- 『両想いになるっていうこと(仮)』 作者:空夢 / リアル・現代 恋愛小説
-
全角4366文字
容量8732 bytes
原稿用紙約16.45枚
好きな人と両想いになるっていうこと
それってすごいことだって、最近やっと気付いたの
だって私の恋の相手はすごくモテるから
ライバルが多いんだ
「嫌そうですね?」
放課後の教室
そう言う彼は、同じ委員会でひとつ年下の男の子
委員会の仕事があり、今この教室には彼と私だけが残っている
仕事をする手をすすめながらも、ふたりで雑談
「だって私、あいつタイプじゃないもん、」
今日の昼休み、私は同級生のある男子に告白された
この学校では結構モテる男子
そんなモテ男がどうして私になんか…
明日返事を聞かせてくださいって言われた
そんな告白シーンを彼、翔くんに偶然見られてしまった
「本当、理想が高いですね。僕が考えるにあの人はこの学校で一番モテるんじゃないかと?」
翔くんは分かってない、確かにあいつもモテるけど、翔くんファンだって相当いるもの
あいつよりファン多いと思う…
まあ、私もそのファンのひとりかもしれない
ファンというより、…本気で好きなんだけど
「いーのいーの、きょーみないっ」
「先輩はなんでモテるのに彼氏作らないんですか?」
「…モテないよ、それに…」
「それに?」
「私好きな人いるもん」
一瞬
翔くんの顔が曇った気がした
「…そうなんですか、」
「え、何よ急に元気なくなっちゃって」
「べ、別になんでもありませんよ!」
「…気になる…」
「まあいいじゃないですか」
まさか…なんてことは考えないようにしよう
期待した分だけ、間違いに気付いた時のショックが大きいんだから
「私の話ばっかりヤメよ、翔くんはどうなのよ?」
「え?」
「彼女、いるんでしょ?最近どうなの?」
言って後悔した
今まで聞きたくても聞かなかったのに
翔くんには可愛い彼女がいるという噂がある
確かにどんな彼女なのかは気になっていたけど…
今まで怖くて聞けなかったのに
こんな形で聞いてしまうなんて
本当はこんな話聞きたくないのに…
ひとりでぐらぐら後悔を感じていたとき翔くんが口を開いた
「…僕、彼女いませんけど…」
「…え、」
なんとも間抜けな声を出してしまって恥ずかしい
いやいやそれよりも、今…
「彼女いないの?」
「はい」
「いるって噂聞いたんだけど?」
「噂を信じないでくださいよ」
困ったような顔をしてみせる翔くん
なんだ…、違ったんだ…!
じゃあもしかして私にもまだチャンスはある!?
やったあー!
とかひとりで内心喜んでいたら、一気にどん底に落とされる
「まあ…人聞き悪いかもしれないですけど、いわゆる女よけですよ」
「…え?」
「僕今彼女とか作るつもりないんで、彼女いるっていっといたら誰も寄ってこないかなっておもって」
はは、と笑う翔くん
いや、マジで笑えないんですけど…
だって…「彼女とか作るつもりない」って…
嘘でしょおおおお………
さっきの嬉しさはどこへやら、一気にテンションがさがってしまった
てか、翔くん
その女よけあんま効いてないよ
だってみんな翔くんに彼女がいるっていう噂信じてるけど、お構いなしだもん
「そ…、そうなんだー…ははっ」
ほ、本気で笑えない…、今きっと私の笑顔ひきつってるんだろーな…
「でも好きな人となら付き合いたいですね」
…翔くん好きな人いるんだ…
これは
終 わ っ た
頭の中で ト●コ行進曲 オワタ\(^o^)/ が流れ出した
オワタ、オワタ、オワタ。
「だ、誰なの?…とか…はは」
ああああああああ私のばかあああああああ
なんで聞いたの私の馬鹿
自分の墓穴ほってどーするの
とにかく話をつなげなきゃとか思って出た言葉がこれかよ
馬鹿だ馬鹿だ馬鹿だ
わー、翔くんスルーして!
スルーしていいよおおおおおおおお!
エスパーを送るも虚しく
「僕、先輩と同じクラスの美和先輩が好きなんです、」
……本当馬鹿じゃん私
自分で聞いといてこんなにショックなんて…
なんで聞いたのよとか今更そんなこと思っても無駄で
あー、美和ちゃんかあ…美人だしね…
これがまさしくオワタ\(^o^)/
…ヤバい、泣きそう
オワタとか言ってる場合じゃない
目頭が熱くなってきちゃった
あ、ヤバい、涙落ちる
泣いてるとこ翔くんに見せられないよ
なんで泣いてんだよこいつとか思われたくないし
「ご、ごめん私帰るね!」
「え、先輩!?」
涙が少し落ちちゃった、
翔くんに気付かれちゃったかも
居ても立ってもいられなくなって私は走ってその場を後にした
あーあ…
失恋じゃん
どうせ失恋なら告白しとけばよかったかな…
好きな人と両想いになるっていうこと
それは本当にすごいことだね
自分の好きな人が自分のことを好きなんだよ
翔くんは…私のことなんて好きじゃなくて
美和ちゃんが好きで
私と両想いになる、なんて
ありえないこと
そんなこと考えてたら涙がボロボロ落ちてきて
美和ちゃんめっちゃ美人じゃん
私なんかが叶うわけないし
あんま話したことないけど
どこに行くとかあるわけじゃないけどひたすら本能のままに走った
涙が乾いちゃうんじゃないかってぐらい走った
走って走って走ったら
いつのまにか公園にいた
この街で数少ない、ブランコのある公園
今はもう夕方だから、子供の姿もなくガランとしていた
とりあえず息を整えようと思って、ブランコに座る
絶対翔くんに変な女だと思われた
急に泣いて
意味わかんない女だと思われた
もういいや…どうせ失恋なんだし…
変な女でいいや…
さっきまで走ってて乾き始めた涙がまた出てきた
「うぅっ…」
もうそこからはとまんなくて
人に見られるのが嫌だから下を向いて
水たまりができちゃうんじゃないかってぐらいとにかく泣いた
君と両想いになりたかったんだよ
でも無理って、分かってたんだ
分かってたから、気持ちを伝えるつもりもなくて
ずっと片思いしてようって思ってたのに
「…っ…すき…、」
伝えられなかったこの想い
口に出してみたら楽になるかな、
なんて思って言ってみたその時
急に視界が真っ暗になって
「!?」
数秒して「誰か」に抱きしめられたんだと分かる
驚きで涙なんてとまっちゃって
「誰か」が誰なのか分かるのにそんなに時間はかからなかった
これは大好きな翔くんの匂い
匂いで分かっちゃうあたり、私は相当翔くんのことが好きなんだなあって思う
ってこんな冷静な感想はいいとして
どうして…?
翔くんは走ってきたのか、息を切らしている
私のちょうど耳当たりにある翔くんの心臓からは、すごく速い鼓動が聞こえる
「しょ、…翔、くん…」
翔くんは何も言わずに、私を抱きしめたままだった
本当に何がなんだか分からない
とりあえず翔くんの次の言葉を待っていた
数十秒だった頃、だんだんと息が整ってきた翔くんはゆっくり体を離し、ブランコに座ってる私と同じ高さまで顔をおろした
翔くんのきれいな瞳が私を見ていて
自分が涙目になってることが恥ずかしくって目を逸らした
「…先輩、なんで泣いてるんですか」
それ聞かないでよ
ああ、もう言っちゃおうかな、言っちゃお言っちゃお
何も言わないよりましだ
「しょ、翔くんのことが、好きで…美和ちゃんが好きって聞いて、悲しくて…っ」
また涙が出てきた
私どんだけ泣くの、泣くな、泣くな
そんなことを自分に言い聞かせていたら、また翔くんに抱きしめられた
どうして抱きしめるの?
「…っ、翔くん!やめてよ…、私に、期待させるようなことしないで…っ!」
もう分かんない、なんで翔くんがこんなことをするのか、
しゃくりあげる私の背中を抱きしめながらゆっくりとさする翔くん
これじゃあ私が年下みたいじゃない
「先輩、すみません…」
…それは、私の気持ちに対して?
美和ちゃんのことが好きだから、私の気持ちは迷惑ってこと?
やっぱり言わなかったら良かったかな、なんて私は後悔ばっかりだ
「は、離して、よっ」
暴れる私を翔くんはさらに強く抱きしめる
その強さに私は抵抗できなくて
「違います、そういう意味じゃなくて…嘘をついて、すみません」
「……え…?」
嘘?なにが嘘なの?
「僕、別に美和先輩が好きなわけじゃありません」
……は?
え、ちょっと意味が分かんない
「じゃあなんで美和ちゃんが好きって言ったの…」
「それは…その、先輩がどういう反応するかなー、って思って…」
は…
はい?
え、もしかして私
ハメられた!?
私の反応をみて面白がってたの!?
「さ、最低っ…!!翔くんの馬鹿!!私の反応を見て面白がってたの!?私は本当かとっ…」
思ってたのに、そう言おうとした口は翔くんの唇によってふさがれた
「!?」
頭がついていかない
まっしろになって
離されたと思ったら今度は目と目があって
「…僕が美和先輩を好きって言って、先輩がやきもち妬いくれたらいいなって思ったんです」
「…?」
キスのせいでまっしろになった頭ではその言葉の意味が理解できない
「先輩、好きです。ずっと前から先輩のことだけを見ていました」
う、そ…うそでしょ…?
一気に体温が上昇したことが自分でも分かった
「からかってるの…?」
「違いますよ、これは絶対に本当です」
「ほ、本当に…」
「良かったら、先輩の気持ちも聞かせてもらえませんか?」
にやり、と翔くんが笑う
知ってるくせにっ…!
「し、知らないっ!」
なんだか恥ずかしくなって目を逸らした
「言ってくれないとまたキスしますよ」
「なっ…!」
「ほら、はやく…」
だんだん翔くんの顔が近づいてくる
「い…言う!言うってば!」
じゃーはやく言ってくださいよ、なんて言って顔を離す翔くん
完全に今の状況を面白がってるな…っ
「す…」
「す?」
「…きやき」
「なんでこの状況でそんなベタなこというんですか」
「だっ、だって恥ずかし…」
「さっきは泣きながらいってくれたじゃないですか」
「なっ…!だったらもう言わなくてもいいじゃん!」
「だめです、もう1回言ってください」
キスしますよ、なんてまた顔を近づけてくるもんだから
「わ、わかった!言うから!反対向いて!」
えー、なんて不満そうな声をもらしながらも反対を向いてくれる優しい翔くん
翔くんの顔を見ながらだとどうしても恥ずかしくて言えないっ…
広い背中…
年下だけど、やっぱり男の子なんだなあって感じる
その背中に抱きついて
「好き」
って一言
そしたらいつの間にか私が抱きしめられる態勢になっていた
「…もう、絶対に先輩のこと離しませんから」
翔くんファンがきいたら失神する人がでてきちゃいそうなぐらい甘い声でそんなことを言われて
私は顔を真っ赤にして頷くことしかできなかった
これで本当に君と両想い?
今まで手が届くことなんてないと思ってたこの世界に
君とふたりで
両想いになるっていうこと
(ちゃんとあの人振ってくださいね)
(…みんなが両想いとはいかない世の中なのね)
-
2011/06/05(Sun)17:49:27 公開 /
空夢
■この作品の著作権は
空夢さんにあります。無断転載は禁止です。
-
■作者からのメッセージ
読んでいただきありがとうございます。初めてこういうものを書いてみました。前々から小説を書いてみたいなー、と思っていましたがなかなか上手に書けないのであまり書いたことがありませんでしたが、みなさんからアドバイスいただければその点をなおし、これからもがんばって書いてみたいとおもいます。どうぞよろしくおねがいします。