- 『あの鈴の音を聞いて 一話』 作者:コズエ / 異世界 ファンタジー
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全角1926文字
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姫雪は、普通の女子中学生。放課後歩いていると、見知らぬ少女が倒れていた!あわてて駆けつけると、少女は自分を「異世界人」と名乗る。なんだかんだで一緒に住むことになったのだが……
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ゴメンなさい――……
私には何も出来ないの
――――何も。
だから、あなた達と一緒にいることは、
出来ない。
ゴメンなさい、ゴメンなさい……
ソフィは走った。
どこまでも続く山道を。
「人間界に降りるんだ。そこにいれば、きっと……きっと、あの人たちには……うわっっ!」
山道を、どこまでもどこまでも、ソフィはおちていった。
もうダメかもしれない、そう思ったとき。
自分の体が、宙に浮いた気がした。
光に包まれた己の手を、ソフィは不思議そうに見つめた。
「何? なんなの!??」
「そなたの願い、かなえよう」
「誰? 誰かいるの??」
「人間界に、行きたいのだな?」
「はい……とっても」
ソフィは、必死に応える。
「それは何故だ。理由を述べよ」
「あの人たち……私があそこにいると、私の大切な人たちに迷惑がかかるんだ。私はここにいちゃいけないの。人間界にいけば……人間界に行けば、あの人たちは助かるんだ……私さえいなければ、あの人たちは幸せになれるんだ」
「その思いは、強いか?」
「これ以上強い思いを持ったことはありません! だから……だから!」
「分かった。焦るでない。今、人間界へ、そなたを行かせよう」
「有難う……本当に有難う!」
ソフィは光に包まれて、その時限から姿を消した。
――……
棗 姫雪(なつめ・きせつ)十三歳。
運動普通。勉強普通。何をしても平均値。
栗色のカールした髪の毛をして、瑠璃色の瞳をした。
整った顔立ち。クラスでもまぁまぁ可愛い方の顔。
東中のセーラーを着ると、周りの生徒たちの中に溶け込んで存在感がなくなるほど、普通。
周りの生徒が言う彼女の性格は、優しい。そんなことしか出てこない。
優しい、普通の女子中学生にしか、見えない。
いや、実際にそうなのである。
普通の女子中学生であった。
友達もそれなりにいて、好きな人も、いる。
いたって普通の家庭で育ち、普通に生きてきた。
そんな姫雪が、どうして自分があんな目に合わなければいけないのかは、きっと一生かかっても分からないであろう。
その日も平凡に時は流れ、ただただ普通の毎日が、姫雪を包んでいた。
姫雪の家は、林をこえたところにある。
共働きの両親は、帰ってくるのが夜中だ。
従って、姫雪はほとんど一人で過ごしている。
分かれ道で友人と別れ、林の道へ差し掛かったとき。
木の陰から、人の足のようなものが見える。
「誰かいるんですか?」
思い切って、言ってみた。
返事は、無い。
その近くによって見ると、姫雪と同じくらいの歳だと思われる少女が、倒れていた。
腰まで来るほどの長いブロンドをゆるく編んで、高貴なまでに整った顔立ち。
服装は、チャイナドレスを短くすればこうなるのか、そう思うような桃色の服を着て、少女は眠っていた。
「あの……大丈夫……あっ…………」
姫雪がその少女をゆすると、少女は目を覚ました。
キレーな目……。
無限の水が沸いてくる泉をも連想させる、鮮やかな青の瞳。
その口が開かれた。
「ここは、人間の世界?」
「え?」
姫雪は、わけが分からなくなった。
この人は、なんて当たり前のことを聞くのだろう?
もしかすると、頭の……ちょっとアレな人だろうか?
普通の人なら、普通に考えることはそれだ。
「そうですけど……」
「そう。……来れたのね」
少女は、遠い目をしてそう言う。
「あの、貴女はどこから?」
「信じられないかもしれないわ。信じてくれなくても結構。でも、私はここの世界から行って、「異世界」と呼ばれる場所から来たの」
「異……世界?」
「そうよ。信じられないわよね」
姫雪は考えた。
ブロンド。青の瞳。
そして、ここのものとは思えない服に、いきなり倒れていたこと。
「いいわ。証拠を見せてあげましょう」
少女は、何かをつぶやき始めた。
そして、手のひらを宙に翳すと……
手のひらから、水があふれてきた。
姫雪は、唖然としてその光景を見つめた。
つぎに少女が手を握ると、水はぴたっと止まった。
宙に浮いていた水が落ちて、姫雪は我に返った。
今……!
「本当に、異世界の人なんだ……」
「えぇ。ソフィというの。貴女は?」
「姫雪。棗 姫雪」
「姫雪? ヨロシク。いきなり驚かせちゃってゴメンね」
「ううん……? 気にしないで」
「来たはいいけど、泊まるところが無いの。何か、いいところ知ってる?」
「……じゃあ、私の家へ来てはどう? 親もいないし、いても放任主義だから、友達といえば承諾してもらえる」
「いいの? 本当に。これ以上巻き込んじゃっていいの?」
「うん。かまわないわ。こうしてあったのも、偶然でない気がするのよ」
「わかったわ。有難う! 案内してくれるかしら」
「こっちよ……?」
ホームステイが始まったのだが……
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2008/10/23(Thu)17:47:33 公開 / コズエ
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■作者からのメッセージ
コズエです。
今回は、異世界ファンタジーにチャレンジしてみました。
初めてで時間が無いなので、文字数が足りません。
いいわけみたいですみません。