- 『同窓会』 作者:ボーヒーズ / ファンタジー 未分類
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原稿用紙約4枚
「あなた、同窓会の通知が来たわよ」
妻の声が大きく響いた。
「そんなに大声を出さなくても聞こえるよ」
「それが変なの。差出人も何もなくて、ただ同窓会のご案内とだけ書いてるのよ」
「え?」
私は居間でテレビを見ていたのだが意味が分からず玄関まで歩いていった。
「どれ、見せてみろ」
妻から封書を受け取ると確かに表には私の住所と名前が書かれているが、裏には何も書かれていない。そして名前の左に大きく「同窓会のご案内」とだけ書かれていた。
「何だろう?」
私はすぐさま封を切った。
同窓会 ご出席の程よろしくお願いします。
「何だこれ?日時も場所もなにもない」
「あなた、どうしたの?」
妻にも見せてみた。
「ただのいたずらじゃないの?」
私もそう思ったがどうにも気になる。友人の蜂谷に電話してみることにした。蜂谷は小学校から大学までずっと一緒だったので何か知ってるかもしれない。
「もしもし」
「はい、蜂谷です」
「俺だ、俺だ」
「お〜、佐々木か。どうした」
「お前のところ同窓会の通知来なかったか?」
「さっき届いたよ。何だろうこれ?」
蜂谷にも届いていたが心当たりはないようだ。そういえば消印をまだ見ていなかったことに気付き慌てて見てみた。消印はなかった。手がかりはまったくない。気にはなったがどうしようもないのでほおっておくことにした。
一週間後、蜂谷から近所の喫茶店に来て欲しいと呼び出しがあった。そこには小学校のころの同級生たちが何人も集まっていた。
「みんな久しぶり、今日は一体どうしたんだ?」
「どうも小学校のころのようだぞ」
「え?」
「先日の同窓会の通知のことだよ。俺も気になっていろいろ聞いてみたら小学校6年の時のクラスみんなに届いていたんだよ」
「なんだって?どういうことなんだ?」
「とにかく小学校6年の同窓会の通知には違いない」
そういうと蜂谷は卒業アルバムを取り出した。
「そういえば卒業アルバムなんてしばらく見てないな」
そこには懐かしい顔が溢れていた。しばらくアルバムを見ていて思わず手が止まった。一人の少女が微笑んでいた。
「藤井恵?」
「思い出したか?俺たちもそのことを話してたんだよ。彼女、卒業式の帰りに車に撥ねられて亡くなったんだよなぁ。これを見てくれ」
集合写真の横に寄せ書きが書いてあった。
「20年後、みんなで会えるといいな 藤井恵」
「今日は何日だ?」
「3月20日だよ。ちょうど20年後のな」
聞き終わる間もなく私は走り出していた。一目散に小学校目指して。
6年2組の教室に駆け込むとみんな集まっていた。喫茶店にいた連中もすぐに駆けつけてきた。
「みんな来てくれたんだね」
振り返るとそこには卒業アルバムの笑顔そのままの彼女が立っていた。
The End
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2010/04/17(Sat)19:26:31 公開 / ボーヒーズ
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■作者からのメッセージ
つたない文章ですが,よろしくお願いします。