オリジナル小説 投稿掲示板『登竜門』へようこそ! ... 創作小説投稿/小説掲示板

 誤動作・不具合に気付いた際には管理板『バグ報告スレッド』へご一報お願い致します。

 システム拡張変更予定(感想書き込みできませんが、作品探したり読むのは早いかと)。
 全作品から原稿枚数順表示や、 評価(ポイント)合計順コメント数順ができます。
 利用者の方々に支えられて開設から10年、これまでで5400件以上の作品。作品の為にもシステムメンテ等して参ります。

 縦書きビューワがNoto Serif JP対応になりました(Androidスマホ対応)。是非「[縦] 」から読んでください。by 運営者:紅堂幹人(@MikitoKudow) Facebook

-20031231 -20040229 -20040430 -20040530 -20040731
-20040930 -20041130 -20050115 -20050315 -20050430
-20050615 -20050731 -20050915 -20051115 -20060120
-20060331 -20060430 -20060630 -20061231 -20070615
-20071031 -20080130 -20080730 -20081130 -20091031
-20100301 -20100831 -20110331 -20120331 -girls_compilation
-completed_01 -completed_02 -completed_03 -completed_04 -incomp_01
-incomp_02 -現行ログ
メニュー
お知らせ・概要など
必読【利用規約】
クッキー環境設定
RSS 1.0 feed
Atom 1.0 feed
リレー小説板β
雑談掲示板
討論・管理掲示板
サポートツール

『謝罪』 作者:UU / ファンタジー 未分類
全角1886文字
容量3772 bytes
原稿用紙約5.1枚
謝り続ける「彼」は「私」に何をしてしまったのだろうか。そして謝る「彼」を見て「私」は何を考えているのだろうか。
「本当にすまなかった! こんなことになるなんて思ってなかったんだ!」
 彼が叫んでいる。どれくらい経ったのか私には分からないが、彼はずっと私に謝り続けている。
もう謝らないで欲しい。私はこれ以上苦しそうな彼を見ていたくないのだ。
「君じゃなく僕がそうなるべきだった! どうしてだ! どうしてなんだ! 僕は!」
 一時よりは大分ましになったが、いまだ彼は叫び続けている。哀れな彼の耳には私以外の言葉は入ってこないようだ。いつまでも謝り続ける彼にもう止めてと声をかけたいが、その願いは叶いそうに無い。彼と私ではもう住んでる世界が違うのだから。
 私は今日死んだ。5階立てのマンションの3階から頭から落ちた。即死だったのか、それとも死ぬまで少しでも粘ったのかは分からない。どうせ私のことだから風前の灯火のような自分の命も自ら吹き消すように死んだのだろう。死ぬ直前の景色だけではなく、生きていた時の全ての記憶がまるで夢のようにおぼろげになっている。
 ただ私がはっきりと覚えていることといえば、彼は自分の命を捨てようとしたこと、私はそれを止めようとしたこと、そしてその二つは失敗して、私は
「一体僕はどうやって君に償えばいいんだ! 教えてくれ! 答えてくれよ! 聞こえてるんだろ!?」
 彼の声が私の思考を遮る。私が耳をふさいでも彼の声はクリアに届いてしまうため非常にうるさい。死んだ身でも煩わしさは生きていた時と同様に感じるらしい。思えば彼はずっとそうだった。彼の思考を妨げると、この世の終わりのように嘆くくせに、私が考え事をしていて彼の相手をしなければ猛烈に怒り出す。生きにくい性格の上に神経質もあいまって彼は自殺など考えたのだろう。そんな彼でも私は愛していたのだろうか。身体を張り彼の自殺を止めようとするほどに。
 彼がどうやって拳銃など手にしたのかは知らないし、知りたいとも思わない。彼が拳銃を頭につきつけ、眼をつぶり、今にも引き金を引こうとしていたところに、浮かれ気分の私が帰宅した。自分でも驚くほどの素早さで彼から拳銃を取り上げた。それまでは良かった。その後の彼の行動までは予想していなかったのだ。お気に入りのおもちゃを取り上げられた子供が駄々をこねるかのように彼は暴れ、私から拳銃を取り返そうとした。
 不意打ちのように物を取り上げるのは女の私でも容易だった。しかし真正面から取り合うとなれば男の彼に分がありすぎた。このままもみ合いになってしまうとまずいと判断した私は、ベランダから拳銃を放り投げようとした。しかし彼は私の意図を察したのか、あろうことか私に殴りかかってきた。なんどか彼とは喧嘩をしたが、ここまで彼が本気で殴りかかってきたことは無かった。なすすべなくベランダへ身体ごと殴り飛ばされた私に聞こえたのは、耳をつんざくすさまじい発砲音と、短く、かすかにうっと唸った彼の声だった。
「君に殺人なんてさせたくなかった…僕は自分で死ぬつもりだったんだ!」
 彼は自分の命を捨てようとした、私はそれを止めようとした。結果その二つは失敗し、私は彼を殺してしまった。そこからは良く覚えていない。自分が何をしたのか、その罪の重さを、はっきりと受け止めてしまう前に、逃げるようにして死を選んだのだろう。結局私も彼も死んでしまったのだ。
「どうして邪魔をしたんだ!! 君も死なずに済んだだろうに!!」
 彼がまだ何か叫んでいるようだ。もはやまじめに聞く気も起きない。なにしろ死んでからずっと喚いているし、私は彼の顔も見たくなくなってしまった。お互い死んだ身のはずなのになぜ彼だけが私に話しかけられるのか疑問ではあった。だがどうやら彼は天国に行き、私は地獄に落ちるらしい。私はキリスト教でも仏教でもないが、殺人を犯した上に自殺を選んだのだから地獄行きは妥当なところといったところだろうか。それにしても彼が天国行きとはどういうことなのだろうか。本来自殺しようとしたのは彼のはずなのにこれではあんまりじゃないか。あの世でも過程よりも結果が重視されるとは思わなかった。
「君を巻き添えにしたことを本当に後悔してるんだ。許してくれ…」
 彼はずっと謝っているが、許す気など私にはさらさら無い。許したとしても地獄から天国へは言葉は届かないから伝えようも無い。そもそも彼はなぜよりにもよって私の誕生日に自殺しようと決めたのだろうか。そしてなぜ、そのことについての謝罪がまだ無いのだろうか。
 彼は間違いなく私の誕生日を忘れていた。
 この事実がある限り、彼が何日、何年謝ろうと私は彼を許すことはないだろう。

2011/11/26(Sat)01:37:05 公開 / UU
■この作品の著作権はUUさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
今回短編を初投稿させていただきました。UUです。
ジャンルはホラーにしようかと思って書き始めたのですがなんだかコメディチックになってしまったのでファンタジーにしました。
正規表現を見て、最低限のルールくらいは守ろうと努力をしましたが、至らない部分は多々あると思います。ご指摘や感想をお待ちしております。
この作品に対する感想 - 昇順
感想記事の投稿は現在ありません。
名前 E-Mail 文章感想 簡易感想
簡易感想をラジオボタンで選択した場合、コメント欄の本文は無視され、選んだ定型文(0pt)が投稿されます。

この作品の投稿者 及び 運営スタッフ用編集口
スタッフ用:
投稿者用: 編集 削除