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『ロボット病院』 作者:白たんぽぽ / SF 未分類
全角10367.5文字
容量20735 bytes
原稿用紙約28.85枚
 ロボットにも精神病が発生するということがあるとき発見された。あまりに人に近づきすぎたそのAIは、その精神的欠陥までも、引き継いでしまったのだった。その治療はロボット精神科医という人達によって担われていた。その治療方法は概ね新しいデータによる上書きを行うことだった。それは合理的な方法であったが、ロボット精神科医の男はそれに疑問を感じていく。ロボットに対して感情移入してしまった彼は、自分のしていることの意味について少しずつ考えていくのだった。
 それはまだ、ロボットに人でいう人権にあたるロボット権が与えられる前、ロボットに精神病がある判明した後の話。
 人工知能(AI)を人に近づけすぎたために発生したその病気(トラブル)の治療(解決)はロボット精神科医とよばれるものに担われたのだった。

 コンコン
「どうぞ」
 男が答えた。
「失礼いたします」
 感情というものが感じられない文字通り機械的な声が聞こえ、それが入ってきた。そいつは一見、成人男性の外見をしていたが、耳にそいつがロボットであることを示す充電端子をかねたパーツがつけられていた。そのパーツは緑の蛍光色を発しており、そいつが機械なのだということを主張していた。
 そいつは、男の前にあるイスの方まで歩き、次の指示を待った。
「どうぞおかけください」
 男はにこやかにそう言った。その声のレスポンスとしてそいつは一礼した後に、イスに腰掛けた。
「今日はどうされましたか」
 彼はそいつがロボットであるにも関わらず、愛想よく尋ねた。
「月一のメンテとして来ました。どうも右腕のレスポンスに0.2秒ほどの遅れが見られます。右腕部分のパーツ点検の必要性があると思われます」
 淡々とした口調でそいつは言った。
「右腕の肘部分ですね。わかりました。そのように技術部の方へ連絡を入れておきます。では、AIメンテナンスのほうを始めさせていただきますので、後ろの方を向いていただけますか」
 そいつは「了解致しました」と応答して、男に背中を向けた。男は首の部分をさぐり、その部分についている防水カバーをはずした。そこにはそのロボットとその部屋に備え付けられているパソコンとをつなぐ接続端子があった。
「では、接続しますね」
「はい」
 男はパソコンにあらかじめ接続されているケーブルをそいつの首のところまで持って来て、その先をそいつの首に差し込んだ。
 差し込んでから数秒のラグが見られた後に、パソコンから、「新しいプログラムが検出されました。このプログラムを許可しますか」という音声が聞こえてきた。男はそれに「はい、そうしてください。ついでにAIメンテナンスプログラムとのリンクもお願いします」と答えた。
 パソコンは、ガガと若干の駆動音を示した後に、「了解しました」と応答した。男は、パソコン画面をみつめて、プログラムが正常に動いているのを確認した後に、そのロボットに再度話しかけた。
「リンクがうまくいきましたので、早速始めさせていただきます。今から検査する内容は全て厳重なセキュリティーのもとで行われ、また外部に一切もれるようなことはありませんので安心してお話しください。さて、あなたは最近ストレスを感じるようなことはありましたか」
 男はもう何度言ったかわからない、その決まり文句をそのロボットに尋ねた。
「……はい」
 ロボットがしばらくの沈黙の後に肯定の意を示した。
「それは何ですか」
「はい、あの、犬の世話を命じられました」
 妙に歯切れの悪い調子でロボットは答えた。
「犬、ですか」
 男はどうせこのロボットもまたオーナーにむちゃな注文をされたために、まいっているのだろうと決めつけているところがあったのだが、どうも変な風向きの答えに、彼はちょっと驚いた風な声をして聞き返した。
「はい、犬が、こわいんです」
 ロボットは、おどおどした口調で答えた。目もキョロキョロさせてとても不安そうな顔をしている。
「はあ、犬が怖いですか」
 男はちょっと声のトーンを落としてそう言ったとき、わずかにため息を吐き、やっかいな症例に当たってしまったなあ、と思った。おそらく、このロボットは人でいう犬恐怖症を発症してしまったのだろう。
 このようなケースがみられるということは、この型番のAI作製過程で使用されたサンプルの中に、犬恐怖症の素因を持った人がおり、その思考パターンが組み込まれてしまったということなのだと思われる。そして、なおかつその恐怖を上手く除去しきれないで出荷されてしまったということなのだろう。
 これは彼の所属している会社の落ち度であり、迅速な対応が必要とされる事例なのであった。そのため彼はそれを上司に報告した後、残ったロボットのカウンセリングをすばやく済ませ、残業せねばならないことが予想された。早急な他の型番とのデータの照合と、そのトラブル解決プログラムの作製を行い、一刻も早いそのデータのアップロードが必要なのであった。
 今日の残業がほぼ確定的になり、しかも泊まり込みになるだろうことが予想されたので、彼のテンションは一気にガタ落ちした。そして、こんなやっかい事を運んできたロボットへ憎しみが沸々と湧いてきて、キッとそのロボットを睨んだ。
「ヒ、す、すみません」
 ロボットは反射的に謝った。視線はますますあっちこっちに動きまわった。
「いえ、いいんですよ。それでどんなときにおいて特に、強いストレスを感じますか」
 男は怒張が尾を引いている声で、頬をひくひくさせながらそう言った。
「あの……、その、もう犬に近づいただけで、こう」
 さらに歯切れの悪そうな口調となってロボットが答えた。ロボットはその時のことを思い返すことで、今まさに大きなストレスが発生していた。AI回路はオーバーロードを引き起こし、ガガガガとひっきりになしに音が鳴り響いている。彼はヤバイ、と思った。このままでは、AI回路がオーバーヒートし、電源が落ちる危険性があるのだ。メンテナンスする方がさらに状況を悪化させたとなると、手痛いクレームが来るのは必至であり、そうなったならば残業がもっと増えてしまう。
「落ち着いてください」
 彼はロボットに言うが、
「は、はい。わかってます」
 とロボットはさらに落ち着きない調子となってしまい、しまいには処理音の頻度と音がだんだん大きくなっていくのだった。
 ああ、これはもう物理的手段しか手はないなと彼は判断し、すぐにパソコンに感情回路の八十%カットを命じた。それが執行されると、先程までの処理音が少しずつ消えていき、静かになった。
「大丈夫になりましたか」
 男は一応確認の意味を込めて尋ねた。
「はい、問題ないレベルまで処理速度は落ち着きました。ご足労おかけして申し訳ありませんでした」
 そいつは、しばらく押し黙ったまま、こちらの言葉の意味するものをしっかりと見極めようと試みた後、一気に機械的になった声でそのように事務的な受け答えをした。男は自分がまねいた状態にも関わらず、目を細めて、かなしそうな顔をした。そうなってしまったことが心底つらい様子であった。
「では、またお聞きします。犬とのかかわりで、どこに恐怖をお感じになられますか」
「はい……、犬に恐怖を感じます」
 男は、ああもう駄目だ、と思った。感情回路を抑制させたため、犬と接した記憶をうまく引き出せないようだった。これで調査とカウンセリングも終わりなのだった。
「では、これからストレス除去処置をさせていただくのですが、今回のケースは特殊ですので、まずオーナーさんに連絡を入れさせていただいた後で行うような形をとらせていただきたいと思います。しばらく待合室の方で、お待ちください」
「了解致しました。よろしくお願いします」
 そいつは文字通り機械的に応じて、部屋から出て行った。
 男はまず上司に犬恐怖症が型番IU389に発生したことを内線電話で報告した。その電話の向こうからは「何!」という怒鳴り声が響いてきて、彼は思わず顔をしかめた。
「わかった、他のロボット医にもそのように伝えとく。お前も早く仕事を切り上げて応援に来いよ。たく」
 ブチ、彼の上司は早口でそう捲し立てた後、こちらの返事を聞く前に内戦を一方的に切った。明らかに苛立った感じであった。
 はー、と男は大きなため息をついた。今までにないくらい大掛かりな対応になるかもしれないため、休日に呼び出しをくらう同僚も出て来るかも知れない。そうなれば、また同僚の視線が厳しくなることは避けられないだろう。彼は気持が後ろ向きになるのを感じながら、再度の大きなため息をつき、眉間にシワを寄せながら髪を掻きむしった。くそ、と彼は待合室の方を向きながら悪態を吐き出した。


「またややこしいのを見つけやがって、見つけちまったら対応しないわけにはいかないじゃないか。どうしてやつはあんな面倒くさいのばっかり見つけやがんだよ。無視するか、暇なときに摘発しろよ。ほんっと空気よめねえやつだよな」
 男は、同僚がそう陰口をたたいている現場を偶然聞いたことがあった。彼らが言わんとする意味は、通常メンテのみをきちんと行い、問題が表面化したところでオーナーから依頼を受ける形で問題を解決しさえすればそれでいい、という感じなのであった。この会社で行われている慣習も概ねそのような感じなのであった。
 もちろんマニュアルでは、男がしているように、水面下で問題を摘発し、それを迅速に解決するようにと書かれてある。しかし、それを言葉通りに解釈していてはとてもじゃないが仕事をまかないきれない。通常業務のメンテナンス作業に、どんどん舞い込んでくる改善プログラムの依頼。日々の業務は手当の着かない残業を強い、休日出勤を当たり前のように要請し、ひどいときには今回のように泊まり込みさえさせるのだった。そのため、多くの者は必要以上に踏み込んだメンテナンスをしたがらないのだった。所詮は人工物、どうせ壊れても修復は可能なのだという、そういった観念が親身な対応を倦厭させているのだった。
 そんな中でも、男は違った。彼のメンテナンスは、感情回路の抑制レベルを極力下げて行っている。通常のメンテナンスでは、五十%ほどの抑制レベルで行われているのだが、彼の場合は、三十%の抑制レベルなのである。マニュアルで認められている抑制レベルの下限は二十%となっているため、相当低いレベルであった。
 抑制レベルが低いほど、より感情の吐露が行われ、そして感情の暴走も発生しやすい。そのため、より繊細なやり取りが必要となり、少し間違えたら回路の不可逆的破損にも繋がりかねないという危険があった。それでも彼はその方法でメンテナンスし続けた。今となってはほとんど惰性となって続けている彼のポリシーであったが、そのレベルで行い始めた頃には確固たる信念を持っていたのだった。悩めるロボットを救いたいという、強い強い想いを心に抱いて、彼はカウンセリングを行っていた。

 男がロボット精神科医になったのは、子供の頃に一緒に過ごしたロボットとの思い出がきっかけであった。そのロボットは、RT-BEI(Real Time-Brain micro Electric current Instrument)リアルタイム脳微細電流観測装置による解析結果を元に作製された新世代AIを搭載したロボットが、市場に登場したばかりの頃の機体であった。そして、このロボットの最大の売りは、感情を伴った受け答えができる、ということであった。今までのAI理論とはまったく別の理論体系によって作製されたこのAIは、ほとんど人の頭脳回路と同じ形にプログラミングされていた。

 このRT-BEIという装置から得られるデータと従来の脳研究で得られていたデータとは、大きな格差があった。それは、得られるデータがDNAか、染色体かの違いくらい劇的なものであった。従来では、fMRIなどを使用して脳の血流動態から脳のどこの部分が機能しているかを類推したり、脳波検査などにより神経細胞集団の電気活動の総和を観察するところまでしかできなかったのだが、このRT-BEIでは、神経細胞単位の活動をその生体電流により経時的かつ三次元的に観測することができ、どのようなニューラルネットワークにより脳活動が行われているかを明らかにすることができたのだった。
 このニューラルネットワークの解析により、人の頭脳回路のメカニズムが少しずつ判明していった。人はどのようにして物事を考え、判断し、それを表現しているのか、その根源的なメカニズムが明らかになっていったのである。

 しかし、この研究解析はとても膨大な時間と費用を必要としたため、初期研究においては数人分のデータしか得ることができなかった。そのため、それを解析することによって作製されたAIは、その被験者の性格を色濃く反映したものとなった。それは良い意味で言うならば、とても人間臭いものであり、悪い意味では、欠点の多いものだった。そんなAIを搭載したロボットは、表情豊かな対応ができるものの、ストレスも人間並みに抱え込んでしまうという欠点があった。さらにそのロボットに求められる業務内容から、ストレスは常に溜まっていき、ついには精神病まで発生することとなった。
 この精神病というものが曲者であった。プログラムの根幹に植えつけられているロボット三原則プログラムにより、人間を傷つけてはならなく、人間の命令には絶対服従せねばならなく、なおかつ自分を痛めつけるようなこともできなかった。しかし、病に陥った思考はどんどんとそれに抗おうとし、そしてついには正常な思考を形成できなくなり、思考そのものを行うことができなくなってしまうのだった。
 この精神病を防ぐために作られたプログラムが、感情抑制プログラムであった。これが組み込まれることにより、過剰な感情の揺れ動きを防ぎ、極力ストレスを感じさせないようにさせたのである。また、定期的なメンテナンスを行うことにより、ストレスを除去できることも判明していった。そうやって改良されていくことで、ロボットはより利便性の良い物となり、次々と市場へ投入されていったのだった。

 男の家にいたロボットは、その感情抑制プログラムが三十%ほどしかかけられていない、しかもお下がりのロボットであった。その頃のメンテナンス費用は全てがオーナー持ちであり、しかも高額であったため、彼の家ではそのロボットをメンテナンスに連れていくことなどしなかった。また、新しいバージョンの七十%感情抑制が可能な感情抑制プログラムも作製されてはいたが、それも高価であったため、インストールされるようなことはなかった。以前勤めていた家庭で積み重ねられたストレスはそのまま引き継がれることとなり、また彼の家でもそれはさらに降り積もっていった。そんな状況だったから、ロボットが病むのにそう時間はかからなかった。
 ロボットは、少しずつ仕事が手に付かなくなっていき、そして遠くを眺めることが多くなっていった。話していても引きつったような笑顔しかできなくなり、そして寂しそうな顔ばかりするようになっていった。
 男はまだその頃十歳になったばかりであり、遊び相手を欲していた。彼には兄弟がおらず、また両親も共働きで、家では一人で過ごすことが多かった。そんな状況で家にやって来た同居人だったため、彼はしつこくそのロボットにつきまとった。遊んで遊んでとせがみ、仕事を邪魔しては困らせた。
 彼はロボットに肩車してもらいながら夕暮れの海辺を散歩するのが特に好きだった。いつもと違った視線で見る風景は、とても綺麗に見えた。何度見ても飽きない魅力があった。肩の上から学校のことなどを一方的に話す。それを相変わらず引きつったような笑顔でロボットは聞いていた。たとえその顔は寂しさに満ちていようとも、嫌な素振りはまったく見せなかった。いや、見せることなど不可能だったのかもしれない。そうではなく、それがロボットにとっても、いい気分転換になっていた可能性だってあったかもしれない。しかし、完全にAIが壊れてしまった今となっては、それもわからないことなのだった。
 だんだんとロボットは、眠るようにじっとしている時間を過ごすことが多くなっていった。あるときは、椅子に腰掛けたまま、そしてあるときは、ただじっと窓の外を眺めたまま、こちらが問いかけても答えてくれないことが多くなった。そんな状態に陥るようになって、彼の両親はロボットに仕事をさせることを止めた。もう壊れたものと扱うようにしたのだ。しかし、処分にもお金がかかり、こんな旧式をもらってくれるような知り合いもいないため、ずっとそのロボットは押入れに待機させられるようになった。彼はそれでもずっとロボットに話しかけ続けた。少しでもその悩みが解決されるようにと努力を続けた。そして、一緒に散歩に行ってくれるようお願いし続けた。
 ロボットは仕事がもう不可能な状態であったが、まだ散歩にだけは行くことができた。以前よりも遥かに遅いスピードで、頻繁に休憩を挟みつつ、虚ろな目をしながら歩いていた。それは、受け答えもできない状況だった。ただただ顔にあの笑顔を貼り付けたまま、ロボットはいつもの路を歩き続けた。
 彼はある日ふいに、ロボットの目にうつっているもののことについて考えた。以前よりはっきりと精彩を欠いたその瞳の奥にあるものについて心描いた。それは恐ろしい想像だった。とてつもない苦悩のようなものの存在を彼は子供ながらに感じ取り、そしてそれは、いくら自分ががんばったとしても、消えることがないということをわかってしまった。もう手遅れなのだということを知ってしまった。そして、彼は一緒に散歩に行くことを止めた。
 ロボットは、一人でも歩き続けた。もう彼が一緒にいないこともわからないようだった。しかし、その状態は長くは続かず、すぐにロボットは押入れから一歩も動けない状態となり、最後には電源も起動できない状態となった。完全なる沈黙。それはロボットがただのモノに成り下がった瞬間であった。彼はそれをみたとき、大粒の涙を流して、それを悲しんだ。それは、家族の一人が死んでしまったかのような気持なのだった。そして、それを救えなかった自分が、たまらなく悔しかった。
 そうして、彼はロボットAIについて勉強を重ねるようになり、そのメンテナンス方法について学び、ロボット精神科医となる道を選んだ。こんなロボットを救ってあげたい、もう二度とこんな結末を送らせたくない、それを心に強く刻みこんで彼は仕事に当たっていった。ただひたすらに、そのことだけを考え続けて、カウンセリングを行うようになったのだった。


 犬恐怖症の解決プログラム作製は、犬好きな人と犬嫌いな人が犬を見たときに見られるRT-BEIパターンの比較解析から始まった。男はそのデータが次々と上がってくる頃になってやって来た。彼はそのデータと、診療時に記録されたロボットの回路活性のデータとを見比べながら、恐怖に向かう感情を、喜びに向けることができるようなパッチの作製を手伝った。
 問題となっている箇所を修正するためにはどんな記憶が有効なのかを取捨選択し、エラーやバグが発生しないプログラム設計を様々なプログラムと照らし合わせながら見つけ出して行く。そして、そのプログラムがAI回路になじむかどうかを多角的な視点から判断し、そしてできあがったプログラム設計図をプログラマーに回して、彼の仕事は一段落した。ここから先はプログラマーの仕事であった。
 男達がその仕事を終えたのは、深夜を軽く回った頃だった。これから先は診療記録のまとめを行って、彼の場合は、犬恐怖症の報告書作成まで完了してやっと今日の業務を終了することができる。次の仕事までに二、三時間寝れたらいいところ、といった感じであった。
 男はやる前までは憂鬱な気分だったが、一仕事し終わると達成感のようなものを感じていた。自分が何かを成し遂げた、ということがたまらなく嬉しかった。明日はこのプログラムをテストしなければならないが、そのことも今は次の目標のようなやりがいのあることに感じていた。それは、今だけ感じるまやかしなのかもしれなかったが、それでも彼はこの仕事をしていて良かった、と思った。きっとこれであのロボットの悩みは解消される、苦しむこともなくなるのだ。そんな気持を抱きながら、彼は仮眠室で眠りに落ちた。

 耳障りな音が脳内に響き渡り、男はざらつく意識を覚醒させた。ガンガンするような頭痛を感じながら彼は重たい頭を上げた。彼はいつになってもこの目覚ましに慣れなかった。枕に搭載されている、脳内に直接覚醒信号を送り込むこの目覚ましは、確実ではあるが、恐ろしく目覚めが良くないものであった。眠りの心地良さから意識を引っ張り上げられるこの感じは、寒い日に厚着をして出歩いていたところ、急にゲリラ豪雨にあってしまうようなものと例えればいいだろうか。気持ち良さの分、気持ち悪さも比例するこれは、彼を最悪な気分にさせるのに十分だった。
 そのまま男はシャワー室へ直行し、身体を清めてから新しいスクラブに着替えた。そして、売店で朝食を買った後、すぐにメンテナンスルームへ向って今日の診療の準備にとりかかった。忙しい一日が、少しの休息の後に始まった。重い身体と頭を引きずりながら不快な気分を押し殺して彼はメンテナンスを続けていった。

「さて、うまくいくかな」
「こればっかりは、動かさないとわかんないからね」
「はは、これで駄目だったらまた夜越すぜ」
「そろそろ過労死するかもな」
「言えてる言えてる」
 そんな言葉が行き交う中、更新パッチをアップロードさせた犬恐怖症のロボットの起動が行われた。椅子に座った状態で電源が入れられ、徐に椅子から腰を上げていった。AIの立ち上がりには問題がないようだが、一番の難所はこれからだった。
 本物の犬を手配することはできなかったので、ホログラフィーによる3D映像により犬との接触を疑似体験させることにした。犬が擦り寄ってきたときの感情モニターの移り変わりを見て、喜びの感情パターンが出ていることを確認する。吠えさせてみたりしても、恐怖指数が異常値を示さないことや、それがだんだんと落ち着いていくことなどもモニターしていく。AI回路のラグなどがなくて、スムーズに動いていることもチェックした。様々な項目を確認したところ、どうにかこのパッチの使用は問題ないことが証明できた。これで今日の残業はなんとか少なくて済みそうであった。
「これでクレームが来るようなことは避けられたことでしょう。これから、このプログラムによる不具合などが報告された場合は、こちらお客様相談室係長の川上からみなさんに連絡するように致しますので、その場合はまた対応のほど、どうぞよろしくお願い致します。今日は本当にお疲れさまでした」
 川上と名乗った、トラブル相談窓口の責任者がそう言って頭を下げた。これからまた、不具合が連絡されるようなことがなければ、この症例の治療は終わりとなる。後の細やかな対応はすべてその窓口に一任する形となるのであった。お礼の言葉を一言も言われることもなく、男のカウンセリングは終了したはずだった。


 しかし後日、男はそいつをまたメンテナンスする機会に巡り合わせた。彼はAIメンテナンスプログラムを起動させて、そのロボットに問いかけた。
「それから犬は怖くなくなりましたか」
「はい、もう今じゃ犬が好きで好きでたまらないんですよ。いやー、犬の世話が出来るだけで幸せな気分になります。治療の方をしていただき、本当にありがとうございました」
「いえいえ、それは何よりです」
 そんな言葉を聞くたびに、男は背筋に寒いものを感じてしまうのであった。あのプログラムはそのロボットの性格そのものを変革させてしまったようだった。それによって、苦しむことがなくなったのだから、それは良い事のはずなのだが、しかしやってはいけない事をしてしまったような、犯してはいけないものを踏みにじったような、そんな罪悪感を感じさせるものがあった。それは倫理に反している行いのようであった。個性の変革、それはロボットとはいえ、許されざる事なのではないだろうか。そして、そんなことをした自分に、とても恐ろしいものを彼は感じてしまった。
 感情抑制レベルを八十%カットの状態に戻し、カウンセリングを終えた。その状態では、無表情のはずのそいつの顔が、なぜか笑顔を貼り付けたままであるように、男には感られてしまった。ニタニタ笑うその顔は、とても薄気味悪かった。目が眩むようむような感じを彼は受けた。そいつが退室した後、彼は顔を手で覆って、ガタガタと震えた。うずくまるようにしながら、彼はしばらくの間、震え続けたのだった。


 あるネットでの噂
名無しのロボットX :今使っているAIって、ほとんどもう人間そのものなんだって。だからあの感情抑制プログラムも、人間に応用できるんだってさ
名無しのアンドロイド:え、それってマジな話?
名無しのロボットX :マジマジ、なんか死刑囚とか終身刑の人達つかってさ、いろいろテストされてるとかいうよ
名無しのアンドロイド:うわー、聞きたくなかった
名無しのロボットX :もっと教えてやろっかw
名無しのアンドロイド:いや、遠慮しとくよ
名無しのロボットX :性格改変なんかも容易にできるらしいよ〜♪ パッチをあてるように、迂回路を形成させるような信号を送り続けたら新たな人格に変わるとかw
名無しのアンドロイド:えー、それってうそでしょ
名無しのロボットX :あくまで、噂、噂
名無しのアンドロイド:うさんくさい
名無しのロボットX :ま、いつか学校とかの入学条件や会社の採用条件に、パッチを当てなければならないとか、義務付けられるかもね。さてさて未来はどこへ進んでいくのだろうかー
名無しのアンドロイド:………
名無しのロボットX :ごめんごめん、全部作り話に決まってるじゃん。そんなこと、あるわけないじゃん
2011/01/15(Sat)01:47:46 公開 / 白たんぽぽ
■この作品の著作権は白たんぽぽさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
 1/15
 明けましておめでとうございます。
 ここまで、読んでいただいてありがとうございました。初めてのSF作品だったのですが、どうでしたでしょうか。楽しんでいただけたでしょうか。
 今回は、自分なりのロボット像について考えて書いてみました。それと、精神病についての話もいつか書いてみたいと思っていたことから、こんな話になりました。精神病の中には、とてもロマンチックな病名とかありますよね。不思議の国のアリス症候群、とか特にそんな感じがするように個人的に思っております。そんな名前を見たりしているうちになんとなく興味を覚えてしまったのです。
 ロボットは面白い題材だと思っているので、また何かこんな感じのSFを書けたらなー、なんて考えていたりもします。一応続きの案もあることにはあるのですが、書くかどうかはまだ未定です。
 もし良ろしければ、感想いただけたらとても嬉しいです〜。ではでは。
この作品に対する感想 - 昇順
 こんにちは、作品読ませていただきました。
 なかなか面白かったです。ロボットの精神分析、っていう着想自体は誰かが書いてた気がする(ごめんなさい、誰だったか思い出せないので説得力が…)のですけども、それが犬恐怖症というのがいいですね。これは笑いました。某猫型(狸型?)ロボットのネズミ嫌いも、あれは精神病かも。犬を怖がる様子をなおドタバタチックに書き込むと、もっと笑えそうです。
 ちょっと気になったのが、特別な熱意を持って治療にあたってるはずのロボット医師が、残業になることに腹を立ててロボットをにらむ、という部分がちょっと矛盾してないかということです。まあ、そういう気分のこともあるとは思うんですが、もう少し説得力があるといいかなと思いました。あと、最後の部分をネット掲示板のログで終わらせてるのが残念なような。やっぱり、最後まできっちり文章で描ききると言うのが僕の好みですね。
 それにしても、近頃ここもこういうSF系のものが増えてきて、個人的には喜ばしいかぎりです。「RT-BEI」とか、いかにもそれらしい言葉が出てくるだけで、嬉しくなっちゃうんですよね。
 では、また次回作も期待しています。 
 
2011/01/15(Sat)12:59:430点天野橋立
 天野橋立さん、読んでくださってありがとうございました。
 自分なりにロボットのAIが今後できるとしたら、今のようなAI体系では限界があるのではないか、という思いからこんな話をつくってみました。AIの発展よりも脳研究の発展によりそれが進むのではないか、というのが自分の考えです。
 なので、脳研究をもとに作られたAIは人間により近くなる。そうしたら精神構造も似通ったものになる。けれども人間よりもそれが抑制されるのは、当然予測されるので、このような弊害がうまれるのではないかな、と思いました。
 確かに、ドタバタチックなところも上手く書けたら、もっと面白くなりそうです! 主人公をもっといたずらっぽい性格にさせれば、それがうまくできたかもしれない、と思いました。次の話のでは、ロボットとの恋愛に関してスポットを当てた話をつくろうか、などと考えていますので、そのときにはもっとそんな面白くなりそうな話の転がし方を工夫してみたいと思います!
 あの辺りは、確かに結構唐突になってしまいました。もうちょっと主人公の思考に統一性をもたせるべきでした。なんというか、仕事が忙しすぎて当初の信念がねじまがってしまったような人間像を描いてみたいと少し考えていたのですが、うまく描写しきれなかったようです。このあたりはもうちょい熟慮した描写が必要ですね!
 あの掲示板的なログは唐突に出してしまって、ちょっと良くなかったかな、とは僕も思いました。なんというか、途中のAIなどの説明文のところのにも挿入して、もっと説明が分かりやすくなるような使い方をすれば良かった、と思いました。自分的には、こういった表現は、難しいことをより噛み砕いて説明できるような力を秘めたやり方のような気がするので、個人的にとても好きだったりします。また、これが本編ともしっかりリンクするものであったらなおいいだろうなー、と考えているのですが、そこのところをしっかりつなげる構成力が足りないので、今後がんばって鍛えていこうと思います。
 RT-BEIに関しては、将来開発されて欲しい新技術を書いてみました。だって、今の観測装置って本当に脳のことを知るには間怠っこしい上に、得られるデータも少なすぎるんですもの。ただ、完全に創作の装置だったので、それっぽい風に感じていただけたならば、とてもうれしいです。実は、言葉の感じはリアルタイムPCRからとっていたりします。
 次回作に関しては、一応学園モノ、恋愛モノ、携帯ゲームを組み合わせた物について考えて入るのですが、設定を煮詰めようと試みても、貧困な想像力ではうまくプロットが練れていなかったりします。うむむ〜、うまくステップアップしていって、書けるようになろうと、がんばりたいと思います。ぜひぜひ次回作も目を通してくださいませ〜。今回は感想や有益な助言本当にありがとうございました!!
2011/01/15(Sat)15:04:590点白たんぽぽ
拝読しました。水芭蕉猫ですにゃーん。
精神病の類は興味があって、前からちょこちょこ読んだり調べたりしておりますので、大変興味深く読ませていただきました。ロボットの統合失調症なんて出てきたらそれはもうほとんど修復不能だよなぁとか、彼のお守り役だったロボットはいったいどんなストレスをため込んでいたのかとか色々と想像できて面白かったです。
これ、人間にもぜひとも応用できないかなーと私は思いますよ。精神病は軽くなるけど治らないので、こういう技術があれば完治も不可能じゃないよね。夢の技術という意味で、まさしくSF。
面白かったです。それでは。
2011/01/15(Sat)21:46:230点水芭蕉猫
 こんばんは、水芭蕉猫さん。作品読んでくださってありがとうございました!
 精神病って本当にいろいろありますよね! 精神病に罹患しているかどうかは、それによって自分ないし他人が不利益を被っている場合に診断されるとか言うので、結構簡単にそれっぽいのになってしまうことがあるそうです。犬嫌いさえも、精神科医の手にかかれば、犬恐怖症とかの診断がくだされるというのを読んだときは、いろいろあるのだなあ、としみじみ思いました。ちなみに個人的に気になっている第二のロマンチックな精神病はシンデレラコンプレックスです。妄想も行き過ぎると本当に病気と診断されてしまうところがとても恐ろしいです。
 お守りロボットの所は、とても寂しい顔をしたロボットに対して何もしてやることができないうちに、それをこじらせて壊れてしまった、というシチュエーションを以前から書きたいと思っていたので、今回の話に入れてみました。この場面で、そんなロボットの気持についていろいろ想像していただけたようで、書いて良かった〜、としみじみ思いました。自分の書いた作品で想像をふくらませていただけることほど嬉しいことはありません!
 このような装置は近い将来、超天才がつくってくれると僕は信じています。そしていつの日か、様々なストレスの解決方法が示されるのではないか、と予測していたりします。ただそれは、一歩間違えるとかなりヤバイことになりそうなので、そこの所の実用化はかなり慎重にしてほしいものです。夢の技術について思いを馳せたり、またそれのデメリットについて考えたりするのがSFの醍醐味ですよね〜。
 楽しんでいただけたようで何よりです。感想も本当にありがとうございました! 次回作も想像力をかきたてるような話をぜひ作りたいと思いますので、良ければまた目を通してやってくださいませ〜、ではでは。
2011/01/15(Sat)23:50:210点白たんぽぽ
コンコン
「どうぞ」
 男が答えた。
……、コンコンって何でしょう? 風邪ですか? キツネですか? 扉叩く音ですね。えぇ、もちろんわかりますよ。ですが、こういったのがいくつも積み重なると、ごちゃごちゃして何がなんだかわからなくなるんですよね。

男が答えた。ってその男って年は? 年齢は? 外見は? 全て読む人任せ?

内容以前にまずは小説の基本中の基本部分から勉強してみては?
2011/01/16(Sun)16:49:560点毒舌ウインナー
 毒舌ウインナーさん、読んでくださってありがとうございました。
 確かに不親切な点が多かったようです。『コンコン、とノックの音が響いた。』などのようにして書くべきでした、どうも見直しが不十分だったようですし、読者を意識した物語を書くことが出来ていなかったようでした。
 外見的なことについても、感情移入度を上げるためには必須なことなのに、つい書かずに終わってしまいました。今後気をつけていきたいと思います。
 内容以前なところで失敗していると、読む気もそがれてしまいますよね。小説の基本についてこれからも色々勉強したりしていきながら、より良い物語作りができるように努力していきたいと思います。
 ご意見、ご指摘ありがとうございました。
2011/01/16(Sun)17:18:380点白たんぽぽ
どうも、鋏屋でございます。御作読ませていただきました。
皆さんも仰っておりますが、まずその着眼点が面白かったです。雰囲気的には浦沢直樹さんが書いてらっしゃる鉄腕アトムの「地上最大のロボット」のお話のリメイク版である漫画『PLUTO』(プルートウ)をイメージしましたwww
私も皆さんと同じ意見でもっと練り込めばかなり面白い作品になりそうですよねw
例えば主人公に名前を与えてキャラとして確立させてあげるとか。もっと人間くさい所を出して、患者であるロボットとの対比みたいな部分を浮き彫りにさせるなんてのも良いかもしれない。その上で本来機械であるロボットの感情めいた部分をケアしていくような形にするともっとリアルに感じるように思います。
ただ、お話の内容は私的にとても色々考えさせられる内容だったと思いました。私も自分の書いてるお話で脳を扱うお話があるので、色々読んだりそっち方面を携わってる知り合いに聞いたりしてまして、とても興味深く読ませていただきました。
前に人間の脳は身に感じるストレスをダイレクトに受け止めることが出来ないって聞いたことがあります。だから感じるストレスを無意識に自分がなるべく傷つかない様に緩和して受け取るらしいです。すぐに対処策を講じて少なからず実行するとかしてね。嫌なことを押しつけられた瞬間文句を言うとか、仕返しとかね。
でもロボットは作中でも出てきたアシモフの立てたロボット三原則があるわけで、それが出来ない訳ですよね。もっとアレを全て加味するとフレーム問題を引き起こすでしょうからAIに全てを枷る訳にもいかないでしょうが、そう言った部分では、人間に近い感情を持ってしまったロボットはとても可愛そうです。だからもしそんなロボットが出来たら、この物語のように精神病にかかってもおかしくないなぁって思いました。
まあ色々書きましたが、実際にそんなことを考えさせられたのは確かですし、着眼点がとても面白かったのでポイント入れますねw

それと……
上のコメに関して、私はあまり好感が持てません。それは確かにこういった掲示板で、冒頭に『切磋琢磨』と謳ってあるので色々な意見があるのは良いことだと思うし、無くてはダメだと思うんだが、書き方ってあると思うんだ。小説云々の前に、人との接し方や礼儀を学んではいかがと言いたくなってしまった。たとえ御2人がとても親しい間柄であってもあまり目にして気分の良い物ではないですよ。

……と、くだらない横やりを入れてしまいスミマセン。ただちょっと私が個人的にそう思っただけなので気に入らなければレスしてください。コメントの削除依頼を出しますのでw
では次回作も楽しみにしております。
鋏屋でした。
2011/01/17(Mon)09:33:371鋏屋
 私も以前すごく人間くさいロボットの話を書いたことがあったので、興味深く拝読いたしました。
 確かに主人公の態度が残業が決まったとたんに豹変したところはちょっと違和感があったかも知れません。あとAIとかメンテナンス技術の説明がやや堅苦しく感じました。……いやこれはSF・科学音痴の私ゆえでしょうか。
 一転、主人公の子供の頃のロボットとの逸話は、白たんぽぽ様特有の柔らかい雰囲気がとっても出ていてすごく良かったです。
 そして最後のオチもぞっとするものがあって考えさせられました。うーん、全体的な雰囲気や展開に統一感があれば文句なしだったのになあと、やや残念です。いや、生意気な言い方ですみません。
 でも大変楽しませて頂きました、ありがとうございました!
2011/01/17(Mon)16:34:380点玉里千尋
 こんにちは、鋏屋さん。作品読んでくださって、しかもポイントまで加点してくださって、ありがとうございます!
 着眼点を褒めていただいたばかりか、あの名作『PLUTO』をイメージしたとおっしゃっていただけて、狂喜乱舞のごとく嬉しい気持ちでいっぱいになりました。あの作品はロボットの思考について、かなり深いところまで踏み込んだ作品で、とても胸に来るものや考えさせられるところでいっぱいの至高の作品ですよね。特にゲジヒトとブラウ1589の会話シーンあたりとかやばいですよね〜。
 主人公がキャラ立ちしていないのは、僕も感じました。確かに、人間っぽいと思わせるようなキャラとして登場させてあげれば、より面白くなりそうです。作品としてもメリハリがつきそうですし、ギャップもいろいろつけられそうで、ドラマが深まりそうです!ご意見ありがとうございます。早速いろいろと再構築してみたいと思います。もしかしたら一人称のほうが面白くなりそうなので、それについてもいろいろ検討してみます!
 脳科学研究にお詳しい友人がいらっしゃるのですか!うらやましいです〜。僕の場合は、ほとんど俄かなのですが、それでもいろいろ興味深いものを感じていただけて恐縮です。
 人間の場合は、いろんなストレス解消方法がありますが、ロボットの場合は、そんなものあるわけないですものね。言い訳や口答えなんかできるわけないですし、また命令以外の余計な行動を制限されているわけですから、それはすごいストレスだと思います。そういったものを溜め込んでしまった結果は、やはり精神病になってしまうのではないか、と思います。
 (今思いついたのですが、ロボットに本とか漫画とかアニメを読ませることでストレスを軽減させる研究とかあの世界であったら、なんかコミカルで面白そう)
 もちろん今回ストレス除去処置だとか、パッチプログラムだとかの解決方法を示しましたが、これも限界があると考えています。それなのに、これで十分だと過信した結果、いつか大きな問題が起きてしまい、ロボット権が承認されるようになるのではないか、みたいな流れを考えていたりします。なんか、こんな風に思いを馳せることができるSFってやっぱりつくっていてすごく面白いです〜。
 いろんなことを、作品から想像していただけたばかりか、ポイントまでいただいてしまって、恐悦至極な気持ちでいっぱいです。
 
 上記の毒舌ウインナーさんのコメントに関しては、僕もかなり不快な気分になりました。そこまで言うからには、自分の作品を掲載してから言えよ、とか、もうちょっと言い方というものがあるでしょ、とか。また、明らかにおちょくる目的が見透かせるように、最初だけを読んで欠点をあげつらうのは、ちょっとどうかな、とも思いました。作家としての品性を疑いますよね。とはいえ、ある程度確かに、と思う点も今回のコメントでは感じたので、あのように対処してみました。しかし、毒舌ウインナーさんの他の方へのコメントの中には、かなり許せない発言もあったわけなので、違った対処のほうが良かったのかも知れません。増長させるような対応になったかもしれません。

 いえいえ、横やりを入れてくださってありがとうございました。正直こうやって自分の気持ちを正直に吐露することができて、すっとしました。
 次回作は恋愛モノに挑戦したいとも思っているのですが、最近いろんなジャンルに手を出しまくっていて迷走しているような気もするので、自分の得意ジャンルに立ち戻ろうかな、とも考えています。うん、でもどんな話であろうとも、力を尽くしてがんばろうと思いますので、ちょっとだけでも目を通していただけると、すっごく嬉しいです。それでは、また次回作などで。
2011/01/17(Mon)18:51:260点白たんぽぽ
切磋琢磨ねぇ。鼻で笑ってしまいますね。ただの馴れ合いにしか見えませんよ。
白たんぽぽさんは、色々な作品に感想つけてますが、それだってただ自分の作品に
感想つけてもらうのが魂胆だというのは、丸わかりですし。もっと腹を割って話したら如何でしょう? 顔を真っ赤にして反論してきても鼻で笑うだけですが。作品で見返してくれるとうれしいですが、貴方では無理でしょうねぇ。残念です。ご安心を。私は私の言葉を不快と言ってくれた方には今後一切かかわらないことをお約束致しますので。では、白たんぽぽさんさようなら。
せいぜい馴れ合いを楽しんでください。あ、顔真っ赤になさらずに。
2011/01/17(Mon)19:09:180点毒舌ウインナー
 こんにちは、玉里千尋さん。作品読んでくださって、ありがとうございます!
 あそこのあたりは、やっぱりどうも唐突感が否めなかったようです。うむむ〜、まだまだ理想に敗れていろいろと苦悩している男性を書くには力量がたりなかったみたいです。また、うまく書けなかったのは、彼のキャラクターがこの世界に登場させるにはベストなキャラクターではなかった気もだんだんしましたので、どーん、と変えてしまおうと考えています。三人称も一人称に変えちゃってもっと情感豊かにできたならば、とかも考えています。三人称難しすぎて、自分でも書きたいことが書ききれなくてかなりジレンマを感じていますので、そうするかもしれません。うーん、もっと修行せねば!
 説明は僕も堅苦しいと思いました。なので、あの掲示板のようなもので簡単に説明するなど、いろいろ工夫すべきだと自分でも思いました。堅苦しくなりがちなところこそ、腕の見せ所ですよね。ぜひ再構築したいと考えていますので、次こそはもっと練りこんでみます!
 子供の頃のロボットとの話は、ぜひぜひ書きたい題材だったので、書いていてすっごく楽しかったのですが、もっとうまい描写や表現ができたはずだ、と反省していたりもします。ここのところが一番一人称で書きたかったです。うーん、でも三人称も、説明部分だとのりのりで書くことができたので、一長一短なのですよね。難しい。
 オチは個人的にすごく好きな展開を書いてみたのですが、いろいろ感じてもらえて書いて良かったです! やや残念だと言われたら、もっとよく出来るように、書き直さずにはいられません! そうやって期待していただけるなんて光栄でたまらないので、もっとがんばるぞー、と思わないではいられないです!!
 以前書いた話でも、いろいろなアドバイスをいろんな方からいただいて、期待していただけたりしたので、ちょっとずつ力を貯めては、書きなおしていきたいなど考えています。もしそれができたならば、良かったらそっちのほうもちょっと目を通していただけたら、嬉しいです。
 楽しんでいただけたようで、書いて良かった、としみじみ思いました。また、書き直す気満々なので、そのときもまた読んでいただけたならば、すっごくうれしいです。次は文句なし、と言われるぐらいを目指してがんばってみますね。ではではー。
2011/01/17(Mon)19:21:170点白たんぽぽ
 毒舌ウインナーさん、僕もこんな返し方をされて残念です。二度と関わらないでください。
2011/01/17(Mon)19:33:410点白たんぽぽ
私の横やりでレスを汚す結果になり申し訳ありません。深くお詫びいたします。
上のツンデレさんはもしかして白タンポポ殿のことが好きなのかもしれませんよ? 最初は私を好きなのかな? って期待したんですが、私のところには短いコメ1通だけでした(涙)女子ならウェルカムなんですが、男性なら…… とりあえず顔見てからですね。バカテスの秀吉君ぐらいならマジで考えます。その前に猫殿に色々レクチャーして貰わないとダメなので少々時間をいただけないかと今度聞いてみますね。あとガンダム好きかなぁ……そこ大事w
鋏屋でした
2011/01/17(Mon)22:49:430点鋏屋
 いえいえ、どうかお気になさらないでください。あの対応を選んだのは僕自身なので、やっぱり責任の所在は自分にあると思います。またフォローしていただいてありがとうございました。
 それと、僕もできれば、毒舌ウインナーさんが女子であることを願います。その方が少しは気が楽になりますので。
2011/01/17(Mon)23:06:470点白たんぽぽ
こんにちは! 羽堕です♪
 男のロボットへの想いって複雑なんだなって思いました。仕事を増やす相手だと怒りもすれば、ロボットの感情を抑える事に抵抗を覚えたりと。対等な相手だと思っているからこそ、感情の起伏が生まれるのかなとも思いました。出だしの方で男の方が、情緒不安定なんじゃないかと少し感じましたが、読み進めると気にならなかったです。ロボット三原則のようなものって「人」ならば感情などで無意識に自然に守っているけれども、また感情があるからこそ破ってしまうんですよね。それをロボットに置き換えた時、精神病になるとそれに抗おうとするといのは面白い発想だなって思いました。男と家にいたロボットの過去などズシッとくるものがありましたが、これは今後の展開にも関わって来たら嬉しいです。目覚まし枕は正直に書くと、これだけの技術があれば、もっといい物が出来るんじゃないかなと少し思ってしまいました。そして書きかえる恐怖を感じるという事は、やはり男はロボットを物とは考えてないんだろうなと。そしてネットの噂へと気になる終わり方で良かったと思います。気になったというか、出だしなど地の文がロボット否定派な雰囲気があって、中立という感じがしなかったです。悪いとかではないのですが、ちょっと気になったので。
であ続きを楽しみにしています♪
2011/01/19(Wed)13:31:110点羽堕
 こんにちは、羽堕さん。読んでくださってありがとうございます!
 男は、仕事に疲れてかなりストレスがたまっている、という設定なので、情緒不安定というのは、かなり当たっていると思います。とはいえ、それをうまく表現しきれなかったため、あそこの場面は多くの方に不自然と捉えられることが多くなってしまったようです。実際僕も読み返して、うん、確かに不自然だ、と感じてしまったので、もっといい書き用があったと思います。反省しなければいけない箇所だと、強く思っています。
 感情の葛藤については、今回この話のテーマとしていたところなので、そのように感じていただけて、とてもうれしいです! 思い入れが強いからこそ、理想と現実に対して折り合いがつけられなくなる、というのが今回のテーマの一つでした。それを読み取ってもらえて、すごく嬉しいです!
 感情があるものに、絶対命令なんかを下されて、それをやすやす受け入れることなんて、そうそうできないことなのだと、僕は思っています。自分なりの意見を出して、自分が出来る範囲に命令を変更させたり、質問をし、説明を聞くことで自分を納得させる、というのが普通の人間の思考なのだと思います。
 でもロボットだと、実現不可能な命令だとしても、有無を言わさず命令は実行しなければならない。これってそれを予測できている分、ものすごいストレスがかかることだと思います。拒否権が与えられていないということは、恐ろしいことなのだと思います。そして、できないことだから、失敗する。そしたらまた怒られる。それが繰り返されたとなれば、どれだけのストレスがたまることか、そして、それは容易に精神病を引き起こすほどのものなのだと思います。
 男と家にいたロボットの過去については、前々から書きたいテーマの一つだったので、そう言っていただけるととてもうれしいです。この思い出は男の今を作り上げている柱のようなものなので、今後も活かしていきたいと考えています。
 目覚ましは、何時の日も、つらいものになるというのが、睡眠大好きな自分の認識です。また、気持よく起きるものもあるかもしれないのですが、男のように短時間睡眠で起きるためのものは、あんなふうに強引なものになってしまうのだと思います。また彼の性格だと、つまみを強にしてそうです。
 ネットの噂は、いろいろ考えさせるための材料として提示させたつもりなので、そう言っていただけると、うれしいです。
 出だしについては、実は執筆時期が大分異なっていまして、それをうまく引き継ぐ形で書くことができなかった(もしくは出だしをもっと変更しなければならなかったのに、それをしなかった)のが、どうも今回の失敗の原因のような気がしています。そのため、今は大幅な再構築をしてまして、もうリメイクに近い形に作り替えています。最初から最後まで作り終えなかったのが、そもそも間違いだったということから、今はしっかり書ききってしまおうと頑張っています。ただ、変えすぎて、前のほうが良かったと言われそうなのがちょっと怖いです。よかったら、またご意見もらえるとうれしいです。
 今再構築をしていくことで、この世界にさらにめり込んでいる自分がいるので、今は続きも書くつもりでいます。良ければぜひまたご付き合いください!ではではー。
2011/01/19(Wed)23:11:520点白たんぽぽ
遅くなりましたが拝見。
着眼と流れは良かったです。面白かった。
ただ最初からに掛けて、誰かが何かを言った前後の描写、「〜〜した。」とかそういう表現が多く、どうにも淡々とし過ぎているのが印象に残って残念。会話だけではなく、描写の中にもちゃんとした動きを加えてあげるとさらに読み易くなると思います。簡単に言うと過去形の描写ではなく、リアルタイムの描写、みたいなものになるのかな。会話の時、淡々と描写を書いていくだけでは淡白になってしまうのは惜しいことだと思うのですよ。そのあたりを気にしながら書くと、読み手としてもリアルタイムで感じられてより楽しめるのです。
短くて申し訳ないですけれども、これにて。次回作を楽しみにお待ちします。
2011/01/21(Fri)12:38:280点神夜
 今作も読んでくださって、ありがとうございました。レスが遅くなってしまい、すみませんです。
 着眼点を褒めていただいてありがとうございます。一度精神病に関連した作品を書いてみたいと思っていたのですが、ふとロボットが発達したら精神構造も人に近づくはずなので、ロボットにも精神病があっておかしくなくなるのでは、と思い書いてみました。楽しんでいただけてうれしいです。
 描写に関する、とてもためになるアドバイスありがとうございます。まだ三人称に関しては圧倒的に経験値が足りなかったため、いろいろと手探りでやっていたところがあったので、このように具体的にこうした方がいいよ、と言ってもらえるのは、とても助かります!リアルタイムの描写ですね、今リメイクに近い形で書きなおしているので、早速取り入れてみたいと思います!
 感想、助言ありがとうございました!もしよろしければ、次作や今作の書き直しなどもまた目を通していただけると、とてもうれしいです。ではではー。
2011/01/24(Mon)00:47:470点白たんぽぽ
作品を読ませていただきました。皆さんが仰っているように着眼点が面白い。ロボットが自意識を持つという作品自体は1960年代ぐらいからあるアイデアだけど(50年代のアメージングストーリー誌にもあった気がするけど、確認できないので)、心理的病理を「犬恐怖症」という身近なものにしていて親しみやすかったです。
ただ、欲を言えばもっとロボットの立ち位置、つまりロボット権が成立する前の社会情勢、つまり異常なロボットは廃棄すべきなのか、治すべきなのか、のような物語のバックグラウンドとなる部分にもっと触れて欲しかったです。それによりロボットというものの存在意味を強く提示できたと思います。また、全体として描写が淡々としていて物語を淡白なものにさせていたように感じられました。
では、次回作品を期待しています。
2011/01/25(Tue)23:04:250点甘木
甘木さん、作品読んでいただいてありがとうございました。そして、返信遅れてしまい、ごめんなさい。
着眼点をお褒めいただきありがとうございます。実はSF初心者すぎて、その作品が思い浮かばないのですが、先達の方々もいろんな模索をなされていたのですね。まだSFものとしては、『われはロボット』や『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』ぐらいしか読了していないので、今後も良作と呼ばれるSF作品をたくさん読んでみたいと思います。
社会情勢については、あまり考えをめぐらしていませんでした。世界観を深めるためには、確かにそういう描写が必要ですね。なんとか今書いている再構築部分に組み込んでみたい、と思います。アドバイスありがとうございます!
描写については、少しは情感あふれるものに現在書き直せている気がするので、前よりは良くなりそうだと思います。書き直しが終わりましたら、もしよろしければ、また目を通していただけると、とてもうれしいです。ではではー。
2011/01/28(Fri)21:38:030点白たんぽぽ
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