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『サンライト・モノローグ Ver.1.01/Ver2.01』 作者:神夜 / SF アクション
全角15669.5文字
容量31339 bytes
原稿用紙約46.35枚
――太陽が見たいと、彼女は言った。だから、太陽が見える場所へと、彼は彼女を連れて行く。





「うー。あー、うー」
 広げた絵本の一ページに目をキラキラさせながら、HX4967-2P-W29はそう言った。
 そのページには、HX4967-2P-W29と同い年くらいであろう小さな男の子と女の子が手を繋ぎながら草原を歩いている姿が描かれており、真っ直ぐに透き通った青空には、顔が書いてある太陽がニコニコしていた。HX4967-2P-W29を膝の上に乗せて、ただずっとHX4967-2P-W29を見ていたEX5567-3F-H35は、それが何という題名の絵本なのかは知らない。それがどのような物語の絵本なのかは知らない。その絵本が果たしていつにHX4967-2P-W29の手元に来たのか、それさえも知らない。そもそも絵本を読んでいるはずのHX4967-2P-W29も、それについては知らないはずである。HX4967-2P-W29が絵本に書かれた文字を理解できるはずもなく、ただ単に絵を見ているだけなのである。
 しかし今、HX4967-2P-W29はその絵本を見て、純粋なまでに目をキラキラさせ、小さな小さな指で顔の書いてある太陽を指差しながら、「うー、あー」と本当に楽しそうに呟いている。言葉らしい言葉ではない、ただの呻き声にしか聞こえないそれであるが、EX5567-3F-H35はHX4967-2P-W29が何と言っているのかを即時に理解していた。
 HX4967-2P-W29は、「太陽が見たい」と、そう言っていた。
 HX4967-2P-W29からの言葉は、EX5567-3F-H35にとって、すべてなのである。例えそれがどのような言葉であろうとも、絶対だ。何が起ころうとも、それは捻じ曲げることができない絶対的な言葉。それを実現させるためには問題が山積みであり、それを成した後に起こるべきことは取り返しのつかないものになることも想像するに難しくはないが、そのようなことは一切、関係ないのだった。先にHX4967-2P-W29が言った言葉は、断じてそういうつもりなんてなかったのだということも認識している。しかしHX4967-2P-W29がそう言ったのだ。ならばEX5567-3F-H35は、それに従うまで。
 膝に乗せていたHX4967-2P-W29の脇に手を入れて、そっと持ち上げる。宙ぶらりんになったHX4967-2P-W29が不思議そうな顔でこちらを振り返り、「うー?」と声を上げた。それに対して、EX5567-3F-H35は何の言葉も返さなかった。すでに命令は受理されていた。もはや止まることはできない。しかしこれはこれで、良い機会なのかもしれない。遅かれ早かれ、このままここにいてもHX4967-2P-W29は死ぬだろう。ならばどこで死ぬかくらいの選択肢は、あるべきではなかろうか。
 HX4967-2P-W29は太陽が見たいと言った。だったらEX5567-3F-H35は、それに殉ずる。
 左腕を折り曲げ、HX4967-2P-W29をそこに座らせる。事の重要性と危機性をまったくわかっていないであろうHX4967-2P-W29は、どこかに連れて行ってもらえるのだということだけは理解していて、嬉しそうにEX5567-3F-H35の首に手を回し、抱きつきながら「うっ、あーっ」と楽しそうに笑っている。
 EX5567-3F-H35は八メートルだけそのまま歩き、目前に聳える鉄の扉の前に立った。コンピュータールームから電気制御されているこの扉は、管理者の許可が無いとロックは解錠されない。恐らくは今のこの光景も、部屋に設置されている十三個の監視カメラによって監視され続けているはずである。もちろん、HX4967-2P-W29とEX5567-3F-H35が扉の前に立ったからといって、このロックが外れるなんてことがないことは承知している。承知しているからこそ、ここから先は強行しかいないだと、理解していた。
 鉄の扉に右手をつける。小細工は必要なかった。ただひたすらに、強引に命令を執行する。
 一度目の破壊で添えられた右手を中心に鉄の扉が捻じ曲がり、無理な圧力が掛かった天井と床のコンクリートに巨大な亀裂が走る。二度目の破壊で電気制御から完全に取り除かれた扉が背後に倒れ、異常を検知したシステムが大きな警報を鳴らす。三度目の破壊で通路に広がっていた蛍光灯と監視カメラを根こそぎ叩き潰した。
「うーっ、あーっ!」
 目前で起こった出来事に対して、HX4967-2P-W29は意味なんてこれっぽっちも理解していないくせに、それでも本当に嬉しそうに笑っている。
 機材の破片が飛び散った明かりの消え失せた深淵の通路を、EX5567-3F-H35はHX4967-2P-W29を腕に抱いたまま、歩いて行く。眼光がその精度を上げ、ある一定を境に赤外線に切替る。色の薄くなった世界の中、しかしその光景の中を、EX5567-3F-H35は迷うことなく真っ直ぐに歩いて行く。警報がけたたましく鳴り響き、非常を告げるランプが赤く回転点灯している。そのランプの行方を、「うーうーうー」とHX4967-2P-W29は目で追いながら笑う。
 通路の奥から盛大な足音が響き渡る。それでもEX5567-3F-H35は止まらない。
 深淵の通路の奥から、防護服と酸素マスクと暗視ゴーグルに身を包んだ警備隊が向かって来ていた。警備隊はHX4967-2P-W29とEX5567-3F-H35を視界に捉えると即座に停止、先頭に立っていた者が腕を振り上げると同時に、各人は手に持っていた自動小銃を真っ向から構えた。その狙いがEX5567-3F-H35に固定されたことを確認した後、先頭の者が手を上げたまま、マスクの向こう側から言葉を発する。
『止まれEX5567-3F-H35。それ以上の進行は許可できない』
 しかしEX5567-3F-H35は止まらない。その命令の優先度は、HX4967-2P-W29の言葉より明らかに低い。
『最後通告だEX5567-3F-H35。直ちに止まれ』
 EX5567-3F-H35は止まらない。その命令は受理されない。
 先頭の者の手が、一瞬の間の後に一気に振り下ろされた。
 合計して十四の銃口から火花が散った。その銃弾は一直線にEX5567-3F-H35の頭蓋を狙った。自立起動型アンドロイドを機能停止にするには、脳に埋め込まれたメインマイコンを潰す以外に方法はない。それを理解しているからこそ、警備隊はEX5567-3F-H35の頭蓋を一点集中で狙ったのだ。その判断は限りなく正しい。正しいがしかし、連中が作り上げたモノの性能は、そんな当たり前の銃撃で機能停止するはずはなかったのだ。そんな陳腐な攻撃など、何の役にも立ちはしない。
 至極単純な解。ここで機能停止すれば、EX5567-3F-H35はHX4967-2P-W29に太陽を見せてやることができない。ならばここで機能停止する訳にはいかない。HX4967-2P-W29の言葉は絶対。取るべき行動は一つしか有り得ない。HX4967-2P-W29に太陽を見せるのだという命令が受理された。それに対する障害が目の前に現れた。なればこそ、障害は排除しなければならない。
 防御コマンド入力。出力24%でフィールド展開。
 十四の銃弾が、EX5567-3F-H35に当たる直前で停止、そのまま力無く床に転がる。無機質な音を響かせながら転がる銃弾の中を、EX5567-3F-H35は一歩も止まらずに歩き続ける。第二撃目はすぐに来た。が、それらをすべて無力化させ、EX5567-3F-H35はなおも歩き続ける。痺れを切らした警備隊の一人が隊を乱し、制止の声を振り切ってEX5567-3F-H35に向かって電磁ナイフを抜いた。
 HX4967-2P-W29が向かって来る警備隊を見つめながら、「いー」と無邪気に笑った。
 EX5567-3F-H35はコマンド入力を切替える。
 攻撃コマンド入力。出力32%でアタック。
 目前で警備隊の一人が弾け飛ぶ。文字通り、かつて人間であった者が肉片を撒き散らかしながら弾け飛んだ。廊下に飛び散った大量の血痕と臓器をそのままに、すべてを理解して判断した警備隊が更なる迎撃を開始する。自動小銃を構えることを止め、各人が先の者に習って電磁ナイフを抜く。自立起動型アンドロイドを機能停止にさせるためにはメインマイコンを潰す以外にないが、動作を一時的に停止させるくらいであれば、電磁ナイフでも可能である。この刃が身体に触れさえすれば、通信線の周波数を一定時間狂わせることが可能になる。
 統率された指揮の下、警備隊がEX5567-3F-H35に向かって突撃する。
 が、すべては無意味だった。
 残っていた十四名の警備隊が肉片となって弾け飛ぶまでに、二秒も掛からなかった。
 まるで花のように咲いた赤に、HX4967-2P-W29は本当に嬉しそうに笑っていた。
 それから一体何度、警備隊と交戦したかは判らない。判らないがしかし、EX5567-3F-H35はその度、徹底的なまでに撃退した。HX4967-2P-W29が命令を撤回しない限り、EX5567-3F-H35は止まらない。そしてHX4967-2P-W29が命令を下して止めさせなければ、EX5567-3F-H35を止められる勢力はもはや、この場所には残っていない。かつてはあったはずのシステムはすべて、あの日に起こった抗争ですでに使用不能となっていた。
 ここにはもう、自立起動型アンドロイド・タイプ『EX』はEX5567-3F-H35しか残っておらず、同じくタイプ『HX』はHX4967-2P-W29しかいない。このままHX4967-2P-W29が朽ち果て、やがてそれを確認した後、EX5567-3F-H35も自らの役目を終え、機能停止となるはずだった。そうしてこの場所も、終わりを告げるはずだったのだ。しかしその最後の最後、研究員の一人が実験のために与えていた絵本が元凶となり、HX4967-2P-W29はEX5567-3F-H35に命令を下し、EX5567-3F-H35はHX4967-2P-W29の命令に従った。
 地下から着実に地上へ向けて歩き続けた。障壁を幾度も打ち破り、立ち塞がる警備隊を根こそぎ死滅させ、EX5567-3F-H35はただひたすらに、地上を目指した。
 やがて最後の障壁の前に立った時、EX5567-3F-H35とHX4967-2P-W29の前に、一人の男が立ち塞がる。
 それはかつて、EX5567-3F-H35とHX4967-2P-W29を作り出した研究員チームの班長だった男である。そして、その者がHX4967-2P-W29に対して、失われた遺品である絵本を与えた人物でもある。名前は最後まで認識できなかった。ただ、他の研究員からは「イエスタデイ」という暗号で呼ばれていたことだけは憶えていた。
 イエスタデイは、HX4967-2P-W29がEX5567-3F-H35以外に、唯一懐いていた人物であった。HX4967-2P-W29はイエスタデイを見ると、EX5567-3F-H35から少しだけ身を乗り出しながら、「うー、あーっ!」と本当に嬉しそうに笑って手を伸ばす。いつもなら掴み返して笑うはずであったが、この時ばかりはイエスタデイはその手を掴むことをせず、真っ直ぐに、ただ真っ直ぐに、EX5567-3F-H35を見つめていた。
 言葉が紡がれる。
「行くのかね、サンゴ」
 イエスタデイだけが、EX5567-3F-H35のことを、「サンゴ」と、そう言った。
 そしてHX4967-2P-W29のことは、「ニク」と、そう言った。
 イエスタデイの問いに関して、EX5567-3F-H35は何も言わなかった。
 それを肯定だと受け取ったイエスタデイは小さく深呼吸をして、
「今の君に何を言ったところで、止まりはしないだろう。そういう風に作ったのはこのわたしだ。ニクが君に対して何と命令したかは問わない。だから止めはしない。……しかしここから先に出たところで、君たちの望むものは恐らく、手に入らないだろう。それでも、君たちは行くのかね?」
「ううーあっー」
 HX4967-2P-W29は嬉しそうに、イエスタデイに手を伸ばし続ける。
 そんなHX4967-2P-W29を見つめて、イエスタデイはまるで父親のように微笑んだ。その微笑を浮かべたまま、懐から電磁ナイフが取り出される。
「これで罪が許されるとは思っていない。だけどこれくらいは、させてくれないか、サンゴ」
 一歩ずつ、イエスタデイが近づいて来る。
 やがてHX4967-2P-W29の手がイエスタデイの頬に触れた時、彼は最後の言葉を吐いた。
「…………娘を……ニクを頼む、サンゴ」
 イエスタデイが手に持っていた電磁ナイフを振り上げ、EX5567-3F-H35の頭蓋を狙った。
 その瞬間に、EX5567-3F-H35の中でコマンドが入力される。そもそもイエスタデイには攻撃を当てるつもりがなかっただとか、そもそも電磁ナイフの出力がOFFになっていただとかはもはや関係ない。ただ命令の邪魔になる者を片付けるために、ただ機械的に、ただ伝動的に、EX5567-3F-H35は攻撃コマンドを入力した。コマンドが受理された刹那には、67%の出力でアタックが放たれる。EX5567-3F-H35とHX4967-2P-W29の目前で、かつてイエスタデイと呼ばれていた者が弾け飛ぶ。目の前で咲き誇った花に対して、HX4967-2P-W29は何の状況もわからぬまま、ただ綺麗なその光景に対して、「やうー」と目を輝かせて喜んだ。
 唯一、EX5567-3F-H35とHX4967-2P-W29を受け入れてくれた者の屍を乗り越え、遂に最後の扉を破壊した。
 吹き荒れる突風がEX5567-3F-H35とHX4967-2P-W29を出迎える。そうして目にするのは、初めての『地上』であった。
 絵本のような光景など、どこにも在りはしなかった。
 荒れ果てた荒野のど真ん中、ぽっかりと空いた基地へと続くクレーター以外、周りには何もなかった。草木など一本も生えておらず、生き物の気配さえも伺えない。吹き荒れる突風が砂煙を巻き上げながらどこまでも流れていく。そんな光景の中、EX5567-3F-H35とHX4967-2P-W29はただ、空を見上げた。
 紫色のスモッグに覆われた空には、太陽はなかった。
 太陽が見れる場所など、この世界にはきっと、もうどこにも残ってはいないのだろう。
 この世界が死んでから、二十三年と、百四十五日が経過していた。
「うー」
 悲しそうな顔をしながら小さく、HX4967-2P-W29がそう呟いた。
 EX5567-3F-H35は瞬時にそれを理解し、そしてそれに従う。
 EX5567-3F-H35はHX4967-2P-W29を腕に座らせたまま、ゆっくりと歩き出す。

 太陽が見たいと、彼女は言った。
 だから、太陽が見える場所へと、彼は彼女を連れて行く。

 終わってしまったこの世界で、彼と彼女は、太陽を探しに行く。



     「サンライト・モノローグ」



     「Ver.1.01」



『――』
 呼ばれたそれが、自らの名前であることは憶えていた。ただ、それが果たして何と言う名であったかは憶えていない。
 時折、ふとした拍子に、過去の記憶を思い出すことがあった。思い出すのは前に見たのと同じ記憶であったり、まったく新しい記憶であったり、それはその時になってみなければわからないことであるが、メインマイコンに負荷を掛けた時などに、ふっと脳の片隅で記憶の断片が再生される。そのようなことが繰り返される度、いつしかそれをひとつひとつ、その瞬間だけは大切に見ている自分がいた。失ってしまったものを、再び集め直して繋げ合わせるように、ただ静かに、それを見ている。
『……は、あ――ね』
 再生される記憶の中で、少女が何かを言っている。ただ、それが果たして何と言っているのかはわからない。
 草木が一面に生い茂り、色取り取りの花が咲き誇ったその高原で、一人の少女が座り込み、一輪の名前も知らない花を手に持ったまま、こちらに向かって何かを言っている。再生される記憶には、音がほとんどない。再生される記憶の中で誰かが何かを言う度に、ノイズが吹き荒れてその言葉を聞き取ることができなかった。しかし、それでも構わなかった。その時に見えるその光景だけで、十分であった。
 目の前の少女が笑っている。笑いながら手に持っていた一輪の花をこちらに向かって差し出す。自分はそれを受け取る。少女がもう一度笑った後、こちらから視線を外して再び周りに咲いた花を見回し始める。自分は手に持った花に視線を落として、三度、それを指でくるくると回転させた。ピンク色の花びらを咲かしたこの花が、何と言う名前であるかは知らない。ただ、少女が気に入った花であったことは確かだった。そして自分も、少女が気に入った花だからこそ、この花を気に入ったのだ。
 記憶の中で、自分はその花びらに触れた。少女がふっとこちらに視線を向けて、口を開き掛けた。
 その瞬間、吹き荒れたノイズに記憶の断片が遮断され、フィールド展開出力が100%を超えたことによって自動的にモードが変更される。対象のエネルギー質量を解析したメインマイコンが、最も効率的なレベルを探し当てる。フィールドレベルが「1」から「3」まで引っ張り上げられ、目前に展開していたフィールドが不可視だったものから可視可能なものに変貌を遂げる。
 エネルギーチャージを終えたメーアから放たれたレーザー砲が、真っ向からEX5567-3F-H35を狙い撃つ。
 上空に停滞し、EX5567-3F-H35をロックして攻撃を行う機体の名を、無人戦闘機『メーア』という。母艦である『クラウド・メーア』から制御されている無人機である。ターゲットをロックしたことにより、即座に攻撃を実行に移したメーアからのレーザー砲は、直撃したEX5567-3F-H35の周りの荒れ果てた大地を根こそぎ破壊し、音を掻き消しながらの出力が続けられた。
 が、フィールドレベルが「1」から「3」に切替った以上、メーアからのレーザー砲如きでEX5567-3F-H35が堕ちることはない。こんな程度の攻撃で、EX5567-3F-H35が屈することはない。レベル「3」に移行したフィールド展開出力が34%を超えたことを境に、レーザー砲がEX5567-3F-H35の目前で霧散し始める。単純な力比べでさえ、もはやメーアではEX5567-3F-H35には届かない。
 青色のレーザー砲が目前で弾け続けるその光景に、EX5567-3F-H35の胸の中にいたHX4967-2P-W29が「いー」と笑いながら手を伸ばした。
 EX5567-3F-H35が、止めていた歩みを再開させる。メーアから放たれ続けるレーザー砲を意に介さず、目前に展開したフィールドですべて無力化させ、EX5567-3F-H35は歩き続ける。その中で右手がゆっくりと上げられ、広げられた掌が上空に停滞するメーアに向けられた。
 出力の20%が攻撃に切替る。
 EX5567-3F-H35を中心として空間を走ったジャミングが放射線状に辺りに広がり、その出力が臨界点に達した刹那、メーアから放たれていたレーザー砲の一閃が大きく歪んだ。歪んだと同時に、唐突にその出力が停止する。レーザー砲が止まったことを確認した後、EX5567-3F-H35はフィールドのレベルを「3」から「1」に下げ、展開をやめる。余裕の出来た出力を、すべて攻撃に切替えた。攻撃出力が80%を超えた時、EX5567-3F-H35はメーアに向けていた掌を一気に握った。空白の一秒が過ぎた時、鉄を捻じ曲げる音が響く。上空に停滞していたメーアの装甲が、至る所から凹み始める。それはそのまま数を増し、やがてメーアそのものを押し潰し出した。空白の三秒が過ぎた時、動力炉に歪みの生じた機体が遂に臨界点を突破する。
 EX5567-3F-H35の上空で、メーアが爆発する。
 紫色のスモッグで覆われた空の下、黒煙を発生させたそこからメーアの破片が飛び散る。それらを13%の出力で展開したフィールドで弾き返し、EX5567-3F-H35はただひたすらに、歩き続ける。上空に残った黒煙に対して、HX4967-2P-W29が目を丸くさせて「おー」とつぶやいた。
 HX4967-2P-W29を連れて、EX5567-3F-H35は歩いて行く。
 ただ真っ直ぐに、歩いて行く。



     「Ver.2.01」



「……ちょっと。なによ。あれ」
 思わずそうつぶやくこと以外に、カナリアは他の言葉が出て来なかった。
 そのつぶやきに対して、隣で同じ光景を見ていたはずのフクロウは別段変わった様子もなく、
「そう言えばお前は見るの初めてだったな。あれがおれ達の『完成型』だよ」
「『完成型』、って言ったって……」
 自分達もそれなりに、初期の『試作型』としては高性能の方だとは思っていたが、はっきり言おう。
 桁が、違う。
 通常火器を相手にならいざ知らず、メーアに対して防戦一方どころか、逆に何の苦もなく破壊して見せたあれが、自分達と同じ『HX』と『EX』であるとは到底思えない。根本的な性能自体が、比べるまでもなく話にならない。実物を見るまでは『完成型』とは言え、元を正せば自分達と同一タイプであるからして、そこまで圧倒的な差がある訳はないと思っていた。だからこそ、同じタイプであるのにも関わらず、ただ『完成型』というだけで特別扱いをされているのが羨ましくもあり、憎くもあったのだ。
 が、実際にこの眼で見て、思い知った。
 桁が違う。次元が違う。
 『完成型』をガンダルが狙う理由を、ようやく理解した。
 あれほどの性能があれば、そしてあれほどの性能のモノを量産できるようになれば、もはや誰にも、もはや何にも止められはしないだろう。あれにどれだけの技術力が詰まっているのかはわからない。おそらくは『試作型』の自分達とは比べ物にならないほどのモノが詰まっているのだと思う。故にガンダルは『完成型』を欲し、今現在、血眼になって包囲網を広げているのだ。
 しかし、あれは生半可な戦力では止まるまい。それこそクラウド・メーアを一個隊レベルで引っ張って来ない限りどうしようもなく、メーアを何機ぶつけたところで意味など無い。先の戦闘だけで、それを理解した。それほどまでに圧倒的で、それほどまでに絶望的であった。敵に回せばこれほど恐ろしいモノはないであろう。あれを生半可な戦力で止められないということは、ガンダルがあれを手にした時、もはや止めることが不可能になるということである。血眼になる訳だ、とカナリアは思う。
 荒野に出来た岩石の高台の上から、何も無い荒れ果てた大地をただ真っ直ぐに歩いて行く『完成型』を見続ける。ここから『完成型』までは、眼球の倍率を限界まで上げてようやく見える程の距離である。さすがにここまで攻撃出力が届くとは思えないが、何が起こるかわからないのが恐ろしいところだ。先の戦闘を見る限り、あれが『完成型』の限界という訳ではあるまい。これだけの距離を隔てていても、もしかしたら何かしらのアタックがあるかもしれない。気を抜けばその瞬間にバラバラに解体されているような気がする。
 呆然と立ち竦むカナリアに向かい、隣のフクロウが肩をくすめる。
「そんなに警戒するな。逆にそのせいでアタックが飛んで来るぞ。心配すんなよ。確かに『EX』は『完成型』だが、『HX』はまだ『不完全』だ。完成してない。こっちから攻撃を仕掛けない限り、ありゃあ無害だ。そういう風に出来てるはずだ」
 確かにそうだが、そうであればあるほど、逆に恐ろしい。『EX』だけで、あの性能なのだ。それに加えて『HX』が完成していたらと思うとゾッとする。もし仮に『EX』と『HX』が互いに完成していたら、あんな程度ではないはずである。あれの何倍、いや何十倍もの出力が可能となっていたはずだ。
 眼で追っていた『完成型』の胸の辺りを見据える。折り曲げた『EX』の腕に座り、六歳ほどの少女がきょろきょろと辺りを見渡している。あれが、『不完全』とは言え、『EX』と対を成す『HX』なのである。とてもそうとは思えない。見た目的な違和感がある。『EX』が二十歳前後の男性を模しているのに対して、なぜ『HX』はあんな少女の形を模したのであろう。
 が、それを言うならこっちも同じようなものか。カナリアが十五歳の女性を模してるのに対して、フクロウは二十九歳の男性を模している。そもそもの互いの用途が違ったのだから仕方がないことではあるが、なんでこんなむさ苦しい男と一緒にいなければならないのか、カナリアにとってはそこが唯一の不満でもある。しかしそういう事情がある分、こちらが不釣合いなのはわかるが、向こうがなぜあんなにアンバランスなのかがわからない。『完成型』であるのだ。最初から造られた目的は一緒だったはず。ではなぜああも見た目を離したのだろうか。ただそれを考えたところで答えが出て来るはずもないので、思考を切り捨てる。
 それよりも先に、確認すべきことがある。
 カナリアは真っ直ぐに『HX』を見据えながら、口を開く。
「……あれが、『鍵』なんだよね?」
 隣のフクロウが頷く。
「ああ。間違いない。どういう意図で今更にこっちに出て来たのかはわからないが、それでも間違いなく、あれが『鍵』だ。随分と長い間、廃棄処分から免れて放浪してきたが、長生きはするもんだな」
「ジジくさっ」
「大きなお世話だ」
 フクロウが踵を返して歩き出す。『完成型』から視線を外して、カナリアもその後を追う。
「どこ行くの?」
 その問いに対して、フクロウは至極当然に、
「あの『EX』と『HX』に接触する。考えてもみろ、メーアを撃墜したんだぞ。今頃それはガンダルに届いてるだろうし、下手すりゃすでにクラウド・メーアがこっちに向かってる」
 カナリアは納得できない、と言った風に口を尖らせ、
「別にいいんじゃないの。クラウド・メーアが来たところで、どうせ『完成型』様なら迎撃するでしょ」
「馬鹿言ってんじゃねえよ。ここで後先考えずにクラウド・メーアを撃墜してみろ、そんときゃあガンダルの軍隊が一気に押し寄せて来るぞ。そうなったらさすがに『完成型』でも無事じゃ済まねえ。ここまで来たんなら見す見す『完成型』をガンダルに奪われてたまるかよ。だから今から、接触するんだ。手遅れになる前に」
「大丈夫でしょ。なんたって『完成型』様なんだから」
 フクロウが怪訝な顔で振り返る。
「なんだお前。なんで拗ねてんだ?」
 図星を指されたことに僅かに同様しつつも、平常心を保っていられたと思う。
「別に。なんか気に入らないだけ」
 それを拗ねてるって言うんだよ、とフクロウは前を向き直す。
 この高台まで乗って来たバギーの側まで歩み寄り、よっこらしょ、とつぶやきながら運転席に乗り込んで行く。キーシリンダーが回転した後に、バギーのエンジンが動き出す。一定間隔で排気音を吐き出すその音を聞きながら、カナリアは頬を膨らませながらもバギーの助手席に乗り込んだ。それを確認した後、フクロウがアクセルを踏み込んでバギーを発進させる。
 後ろへ流れて行く光景をぼんやりと視界に入れながら、カナリアは足を組んだ。
 拗ねている。そう言われて改めて気づいたが、確かに自分は、拗ねているのだと思う。それもそうだろう。今まで散々待たせた挙句、現れた『鍵』があんな出来損ないであったのだ。そりゃあ落胆したくもなる。そしてあんな出来損ないがちやほやされることに対して、多少ながら嫉妬もしている。『鍵』が自分であったら良かったのに、と思わなくもない。『鍵』であれば苦労なども多いだろうが、それらを補って余るだけの、力が手に入っていたはず。そして仮に自分が『鍵』であったのなら、少なくともあの出来損ないよりは上手く立ち回れるはずである。
 が、今更にそれを嘆いたところで何かが変わる訳でないし、『鍵』がこの地上に再び現れた以上、カナリアやフクロウのような『因子』を持ったモノは皆、おそらくあれに従うことになるはずである。それはきっと変えられないことだと思うし、それに対してはカナリアだって文句はなかった。だからこそ、拗ねるのだ。それくらいの我侭が許されたっていいではないか。これが『因子』を持つモノに与えられた、特権であるのだから。
 バギーの運転席で頬を膨らませ続けるカナリアを横目で見ながら、フクロウが少しだけ笑った。
「もうちょっとで全部終わる。それまでの辛抱だ」
 カナリアは、フクロウとは正反対の方向を見つめ直し、言った。
「わかってるよ、ばーか」
 見上げた空は、紫色のスモッグに覆われていた。
 そのことに最初に気づいたのは、カナリアであった。
 探知能力に関しては、フクロウよりもカナリアの方が秀でている。だからこそ気づけた。バギーの助手席で組んでいた足を戻し、真っ直ぐに上空を見上げた。来る、と頭の片隅で認識した瞬間に、もはや逃れることは不可能の位置にまで迫っていることを悟る。だが狙いはカナリアとフクロウではあるまい。ロックされているのは、まず間違いなく、『HX』であった。先の戦闘で、すでに位置を完璧に識別されていたのであろう。不幸中の幸いと言えば、まだただ単機だけだということだ。
「フクロウ」
 助手席でつぶやいたカナリアの声に、フクロウがようやくそれに気づいた。
 が、その時にはすでに、ジェットエンジンの排気音が二人の頭の上を駆け抜けていた。
 紫色のスモッグに覆われた空の下、ターゲットをロックしたもう一機のメーアが黒い煙を残しながら疾走する。三角形に模られた装甲に、真っ黒い塗装。右翼の上下に捺された紋章は、間違いなくガンダルのものであった。先ほどに『HX』が撃墜したメーアと同一の無人戦闘機が、真っ直ぐに荒野をただ歩く『HX』に向かって突っ込んで行く。
 メーアが再び単機で『HX』に向かったところで、返り討ちに遭うのは明白である。しかし。
「カナリア」
 バギーを運転したまま、フクロウがカナリアの名を呼んだ。
「わかってる」
 一言だけそう返して、カナリアは目を閉じる。
 気は乗らないが、恩を売っておくのはいいことだと思う。ここで一発、『完成型』にジャブを入れておく必要がある。何も無条件で従う必要はないはずだ。あくまで対等であると証明するにはちょうどいい。『試作型』や『完成型』という括りではなく、同じ『HX』と『EX』として並び立つためには、ここで思い知らせる必要がある。気は乗らないが、恩は売っておく。これから共に行動するにあたり、自分達だけが特別なんだとは思わせない。並び立つモノとして、大きな顔は、絶対にさせない。それくらいの意地はこっちにだってあるのだ。気に入らないものは気に入らないで、絶対に押し通してやる。
 バランスの悪いバギーの上で、それでもカナリアが目を瞑ったまま助手席から立ち上がる。小さな深呼吸を一度だけした後、カナリアが目を開けた。それを合図として、バギーを運転したままのフクロウが自らの首筋に手を当て、皮膚を僅かにずらすと小さな窪みが現れる。その窪みに、バギーのダッシュボードに無造作に置いてあったケーブルを引っ張り寄せ、片側のコネクタを接続し、その逆側をカナリアに向かって差し出す。同じように自らの首に窪みを現せていたカナリアがケーブルを受け取り、コネクタを接続した。
 自立起動型アンドロイド・タイプ『HX』:識別HX78A-E65『カナリア』と、同じく自立起動型アンドロイド・タイプ『EX』:識別EX24P-K7『フクロウ』がリンクする。
 フクロウの演算能力の一部がカナリアの支配下に置かれる。
 刹那に、カナリアの目を通して見る光景の中に、幾つもの数値が浮かび上がった。それをひとつひとつ、瞬間的に見渡しては情報を並べ替えていく。数値を全部見回し、演算を掛けて必要な情報を割出すまでに、一秒も必要なかった。
 その頃にはすでにメーアは『HX』を射程距離圏内に入れていて、ボディの下からハッチが開き、そこからレーザー砲が伸びていた。レーザー砲のチャージはもう開始されており、もはやあの出力を止める方法はないだろう。レーザー砲の出力だけを止めるなんてそんな芸当ができるのはおそらく、『完成型』だけである。もちろんカナリアやフクロウにはそんな高度な調整はできないし、そもそもそんな能力も備わっていない。だがそんな上品に出力だけを止める必要などないのだ。単純な話である。レーザー砲は止められない。ただしメーアは止めなければならない。ならば取るべき行動は、一つだけ。レーザー砲を発射される前にメーアを――撃墜する。
 メーアにロックされたのがカナリアやフクロウであれば、レーザー砲を防ぐためのフィールド出力で手一杯となり、攻撃に転じるなど不可能であっただろうが、幸いにして今ロックされているのは『完成型』だ。フィールド展開する必要はなく、思う存分、攻撃に出力を発揮できる。そのための下準備は、すでに済んだ。
 カナリアが割出して組み直した情報を、すべてフクロウに向けて送り出した。運転しながらその情報を受け取ったフクロウが、不適な笑みと共にバギーを急停止させる。助手席の上に立っていたカナリアが突然のことにバランスを崩し、悲鳴を上げて前のめりに倒れそうになるのを瞬時に受け止めて支えたフクロウが、運転席から微妙な体勢のまま右手を伸ばし、空を疾っていたメーアに向けて掌を広げた。
 支えられていたカナリアが不満いっぱいの顔でフクロウを睨みつけながらも、リンクしたその屈強な身体に向けて命令を弾き飛ばす。命令を受け取ったフクロウが、すぐさまそれに従う。
 ターゲットにロック完了。フェーズ「3」で攻撃コマンド入力。
 出力86%で――アタック。
 メーアの接近を察知していた『完成型』が、攻撃の意図を汲み取って迎撃するより早くに、フクロウが放ったアタックがメーアに直撃する。
 『完成型』に向かって一直線に飛んでいたメーアが、突如としてその軌道を歪め始めた。真っ直ぐにジェットエンジンから伸ばしていた黒い煙が蛇行し、レーザー砲にチャージされていたエネルギーが霧散する。クラウド・メーアからの制御を失った制御機関が暴走を開始、束の間の無制御飛行の後、遂にジェットエンジンがその機能を停止させた。動力炉の停止したメーアが、その高度を落とす。
 フクロウが、メーアに向けて開いていた掌を、一気に握り潰した。
 機体の装甲が凹んだ次の瞬間に、押し潰されたメーアが上空で爆発する。
 弾け飛んだ破片を辺りに撒き散らし、メーアが大地に向かって墜落していく。その様を見据えながら、フクロウが笑った。
「上出来だカナリア」
 それにカナリアは実に不機嫌そうに頬を膨らませながら、
「当たり前でしょばーか。それより早く離して」
「おお、すまん」
 フクロウが抱きかかえていたカナリアを助手席に座り直させ、自らは運転席に再び乗り込んでバギーを発進させる。
 背後に流れていく景色を見るふりをしながら、カナリアは内心、胸を撫で下ろす。バギーの助手席で足を組み直しながら、思う。何とか上手くいった。意地は出してみるものだ。もちろん、メーアを撃墜するのだという明確な意志の下に座標情報は組んだし、今に出来うる限りの最大出力でアタックも行った。だが、高速で飛行していたメーアを一撃で決められるかどうかは、一か八かの単なる賭けであった。おそらく二回に一回は失敗する。そしてもし仮に失敗していたら、今度は『完成型』だけではなく、こちらもメーアにロックされていたはずである。それだけのリスクを負っていた、大きな賭けであった。
 しかし、結果的にメーアは撃墜した。カナリア達は、賭けに勝ったのだ。
 リスク分の対価は得た。なにせこれで、押し売りではあるが、自分達は『完成型』に恩を売ったことになる。存在に関しては完全優位なのは向こうであるが、これで立場的に有利な位置に立ったのはこちらであった。大きな顔なんてさせない。させるもんか。『完成型』が『鍵』である以上、それに従うのには文句はないがしかし、その固体自体が気に入らないのはどうしようもない話だ。ならばせめて、ここで優位に立っておかなければならないのだ。
 メーアを撃墜した際に上空に残った黒煙の下を、バギーが通り過ぎる。着実に『完成型』に近づいて行く。フクロウがメーアを撃墜したのを境に、『完成型』はその場から一切動いていなかった。が、接近しているこのバギーには気づいている。先ほどからそれを、この身体全体で嫌というほど理解している。
 バギーを運転していたフクロウが、小さな声でつぶやく。
「如何なるコマンドも入力するなよ。少しでも感知されたらその瞬間に吹き飛ぶぞ」
「わかってるわよ」
 強気でそう返したものの、カナリアはそれ以上の言葉を吐けなかった。
 寒気がする。『完成型』というのは、ここまで桁外れの性能なのか。
 すでにカナリアとフクロウは、『完成型』にロックされてしまっている。少しでも不穏な動きをこちらが見せれば、たぶんその瞬間にアタックが飛んでくる。例えこちらが先に準備を整えた万全の体勢で、先に攻撃を仕掛けたとしてもきっと、『完成型』に攻撃を与える前にこちらが弾け飛ぶであろう。有り得ない、と言ってしまえばそれまでのこと。本当にあれは、同じタイプなのだろうか。『試作型』と『完成型』で、本当にここまで性能に差が出るものなのか。これではすでに、まったくの別物だ。
 『因子』を持つ自立起動型アンドロイドは、この『完成型』のために造られたと言っても過言ではなかった。それに対しての不満はないし、おそらく『因子』がなければカナリアもフクロウも、廃棄処分を免れてここまで我武者羅に生き長らえてはいなかったと思う。その点に関しては感謝もしているがしかし――これは、一体何だ。異質なモノがそこにいる。異質なモノに今、自分達はロックされてしまっている。少しでも下手な方向に制御が動いたら、その瞬間に破壊される。間近でこの目で見て、この肌で感じて、ようやく理解し、そして納得した。否、納得させられたと言った方が正しい。
 これが、『完成型』なのだ。そしてこれが、『鍵』なのだ。
 植えつけられた『因子』が鳴いているような気がした。
 無意識の内に震え出した身体を小さく抱き締めるカナリアを他所に、遂にバギーが『完成型』の目前に到着して停止する。
 十メートルを残して停止させたバギーのエンジンは切らないまま、フクロウがゆっくりと運転席から降りて行く。
 真っ直ぐにこちらを見据えている『EX』を見た瞬間に、カナリアは自分の鼓動が停止するかのような感覚を受けた。ゾッとした。何の動きも見せず、ただこちらを見つめる『EX』のその眼から、視線が外せない。恐ろしいまでの無機質な眼。自分達が作り物だというのはわかっているし自覚もしている。だがそれでも、これは、異常過ぎる。色の無いその眼に、身体の震えが止まらない。動力炉の奥が痛い。『因子』が鳴いている。
 五歩だけ歩み出たフクロウが、口を開く。
「こちらに攻撃の意志はない。おれ達は『因子』を持ってる、って言えばわかるだろ。お前達を、迎えに来た」
 『EX』は、何の変化も見せなかった。カナリアとフクロウに対するロックは、未だに外されていない。
 『EX』の腕に座ってじっとしていた『HX』が、フクロウを不思議そうに見た後に、カナリアへ視線を移した。『EX』とは違う、純粋なその眼から視線を外すことができない。何も考えられない。真っ直ぐに見据えてくる『HX』に対して、カナリアは何も言えなかった。ただカナリア自身は気づいていなかったが、いつしか震えは止まっていた。
 やがて『HX』が、本当に楽しそうに笑い、「やぅー」と言った。
 まるでそれが引き金のようだった。カナリアとフクロウに合わせてあった『EX』のロックが解除される。
 『HX』を胸に抱いた『EX』が、こちらに向かって歩き出す。
 空は依然として、紫色のスモッグに覆われたままだった。
 『因子』が強く、強く、鳴いている気がした。








2011/01/08(Sat)23:02:01 公開 / 神夜
■この作品の著作権は神夜さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
初めましての方は初めまして、お久しぶりの方はお久しぶり、いつも読んでくれる方はどうもどうも、神夜です。
さて。最初に「サンライド・モノローグ」を投稿してから随分と時間が経ってしまいましたが、何とか続きを書いていくための方向性が完璧に固まった次第であります。
正直な話をすると、先日にレスを返した時に書いていた第一章は、これとは180度違う物語でした。それを書き終わって、さーて投稿するか、と思っていて読み直していて、ふと思った。「これ、面白か?」 書いた自分が言うのもなんだけれども、これっぽっちも、面白くなかった。何の面白みもなかった。そこで気づいた。これで投稿すると逃亡するしか道が無くなるパターンだ、と。そんな訳で、神夜としては「第一話を丸々書き直す」という異常行動を取った訳です。その場のノリでしか書かない自分がよくやった。停電二回でさらにかなりの枚数を書き直すハメになったけど、ちゃんと書いた。よくやった。個人的には最初に書いた奴より随分マシになったはず。登場人物とかストーリーとかまるで違うけど何とかなった。よくやった。うん。
そんな訳で、「サンライト・モノローグ Ver.1.01/Ver2.01」なのでした。いろいろ考えたのですが、結局こんな題名でしばらくは進めて行きます。前作からの影響で、いちいち章毎に題名考えるの面倒臭くなったなんてことはないですよ。そんなことはないです。断じてないです。
諸々考えながら進めているせいで、前作のようなスピードで更新はできないと思いますが、それでもちょこまかちょこまか書いていきまする。こんな方向性になってしまっているのですが、誰か一人でも楽しんで、「とりあえず続き書いて来い」と言ってくれることを願い、神夜でした。
この作品に対する感想 - 昇順
主人公の名前が長すぎることにけらけら笑いました……ゴホン、失礼。
 某氏のように、僕も主人公がガールフレンドの目をつぶすんだろうなと思っていました。
他の想像では……

「――――太陽がみたい」
「目玉焼きでも焼け。それかクリリンか亀仙人呼んでこい」
 完
だと思っていました。でもはるかに想像の上を行っていたので、安心しながら読み終えました。

おもしろかったです。
 水山 虎でした。
2010/12/28(Tue)21:13:160点水山 虎
正直申しますと、神夜様の作品は何度か目を通し、完読したものもあったのですが、どうしても「萌え」の感覚についていけなくて、感想を書かずじまいになっておりました。
でも、これはいけそうかも。何故か大友克洋の「AKIRA」が思い浮かんだりしていますが、もちろんストーリーとはまったく関係なく雰囲気という意味です。
すごく面白そうな匂いがプンプンしておりますので、次回以降もおおいに期待してお待ちしたいと思います!
2010/12/28(Tue)21:24:240点玉里千尋
 こんばんは。作品読ませていただきました。
 うん、これは行ける。こういう正当派SF色の濃い作品は、僕としてはまさにど真ん中の感じです。細かく見ていくと、「サンゴ」はともかく「ニク」はちょっと格好悪いんじゃ……とか、光増幅タイプの暗視ゴーグルは赤外線使ってないんですよ、とか色々ありますし、イエスタデイの行動もまだ今ひとつ良くわかんなかったりもするんですけども、しかしこの雰囲気だけで、これはOKだと言えてしまいます。とにかく格好いい。
 ここからは、不思議な世界を旅するような展開になるのでしょうか。出来たら、椎名誠の「アド・バード」とか「水域」的な雰囲気を……って、勝手なリクエストをしておきます。(前者は日本SF大賞まで取ってますので、もし未読でしたらぜひ)
 ええと、四日市駅1番ホームの話は、あれは冗談ですので気にしないでくださいね。とか言いつつ、せっかくだから自分で挑戦してみようかな。
2010/12/28(Tue)23:10:111天野橋立
こんにちは! 羽堕です♪
 出だし、ガッチリと掴まれてしまいました。最初、このサンゴの行動すららも全て性能テストを兼ねた実験なんじゃないだろうかと思ったのですが、すでにその場所には止めるすべがなかった事、世界は終わっていてるという展開に驚きつつも引きつけられます。ニクとサンゴの不思議な主従関係、そしてイエスタデイの言葉から読みとれる部分と色々と想像させられます。二人の旅が、どんなものになるのか、どんな出会いがあるのか期待と不安が混じった感情になります。
であ続きを楽しみにしています♪
2010/12/29(Wed)00:18:560点羽堕
どうも、はじめまして。(ですよね)
初めて神夜さんの作品に感想書かせていただきます。
---
読み切りだとしてもこれはこれでこの後自分なりに物語を想像できそうで読み切りでもいい感じです。ですが、長編ということでさらに期待して続きを待とうと思います。
私は、脇役のなかでもさらなる脇役であろう警備隊を思ってしまいました。
「ああこの警備隊にも家族がいるのだろうなあ。家族はこの二人の主人公に悪意を抱いて襲ってくるかもしれない。家族は今後どんな思いで過ごすのだろう」などといらない深読みをしてしまう人間です。深読みと言うか、スピンオフみたいな。
独り言みたいな感想になってしまいました。
では、続き待ってます。
2010/12/29(Wed)12:05:060点勿桍筑ィ
 はじめまして、神夜さん。作品、拝読させて頂きました。書かれてから随分経ってしまいましたが、感想も書かせて頂きました。
 これから展開して行く内容の目的が、はっきりしているのが良かったです。〈太陽を探しに行く〉という、一見明るい目的と、それを実現するにはあまりに途方もなく希望もない世界観とのギャップが、とても良い味を出されていると思いました。
 今後、二人の話は続いていくようですが、それが一話一話の読み切りになるのか、全て一つの流れとなっていくものなのか、どちらにしても楽しみです。また、今回のプロローグは雰囲気重視のようでしたので、二人の容姿や個性があまりなかったため、次回から徐々に出てくるのかな、とわくわくしてます。

 それと個人的に、あとがきにあった「サンタさんの力で、ぶっ壊れたエロ動画が入ったHDDが女の子に擬人化してうひひ」っていう小説を読みたいという好奇心があったりあったりあったり……。発想が爆笑ものでした。それから「駅のホームから一歩も出ない物語」というのも、短編だったら面白そうですね。「出れない」のか「出ない」かで、内容もジャンルも随分変わりそうですよね。もし考え付かれましたら、是非拝読させていただきたいです。
 それでは次回のお話、お待ちしております。
2011/01/01(Sat)18:03:070点一二三四吾
 ライトノベル物書きakisanです。読ませていただきました。

 そうですか、教師モノはまたの機会ですか。これは残念。
 物語の中身はSFって感じがして良いですね。電磁ナイフ(ハチソンナイフ)の仕組みはどっちタイプでしょうか。振動で分子結合を切り離して裁断するタイプが、加熱して溶断タイプなのか。わくわくしてきます。
 それと、ロボットが己の意思を持っていたとして思考ルーティンを組むと「コマンドを○○する」って表現はどうなんでしょう。コマンドって使役するコンピューターに命令することだから、自分自身を動かすならちょっと違う表現のほうがしっくりくるかもしれません。
 あとエロ動画が女の子になってウヒヒの話は見てみたいかも。
2011/01/02(Sun)21:52:460点akisan
返信が遅くなって申し訳ないです。今回は珍しい方々からご感想を頂き、驚くと同時に嬉しい限りです。

水山 虎さん>
そこ笑い所ちゃう、首を傾げる所や。主人公かどうかはさて置きとしても、名前がやはり長過ぎは否めない。EX5567-3F-H35とHX4967-2P-W29の名前、お前カンペ見ずに言ってみろよ、って言われたら、作者ですら答えられないレベル。書き始めた瞬間に「さんご」→「EX5567-3F-H35」で辞書登録したんだから仕方が無い、うん。
そんなオチの物語が、昔はいっぱいあったんですよ。今ではちゃんとしたものしかないけれども、昔はそりゃやりたい放題のお笑いショートがわんさか。惚れた人にアタック繰り返して、結局あげたものが電気シェーバーで、そいつオカマだったとか、そういう下らないオチを、しかし見事に引っ張るような物語。そんな物語を久々に書いたのがこの物語です、って違う。
読んでくれて、ありがとうございました。

玉里千尋さん>
なん、だと……。え、いや、何かすみません。自分の作品なんてただの妄想日記ですから、「自分が可愛いと思う女の子が出なきゃヤダヤダ」っていう軸を元に書いているため、それが受けつけられないというのは仕方のないことだと思います。そこで取り残されると、自分の書く暴走に一気に呆れてしまうのは自覚しているのです。それでも辞められない、辞めてしまったら自分には何も残らないんだ!! 失敬。
今回は特に「萌え」を意識した作品ではなく、毛並み変えて書くつもりですので、たぶん大丈夫かとは思います。ただ「あ、ダメだ」と思ったらその時は速やかに非難してください。どこで自分が暴走し出すかさっぱりわからないのです。すでに暴走したい空気がひしひしと出ているのです。
読んでくれて、ありがとうございました。

天野橋立さん>
馬鹿な。そんな馬鹿な。この物語の出だしで、なおかつ天野さんからポイントを貰うだと……やっべえ、一気にハードル高くなったんじゃないかこれ、と思いつつ、あーでもないこーでもないと試行錯誤してたら年が明けて、結局何も進まないまま今に至っているんだけど、どうしよう。このままトンズラしようかな。
今回、サンゴはともかくニクはこういうキャラでいこうと思った。格好悪いと取られるかどうかはともかくとして、「ふひひ」って笑うヒロインは封印して、こんなキャラで一回作ろうかと。これが成功するか失敗するかで今後の神夜の作品のヒロインが飛躍的にパワーアップして帰って、来ないよねきっと。「光増幅タイプの暗視ゴーグルは赤外線使ってないんですよ」……なんだと。そういえばそうだった。サンゴがそんなことしてた。装置やら武器やら適当な雰囲気で書いていた知識の無さが浮き彫りにされた。どうしよう。直そう。このプロローグにおいては細々とした所を直して行こうと、神夜は珍しく考えます。本編始まったらそんなこと気にせず突っ走るんですけれどもうひひ。
ここからは……本当にどうしよう。正直言うと、いろいろ考えているのですが、今のまま進めていいのか、それがまだはっきりと決まっていないんですよ。だから続きを更新するのはもっと先になると思います。珍しくその場の雰囲気で勧めないのです。こういう系統はそれで進めると、トンズラこくしか道が無くなると悟ったのです。しばらくお預けです、すみません。
椎名誠の「アド・バード」……ハードはまったく知らない部類の小説だ。読んだことすらない。良い機会ですね、時間が取れたら本屋行って買ってみます。もう一年近く本屋とか行ってないんですけれども。小説書く人間が、果たしてそれでいいのか。ダメなんだろう。
そうそう。言いたかったんですけれども、自分ってどっかで三重の四日市在住だって言いましたっけ?いきなりJR四日市の名前が出てきてびっくりした記憶があるんだけれども。しかし生粋の三重県人で、生まれてからずっと四日市育ちで、毎日近鉄四日市駅は利用しているけど、JR四日市駅って、たぶん今まで一回しか行ったことないんですよね……どこにあるのかすら、結構うろ覚えなんだ^p^
読んでくれて、ありがとうございました。

羽堕さん>
こんにちは、神夜です。貴方様とも案外、いろいろな所で(特にあの人のBBSで)見かけてはいるけれども、直接絡むことは珍しいというか初めてなのか、あれどっちだろうまぁいいか。
この内容だけで、何とか、何とか読み切りに……!そう願って、諸々の情報を詰め込みつつも、あとは読者に任せて消えよう。そう考えていた時期が自分にもありました。見事に失敗してしるんですけれども。終わった世界の魅せ方をもうちょっとどうにかならないものかと考えるのですが、これが限界と言えば限界か。しつこ過ぎ、呆気無過ぎず――こういう微調整が難しいものですねやはり。
出会いがどうなるかは、正直未だに決め兼ねているのですが、もし更新した時は、貴方様の考えに沿うような物語になりますように。そう願いつつ、やはり試行錯誤を繰り返す神夜なのでした。
読んでくれて、ありがとうございました。

勿桍筑ィさん>
どうも、神夜です。はじめまして。(おそらく)
ご感想、ありがとうございます。読み切りでいい感じ……それだけで救われるお言葉です。もうこのままトンズラしてしまってもいいんじゃないかと思えるほど、救われるお言葉です。その後の言葉は見なかったことして、読んで頂きありがとうございます。
ここから先、考えている物語構成ではもりもり人が死んでしまったりするんですけれども、その度に勿桍筑ィさんはそんなことを思ってくれるんだろうか。しかし脇役に対して深読みしたことないなぁ……そうなってくると本当に負の連鎖って止まらなくなりますよね。一人殺せばどこまでもどこまでも続いていくスパイラル。そんな感じで一章ずつ人の視点が変わっていく物語も面白そうだ。ネガティブすぎるけど。
読んでくれて、ありがとうございまっした。

一二三四吾さん>
初めまして、神夜です。ご感想、ありがとうございます。
目的ははっきりしているのですが、その手段をどうしようか、この期に及んでまだ考え続けていたりするんですけれども、一体どうしたものか。更新はもう少々伸びてしまいそうです、申し訳ない。
予定としては、別視点に切替っての長編、だったのですが、一話一話の読み切りでもいいなぁ、とちょっとだけ思ったけれども、どんな風にすればいいのか皆目検討もつかなかった。キノの旅みたいになるのかな。でもそんなアイディアまったくもってないのが残念。やはり当初の予定通り、別視点になっての物語展開になりそうです。
容姿に関しては、サンゴもニクももっと書きたかったのですが、今回はこれが限界でした。なので次回以降、その他諸々をもっと書いて行こうと思います。プロローグで少しでも浮かんだイメージをそのまま文章表現できれば、このプロローグは成功となるのですが……どうしたもんか。
エロ動画HDD擬人化小説は、泣きながら書いてて半分本気で投稿してやろうと思っていたのですが、クリスマスに間に合わない&中盤の台詞の半数に「ピー」とかいう文字が入っている、その二つの理由でお蔵入りになった。さすがに「それにさ、別にあんたの性癖に口を出す気はないけどさ、再生数が異常に多いのが『ニーソ\制服\素人』の『手「ピー」』とか『足「ピー」』とか『フ「ピー」』とかどうなのよ?」とかそういう台詞がもりもり入ってるのはいかんよ、うん。……ただ好奇心がある、と言われると投稿したくなってしまう。やめるんだ、やめてくれ。駅の話は自分ではきっと無理です。上の方できっと天野橋立さんがやってくれるはずです。あの方に期待しましょう……!
読んでくれて、ありがとうございました。

akisanさん>
申し訳ないです。どうしても教師モノは思いつかなかった。それが果たして、金八先生みたいなノリのことであったのか、ライトノベル方向のノリであったのか――それによってまた諸々が変わってくるのですが、とりあえずはまずはこっちで毛並みを変えてみようかと。
そしてやはりきたぜ。akisanさんと天野さんと甘木さんは天敵だと思ってる。自分のその場のノリで書いた専門的な所にばっしんばっしん突っ込んで来る。その場のノリだけで逃げ切ろうとする自分としては非常に痛い所を突いて来る。実に逃げ甲斐のある方々やでえ!……今回のここではまだ逃げませんけれども! 電磁ナイフは何だろう。その場のイメージでは加熱の方が近いのかな。ただそこからこう、ノイズがぶわーっと吹き出てね、それが電子部品とかに当たると通信がぶわーってなるんだよきっと。考えたら負けだと思うんだ――ていうのが通じるのは前作だけか。どうしよう。
コマンド入力の所はいろいろ考えていたんですけれども、結局は「シンプル」の一言でまとめてコマンドになった。イメージ的にはなんだろう。自らの内部で攻撃、あるいは防御を制御するコアにコマンド入力して動力を上げて出力する感じか。だからそのコアにコマンドを入力して――ここで説明しても後付か。とりあえずはあれでいいかな、とは思ってる。その内に改変する可能性はあるけれども、たぶんそのまま決行します。それでも違和感が前面に出て来たらご指摘を。遅いんでしょうが、しかしそこでようやく神夜は考え直します。ふひひ。
エロ動画の話はしばらくお蔵入りなのです。あれはいかんよ。たぶんあれを出したらこの物語を読んでくれた半数くらいが「うわ、引くわ……」って言って離れていってしまいそうなんだもの。
読んでくれて、ありがとうございました。
2011/01/06(Thu)22:27:430点神夜
 お久しぶりです、チェリーで御座います。がしかし憶えていますでしょうか、当時は多分四、五年前になると思いますがまだ私はここに来て間もない頃で神夜さんのご作品に目を通して勉強させて頂きました。その頃丁度神夜さんは作品を出さなくなったのでほんの少ししか接点は無かったと思います。うーん、切ない。
 さてさて早速読ませていただきました。読んでいる内に浮かび上がってくる雰囲気、引き込まれては気持ちよく読めていけたところで最後の〆への文章、それに続いて「サンライト・モノローグ」と、題名で〆たところがなんだか自分好みの映画でも見ておお、と感動したような気分に浸れました。ポップコーンとコーラがあったらここでそれらを口へ放り込んで一息ついていたかもしれません。
 そして「サンタさんの力で、ぶっ壊れたエロ動画が入ったHDDが女の子に擬人化してうひひ」というものは気になる反面、妙な危険性を感じつつ。。。
 ではでは次回を期待してお待ちしております。
2011/01/07(Fri)01:16:430点チェリー
おお。チェリーさんだ。お久しぶりです、ちゃんと憶えていますとも。いやまったくもって申し訳ない限りです。ちょうど逃亡というか箱○に嵌って小説を書かなくなったのを境に逃げっぱなしでした。が、何とか戻って来ておるのです。最近昔の方々がちらほらと顔を出してくれて嬉しい限りでございます。
今回のこの出だしに関してだけは、いろいろと気を遣っていたのでそう言って頂けると非常に有難いです。そのまま〆てこのまま再び逃亡するしかないんじゃないのかと危惧していたのですが、何とか続きを書けそうです。前半の雰囲気が潰れてしまわぬよう、それでもダークサイドで物語を進められるよう、ちょこまかちょこまかと書いていきます。よければお付き合いして頂けると嬉しいです。
読んでくれて、ありがとうございました。
2011/01/08(Sat)23:08:550点神夜
こんにちは! 羽堕です♪
 人間でなくなったモノが見る夢なのかな、そんな風に感じる事が出来て面白かったです。邪魔する物を排除する行動がスムーズで、予定調和のような心地よさがあってと思いました。
 サンゴとニクを手に入れたい勢力やら、同種と思わせる者たちやらと面白くなってきたなぁと感じます。無害という事はニクには「嫌い」という感情はないのかなと思いました。ニクに嫌われたら生きてはいられないだろうし。鳥の名前っていいですね。空を飛べない鳥というか、すごい世界観の中でしっくりくる気がします。
 以前にフードファイトをする少女の話で、感想を書かせて頂いて何度かやり取りした事がありますよw
であ続きを楽しみにしています♪
2011/01/09(Sun)10:47:130点羽堕
なるほど、こういう展開になるのですか。戦闘のシーンがクールでかっこいいですね。しかしアンドロイド強すぎですね〜。重力かなにかを操っているのでしょうか。SF音痴の私には、ちょっと想像がつきません。
でもとりあえずカナリアがニーソを履いていなくてホッとしました(笑。
これからだんだんとこの世界の様子も明らかになっていくのでしょうね。続きが楽しみです。
2011/01/09(Sun)13:11:060点玉里千尋
 こんにちは。続きを読ませていただきましたよ。
 いい感じで展開してるんじゃないかと思います。完成型と試作型、それぞれのメーアとの戦闘場面の対比で、その能力差を描いてみせるというやり方はなかなかうまく行ってるんじゃないかと思いました。確かに、どういう原理で闘ってるのかはまだ良く分からないところもあるんですが、なんか格好いいし、これでいいやと思わされるものがありました。
 ちなみに、前回の感想がわかりにくくて申し訳ない。「ニク」という名前がちょっと格好悪いんじゃないかと思ったんですが、今回読み直したらそんなに気にならなかったです。
 あと、四日市ですが……神夜さんが三重在住というのはどこかに書かれていたように思います。で、そんなに田舎にお住まいの感じでもないので、これは三重県随一の都会である四日市であろうと推理した……というのは嘘で、適当に書いたら偶然的中しただけです。やっぱり地元でもJRの駅はマイナーなんですね。あのうらぶれた雰囲気が気に入ったので、あえて「JR四日市」としました。
 また続きも読ませていただきます。
2011/01/10(Mon)10:39:200点天野橋立
作品を読ませていただきました。
あのセリフが、このような物語になるとは……凄いな。
冒頭部分とVer.1.01以降では温度差があるようにも感じられました。私的には冒頭の部分のような書き方で淡々と進んでいく方が好みのような気がするけど、Ver.1.01以降の方が神夜さんらしさを感じられて好感を持てます。
冒頭部分は往年の大友克洋の初期〜中期的作品風な雰囲気で、Ver.1.01以降は少年マンガっぽくなったなぁ。どちらに優劣があるというわけじゃないよ。切り替えができて凄いなぁと素直に感心しているんだ。
さてこの物語がどんな降着を迎えるのかな。SFっぽいことを考えるとフレドリック・ブラウンの「天の光はすべて星」のようなやるせなさを残した終わりかな? それともロッド・サーリングの「真夏の太陽」のようなひねった侘びしい終わりか……なにはともあれ、これからが楽しみです。
次回更新を期待しています。
2011/01/10(Mon)23:01:310点甘木
 遅れたけど読みましたakisanです。
 
 急に「バトルしようぜ・どっちが強いか白黒つけようぜ」の匂いがしてきましたね。もはや誰かが加速装置使い出しても不思議ではない感じ。
 遠隔操作で押しつぶしてるのブラックホールとか、亜空間制御とか、そういうのですかね。応用すればワープ装置にもなるとか。このワープが【鍵】で、汚染された殖民星から脱出して、故郷である地球に帰る話とか。違うかな、太陽が見たいって話ですし。それにしても、この試作型と完成型、対立軸持たせておいて、最後のあたりで協力してなにかを始めそうな雰囲気がぷんぷんするんだよなぁ。
 うん、先を想像したくなる面白さってことですね。
 では、また。
2011/01/17(Mon)22:02:270点akisan
さて、誰も気付かないかもしれない場所にコメントを残してみます。もしこのコメントを見つけたら
私の本音、聞いていって下さい。

作品とは関係ないコメント失礼します。
私は昔の登竜門の10点満点システムが大好きで、一つの作品に多くの感想が付く盛況ぶりが大好きだった。神夜さんは、あの風さんとコラボしてたじゃないですか。覚えているかどうか知りませんが。風さんは最後はああなってしまったけれども、それまでは確かに場を盛り上げて楽しませてくれた一人である事には間違いないと思っています。文章のレベルとしては、当時の神夜さんも風さんも高いとは言えませんでしたけどね。でも運営側はそれは目指していた場ではなく、システムを変え多くの利用者を切り、今の形になった。こんな登竜門ならばもう利用しないと表明して去った者もいれば、黙って去った者も多くいましたね。今残っているのは、当然今のこのシステムが好きな人達。だから変える必要はないし、今の登竜門ならではの良さがある。でも私は知っています。そんな登竜門を昔の活気ある登竜門にしようと一人活動していた大ばか者を。頭を悩ませて色々と試して、それでも駄目で。そしてある日、別に今の登竜門でいいじゃないか。と気付いてしまいおとなしく消える事を決めた大ばか者を。ふふ、あえて誰とはいいませんけどね。ほんとバカですよね。昔の良さにとりつかれて、今の良さに気付けなかった愚か者。あら、これ小説にしたら面白そうね。今度やってみようかしら、なんて。では、いつまでも見守っております。機会があれば、またコメントや感想でも。
2011/04/26(Tue)18:49:540点毒舌ウインナー
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