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『久しぶりだな、元気にしてたか?』 作者:六六 / リアル・現代 未分類
全角3391文字
容量6782 bytes
原稿用紙約10.55枚
夢だった。





 よう、田丸。久しぶりだな、元気にしてたか? なんだよつれないな。せっかく昔の先輩と再会したってのに、なあ? 目くらい合わせろよ、ほら。……何だよ、お前そんなオレのこと嫌いだったの。じゃ、いいよ。センパイせっかくお前の顔見に来てやったのに、お前って奴はそうやって、自分の過去とはオサラバしたいタイプだったんだそうなんだな。へーんだ、いいよいいよ。お前と仲良かったって勝手に思い込んでたバカな年増のお兄さんがちょっと顔のぞかせたくらいに思ってろ、このことは。忘れろもう、忘れちまえ、ほら! オレ今めっちゃ恥ずかしいから、今すぐ忘れろさっぱりと!
 


 それともお前……本当に忘れたのか? ホラ、お前が高校入学したての頃からさあ、散々世話になったろ。オレが。えへへ。
 帰り道、お前んちまで無理やりついてく途中で、はしゃぎすぎたオレが道路の側溝に足はめたの覚えてるだろ。いやあ、あの時は大変だった。丁度毛虫の季節だったもんな。足突っ込んだ先に毛虫が密集してたもんな。あれは堪らなかった。毛虫まみれの足でお前んちあがろうとしたら、お母さんに露骨に拒否されたしよ。冷てえな、おまえの母ちゃん。アレだ、いつも冷蔵庫の中にでも入ってるんだろ。毎日冷蔵庫の中で体育座りしてもちもちとマーガリン貪ってるから、あんな……おっと、やべーやべー。聞こえちまうな。
 

 ゲームとかもたくさん貸しただろ。しかもお前、五本貸したうち四本はオレのデータ消してるし。いつもうるさいくらい言ってたじゃねえか。データは上書きするんじゃなくて、新規作成しろって。その頃のお前、オレの中で「データクラッシャー」の異名を誇ってたぞ。自分でつけといてなんだけどちょっとカッコイイ名前だったから、正直羨ましかったんだぞ。いくら枕を涙で濡らす夜があったことか……あ、ゲームじゃなくて、異名の方な。一生懸命考えたんだけど、どうしても浮かばなくてさ、悔しくて悔しくて。オレの無駄なネーミングセンスを呪った日々。ゲームはアレ、どれも全クリしたことねえから、実は。飽きっぽくて。気にしなくて良いよ。でもやっぱ気にして。実は地味にへこんでたから。


 でもお前ったら、オレが遊びに誘ったら大抵断るんだもんな。家族とドライブに行くとか、家族との旅行があるからとかで。生粋のファミリーコンプレックス、略してファミコンだったもんな、お前。いっつも家族とどっか出かけやがってよお。センパイの誘い断るくらいだぜ、よっぽど大好きなんだな。もはやスーパーファミコンと言っても過言ではないぞ。スーファミだスーファミ。いや、多分良いことなんだろうけど……オレが寂しかっただけですすみませんね! 一方的でホントごめんなさいね! 以上、片想いする女子の気持ちがわかった高二の夏休みでした!


 ……まあね、そんなこといいつつ、オレらだって結構カッコイイ話とかさ、してたじゃん。友達の前じゃ絶対泣くな! なんて勝手に条約みたいなの作ってさ、盛り上がったなあ、アレ。お前辛気臭いの嫌いだったもんなあ。うん。ところで結局いくつ作ったっけ、条約。コッペパンはちぎって食べるな! から、鏡の自分に正段突き! とかわけわかんないことまであった気がする。鏡に正段突きは危ないだろ。本気で。コッペパンはえっと、ゴメン、オレやってたわ。女々しくて悪かったな。だってそのほうが食べやすかったんだもん。お行儀よく食べなさいって母さんに言われてたもん。マーガリンとジャム重ね塗りも許してくれないような母さんだぜ、コッペパンにかぶりつくなんて許すわけねえだろ。あ、オレマザコンじゃねえよ、言っとくけど。信じて。


 あ、そうそう、花持ってきたんだった。ほれ。変な意味じゃねえぞ。今日花買ってちょっくら愛の告白しようと思ったら、なんかそれもオレの勘違いだったみたいであれよあれよとストレートに撃沈して、せっかく買った花束ヤケになって駿河湾に投げ込もうと車を走らせたんだけど、どういうわけかここにたどり着いちゃったからもういいかってついでだついで。綺麗だろいいだろ。和むだろ。オレはなぜか涙出てくるけどな。おっといけねえ、泣いちゃいけないんだった。
 なあ、オレら友達だもんな。なぐさめてくれよ。そのために来たんだ。決して、久しぶりにお前の顔みたいなとか思ったんじゃなくて、悲しくて悲しくてたまらないこの傷ついた心を誰かに癒して欲しく……あれ、なんか視線が痛い。背後からものすっごい視線が。んー、空気読んでないオレが悪いんだね、多分。スミマセン皆さん。勘弁してください。もうちょいで話終わらせますんで。もうちょっと辛抱してください、ここは。オレまだ話したい事たくさんあるんです。あ、お母様まで。すみません。冷蔵庫でマーガリン貪ってるのはオレのほうです。大好きです、油脂とか。だからもうちょっと、もうちょっと待ってください。ね?


 ふー、なんとか落ち着いていただけた。でもそろそろ皆さんお怒りのようだから、もう思い出話とかもすっとばして、単刀直入に言うな。
 

 絶交するわ、オレ。お前と。
 

 腹括ってたんだよ、実は。もうね、お前にはオレ必要ない。オレには、じゃねえよ。お前には、だ。ほら、今だってお前、オレと目を合わせようともしねえじゃん。キライだろ、オレのこと。実は鬱陶しくてたまらなかったろ。ウザイもんなあ、オレ。会った人十人のうち九人は、あからさまにオレを「どっかいけよ」って目で見てくるもん。大丈夫、自覚はある。
 それにさ、オレお前の家族の皆さんにも嫌われてるみたいだし。お母様なんて、見てみろよ。オレを視線で刺し殺さんとばかりだぜ。いつか貫かれるよヤバイよ。もしこれでオレ死んだら、刺殺扱いなのかな。どうしよう。……と、また話がそれた。あっはは、オレウゼェ。



 いや実はだね、オレ明日海外に飛ぶんだよ。それがロスとかだったらカッコよかったんだけどな。残念ながらレソトだ。どこの国なんだろうな。オレもしらね。親父がよ、なんかそこでちっさい工場やってたらしくて。で、なんか知らない内に死んだらしくて。で、なんか知らんけどオレそっちに行くことになってて。いや、オレもわけわかんなくてな。正直。でも別に日本がそんな好きだったわけでもないし、新境地ってなんかカッコ良くね? って知らない人からの電話で冗談混じりに言ったら、いつの間にか行くこと決まってた。すげえだろ、このなし崩しっぷり。まあ行くけど。
 お前はもう十分大人さ。オレがいなくても。ていうか基本的にオレがいる必要ないわな。お前立派だった。出来る子だって信じてたよオレは。

 というわけで、ここ日本での唯一の親友……って思ってた田丸君だけが心残りだったので、そこだけ断ち切りに来ましたー! 以上!!
 





 ――よし、これでオレとお前はもう友達じゃねえな。はあ、やっとだ。これでやっと……――。







 思いっきり、泣ける。






 





 家族と行ったドライブで事故にあい、小さな妹を守ろうと身をはった田丸君の葬儀は、最初は静々と、その後部分的に明るく、最後は子供のように泣きじゃくる声で、結果的に中々にぎやかに終わりました。
 田丸君のお母さんは最後まで泣かないよう歯を食いしばっていたようですが、最後、男の人の言葉で涙が溢れてきてしまいました。涙を零さないようにと瞬きすらこらえていた瞳は、真っ赤になっていました。
 棺の一番上に置かれた花束は、とても質素で、他と比べたら少々見劣りはしていたけれど、とても暖かく感じました。
 自称、田丸君の大親友だった男の人は、最後、出棺のとき、がらがらになった声で叫びました。

「見送りに来て欲しかった。空港で恥ずかしげもなく抱き合って、わんわん泣いて、思い出話して、俺ら友達だよな、ああそうだとも心の友よ、みたいな会話したかった。ちっさな夢だった。だからこっちから会いに来てやったぞ。心の友よ。勝手に一人でわんわん泣いて、お前の棺抱きしめて、勝手に夢叶えたぞ。ごめんな、ありがとう。今まで一緒にいてくれて、ありがとう」
 
 田丸君には、聞こえていたでしょうか。ジャイアンか! とつっこんでくれたでしょうか。
 

 


 いつものように、目を真っ直ぐ見て、楽しそうな笑顔を浮かべて。
 

2009/05/09(Sat)12:34:43 公開 / 六六
■この作品の著作権は六六さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
こんにちは。またまた失礼します。六六です。
今回は書き方を変えてみました。あからさまに誰か様の影響みたいなものをひしひし感じますが……;;
お葬式でのセンパイの独白です。これくらいウザいひとが友達に一人くらい欲しいです。
いつも淡白な文ばっか書いていたので、たまにはと思いまして。そしてこれが面白いこと面白いこと。あっという間に勢いで書いてしまいました。
おかげで内容のぐちゃぐちゃっぷりったら。見直しに見直したのですが、自分では判断し切れなくて…;
今回もできましたら厳しくご意見くださると嬉しいです。自分で書いたものの判断をつけるのって、物凄く難しいのだと、今知りました。(遅

楽しく書けました。ちょっとでも楽しんでいただければ幸いです。
この作品に対する感想 - 昇順
こんにちは! 読ませて頂きました♪
 初めのうちは、なんだかポカンとした気持ちで読んでいたんですけど、葬式の話が出てきて、そういう事だったのかぁ納得! という感じでした。本当に最初は無視され続けて可哀想にって思いつつ、でも無視されるのも分かる気がするなって。
 実際に田丸君と先輩の関係って、どんなものだったかは分からなくて、先輩の言うような一方的だったのか、本当に大親友だったのと考えるのも楽しいかなと思いました。
‘オレはなぜか涙出てくるけどな。おっといけねえ、泣いちゃいけないんだった。’という所が、一度読んでからだと色んな意味で取れて好きです。
では次回作も期待しています♪
2009/05/09(Sat)14:12:130点羽堕
拝読しました。ややアホ気味な先輩とお亡くなりになった田丸君のお話かな。前回とくらべ感情が溢れてて六六さんのもう一面が見られたような気持ちになりました。惜しむらくがあるとすれば、一番最後の状況描写で誰が先輩を見てそう感じているのかが解ればもっと良かったかもしれません。感じからして、少々幼い感じがするので田丸くんの妹かな? とも思ったのですが、そうでもないみたいですし……。おっと、なんかごちゃごちゃ書きましたが、すらりと読めました。
2009/05/12(Tue)20:30:290点水芭蕉猫
作品を読ませていただきました。見事にやられたなぁ。初めはこの独白の連続は自己に向けたインナースペース的な物語なのかなと思って読んでいたけど、こんな構成だとは思わなかった。葬式でこれだけ感情を動かせるのって羨ましい。こんなふうに言ってみたいけど、私は友達の葬式でも親の葬式でもなんの感情も励起されないタチなので。では、次回作品を期待しています。
2009/05/17(Sun)08:13:110点甘木
羽堕様>>
毎度毎度読んで頂き有難う御座います。
ですねぽかんともしますよね(笑
いや実は初っ端からあんなテンションで、ここ開いて下さった方が見た途端にUターンしやしないかしらとも思ったのですが、どうにか最後まで読んで頂けたようで安心致しました;
なるほどと感じて頂けてちょっぴりガッツポーズです。うっっし。
多分実際ウザかったんでしょうね、田丸君。きっと。ただそんなうっとおしくも微妙に楽しい先輩が、好きだったのだと思います。多分。(曖昧だ
大親友だったのかどうか、それは田丸君のみぞ知る。先輩にはもうそれを知る術はないけれど、どうか救われるような答えであって欲しいところです。(笑
特定の部分に注目して頂けて嬉しいです。一文でたくさんの意味をもつ言葉というのに憧れていまして、その部分はなんとなくそういう意識を持って書いたのでそう言って頂き良かったです^^
有難う御座いました。


水芭蕉猫様>>
またまた読んで頂き有難う御座いました。
前回のお話が淡々とした話でしたので、その反動で思いっきり感情的でお笑い要素(と言えるまでのセンスなんてないですが;)をちょいと織り交ぜたくなって、このお話を書きました。
もう一面というか、どっちかというと素の私はこの先輩みたいな人ですね。親近感感じます。あれ、何で涙が。
確かに、最後の状況描写のとこは誰かからの目線の方が良いですね。最後だけ淡々としていて、感情的な感じが出し切れていないなと言われて初めて気付きました。
後々、文章がまとまり次第、書き直させていただきます。とても参考になりました。
すらりと読んで頂けたようで、書き手としても嬉しい限りです。アドバイスまでして頂き、本当に有難う御座いました。

甘木様>>
初めまして。読んで頂き有難う御座いました。
見事にやられて頂けましたか。やっほう、嬉しッ。(舞い上がるな
この構成はバカな先輩を書こうと思い立った時点で思いついたものです。本当は先輩が、田丸が死んでるとわからないままひたすら一方的におしゃべりするお話になる予定でした。当初先輩はもっとバカでした。(笑
私もなんとなく羨ましかったりします。親の葬式はまだですが、一昨年くらいに一緒に住んでた祖父が亡くなった時、なんでか私は全く心揺らぎませんでした。それどころか、葬式の挨拶をする人を妹か私か親戚の子かで決めるときなんて、本気でジャンケンしてましたからね。結局全員させられましたけど。なんて不謹慎。
…おっと私情が。失礼しました。
舞い上がらせて頂きました。凄く嬉しいです。有難う御座いました。
2009/05/17(Sun)21:59:240点六六
KYな先輩さんだと思っていたらまさかの展開で、最後までよんで思わずもう一度最初から読んでしまいました。もう一度読むと一回目と全然印象が変わって、上手い構成、それと上手い言葉を選んだなーと思いました。こんな先輩やだなーとおもっていたのに最後にはこんな先輩になりたいとおもわせるようなキャラクター設計も良くて、上手く言えませんが本当に良かったです!
とても面白かったです。でわまた。
2009/05/24(Sun)00:28:330点しろねこ
しろねこ様>>
読んで頂き有難う御座いました。
なんともう一度読み返して頂いたとのこと。一度読んで頂けただけでも嬉しすぎるのに、もう一回読んで頂けただなんて……!!嬉しすぎて小躍りしてたら妹に酷い目で見られました。どうしてくれるんですか。(知らない
構成、言葉共に上手いなんてお言葉まで。先輩にも好感を持っていただけたようで嬉しいです^^
なんか憎いけど、憎みきれないキャラというのを考えるのがすきで、今回の先輩もそのコンセプトで作った人です。でも実際にこんな先輩になるのは流石に止めた方が。(笑
褒め倒してくださり、本当に有難う御座います。勿体無きお言葉の数々が胸に染み入ります…!
有難う御座いました。
2009/05/24(Sun)14:53:330点六六
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