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『見え……』 作者:人の火の粉 / ショート*2 リアル・現代
全角1470文字
容量2940 bytes
原稿用紙約4.45枚
誇り高い職を持った男性の話。
 フラッシュが飛び交う先には黒いスーツを着た一人の男性。椅子に座り深刻そうに口を開いた。
『と言う経緯がありまして、私はこの誇り高い職から辞任させていただきます』
 フラッシュの勢いはさらに増し、立ち上がる記者さえもいる。
『何故、辞任なさるんですか。少しずつではありますが支持率が上がっているこの時期に何故このような辞任をなさるんですか』
 一人の記者がそう質問すると小さな録音機らしき物の取り出した。
『確かに支持率は上がっている。ですがそれだけではこの捻れ国会を打開する事が出来ないと判断したんです、どんなに良い案を取り上げても可決できないのであれば何も出来ない。この日本という国全体を取り纏める事が出来ない人物だと判断し、次の内閣総理大臣に任せようと考えた次第で御座います』
『それは、他力本願と言う物ではないのですか』
 違う記者が立ち上がり、そう質問すると男性は口を閉ざした。
『……』
『答えてください! 貴方は他人に任せる気』
『はい、今を持ちまして記者会見を終わりにします』
 記者が全部言い終える前にそう言われ、男性はゆっくりと立ち上がった。二人ほどの男性に背中を持たれてその場を退室していった。その姿は警察に捕まって補導されている犯罪者の様な惨めな姿であった。
 外に出ていっても記者の質問の嵐。男性はどんな質問にも答えず、車に乗り込んでどこかへ行ってしまった。

 と言うニュースを見ている私。私と言っても男。この職にいるとついつい私と言ってしまう癖が付いてしまったが、別に日常生活に支障をきだしていないからあんまり気にしていない。
 テレビには、市民がどう思っているかインタビューをしている画像が現れる。
『辞任したと聞いたときの気持ちはどうでしたか?』
 そう訊かれ、会社に勤めているサラリーマン風の男性は
『無責任だと思いますね、非常に無責任。あんな理由で辞任するぐらいなら、最初からやらなければよかったんですよ』
 と答えた。何処にでもいそうなおばちゃん風の女性は
『あたしも無責任だと思うわ〜。結局何も解決できなかったんでしょ〜。正直期待はずれだったわ』
 と答えた。
 私の心には反論の言葉が浮かんでいる。 
 誰も見えない様な所で必死扱いて頑張った奴に対してそれは酷いと言いたい。
 だってそうだろ? 大物になればなるほど表よりも裏で頑張ると言う事が多いのは当たり前の事。それなのに他の人は表しか見ない。あ、そうそう裏って言うのは一般的には見えないところの事で。私の職で言う国会の会議とか。
 たぶん私みたいな職に就いている人は絶対に解ってくれているだろう。そう信じたい。
 もし、全国に向かって言えるならこういいたい。

 批評を言うのは実に簡単だ。誰にだって出きる普通のことである。だがそれが出きるか出来ないかと問われると、出来ないと答える場合が多い、だからこそ自分の考えに近い人間を、出きる人間を立候補にし決める。進めていくときに失敗し辞任すると言ったときに、期待はずれなどと平然と答える人間は可笑しい。自分達が支持をしていったのに、失敗すればゴミみたいに言われるのは絶対に可笑しい。私は批評よりも暖かい物を言って欲しい訳ではない。ただ、批評をする前に考えて欲しい。何もせず辞任する人間は誰もいない。必ず見えないところで必死に頑張っていた者に対してあまりにも酷い仕打ちだと私は思う。

 っと。
 だが結局、私は全国から批評を受けなくてはならないのだろう。
 何故なら私は内閣総理大臣、あの記者会見をした辞任する人間なのだから。
2008/09/21(Sun)18:00:24 公開 / 人の火の粉
■この作品の著作権は人の火の粉さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
ん〜どうなんだろ、前作のアドバイスを取り入れたと思うのですが……技量不足かもしれません。
それから、僕が書いているのは僕なりの思いと言う物です。
たぶん、前作よりは伝わりにくいかもしれません。
ですが、やはり誰かを批評する前に考えてください。
まぁ現実世界のだけですけどね。ネット世界ではあまり意味がありませんから。
特に僕の小説。バンバン批評して構いませんから。
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