- 『僕の君』 作者:まさ矢 / リアル・現代 恋愛小説
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全角1172文字
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原稿用紙約4.5枚
「僕」と「君」は愛し合っていた。ふとしたことに君に思いを伝えられずに君は僕のもとを離れていく。君に対して好意を見せなかったことを、君の望みに反したことを反省して僕は…。
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「今度の夏は花火を見よう」
君が言った言葉、僕は忘れもしない。
なんともない、ぬるい夜のことだった。
君はいつもと変わらず、僕の膝に頭を預けて空を見ていた。
僕も空を見て、かすかに見える星を見ていた。
ふと、君が空を見ながらつぶやいた
「この流れない時間をいつまで楽しめるのかな」
僕は即座に頷いた、下を見たら君は目を閉じて耳を澄ましていた
「永遠なんてないんだよね」
そんなことないさと僕は笑って言った。
不思議がっている君の瞳に吸い込まれそうになって
「君が望むのなら、きっとそれは永遠になるんだよ」
咄嗟に目をそらして僕はそう言った、そしたら君は微笑んだ。
「私だけが望んでも?」
君の言葉に疑問を抱きつつ、僕はきっとそうだと言った。
君は僕の言葉を繰り返し呟くとまた目を閉じてこう言った。
「じゃぁ貴方の望むものはなに?」
僕は恥ずかしかったから、真実を口にしなかった。
君は笑った
「私は君といる時間を望みます」
僕は赤くなる自分の顔を隠して、ちらりと彼女を見た
彼女も顔を赤くしてただ、ただ僕を見つめていた
僕はその綺麗な紺色の瞳に目を奪われ、少しの間はただ見入っていた
君はもう僕のところにはいない。
夏が始まる、梅雨の明けごろに君はいってしまった。
最後に見た君の顔はまぶしかった。
涙はでなかった
食事もとれた
眠れた
笑うことができなくなっていた
同じ、ぬるい夜がきた
僕は同じ場所で、同じ姿勢で空を見ていた
星は見えなかった
膝が軽かった
ふと君のことを思いだした
今までのことを、記憶の限り君を鮮明に映し出す
あの時、君が言った言葉が浮かんだ
「永遠なんてないんだよね」
この時君は既に、この先のことを分かっていたんだろうな
その言葉の僕の返事に、君はこう応えていた
「私だけが望んでも?」
君が僕を好きと言ってくれた時だった
その時僕はなんて、なんて言ったか
僕は君に好きと言ってなかった
僕は君に素直に君を望むと言えなかった
僕は君に
君に。
何かが頬を濡らした。
とめどなく零れる雫で空を見ることができなくなった。
君は、僕が君を好きだ ということを分かってくれてるだろうか
君との時間が永遠にならなかったのは僕が望んでいなかったからなのか
僕はずっと君が好きで、永遠にいたかった
雫は止まることを知らず、ただ僕を悲しみに浸していった。
その時大きな爆発音が聞こえた
雫を拭って、空を見た
花火だ
華やかな花火が次々に咲いては散ってゆく。
君との果たせなかった約束を思い出した
今君は空から見てるだろうか、この儚い花火を。
少し間隔をおいて、大きい花火が打ち上げられた
紺色の空に大きな赤い花火が咲いた
君が、咲いた
それは僕に、何かを示すように
すぐに君は散った
自然に雫は止まっていた
もうひとつ、止まらずに動くものを止めて
僕は君のもとへ行くよ。
僕は君が好きだ。
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2010/07/12(Mon)00:17:35 公開 /
まさ矢
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■作者からのメッセージ
今回が初、小説となりますが、この小説は私の疑似体験ではないですが、別れと想いを題材として書かせていただきました。あとこの小説に秘める私の想いは、軽々しく異性と付き合うことの愚かさに対するものです。遊びの一貫で男女交際などはどうなのでしょう、と、とんでもない偏見を言いました。この小説を一人でも多くの方に読んでいただければ幸いです。