- 『灰色の銀貨』 作者:鈴村智一郎 / リアル・現代 リアル・現代
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全角7631.5文字
容量15263 bytes
原稿用紙約21.2枚
著 鈴村智一郎
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僕は地下鉄のホームでDIR EN GREYのUROBOROSを大音量で聴いていた。アイフォンのヘッドフォンから、京の自爆寸前のような美しい声がスパークしている。僕はその日、墓参りへ向かっていた。僕の人生にとって、おそらく第一級の影響力を持ち続けている人物と待ち合わせして。
やがて電車は僕を彼の待つプラットホームへと運んだ。彼は立っていた。白髪の、黒い背広を着込んだ眼の特徴的な老人。こいつは年寄りだ、直に死ぬ。彼は僕が声をかけるまで、自分の孫の顔を忘れていたらしい。
「おぉー、智か? 」
祖父は僕が僕であると知って緊張感を宿らせた面持ちで薄く微笑んだ。祖父はどこのブランドかも判らない安物の靴を履いていた。
「行こう」
僕は低い声でそういった。僕らは無言で駅を抜け、広大な森林公園を目指して歩き始めた。その森を越えた先に、僕の父方の祖父が眠っている。ここにいるこのオイボレは、母方の祖父だった、祖父といえたらの話だが。
僕は昼下がりの街路を、祖父と二人で歩いていた。途中、コンビニで清涼飲料を二本買った。店員の若い女性は、僕と目を合わさずに下を向きながら頬を少し赤らめていた。
Dir en grayのこの曲は、修羅場に似合う。何かを乗り越えねばならない時は、この曲がミサ曲になるのだ。
祖父は「涼しいな」とか、「春めいてるの」などといっていた。全ては独り言として受け取っていた。いつから、僕らはこんな風になってしまったのだろうか。大昔、僕がまだランドセルを背負っていた時代、祖父は僕が描く絵をいつも褒めてくれる存在だった。一緒に散歩して、理科の時間で習ったシダ植物を発見して僕が学名をいうと、まるで自分の息子のように褒めてくれた。
祖父の顔立ちは勇ましかった。戦争の時代、彼はまだ子供で、今の僕の祖母に当たる女性とはどこかの祭りで出会ったらしい。それも、祖父が何人かのグループで歩いていた僕の祖母に軽快に声をかけたことが始まりだったらしい。
それまで祖父は入院生活している女学生と恋仲にあった。本当か嘘か知らないが、彼女の影響で相当な文学青年になったらしい。でも、彼女が死んだか何かの理由で、祖父は一人になった。そして、ふらりと祭りで女子に声をかけたのであろう。彼の目は、確かに老いぼれた今の姿になっても、内部で何らかの銀河を宿したかのように少年的だった。これは僕の想像に過ぎないが、おそらく祖母は、祖父の目に惹かれた。
祖父のことを僕はまだ「おじいちゃん」と呼べていた頃の、どうでもいい薄い記憶の裏庭。今、僕は祖父の背中を見ながら、その裏庭を歩いていた。無邪気な孫が、「おじいちゃん」のことを「あいつ」としか呼べなくなった、あの決定的な夜。あの夜が、僕の洗礼を生み出し、僕の今の業務を生成させた。彼ほど僕を呪縛し続けている人間はいない。彼は僕の祖父以上の何かに、あの瞬間に、なったのである。
中間テストの前日だった。僕は確か、机を枕にしてうつらうつらしていた気がする。当時の僕の家は三階建てで、今のようにガレージの狭苦しい賃貸ではなかった。突然、母親の泣き叫ぶ声が二階の和室から響いた。叫び声は、やがて何かを低い声で相談し合う不穏な薄気味悪い音に変質した。僕は階段を下りた。真直ぐ、和室へ向かった。そこにいたのは、それまで眠っていた祖母、母、そして妹だった。その日、僕の家には祖父母が遊びに来ていたのである。
おかしな光景だった。祖父だけが、何故か三人に背を向けて背広を着込んでいる。きっと、今日のように安っぽい背広だったのだろう。だが、母親の様子は異様を極めていた。彼女は錯乱を来たしたように祖父を「獣」扱いし、妹を抱き締めながら泣き喚いていた。
何かが、僕が眠っているあいだに、起きていた。決定的な、もう二度と取り返しのつかないような巨大な出来事が、その短期間で生起したことは間違いなかった。でも、眠たい眼をこすっている僕には、祖父がボタンを震える手で必死に止めようとしている姿に違和感を覚えるくらいしかできなかったのである。
「もうすぐ着くぜ」
僕はその日、初めて彼にそういった。森林公園には、仲睦まじい家族連れたちがそれぞれの聖家族のタブローを披露していた。そこに一人だけ、絵を描いている中年の女性がいて、僕と目が合った。彼女は僕を数秒観察し続けた。そして、再び首を下に落として何かのデッサンを描き始めた。通り際に僕がそっと目をやると、それは若い女と年取った男が交接している生々しいデッサンであった。
やがて僕らは墓地へ着いた。多くの墓があるだけで、特に死について感じることもない匿名的で平穏な空間。祖父は花束を買い、僕は墓石を洗うためにバケツに水を入れた。僕らの会話はやはり無かった。墓にひとは疎らで、始終烏どもが空を舞いながら僕らを嘲笑していた。
僕は墓石を素手で磨いていた。烏の糞が父方の家系の墓を汚していたのに腹が立ち、僕はそれらを自分の指に水をつけて全て消し取った。祖父が、横から僕の行為を見つめていた。
「お前は、わしが死んでも、そんな風に磨いてくれるのか」
彼は僕が否定することを見越した上で、寂しそうにそう微笑んでいった。
「いや、お前はまだ謝ってない」
「お前? 」
僕がそう呼んだことに、彼は腹が立ったようだった。でも、その怒りは一瞬で顔色から消えていた。老いが、彼から激情を奪っていた。
彼はあの夜、僕の妹を犯した。「おじいちゃんといっしょに寝れるなんて楽しい! 」、無邪気な妹は、自分の部屋に親切な祖父を招いたのだった。妹のベッドの横に、彼は布団を敷いた。おそらく、アルコールの勢いで彼は興奮していたのだろう。
正確に何が起きたのか僕は知らない。おそらく、レイプはされていない。新人女子社員が上気した卑劣な上司からされる類の、猥らな手の動きがそこで起きたくらいだったのかもしれない。祖父は妹の発育状況を自分の手でじかに知り得た、それは彼を大いに満足させたことだろう。だが、祖父は妹が起きていたことを見落としていたのだ。やはり、泥酔に近かったのであろうか。
あの出来事からしばらくして、中学生になった妹はかなり荒れ始めた。口調が激変し、不良どもと群れるようになった。喫煙がばれて、保護者呼び出しになり、母親が涙ながらに教師陣に頭を下げたこともあったらしい。
その頃に僕は妹と大喧嘩した。確か、僕が彼女の携帯電話を素手でへし折った。妹の口から出る言葉全てが憎らしく、僕の癪に触った時期があった。そして、僕は妹にこういってしまったことがある。
「お前なんて、どうせあの糞ジジィにレイプされただけのカスだろうが? 」
妹は僕のその言葉を聞いて、突然わからないことを質問された生徒のように生真面目な表情をしていた。彼女は、あの記憶を忘れようとしていた。でも、どこかで覚えているのだ。彼女が他県で彼氏と同棲することになり、家を出て行く日の夜に、僕は聞いた。まだ、覚えているのか、と。それが彼女を無闇に苦しめるだけの問いになることは承知で、僕は知りたかった。もしかすると、祖父が実際は何もしていない可能性も、その時はあったのである。でも、妹は学生時代に見せた時と全く同じ顔で、生真面目に何かを考え込むような表情をした。
「忘れられない」と、そして、あの記憶を引きずっているのが、実は自分ではなくて「お兄ちゃん」のような気がするといって、むしろ僕の心を案じてくれたのだった。
僕は今、二十三歳になっている。前までと同じように、祖父に対して常に同じアプローチを取っていていいのだろうか、ふとそんな想いが過ぎることはある。祖父も老いている。
そして、僕自身も彼と同じような罪を犯したことがなかっただろうか。例えば、妹が傍で眠っているのを見て、その胸のふくらみに関心を覚え、思わず触ってしまったりしたことは。そう、僕にもやはりあったのだ。僕は祖父を責められない。だが、他の家族は、誰も僕が祖父と同じような悪戯を妹にしたことなど知らない。祖父だけが、いわば肉親のあいだで、少なくとも僕にとっては「卑猥さ」の象徴と化している。否、むしろ僕はそういう存在として祖父を上書きしたのだ。自分が彼とは別の存在になるために。
祖父は果たして罪を犯したのだろうか? 哀しみを他者に意図的に与えることが罪であるならば、祖父の罪は更に揺らぐ。何故なら、彼は見つかることなど予想していなかったのだから。僕も同じだ。僕も妹に同じようなことをしたのだ。この事実を看取することによって、祖父がしたことを再解釈することが僕の課題なのではないだろうか。
僕も同じことをした。祖父もした。だが、見つかったのは祖父だけだった。僕の愚かな手は、妹の身体を確かにまさぐった。でも、彼女は瞼を開けなかった。祖父も同じことをした。そして、妹は瞼を開けて泣き始めたのである。今、祖父だけが罪人扱いされるのは滑稽だ。僕は祖父のそれとは全く別次元の、非常に陰湿で巧妙な悪に染まっているのではないか。
僕がした悪戯は、妹を持つ兄のいる家庭ならばどこでも起きるような出来事なのかもしれない。だが、笑い事では済まないほど、それが大きくなってしまったのも事実なのだ。僕は祖父を責められない、だからこそ、僕は祖父に対して近親憎悪以外の何ものも感じなくなったのだ。彼は、僕に限りなく似ている。
祖父の丸く曲がった背中は、たんに時間の経過によって身体に起きたものなのだろうか。彼は、時というものとは別に、何らかの拭い去れない自責の念を背負っているのではないか。彼は、あの出来事は酔いのせいですっかり失念してしまった、などといつかいっていたらしいが、本当にそうなのか。もし忘れているとすれば、一体僕と妹は、何のために長い間この出来事を心の奥深いどこかで担ってきたのであろうか。
僕は様々な想いと戦いながらも、やがて線香を焚き始めた。父方の家系にも、母方の家系にも、カトリックで洗礼を受けた人間は一人もいない。僕はここでの墓参りの形式に合わせようと決めていた。祖父はやがて墓前で掌を静かに合わせた。僕はロザリオを取り出し、それを握り締めながら静かに祈った。白昼に、二人の男が墓前で祈っている。彼らは血族である。血は限りなく近しいが、僕と祖父の距離はまだ圧倒的に遠い。
僕は死者のための弔いを心の中で唱え終わった。ふと、空を見上げると飛行機雲が二つ伸びていた。一方は短く、他方は遥か彼方まで延びている。そういえば、京がVULGARの最初の曲で、「目の前には生きる意味がない」といっていた。その声があまりにも切実で、あまりにも痛切に僕の魂に衝迫したので、僕はただ圧倒されたのであった。「目の前には生きる意味がない」、だとすれば、「過去を遡行して他者の過ちを掘り下げ続けることには、より意味が無い」。
僕は不意に、祖父が昔したこと――すなわち、それは僕がかつて妹にしたことでもある――に執着することの愚かしさを感じた。それは、おそらく僕という存在を性的なレヴェルで自己正当化するための道具として心理的に利用されてきたのではないのか。何らかのトラウマを、それも性的な次元で生起したトラウマを妹の魂と担うことで、僕ら兄妹が「卓越化」するための道具として、彼を利用していたのではないのか。無論、妹にはそのようなことを感じる必要などない。これは、僕が妹の魂を僕の問題として飲み尽した結果なのだ。妹の悲哀を、僕は僕自身の問題として捉え、それを理性的に解決するための一つの手段として、カトリックになる道を選んだ。
僕は祖父と歩いている時、奇妙にも僕ら二人が、通常の「大人になった孫とその祖父」という間柄以上の絆で結ばれているのを確かに感じていた。それは、ぼくらが共通の、井戸のような暗い過去を担っていることから来ているように思われる。僕が一歩街路を歩くと、彼も歩いている。だが、五年後、同じような光景がこの世界において赦されるのか最早定かではない。祖父は、いずれにしても、もう老いているのだ。イェイツはその詩の中で、「老人が怒り狂って何が悪い」と叫んでいたが、僕の祖父には最早、怒るほどの気力はないだろう。狂っているのかといえば、それは僕に反転する問いでもある。僕らは本質において錯乱していると、僕は考えている。そうでなければ、僕は理性を纏えない。
僕は帰りの森林公園で、ふとあることを考えた。祖父に、僕がしている業務のことを紹介してみてはどうか、それも、直接彼に僕が働いている店の別の店舗を示せば、彼はどのように感じるだろうか。僕はそこで、どうしても見せたい場所があると彼にいった。
「見せたい場所? 何だろうな」
「俺が普段働いてる場所だ。俺は一日の大半はそこにいる」
祖父は無言で頷いた。僕らは歩き始めた。墓地とは、何の痕跡なのだろうか。それが生の痕跡でないことは明らかだ。ポルノは、何の痕跡なのだろうか。それは、男女が交接したという表象の決定的な痕跡以外の何ものでもない。ポルノとは映像である以前に、まず痕跡なのだ。そこで「出演したくない」と、涙を流した素人の映像は捨象される。墓石も、かつて生きていた人間の固有名を示した単なる指標としての意味しか持たない。双方には、どこか記号的な暴力性が潜んでいる。
墓石とポルノには何らかの接点があるに相違ない。同時に、僕と祖父も、互いに触れにくい夜の記憶をどこかで沈殿させている。それも痕跡なのだ。
やがて僕は二つ駅を越えた場所にあるその店を発見した。僕らは入った。祖父はアダルトコーナーには向かわずに、地図帳ばかりに目を通す素振りをしていた。
「そっちじゃない、こっちなんだ、俺がやってるのは」
「出ないか? 智」
祖父は微笑みながらそういった。焦燥で鼻腔がぴくぴくと痙攣していた。
「何をいってるんだ? アンタの好きな世界が広がってるんだぜ? 来いよ」
「わしは行かない」
「何故だ? 怖いのか? 」
僕がそういうと、祖父はしばらく沈黙してから、透徹した冷静な眼差しで僕を見つめた。
「怖いなぁ。お前はわしを責めるつもりじゃろう? 昔、わしがあのこにしたことで。それをお前はずっと根に持ってる。判ってるんだ」
「ぐたぐたいうなよ、来いっつってるんだ。どこがいい? 中学生をクロロホルムレイプするレーベルを教えてやろうか? あぁ? 」
「わしは墓参りするために来た。最後にお前と飯を食うつもりだった。それだけだ」
「次に会う時、お前が生きてるか死んでるかわからねーだろがよ」
やがて、店内に奇妙な静寂が訪れた。昼下がりの平日、ちょうど客がいても二、三人くらいの時間だ。スタッフは女性だった。僕よりも若い、黒髪の女性で、左耳に最低でも十二発はピアスをあけている。やがて彼女と僕の目が合った。
「俺はお前がしたことをずっと考えてきたよ。ずっとな。お前のしたことを思い出して、十九歳の頃に働いてた印刷会社の上司の前で半泣きになったこともあった。ある人は、“よく殴らなかったな”って、共感してくれた。俺はお前がしたことを償うために、洗礼まで受けたんだ。俺はずっとお前と闘ってきた。お前が俺と妹の前で正式に謝罪しない限り、お前は死んでも悪人のままだ」
「わしは、正直、覚えておらん。本当に、あの時のことはわしの頭から抜けとる」
「でも何かが起きたんだ。何も起きてないのに妹が泣き出すか? 母親が絶叫するかよ? 」
「赦してくれ」
彼は遂にそういった。遂に、というより、その言葉はあまりにも唐突に訪れた。
「あ? 何つった? 」
「赦してくれ、わしが覚えてなくても、お前たちを苦しめてきたのは事実だ。全部、わしの責任だ。でも、どうする? ここでわしが今、あのことをお前に謝罪して、お前はわしを赦すのか? 何故、わしを罪人のままほおっておいてくれない? 」
僕は彼のその「ほおっておく」という言葉が理解できなかった。理解できずに、急速に涙腺だけが弛緩した。僕は悔しくなって、下を向いた。頬に涙が伝った。僕は祖父を愛している。愛していた。愛していたい。これからもずっと。それを、何故貴方は自ら閉鎖したのだ? 貴方は僕と孫の関係性を築くことを自ら閉鎖した。貴方は謝罪せずに、回路を閉じたのだ。僕が憤慨しているのは、そこなのだ。
祖父は何もいわなくなった。彼は臆病だった。本当に、心まで朽ち果てたかのように、彼はすっかり別人になっていた。祖父が気に入っていたのは、従兄弟の方だった。キャンプの時も、彼だけに飯盒炊爨の仕方を教えていた。僕は不貞腐れて、彼の妹の靴を焚き火で焼いた。そして、叔母さんに白い目で見られた。その時も、祖父は僕にいかなる優しい言葉もかけてくれなかった。今、思い出せば、彼から父親に近しい愛情を与えられたことなど一度もない。祖父とは、僕にとって他者よりも遠い。にも関わらず、肉親以上に僕の魂を衝迫するのである。一体何なのだ、この老人は僕にとって。
「すいません」
僕は店員に声をかけた。彼女は温かい微笑を浮かべながら、僕らの方に近付いた。
「IBワークスの棚はどの辺りに並んでますか? 」
「あっ、それならこっちですよ」
僕は祖父にそのメーカーの一つを見せ付けるつもりだった。彼にはそれを「見なければならない」義務がある。苦しめばいい。死ぬ前に、墓場までそれを携えて持っていけばいい。棺に喪服を着た親族たちが花束を添える中、僕だけが黒い布に包まれたそれを入れてやろう。それが何かを知っているのは、お前と僕だけだろうが。
だが、彼は動かなかった。身動き一つせずに、じっと地蔵のように固くなっていた。
「来いよ、買ってやるから。孫から死ぬ前にプレゼントの一つでも欲しいだろうが? 」
だが、彼は結局それ以上言葉を発しなかった。やがて彼はゆっくり僕らに背を向けて、店を出たのだった。僕はそもそも、彼との和解を欲していたのではない。むしろ、彼の終末の光景に、僕が演じるべき役柄を演じただけに過ぎない。僕にとって、彼は光ではなかった。だが、それは闇でもない。彼は僕の祖父であり、僕が中学生の時に、妹に何かをして、彼女にトラウマを刻んだ人物であり、それを現在は「忘れている」老人である。ただ、それだけのことなのだ。いつが葬式になるか知らないし、別に興味も無い。
御礼代わりにそのポルノを買って、僕は店を出た。平穏な街路に、彼の姿はなかった。あの夜、家を出た彼を追いかけた少年が、ネオンの街で彼の背中を追うのをやめたように。
※ 作中で登場するバンド「DIR EN GREY」は、「灰色の銀貨」という意味であるとされている。
( Fin )
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■作者からのメッセージ
よろしくおねがいします。