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『夢路より。』 作者:シトロン / 異世界 ファンタジー
全角8355.5文字
容量16711 bytes
原稿用紙約25.4枚
 光を纏った、猫と会話が出来る不思議な少女千色《チイロ》は、ある日羽根の生えた真っ黒い猫に誘われて、千色とは真逆で闇を纏った少女夜《ヨル》に壊されかけている小さくて、とても不安定でいつ壊れて消えてしまうか分からないけど、千色が居た元の世界とは比べ物にならない程綺麗な世界、夢路《ユメジ》に迷い込んでしまう。
 第一話 千色と猫。

 槙野 千色《マキノ チイロ》は、電気や太陽の光と違って目には見えないし、本人も気付いていないけど優しくて
柔らかい儚い光を纏った、東京に住む近所の小学校に通う十歳足らずの少女。千色は、学校ではあまりぱっとしない、
目立たない地味な子。学校で成績が良い訳でもないし、運動神経が良いという訳じゃないし、これと言って何か特技を
持っている訳でもない、別にどこにでもいる様な普通の子だった。学校ではね……。
 学校外では、千色は誰にも恐らく絶対真似出来ない特技を持ったミラクル少女になる。そもそもその特技という物が
常識では考えられない様な物なのだ。これは千色の特技であって、趣味でもあるけどね。千色の特技+趣味は……
なんと猫との会話だっ! 数ヶ月前に突如目覚めた千色の能力的な物だ。猫と話せる様になってから猫の友達が出来、
猫に付いて行く事がよくあった、そのとき、たまに変な所に迷い込む事があった。
 これはどう考えても現実世界じゃないだろって言う様な場所に迷い込む事があったが、その世界は全てが共通して
東京のビル群とは比べ物にならない程美しかった。この世界に(千色がいる世界とは全く違う場所なのかもしれないけど)
こんな綺麗で面白い場所があるんだなと思うと、嬉しくなってくる。猫はこういう現実離れした異次元空間みたいな
場所を知っている。不思議だなぁ。
 この日、千色はとある黒猫に付いて行っていた。友達じゃない、見知らぬ黒猫だ。千色は普段知らない猫には
付いて行かないけど、この日は違った。多分それは、千色の前を往く黒猫の奇妙な姿のせいだろうな……。
羽根……その黒猫には、体の色と同じ黒色の烏みたいな羽が生えていた。何故猫に羽根? 猫には羽根は生えていない。
猫は空なんて飛ばないからね、空を飛ばない猫に羽根なんて必要ない。
 「変な猫、もしかしたらあの綺麗な場所に住んでるのかも」
綺麗な場所とは猫に付いて行ったとき時々たどり着く、現実世界じゃない様に思えてくる綺麗な場所の事。
確かに、あの現実離れした場所なら、こんなへんちくりんな猫がいてもおかしくなさそうな……? 千色は、また
あの綺麗な場所に行けるんじゃないかという想い50%、猫の正体が気になると言う想い50%で、猫をつけている。
 ここはどこ……? 千色はふと思った。猫をつけていて、自分がよく知っている道を歩いていた筈なのに、
気がついたら全く知らない場所に迷い込んでいた。でも、千色が今まで行った事がある様な、綺麗な場所じゃない。
真っ暗だった、まるで夜みたい……。いや、夜でもこんなに暗くはない。本当に漆黒の闇だった。一寸先は闇って言う
言葉はこういう状況を指すんだなと、千色はのんきに考えていた。

 第二話 モノクロ。
 
 「へぇ、人間だ。珍しいね、僕を追ってきていて、間違えて入り込んじゃったか」
声が聞こえた、自分の後ろからね。千色は振り返ってみた。人はいない、でも猫がいた。千色が追って来た羽根の生えた
変なあの猫がいた。さっきの声は、その猫が発した声らしい。千色だからこそ聞き取れた声だ。
「ねぇ、猫さん。ここはどこ? 今まで入り込んだ場所とは全然違うんだけど……」
 猫は首を傾げて、誰もいない闇の中に声をかけた。猫には、千色には見えていないけど闇の中に立つ第三者の姿が
見えていたのかもしれない。猫が闇の中に声をかけてからしばらくすると、別の声が聞こえた。ソプラノトーンの声。
「これは珍しいね、人間が迷い込んだんだ。何か入り込んだかなって思ったら人間か。まあ良いか」
「そうそう、こんなひ弱な人間だって、夜の暇つぶし用の玩具位にはなるでしょう?」
 ちょっとむっと来る千色、何で見ず知らずの猫なんかにひ弱って言われないといけないのか? 確かに強くはないけど
ひ弱ではないだろう……。大体玩具ってなにっ! 十歳の千色は、玩具がオモチャだという事が分からなかった。
「さて人間さん、私の名前は夜。今私暇なの、ちょうどいいからあなた、私のオモチャになりなさい」
いきなり自己紹介をされて、ちょっと戸惑う千色。それに、ちょうどいいからオモチャになれって……
 「ほらっ、早く逃げないと命が無くなっちゃうよ?」
夜が走ってくる、闇の中から現れたのは、千色と同じくらいに見えるかなり細身の少女。髪は黒くてよく見えない。
肌はこんな闇の中でも浮かび上がって見えるくらい白い。瞳は赤みがかっている。手に持っているのは……
剣……こんな細身の少女が扱えるだろうかというくらいの大振りの剣。切れ味抜群? そうでない事を祈る。
 「いい? オモチャって言うのは遊ぶ為にあるんだよ。私を楽しませてよっ! 人間っ!」
私はオモチャになった覚えは無いっ! 言いたかったけど千色にそれを言う暇はなかった。千色の目の前で剣がふられた。
後一p近かったら顔に当たっていた……。夜は驚く千色を見て笑っていた。
「へぇ、避けた。前入り込んだやつは今の一発で壊れてたよ。それなりに楽しませてくれるかな?」
 壊れたって……それはもしかして、死……? 
「ちょっとやめてよっ! やめてー!」
「目の前にオモチャがあるのに、遊ぶのをやめろって言うの? あなたは」
千色は運良く夜の剣を避け、動きを止める為に夜に抱きついた。これが精一杯の反撃です?
 「きゃあっ!」
夜は、千色が想像していた物とは全く違った反応を示した。夜は千色の頭を思いっきりたたいた。離れたら斬られると
思ったので、意地で離れなかった。今度は両手で千色の頭を押し始めた。すると、鉄板で肉を焼いた様な音が聞こえた。
「きゃあぁぁぁぁぁぁっ! 何なのっ! 離れろっ!」
 今度は腹を蹴られて、さすがの千色も夜から離れた。夜を見てみると、さっきとは様子が違う、自分の両手を見ている。
夜の手は、赤くただれていた。火傷したみたいになっていた。夜はそれが信じられないという風に手を見ていた。
次に千色を見て、言った。
「お前っ、只の人間じゃない? 光を纏っているんじゃ? ミカエル、何でこんな人間を連れて来たの……」
 ミカエルは、千色が追って来た羽根の生えた猫の名前。ミカエルは言った。
「だってさー、こんな小ちゃい女の子が光の使者なんて思わないでしょ。誰だって」
光を纏っているって、どういうこと? 光の使者って何だろう。千色の頭の中は、この二つの言葉がぐるぐる回っていた。
でも一つだけ分かった事がある、理由は分からないけど、自分は触る抱けて夜にダメージを与えられるという事。
 「もういいっ! こんなオモチャ要らないっ! ミカエル、さっさともとの世界に捨ててきちゃってよ」
そう言うとミカエルが、あの羽根を羽ばたかして飛んだ。大きめな円を描く様に飛ぶと穴が出現した。
夜は千色に直接触らない様に服を掴んで、穴の中に放り込んだ。穴の中は虹色だった。千色は穴の中を真っ逆さまに
落ちて行った。
 
 第三話 どこの世界。
 
 「なにっ! ここ……」
気がつくと、千色はさっきとは違う所にいた。綺麗な湖の畔に一人立っていた。森の中の湖らしい。上を見ると
水色の空が広がっている、ここはどこだろう……。千色が居た元の世界? 違う気がする。ここは猫に付いて行った時に
時々迷い込む現実世界とは思えない様な、あの世界に雰囲気がよく似ていた。多分、そう言う場所に入り込んだんだろう。
 「猫に付いて行って迷い込む世界に似てるけど、こんな感じだっけ?」
雰囲気はよく似ているけど、何かちょっと迷い込む世界とは違う様な気がするのは、千色の気のせい?
千色は何となく、湖を見てみた。水は透明な真っ青に見えて、そこが見えるくらい綺麗な水……。千色の世界には
無さそうなくらい綺麗な湖……。
 「綺麗……人魚がいてもおかしく無さそうな……」
確かにそう、人魚がいても違和感無いくらい綺麗だ。湖の中に手を入れてみる。水は結構冷たいけど、心地いい。
千色の手を餌だと勘違いしているのか分からないけど、一匹の錦鯉っぽい魚がよってきた。でもこれかなり大きくない?
何か一Mくらいあるんだけど、鯉って一Mくらいまで大きくなるのか。分からない……。
 錦鯉っぽい魚が跳ねた。二Mくらい……いやこれはいくら何でも跳ね過ぎでしょうがっ! ちょっと怖いな。
「何かこの鯉っぽいの大きいし、やけに跳ねるし、実は鯉じゃないんじゃ?」
そう、この魚は鯉ではなかった。魚ですら無かった。この魚は一度、湖の深くもぐってしまった。
魚が助走をつけ、さっきよりも高く跳ねた。すると魚が突然光りに包まれて……何かの形をとって……
 「感づかれたか、思ったより早かったな。初対面だからバレないと思った」
湖に落ちて、再び顔を出したのは、あの魚ではなく千色より年上に見える少女……!? えっ、魚が少女に……。
「ギャアァァァァー! オーバーケー!!」
「失礼な奴め、私の何処がお化けなんぞに見える? 私は高貴で稀少で美しい、この湖の守り神の人魚だぞ?」
 千色は人魚と聞いて、湖の中を身を少しだけ乗り出してみてみた。水中に見えるのは、人間の足ではなく、
さっきの魚と同じ錦模様の魚の体……上半身人間で、下半身魚ってことは間違いなく人魚だよね。人魚って、
魚に化けるんだ。ん? 人魚姿と魚姿、どっちが本当の姿でどっちが化けてる姿なんだ? ちょっと疑問です。
「さっきはよくも私のとこをお化けなんぞと言ったな。この高貴な私に」
 千色を見ている人魚の少女、髪は栗色で、瞳は淡い緑色。上半身だけ見れば、普通の人間に少女と変わりはないよね。
「人魚なんだ、きみ」
「そうだ、私はこの湖を守っている守り神の人魚だ。そう言えばお前、見ない顔だな。ここの住人か?」
「ううん、この世界の住人じゃないけど」
 それを聞いた人魚は、硬直して、背中から湖に沈む程驚いた。数十秒後、人魚は何処で引っ掛けたか、頭に水草を
乗せて現れた。人魚は頭に乗っていた水草を指でつまみ、口に放り込む。おいしそうに咀嚼してから飲み込み、千色を
指差して言った。目つきがちょっと鋭い様な気がするし、そうでもない様な気もする。
「ならばお前は一体何処から来たのだっ! ここ、夢路の住人でないのなら、一体どこからっ!」
 こういってからしばらく間を置いて、人魚は千色に言った。
「もしやお前、夜の手下ではあるまいなっ!」
千色が違うと言う前に、人魚ではない別の少年の声が聞こえてきた。千色の人魚の真上から聞こえてきた。
「安心しな、波草《ナミクサ》。そいつは夜の手下じゃない、只迷い込んだだけだ」
 声が上から聞こえてきたので、千色は上を見てみた。人が飛んでいた。背中から生えた翼を羽ばたかせて。え……翼?
湖を上を飛行する、翼が生えた鳥人間少年。波草と呼ばれた人魚はそれが当たり前の様に飛行少年を見て、顔を水の中にちょっと沈めて、答えた。
「見た事が無い人間だったから、少し警戒しただけだ。悪いか?」
 飛行少年は、千色の横にゆっくりと降り立ち、波草に向かって言った。
「悪くはないよ、どっちかって言うと、それは正しい反応だな。でもコイツは夜の手下なんかじゃない」
波草は、何も言わずに湖の中にもぐって、姿を消してしまった。最後に少しだけ、尾ひれを見せて。
少年は、自分の横に立って居る千色を見た。千色も見てみた。これは絶対におかしい。人間は空を飛ばないから、背中から翼は生えている訳が無いのに、この少年は生えている。おかしいぞ、これは。でも翼か生えている事を抜かせば、十五歳
位に見える少年だ。少年はいきなり千色のおでこを指でドスっとさした。意外と力が強かったので、後ろによろける千色。
 
 第四話 住人に会い。
 
 「お前さ、なんて名前? 本当に夜の手下じゃないよな」
夜ってのは、ここに来る前に迷い込んだ真っ暗な所で会ったあのおっかない女の子だよね。
「私の名前は千色。千の色と書いて千色。夜の手下じゃないよ、私はその夜に襲われた」
少年はほっとした様に、小さくため息をついた。頭をかきながらつぶやく様に言う。
 「ならいい、手下じゃないって言ったけど実際どうなんだろうなって思って。あっ、僕クナ。よろしく」
クナは千色を住宅地まで案内してくれると言った。実際ずっと森の中じゃ困るので、千色はありがたく案内してもらう
事にした。クナは千色をだっこした。何の躊躇も無く。一瞬ドキッとする千色。
「いい? 住宅地まで飛ぶぞ」
 クナは翼を目一杯に広げ、準備運動代わりに数回羽ばたかしてから、思い切り走った。走ってジャンプし
翼を羽ばたかせた。体が浮き上がった。最初は訳分かんなかったが千色は唐突に理解した。本当に空を飛んでるんだ。
「飛んでるうぅぅぅぅぅぅぅ! すっごーい! 本当に空を飛んでいるんだ」
「下見てみなよ、原っぱとか木ばっかだけど、すっごいキレーだぞ」
 千色は下の景色を見たかったけど、落ちない様にクナにしがみついているだけで必死。景色を見る余裕は全くなかった。
でも、根性でちらっと下を見てみた。小さな家がポツポツと見えている。それ以外は原っぱと木だけしか無い。
「ほら、もう住宅地に着いたよ。近くてよかった、遠かったら絶対途中で落ちてた」
これが住宅地なんだ。このセリフを聞いた千色は、本当に住宅地がさっきの森から近い場所にあって良かったと思った。 
 「いい、降りるよ。疲れちゃったから途中で下に落としても文句無しだよ? いいかい?」
ちょっと腕の力が限界になってきたので、千色は落としてでもいいから早く地面におりたかった。なのでOKする。
徐々に高度を下げて、とある小さな家の前に降り立った。落とされなかった。クナはしばらくは翼をだらんと下げていた。そうしたくなる程疲れたという事か。当たり前か、いつもの約二倍の重さだもんね。
 「ここは僕んちだ。この家で、エアって奴と二人で暮らしてるんだ」
エアって誰だろう、千色はまず性別を考えた。女の子でもあり得そうだし、男の子でもあり得そうだし……うーん?
「ほら、あっこに居るよ。さっき帰ってきたみたいだ」
クナは屋根の上を指差した、そこには一羽のカラスが居た。うん? カラスじゃ無いなあれは。カラスよりも小さい。
手のりインコくらいのサイズだった。カラスそっくりの別の鳥か。
 「あれがエア? エアってペットなんだ。可愛いじゃん」
クナはエアを見て、何回かうなずいた。クナはもう一回エアを指差して千色に説明した。
「あのさ、エアはペットなんかじゃないよ。あいつはさ人だよ?」
「そうそう、俺はペットなんかじゃねーよ。俺の何処がペットに見えるんだよ? 人間なのにさ」
 千色はもう一回屋根の上に居たカラスっぽい鳥を見た。あれ……鳥は居なかった。でも代わりに
「人おおぉぉぉぉぉぉぉぉ??」
人が居た、髪の毛がオレンジ色の、ちょっと可愛らしい顔の少年が居た。髪をのばしたら女の子に見える。
「あぁん? 俺が人で文句あっか? それともさっきまで鳥だったのが人になっていて驚いてんのかよ」
 エアは屋根から飛び降りた。大きくないとはいえ、三〜四Mくらいの高さはある。千色が危ないと言う前に
エアはすでに着地していた。膝を大きく曲げると言う方法で衝撃をかなり和らげたらしく、平然として立ち上がった。
「んで、コイツ誰? 夢路にこんなガキ居たっけ? 俺記憶にねぇ」
ブチッと来た地位路、初対面の男子にいきなりコイツと言われる筋合いは無いんですけどと言いそうになったが、
何だかエアにぼこぼこにされそうな予感がしたので、言わなかった。
 「この子の名前は……そう言えば名前聞いてなかった?」
言われてみれば、自己紹介なんてしてなかった。なんてクナが自己紹介した時自分はしなかったんだろうと千色は思った。
「私は千色。槙野千色って言うの」
「チイロって言うのか。変わった名前だな、俺はエア。そこに立って居る鳥属《トリゾク》のクナの同居人」
 千色は聞き慣れない単語を耳にした。鳥属ってなんだ? うーん? 分からないよ。
「鳥属ってのはクナみたく背中から羽が生えてる人間の事だっつーの、知らねぇの?」
へえ、クナみたいな人間を鳥属って言うんだ。この世界ではそれって普通なのか? ふと思った。
「んで俺は実体無しだ」
 「えーっ! 実体がないって幽霊?」
「バカ。実体無しってのは俺みたく色々な物に変身出来る人間の事だよ」
へぇ、そう言う事だったのか。
 
 第五話 ちょっとした理解。

 「そういえばさ、君は何処から来たのさ?」
「私は、地球の日本から来たって言うか……なんて言えば良いか、東京から来たの」
エアとクナは顔を見合わせた、ぽかんとした顔でしばらく黙って同時に千色を見て言った。
「チキュウって? ニホンって? トウキョウって何処だよ!! 夢路の何処にあるんだよ??」
 千色は気がついた、ここ夢路の住人は、千色の世界の事を全く知らないんだ。それと同じ様に千色もここに来るまでは
夢路の事を全く知らなかった。それと同じ様に、夢路の住人は千色の世界を知らなかった。千色はどう説明しようか悩む。
自分が住んでいる世界の事だから、あまりにも当たり前すぎて説明するのにどう説明すれば良いのやら……。
でもその前にクナが口を開いた。
 「そう言えば聞いた事あったな、夢路の向こう側には似て非なる世界が存在するって。千色はそこから来たのか?」
「多分そう! その説明であっていると思うけど。やっぱりここは東京じゃないんだ、それ以上にに地球でもないんだ」
これではっきりした、ここは夢路と言って、千色が居た世界と隣り合って存在している異世界。千色はそこに迷い込んで
しまったと言う事、そして
「帰り道が、帰り方が分からない」
と言う事に……。
 「どうしよっ! 帰り道が分からない! 帰れなくなっちゃった? あぁー、どうしよう」
帰れなくなってしまった千色、どうしよう……クナやエアも腕を組んで考えているけど頭の中には?マークが大量に
浮かんでいて、ぐるぐる回っている。帰り方が全く浮かばないらしい。と言うよりしらないんだよね。
「俺、ちょっと皆に聞いてくる。クナとチロは家で待ってろよ」
私の名前はいつ、千色からチロに変わったんだ! と言う前にエアは鳥に変身して飛んでいってしまった。
「じゃあ、一緒に家で待ってよう。チロ」
 いつの間にか、千色からチロになってしまった千色。もう反論する気にもなれずはいはいと適当に答えて、クナに続いて
家の中に入った。まず目に入ったのは大きな机に椅子二つ。火のついてない暖炉に猫。にゃーにゃー鳴いている。これは
普通の人が聞いた場合の物で、千色にはこう聞こえていた。
「お客さんだー!」
「だれ? だれ? 可愛い女の子ー!」
 元の世界じゃなくても、猫の声は聞こえるらしいね。千色は猫を一匹抱いてみた。耳元でそっとささやく。
「なんて名前なのー?」
猫はニャーと鳴く、クナが千色に言った。
「それミオって言うんだ、エアが拾ってきた猫。可愛いでしょう」
その質問に、千色はこう答えた。
「おしゃべりな女の子だよ」
 クナはその言葉の意味を深く考えなかったらしく、適当に答えてお茶の用意をし始めた。暖炉に火をつけてお湯を沸かし始める。その間千色はミオとのおしゃべりを楽しむ事にした。クナは引き出しの中にエアの大好物の砂糖菓子を隠して
いるとか、エアは数日前、クナの大切な皿を割ったのを見つかってとっさに自分に罪をなすり付けて、クナがその事を
信じている事などなど……色々ありすぎる。一番驚いたのは、タンスの隙間に、前の住人のへそくり数十万が隠された
ままになっている事。全住人、気付けよっ!
 「へぇ、そんな事があったの? 後でバラしちゃおうかな〜?」
「何独り言言ってるの〜? 暇ならつき合うよ〜」
「独り言じゃないよー。ミオちゃんと話してるんだよ。そっか、私以外には声が聞こえないんだっけ?」
クナはしばらく沈黙、暖かくて、砂糖が入った甘いお茶を持って来て、千色のおでこを触った。そして一言。
「熱あるの? チロ。」
 ちょっとブチッと来た、猫だって喋るんだぞっ! 確かに、一部分の人にしか聞こえないかもしれないけど、
猫だって楽しくお喋りしてるのっ! これはおかしく何かないっ! 別に普通だっつーの!
「猫だって喋ってるのー! 私には猫の声が聞こえるのー! 確かに一部分の人しか聞こえないかもしれないけど……」
「あー、それって僕が鳥の言葉がわかるのと同じか! なんだ、そっかそっか!」  
2009/06/10(Wed)21:05:35 公開 / シトロン
■この作品の著作権はシトロンさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
 千色が纏っている光とか、夜が纏っている闇とか、この小説には目に見えない
あやふやな物ばかりが出てきます。あやふやな物だけに、文字だけで表すって言うのが
難しい部分があるかもしれないし、テストとかも色々あるので間が空いてしまい、
なかなか小説を書いていく事が出来なくなってくるかもしれないけど、そこは
自分なりにがんばります。
この作品に対する感想 - 昇順
拝読しました。初めまして。水芭蕉猫と申します。名前に猫とあるように、私は猫が大好きです(生き物全部好きですけどね)なので、お話の内容には興味引かれる部分がありますが、とりあえず段落(頭に一つ空白が入る行ですね)以外の改行は必要ないかと思います。それから最後の玩具の部分をオモチャと言い直した部分については無理に漢字にするのではなくオモチャとカタカナ明記したりした方がより深みが出ると思います。注釈がついてると私は読みにくい……。
いろいろ細かいこと書きましたが、不安定な物語でしかも猫が出てくるので今後に興味がわいておりますので是非とも最後まで続けて書いていただきたいと思います。
2009/06/05(Fri)23:06:390点水芭蕉猫
返事遅れてごめんなさい。こんばんは、水芭蕉猫さん。猫が好きなんですか、私も猫は
結構好きです。あなたに指摘された部分の、段落とか注釈などは直していき、良い小説に
したいと思いますがんばります。また読みにきてください。これからもアドバイスお願いします。
2009/06/06(Sat)19:44:130点シトロン
拝読しました。新キャラクターが出てきて良いのですが、全体的にいまいちインパクトが薄いと感じました。それから更新する時はメモ帳やワードなどのテキストエディタに書き溜めてからいっぺんに投稿したほうが良いと思います。
2009/06/06(Sat)21:42:320点水芭蕉猫
また読んでくれてありがとうございます、水芭蕉猫さん。インパクトが薄いと言うアドバイスを
貰ったので、少し文を足してみました。インパクトが、前より出ていれば良いんだけど。
更新する場合は、書きためてから投稿するですか、やってみる事にします。
アドバイスをありがとうございました。
2009/06/07(Sun)19:38:060点シトロン
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