- 『悪魔と俺でファンタジー 【第一話】』 作者:榊 燕 / ファンタジー 異世界
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原稿用紙約15.1枚
時は現代。高層ビルが建ち並ぶ都会のまち。そのなかでも一際高いビルの屋上。 そこでは一人の男がタバコをふかせながら、眼下を見下ろしていた。時は現代。全長五メートルはありそうなその体に、背中には黒い羽、頭には曲がりくねった角をはやした男が、目の前のまだ小さな女の子を怒っていた。女の子はただひたすら、平謝りをし続けその嵐が過ぎるのを待っていた。場所は不明。深い深い森の際奥。岩でできた祭壇が、鈍く光を放っていた。誰かを待つように、何かを誘うように。出逢うはずのない二人が行けるはずのない世界に飛ばされる。物語が今始まろうとしていた。
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【第一話――突然の終わりで出逢いと異世界!?】
俺は良く思う、小説や漫画、アニメやドラマの世界で死にかけた瞬間、各種多様な不思議な力や出来事で助かる奴等、馬鹿らしい!
今まで本気で思っていた。
「たぁすぅけぇてぇぇぇ!」
この情けない声を上げながら泣いているのが俺だ。
そして俺は謝りたい。
「今まで馬鹿にして御免なさいぃ、だから奇跡よ何かの出来事よ俺を助けてぇぇ!」
今俺は百階立てのビルから、バンジージャンプの紐も無しに空を飛んでいる。
涙を撒き散らし、混乱の極みで訳の解らない事をのたまっている今の出来事には深い深い訳がある、それは……。
サボリ、屋上、突然の強風、バナナの皮。
「バナナの皮っていつのコントだよっ!」
余りにも深すぎる致し方無い理由で、俺も思わず泣きたくなった。
……はい、正直御免なさい。
意外と余裕がありそうに見えて本当は一杯一杯ですよ、今自分がなに言ってるか全然わかんなあんだから!
「生きれるなら悪魔に魂あげてもいいから誰か助けてーー!」
「よかろう、我に魂を差し出すのならば、今この場から助け出してみせようぞ」
突然目の前に黒い羽を着けた、コスプレイヤーが現れ今不明な事をのたまいやがった。
とうとう余りの恐怖に頭がやられたようだ、俺南無。
「一人黄昏てないでさっさと答えて……答えよ!」
うっわぁ目の前のこの幻影無理に威厳持たせるような話かたしてるせいで余計幼ねぇ、思わず笑っちまったぜ、こんちくしょう。
「んなこと考えてる場合じゃねぇ、誰か助けてぇ!」
「だから私が助けるから魂寄越せっていってんでしょ! 意外とこの結界はってんのも疲れるんだから早く答えてよ」
幻影の言葉ではっとした、明らかに普通ならもうすでに落ちたトマトのようになってるはずだ、今現在意識がまだあると言うことは……。
恐る恐る頭上(逆さに落ちてるんで)を見ると、俺の身体とまってるぽい?
「う、うぉぉぉなんでか知らんが助かったぁ! 神様仏様ありがとう!」
「そんな変なのじゃなくて私に感謝してよ」
改めて目の前の幻影をみる。
「ふむ白か流石俺の幻影解ってるな!」
グッジョブと親指をたて幻影を見ると殴られた。
「きゃ! あんたなにみてんのよ! それに私幻影じゃない! 立派な悪魔だ」
…………。
目の前の幻影が頭の悪い事言ってますよ?
「そこの幻影頭大丈夫か? この世にそんなもん存在するわけねぇだろう、漫画やアニメじゃあるめぇし」
「じゃあこの現象、落下途中で止まってる今の状態なんなのよ!」
「日頃の行いのいい俺への世界からのプレゼント?」
「あんたさっき、神様仏様とか、奇跡の力を信じるとか言ってたばかりじゃないの」
「っは、しらねぇな!そんなもん一瞬の気の迷いだ」
俺がそう言うと、額に青筋を浮かべ目の前の幻影が消えた。
と共に感じる浮遊間、頭上を見ると迫り来る地面。
「……っあぁぁ!し、信じる! 信じるから助けて!」
そしてまたピタッと俺の身体がとまる。
目の前に現れた自称悪魔に渋々頷いた。
「それで助けてあげたから魂寄越せ」
「だが断る!」
間髪いれず叫んだ。
今のタイミングは自分自身惚れ惚れする反応だった。
俺の余りにも素晴らしい返答に感動のあまりフリーズした自称悪魔。
ハッと自分を取り戻した自称悪魔、呼びづらいな、もう自称でいいやがわめきだした。
「っちょあんた! さっき悪魔に魂あげてもいいから助けてって言ったじゃない」
「んなもん実際に起こらないと思ったから言ったんだよ!いざ自分の魂寄越せって言われてはいどうぞとか渡す馬鹿はどこにもいねぇ」
ヒクヒクと頬をひきつらせながらまたも姿を消す自称。
「ま、またかぁぁ、わ、わかった! 解ったから助けて!」
またも自由落下が始まった瞬間、恐怖でまたそんなこと言ってしまった。
「……分かればいいのよ分かればね」
「でも助かっても魂抜かれりゃ俺死ぬんじゃねぇの?」
「大丈夫、寿命を貰うだけだから」
「え〜寿命減るのもいや……っあぁあ! 解った、解りました!」
文句を言おうとした瞬間また姿が消えそうになり俺は諦めた……不利をした!
んなもん諦めきれるかっての、隙を見てどうにかしてやるぜ。
「そんじゃ一先ず、俺を下ろしてくれ」
「駄目あんた下ろした瞬間逃げそうだし」
ちっ、読まれてやがる、何か逆転のチャンスは無いものか!
「んじゃ貰うね、静かにしててよ、失敗すると死んじゃうかも知れないんだから」
そう言って俺の胸、心臓の位置に手を当てる。
何やら暖かいものが内側から出てくる感じがする、ってよりもでてきやがった!
「よしよし、それじゃいただ……」
「いまだぁぁ!」
自称が俺の身体から出てきた光るたまを口に入れようとした瞬間、自称に抱きつき身動きをとれなくする。
何時までも動けないままだと思った自称、君がいけないんだよ。
「ふ、フハハハハハ魂取られてたまるもんかってんだ、これで俺が落ちればあんたも……」
「ちょば、馬鹿! それどころじゃないっての!」
自称がそう言うと、光のたまは俺に戻ってきたが、真っ黒な違和感バリバリの空間が周りを包む。
「嘘っ! 何で私まで巻き込まれてるのよ! 私離して一人で死んで!」
「こ、断る! 死にたくなかったら何とかしろ! って言うかしてください!」
「何とも仕様がないから離れろって言ってるの!」
と言い合いをしている間に完璧に囲まれた。
「ああ、中途半端で何一つ御父様のお役にたてなくと御免なさい」
「死にたくねぇ! けど最後ならお前俺の好みのど真ん中! 生きられたら付き合って欲しかった!」
次の瞬間俺は意識を失った。
チルチル
チルチル
「んっ……お、れ……俺生きてる!」
自分の身体があるのを確認すると、喜びのあまり踊り始めた。
ごめんまだ混乱してたみたいだ。
「っん、にしても……ここどこよ」
俺が寝ていたのは。岩でできた祭壇の上、周りは物凄く立派な成長を遂げた木達の森。
ふむ。
「意味が全くわかんねぇぇ!」
「ああ、起きたね、よかった!」
俺が一人叫んでいると後ろから突然声がかかった。
恐る恐るそちらを見ると、さっきまで俺の魂を狙っていた、あの自称。
「うぉ! あ、あんたまだお……」
「目をさまさなかったらどうしようと思ったよ!」
そう言って俺の言葉を遮り抱きついてきた。
ますます混乱、どうする俺!
とりあえず。
「何がどうなって、ここはどこ?」
「ここはどこかわかんないけど、奇跡的に死なないで違う世界に繋がったみたいだよ旦那様」
「意味がわかんねぇ違う世界って何よ」
………………。
ん?
「お前いまなんてった?」
いやー混乱して少し耳の調子がわるいな!
そうだよな!
「ん? だから、違う世界だからここがどこか解らないって、旦那様ど……」
「ストッゥプ!」
聞き間違いじゃなかったよ俺。
「その旦那様って何よ?」
「えっ、だってあの時私の事が好きだって、付き合いたいっていったでしょ?」
「……た、確かに言ったな、うん、でもなんで旦那様よ」
「付き合うって事は生涯を共にするってことでしょ、だから旦那様!」
ごめん、頭が痛くなった、この自称頭の弱い子だったんだね。
「色々すっとばし過ぎな上、何で俺なんかの告白うけちゃってんの!」
「あんな抱き締められたまま、耳元で心からの告白……あれで受けなきゃ女がすたるわ!」
オゥノゥ!本気で痛い子だ。
「あっそうだ、これ食べて、そうすれば少しは元気になるから」
渡されたのは光のたま……ってちょっとまてコラ!
「ここここれ!お……」
「ち、違うよ! 旦那様を傷付ける様なこと絶対しないよ! これは私の魂の欠片、今の旦那様スッゴク弱った状態なの、今のままじゃすぐ死んじゃうかも知れないから、これ……」
確かに今自分の魂を差し出してでも俺を助けようとする自称にキュンてきた、きたが物が魂とかって、ごめん正直怖い。
「お願い……私旦那様に死んでほしくないの、初めて……初めて私みたいな女を好きだって言ってくれた旦那様だから……」
くぅぅ! 涙目に上目遣い、素でやってるっぽいところがたまんねぇ!
はい無理です、ドツボにはまりました。
「でも、お前の魂もらっちまって大丈夫なのか?」
「まぁ! お前だなんて……それに然り気無く気をつかってくれたりも! これが夢に見た夫婦のやりとり! ……ってああ、ごめんなさい旦那様、私達悪魔は人より強いから少しくらい大丈夫何です」
「そ、そうか……」
手に取ると落ち着くような暖かさ、し、仕方ねぇ、覚悟を決めた!
行くぞ!
ゴクン。
意外と平気……それに何だか力が沸いてくる、今なら何でも出来そうだぜ! いやもちろん冗談ですよ? ただ言ってみたかっただけ、だけど力が沸いてくるのは本当だけどね。
「あっあっはぁ〜」
隣を見ると、色っぽいため息を吐きながら何処か恍惚としてる自称。
「これで契約完了です、私は貴方の旦那様のものになりました」
「はぁっ!? どういうことよ!」
「はい、今旦那様に渡した魂は私の全てです、そして旦那様が生きて私がいることを望んでくれる限り私は生き、旦那様がいらない、死ねと命じれば死にます、というより消えます、そう言った契約を今結びました、大丈夫です、旦那様にはデメリットありません、それどころか半永久的な寿命に力が手にはいっていいとこずくしです!」
「な、な、な、なんで! そんな大事な事初めてあったどこの馬の骨とも解らないって俺なんかと結んじゃってるのよ! 俺責任者重すぎ! …………あーでも、俺の為なんだよな、死にかけてるって言ってたし……ああもう解った! わかんねぇけど解った! 俺がお前を幸せにしてやればいいんだろう!」
ば、馬鹿か俺! 何口走ってんの! でもあいつのあんな顔みちまったらなぁ、はぁ女ってずるい。
泣きそうになりながら、迷惑なら消えます……そんな感じがした。
これもあいつの魂とやらが俺にはいったからかね。
「はぁ……何とか頑張ってやるよ、ほら」
「……は、はい! ありがとう!」
差し出した手を本当に嬉しそうな満面の笑みと共に握り返していく。
「榊だ……榊 鞘だ」
「えっあっ! ら、ランです! ラン=デルウィです、お願いします!」
はぁ、悪魔に異世界……これで本当に信じなきゃいけねぇなぁ。
この世にはこういった不可思議なこともあるってよ。
さぁまずは、どっか人のいるところさがさねぇと……。
「一つ気になったんだが、この世界、人っているのか?」
「解んないけど、さっきみたいな祭壇とかあるんだから知的生命体はいるんじゃないかな」
「……まぁ、ひとまず行くか」
「うん!」
さてはてどうなることやら、まぁ生きていられたんだ、精一杯生きてやるさ。
まぁ俺の意思じゃなかったが、もう一人の命まで預かっちまったんだからな、頑張るぞ!
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2008/09/19(Fri)17:55:05 公開 / 榊 燕
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■作者からのメッセージ
始めまして、初投稿になります。最後少しというかかなり急展開ですがすいません。携帯からの投稿なんで文字数制限があるんで無理矢理終わらせました。一応続けていくつもりなので、もし読んでくれた人いたらありがとうございます。それではまた。