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『能力者(仮)』 作者:ふでばこ / ファンタジー アクション
全角1343文字
容量2686 bytes
原稿用紙約4.75枚
二十年前、旧ヴィスタジル連邦の君主が同連邦のフィルガリア派に暗殺された。それから半年後にフィルガリア派が独立宣言、フィルガリア帝国が誕生。同時期に連邦のラーハイム派もラーハイム公国を宣言。 それから二十年、帝国側の激しい侵略行為が続いている。








 張り詰まった空気―――。



 空っ風が吹き付けるも、人々は微動だにせず何処か険悪な雰囲気がこの枯れ果てた荒野に漂っている。
それもその筈、現在この荒野に集まっている者達は戦闘態勢にあるからだ。
今静かに待機している者全員が甲冑を身に纏い、両側を崖に挟まれたこの場所で戦の時を待っていた。

 甲冑を身に纏っているせいで、吹き付ける風が素肌に晒される事はなく、湿気の多い甲冑の内側では汗が滲み出ている事だろう。
 そんな中、この状況では非常識と取れる状態の二人の青年がいた。







「……そういや、今日で丁度二十年目なんだよな。」
 鎧は装着しているものの、兜は被っておらず、短髪で黄金色に輝く頭髪が堂々と見られる。そして、この青年の碧眼の双眸には、やや長めの蒼髪で歳は恐らく同年代と見受けられる青年の横顔の姿が映し出されていた。
 すると、その蒼髪の青年がこちらへと振り向いた。
その蒼髪の青年の瞳は、若干の青を混じえた黒をしており、何処か強い想いを抱いているような、そんな印象をも与える良き眼を持っていた。
「あぁ、そうだな。両国にとっては特別な日。そして、俺たちにとっても……な。」
 青髪の青年は向き直って、何かを想い浮かべたような表情で空を見上げ、最後にもう一度金髪の青年の方に顔を向けて口元に軽い笑みを浮かべた。
それに呼応するかのようにして、金髪の青年も同じく笑みを浮かべる。
「てことで、クレス。これが終わったら二人で祝うか!」
クレスと呼んだ金髪の青年は、青髪の青年クレスに向かって、先程とはまた違った何とも楽し気な笑みを見せた。
それを見たクレスは、一度は笑い吹き出してしまうものの、何とか堪えながらも口を開ける。
「いいけど、フォリア。俺たちそんな柄だったか?」
言い終わってからも、まだ堪えているのか、両肩小刻みに揺れていた。
それに釣られて、金髪の青年フォリアの肩も揺れだし、挙句、声を上げて笑い出した。

 だが、忘れてはならない事がある。
クレスとフォリアが立っている場所。そこは戦場と化す場所。
二人以外にも兵士は何千といる。
いくら二人が控え目に喋っていたとしても、最後の笑い声は周りの兵士たちの耳にも入っただろう。


 そして案の定―――
「貴様ら!!士気を乱すつもりか!!」
後方から憤慨した胴間声が響き渡ってきた。
クレスとフォリアは互いにうぃんくでアイコンタクトを取り、先程とは一変、真剣な表情へと変化させた。
そして間もなくして、遠方から微かながらに地鳴りのようなものが聞こえてきた。
「全隊!!武器を掲げよ!!そして、戦鐘と鬨の声を!!!」
再び後方から先程と同じ胴間声が張り上げられ、それと同時に兵士たちが武器を掲げ、隣の兵士の武器に向けて打ち鳴らし、鬨の声を上げた。

 クレスとフォリアもそれぞれの武器を抜き取る。
クレスは身の丈以上もあるかと思われる大鎌を、フォリアも同じほどの大きさを誇る大剣を、それらを掛け合わせて、互いの命運を心にそっと祈る。




「全隊、突撃ぃ!!!」
この胴間声の号令とほぼ同時に、ここに居合わせていた何千もの兵士たちが地鳴りの聞こえる方向へ何とも雑な声を上げながら一斉に駆け出した。



 そして、この荒野一帯に砂塵が舞い上がった。
2008/08/27(Wed)09:36:20 公開 / ふでばこ
■この作品の著作権はふでばこさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
今回は構成を練りながら物語を作ってみます。
なので、多少はひねれたストーリーが出来るものと自分では思ってます。
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