- 『泣かせてしまったあの日。』 作者:華 / 未分類 未分類
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原稿用紙約6枚
同情なんていらないんだ。心配してくれる人がはたして私にはいるのか??
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私は一年のときのクラスが大好きだった。おもしろくて、優しくて…。でも絶対出会いがあれば別れはあるはずなのだ。そのことを私は分かっていたはずなのに、どうしてもクラス替えが嫌だった。
「おはよー!」
私は目の前にいたさゆりにあいさつをした。
「おっ遥じゃーん!おっはー!」
挨拶を交わして私とさゆりはクラス表を見る。仲のいい友達とはみんな離れてしまった。同じクラスだった人はいるものの、話したことのないひとばかりで、私は1からやり直さなければならなくなったのだ。
正直嫌だった。またこの一年で築き上げてきたものが来年になって1からやり直さなければならないのだ。
同じことの繰り返し。しかしそれが私にとってどれだけ苦痛か?慣れない場所なんて私には無理だ。一人っきりで休み時間も過ごさなくてはならない。しばらくはその繰り返し。
ため息混じりに教室に入っていく。やはりみんな静かで読書をしたり、机の上に置いてある新しい教科書の中身を見ている。
静かな場所も私には似合わない。一年のころは私の周りにはたくさん人がいてその輪の中心に絶対私がいる。
そうだったのに二年になったら輪の中心どころかこれでは一人ではないか?
隣のクラスに行くのもなんだし、話し掛けてみようと試みたが話し掛けられるような雰囲気ではないことは確かだ。
頭は悪いが一応空気ぐらいはしっかり読める。私はため息混じりに教科書をめくった。
次の日からは給食で、掃除もあった。給食や掃除は班活動の一環なので絶対班での行動が要求される。話したことがない人が同じ班で私は困った。話し掛けると空気が悪くなるかもしれない…でも話し掛けてみなきゃ分からないなどと自分の中で葛藤したが結局話し掛けることができなかった。
私は前髪が長い。ピンで留めるのも嫌だ。だから私は目が前髪で隠れてしまって根暗な少女に見えてしまう。髪を切りたいが、前髪を切るだけがためにお金を払うのは嫌だ。だから私はいつまでも伸ばしつづけてしまうのだ。
次の日、私はとても大きな壁にぶつかることになってしまう。
音楽の時間、私は音取りとしてピアノを弾いた。しかし、うまく弾けなかったのだ。
クスクス
笑い声が聞こえる。嫌だ…私には味方がどこにもいない…助けて…
私はピアノを弾いていた手をとめた。
「何?弾かないの?音取りさん?」
これは絶対に馬鹿にされてる言い方だ。しかしそんなことが私に言えるはずがない。だって私は味方がいない、一人なんだから。
次の日私は学校を休んだ。怖くて学校にいけないのだ。
しかし学校に連絡するのにそんなことはいえるはずがない。だから、「体調不良で休みます」なんて嘘をついた。
だって「怖いから」なんて言ったら馬鹿にされたり、同情されるだろう。わたしは同情という言葉が大嫌いだった。本当に心があるなら心配だろう。だから余計なお節介なんていらないのだ。私は泣いた。なぜ一人?一人はむなしい?
そんなときだった。電話がなったのは。
電話に出るとそれは昔同じ小学校だったあやからだった。そういえばあやとは同じクラスだ。
「もしもし?」
「あっもしもし?遥ちゃん?」
「うん。そうだけど?どうしたの?」
「あのさ、無理して自分作んなくて良いんだよ?」
「え?どういう意味?」
「ほら、遥ちゃんって結構頑張りやなんだよね。」
「…そう?」
「うん。頑張りすぎじゃない?もっとリラックスしなよ。肩の力を抜いてさ!」
「できないよ…」
「どうして?」
「また1からじゃん…」
「そんなことないよ!」
「え?」
「私が遥ちゃんと一緒にいる。だから1からじゃなくって10から一緒にはじめようよ!」
「10??」
「うん!みんなひとりずつ10の力を持ってるの!」
「10の力?」
「うん。遥ちゃんが1なら私が10を遥ちゃんの1に掛けて10!」
「うん…」
「遥ちゃん…辛かったら辛いって言って良いんだよ?抑えなくていいんだよ?抑えたらそのうち自分が壊れちゃうから。」
「壊れる?」
「うん。私小学校の頃結構やすみがちだったんだ。あれって私一時的に自分を失ってたからなのかもしれないんだ。」
「失う?」
「うん。私が私じゃなくなっちゃうの。だから遥ちゃんには…遥ちゃんにはそんな思いをしてほしくないんだよ…」
「あや…」
「遥ちゃん…私遥ちゃんのそばにいるからね。だから辛いときは辛いっていいなよ。私が包み込むクションになるから…だから…失わないで…自分を…」
あやは泣き出した…私は泣かせてしまったのだ…こんなにも心配してくれる人がいるなんて思ってもいなかったし、親以上に私のことを知っていてくれているのかもしれない。この日を境に私は…生まれ変わったのだ。
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2009/04/24(Fri)00:01:29 公開 / 華
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■作者からのメッセージ
私が本当に体験した話です。
一部省略してありますがたくさんの方に支えられていることに気づいた瞬間でもありました。私には好きな人がいました。そのひとも応援してくれたのです。がんばれとはいわないけれどもできるだけ自分のありったけの力を振り絞れと。
私は勇気をもらったのです。
今度は私が読んでくださっている方々に勇気を与えたいと思います。