さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
題名は「運命の出発」って感じです。
1,2話で感想くれた方、ありがとうございます!!
この話、書いてて疲れました。
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