- 『それからのぼくら。』 作者:矢吹 / リアル・現代 未分類
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原稿用紙約6.7枚
「お前さ、もう残りの人生どうでもいいって感じだよなあ」
「え。……そうかな」
それは、地元の中学校に通っていたとき友達によく言われた台詞。
「そんなつもりじゃないけど…特にやりたいことも無いな。」
「だろー?だってなんかお前、何事にもやる気感じられねぇもん」
「まぁ、興味がなければ比例してやる気も起きないよね」
大抵はそんな言い訳をして、相手の言葉をひらりとかわす。
「今日の体育のドッヂだって、ボール取らない上に『避ける』って動作すらしなかったし。
意識飛んでんのかと思ったなあれは…」
「あー、あれ痛かったね。ボール柔らかかったから油断してたわ。あの3組の馬鹿力野郎…」
「…意識はあったんだ?」
「うん。なんか球体のものが飛んできたなー、とは。でも避けるの面倒だった」
「信じらんねぇ」と、そいつが目で訴えてくるのが解る。理解ある友人だと思っていたそいつも、
流石にため息混じりで呟いた。
「お前…その歳にしてその思考回路はどうかしてるだろ」
「そうか?だって素早く動くのって、なんかダルくない?」
「ひきこもり予備軍みたいな発言すんな!今のうち体鍛えておかねーと後々苦労するぜ?ただでさえお前
ガリガリなのに」
そいつはぐだぐだ言いながら、俺の手首を少し乱暴に握った。相変わらず無駄に握力が強い。
バスケ部に所属してるだけあって無駄な贅肉は無く、引き締まった体をしている。たぶんほとんどが筋肉
で出来ているんだろう、こいつは。俗に言うヤセマッチョってやつか。
そんな肉体を持ってる奴から健康について説教されれば、まあ充分説得力はある。
「はーいはいはいはい。ちゃんと牛乳飲んで肉と野菜喰ってるからへーきですよ俺は。」
掴まれた手を軽く振り払うようにして、なげやりに返事をした。
「喰うだけじゃ意味ねーだろ!運動と組み合わせることによってより一層…」
「お前は俺の母ちゃんか。うざい。うるさい。健康オタク。」
「おっ……まえ、なあ…」
俺の生意気な態度に多少苛々しはじめているのがわかる。どうやら俺は、人をすぐに苛つかせるという特技を
持っているらしい。昔からこうだった為、友達はそんなに多くは無い。少なくもないけど。
「じゃ、俺こっちだから。」
そんな友人の一言で、ふと我に返る。手で引いていた自転車を、これから向かう方向に動かしながらこっちを
見ていた。
「あ、うん。じゃ明日な」
「おう。……あ、そうだお前」
「ん?なに」
「高校。進路。もう決めたか?この時期には決まってねーとヤバイぞ」
唐突だな、とは思ったけれど、すぐに答える。
「ウチから一番近いとこ。知ってるだろ?あの田舎っぽい感じの、去年新校舎になった…」
「あー…あそこね。いいんじゃね?レベルもそんな低くないし。お前なら推薦でヨユーだろ」
「ヨユーはお前だろ。スポーツ推薦でさっさと決まりやがってさあ、ムカツク。憎たらしい。」
「はは、お前も部活入ってりゃ良かったのに」
俺にはとびぬけて優れた才能なんて、無いって知ってるクセに。今だけは、何の曇りもないその笑顔が
少し勘に障った。きっとこいつに悪気は全く無いんだろうが。
なんとなく気まずい沈黙が数秒間続く。突き破ったのは向こうからだった。
「そっか、じゃあ安心だな。…高校行っても、連絡取り合って遊びに行こうぜ」
「おう。俺たぶん友達できねーから」
「入学前から縁起悪ぃコト言ってんじゃねえよ。お前確かに苛つくとこあるけど、大抵は良い奴だから。平気だって」
「それ褒めてる?あんま嬉しくない」
「褒めてる褒めてる。じゃーな」
「うん。明日」
その日も俺等は、どうでもいい話を2つ3つしてから、いつもの場所で解散した。
それから暫くして、俺たちの代は全員卒業した。
トクベツ思い入れのある学校生活ではなかったので、勿論涙は一滴も出なかった。
第一志望の高校にも無事合格し、新しい環境、人の中での生活がスタートする。
とりあえず他愛もない会話をする友達は出来た。「友達」というよりは、「知り合い」寄りだったけれど。
ふと気づいた。
あいつとは、あれから一度も連絡を取っていなかったことに。
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2009/01/05(Mon)02:28:43 公開 / 矢吹
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■作者からのメッセージ
初めまして!矢吹と申します、以後よろしくお願い致します。
こちらの版では描かせて頂くのは初めてなので、若干緊張気味です^^;
そうです私は言わずと知れたCHICKENです←
とりあえずこれプロローグ?みたいな感じで書いてみました。本編には
次回から入っていきたいと考えています。更新未定ですが汗
末永く幅広く見守っていただけると嬉しい限りです!それでは乱文失礼いたしました!