- 『汚い仕事』 作者:green leader / ショート*2 未分類
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全角1905.5文字
容量3811 bytes
原稿用紙約5.5枚
時代、場所、そして現実世界を超えて作られた全く異色のショートショート集。
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治安が悪く、悪が蔓延る時代。
昼の午後十二時過ぎ。灰色を基調とするラテライト市街の辺りの商店は皆わいわい賑わっていた。しかし、そこに真っ黒な乗用車が三台列をなして入ってきた。買い物客や店主たちはその車たちを見るや否や、そそくさと小道に逃げて行った。急に静かになった。
車は古びたビルの手前で停止した。中から黒ずくめの男たちが出てきて、そのビルに入って行った。若い集団だったが、中に一人だけ白髪の混じったダンディな老人がいた。
「違うって! 俺じゃないよぉ!」
椅子に縛り付けられた、殴られてぼろぼろの顔の男は喚いていた。
「なんで俺なんかが、お宅のボスを殺さなきゃなんないんだよぅ!」
テナント募集中の殺風景なフロアにその男はいた。すると、そこに先ほどの男たちがぞろぞろと入ってきた。ダンディな男もいる。
「こいつか……俺を殺そうとしたのは」
椅子の男は、その老人を見た瞬間に急に申し訳ない表情になった。老人はそれを見ると、にやりと一笑して手下に合図を送った。黒ずくめの若い男たちは、コートの中からすばやく銃を引き抜く。椅子の男は焦り始めて足をバタバタし始めた。そして男たちが狙いを定めたのを確認すると、目をつむり最後の瞬間を待った。
しかしその時、
「まて」
と老人は言った。男たちは静かに銃を下ろした。
「そういえば、まだ動機を聞いていなかったな、ワトソン君」
椅子の男はおずおずと目をあけ、ゆっくりと顔を老人に向けた。
「いい加減にしてくれよ……俺はワトソンって奴なんかじゃないし、あなたを殺そうとなんかしてないってのに」
するとダンディな老人はネクタイを少し緩め、前に進み出て自分の銃を取り出し、椅子の男の頬に突きつけた。恐怖におののく男を見つめたまま、老人は一字一句はっきりと言った。
「この場で拷問を受けることなく潔く殺されたかったら、動機を言うんだ。さもないと、生まれてきたことを」
次の瞬間、椅子の男が突然立ち上がり、老人の銃をもぎ取ったかと思った直後に、その頭をとてつもない勢いでぶち抜いた。あまりにも予想外な大きさの轟音と、目を背けたくなるような血しぶきが同時に発せられ、部下の男たちは何が何だか分からずに、その場に倒れこんでしまった。その倒れこんだ男たちの間を縫うように、一人の男が走り去って行った。
我に帰った部下の一人はそれを目撃して大声で叫んだ。
「ワトソンが逃げるぞ! 捕まえろ!」
敵の乗ってきた、エンジンかけっぱなしの黒い乗用車の一つにするりと乗り込むと、ワトソンは息もつかせぬまま猛スピードで急発進した。先ほどまでにぎわっていた商店街には今はもう誰もいない。後ろの方で叫び声が聞こえ、銃弾が車体にかすれる音がした。ワトソンは十字路を思いっきり右折し、複雑な道でできた住宅街に突っ走って行った。
ここでやっと、ワトソンは後部座席で誰かが寝ていることに気づいた。耳にピアスをし、奇妙な山高帽をかぶったチンピラだった。
「これはタクシーじゃない、降りろ」
ワトソンは脇道で車を停め、その若いチンピラに怒鳴った。そのチンピラは急に目を覚ますと、ひどい顔をしたワトソンに向きなおった。紫色のシャツにグリーンのネクタイをしている。よく見たらチンピラというよりは精神異常者だとワトソンは思った。
「俺だって、タクシーのつもりで乗ったわけじゃない。金もないし」
そう言うなり、男はシャツのポケットから名刺を取り出した。ワトソンはそれを見た。
「ホルスト? 誰だお前。聞いたことが無い。やっぱりだらしのないチンピラか。」
「身なりなんて関係ねぇよ!世間的には、オレとオマエは比類なき二大賞金稼ぎ。俺らよりも強い人間はいやしないよな。だからいっぺんアンタの腕が見たかったのさ」
ホルストはにんまりと笑った。歯が黄色かった。ワトソンは愛想を尽かし、車を降りて歩きだした。ホルストは急いで後を追った。
「なあ、オレとオマエが協力したら何ができると思う? 今までにない大物が狙えるんだぜ? さっきのチビな老人なんかよりもずっと儲かるような大物をね。たとえば、この街を牛耳っているギルラーノとか!」
ワトソンは急に立ち止まり、振り向きざまに先程の老人の銃を彼に向けた。ホルストはびくっとして固まった。
またもや大きな銃声がした。ホルストは頭にぽっかりと穴を開けたまま力なく仰向けに倒れた。ワトソンはそれを見て哀れな顔をして言った。
「さっきの老人がギルラーノ本人だよ」
彼はまた振り向くと、木々の枯れている寒い郊外をすたすたと歩いていった。
黒い乗用車は、エンジンがかけっぱなしだった。
完
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2008/12/03(Wed)14:38:52 公開 /
green leader
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■作者からのメッセージ
思いつくままに書いています。つまんないですが、ご指摘があるとうれしいです。