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『真実の名−蒼の世界−終章』 作者:HARU / 未分類 未分類
全角1651文字
容量3302 bytes
原稿用紙約5.65枚
 「ここが・・・ウルグ街・・・やっと着いた・・・」
膝を押さえて『GP−1055』は呟いた。息を落ちつかせて歩こうとした時、
『GP−1055』の前に一人の女性が立っていた。
彼女の存在に気付いていなかった『GP−1055』はナイフをかまえた。
彼女は微笑み、語りかけてきた。
「私は、貴方の敵ではありません。」

 −私に語りかけてきた人−

 『GP−1055』はすぐに確信した。すぐにナイフをしまい、非礼をわびた。
「貴方がここに来たと言う事は・・・全てを知りたいのですね。」
「・・・はい。」
「・・・では、教えましょう。貴方は暗殺用のドロイド、と教えられましたね。
貴方は確かに造られました。・・・二年前に。」
「・・・二年前!?」
『GP−1055』は驚いたような口振りで反応した。
 「貴方は二年前までは、ここウルグ街の一員でした。しかし、貴方は二年前に姿を消してしまいました。街の者は皆、心配しました。でもその心配をよそに、貴方は帰って来なかった・・・」
「ちょっと待って!じゃあ、私は今までの二年間何を・・・!」
彼女の言葉をかき消すように話したが、二年間何をされていたのかを彼女の目から感じ取った『GP−1055』は言葉を失った。
「貴方は二年間眠らされていたのです。機械の体が錆び付かないように特殊な液体に浸されて・・・そのときからもう、人間のときの記憶を抹消されていたのでしょう。・・・もう私の事も解らない?『クリア』・・・」
「・・・『クリア』・・・?私の・・・名前?」
信じられないような口振りで彼女に問いかけた。
その問いを聞いて彼女はゆっくりと頷いた。
「待って・・・何で私の事、そんなに知ってるの・・・?」
少し震えながら『GP−1055』は彼女に問いかけた。
彼女はゆっくりと口を開いて
「それは・・・私が貴方の・・・母親だからよ。クリア。」
「お母さん・・・?」
『GP−1055』は信じられなかった。今まで機械だと思っていたのに、
自分はもともと人間の子供だったということが。
「もう、『GP−1055』という『番号』はお捨てなさい。
貴方はもう『クリア』。私の可愛いたった一人の娘・・・」
「本当に・・・もうこんな『番号』捨てて良いの?」
彼女はこくり、と頷いた。
クリアは自分の頬を熱いものがつたうのを感じた。
「な・・・に・・・これ。・・・涙?何で。私は・・・機械なのに・・・」
彼女はクリアの涙を拭きながら囁いた。
「貴方は頭の部分だけ、人間なのよ。だから、涙だって出るのよ。
さあ、もう泣かないで自分でケリをつけてきなさい。
私はずっとここで貴方を待ってるわ。」
 母に見送られ、クリアは走った。自分をこんな体にした人間たちにケリをつけるために・・・

 「遅いな。連絡が途絶えて何時間だ?あいつを少し教育しなおさなければならないな。・・・ん?」
「・・・どうした?・・・うわっ!」
 何かが光った。爆破装置だった。クリアは自分が造られた建物を爆破した。
今までの二年間の空白を埋めるためと、自分の人生を狂わせた過去を二度と思い出さないよう願いを込めて・・・。

 ウルグ街では住民たちがクリアの帰りを心待ちにしていた。
夜明けと共にクリアは生まれ故郷に帰ってきた。クリアを発見した人々は口々に
「お帰り」 「待ってたぞ」 「そんな体なんか気にすんな」 「また一緒に遊ぼう」 「心配かけさせて」 などと言って手を振っていた。それを見たクリアは
これからも一緒にいよう。体なんか関係無いんだと感じた。
クリアは走った。自分を認めてくれる『仲間』の元へ。
 
 クリアの心の中には音が流れていた。
 
 ・・・ゆらゆら、たぽん。ゆらゆら、たぷん・・・
 
 クリアはこれが大地や体を駆ける水の旋律だと知っていた。
 
 『水の旋律はおまじない』

 −昔お母さんから聞いた言葉、これだけは覚えている−

 ・・・ゆらゆら、たぽん。ゆらゆら、たぷん・・・

 また新しい一日が始まる 

 ―蒼の世界が広がっているこの地で―
2003/11/03(Mon)18:46:27 公開 / HARU
■この作品の著作権はHARUさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
えー、終わりました。如何でしたか。「真実の名−蒼の世界−」個人的には終わり方が気に入ってます。
感想、ダメ出しなど、次回の小説の参考にしたいと思っていますので、良かったら是非お願いします。
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