- 『藍色の丘』 作者:ぼたもち / リアル・現代 未分類
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原稿用紙約23.1枚
私立城陽学園。そこにはちょっと不思議な生徒会がある。 新入生の河添佳苗は何の因果かその不思議な生徒会に徐々に巻き込まれていく――。 そんな学園モノ小説です。
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――まさか、こんな事になるなんて――
河添佳苗は背中に冷や汗が流れるのを感じながら、日頃の不勉強を悔やんだ。たしか今朝見た星座占いでは射手座は結構いい線いっていたはずなのに。素敵な異性との出会いがあるかも、なんてでたものだから少し期待していたのだけど。占いなんて結局は目安に過ぎないんだと、思い知らされた。
――でもよりによってこの人に……――
「で、どういう訳でここに来たの? 何か言ってもらわないと困るのだけど」
佳苗は伏せていた顔をゆっくり上げてその人を見た。一言で言えば、美人である。白く透き通るような肌はしみやそばかすなんか知りもしないように滑らかで、顔の輪郭はすっとしていて鼻も高くたっている。流れる黒髪は肩口で切りそろえられていて、ほんの少しの風でも揺らぐくらい細くて軽やか。真一文字に結んだ口元とひそめた眉にきつめの目元。怒っている表情が妙に似合う人だ。 今だって腕を組んで足は肩幅に開いて叶の前に仁王立ちしている。表情どころかポーズまでぴったりだ。
「黙ってないで何かいってちょうだい。私もそこまで暇ではないの」
「す、すいません。実は部屋を間違えてしまって」
「間違えた?」
怖い。眉がどんどん釣りあがっていく。あと少しでも気に入らない言動を起こしたら、それこそどんな怒鳴り声が出てくるかわかったものじゃない。佳苗は慎重に言葉を選びつつ、穏便にこの場を去る方法を考えた。
「あの、私文化祭実行委員の集まりで出るつもりでして……。でも、その生徒会というのを少し間違えてしまったというか」
しどろもどろに弁解しながら心の中でこの学校の特異なシステムに毒づいた。一つの学校に生徒会が二つも三つもあるほうがおかしいんだ、と。
そもそも、文化祭実行委員という仕事自体佳苗の望むところではなかった。たまたま、クラス内の委員会などの役割を決めるホームルームに風邪を引いて出られなかっただけなのだ。その事で文句を言うとクラスメイト達は、これでも充分配慮したつもりだ、なんて全然取り合ってくれないし。それは、美化委員になってやりたくもない地域清掃になんてかり出されるよりかはましかもしれないけれど。
それに誰も言ってくれなかったじゃないか。どっちの生徒会室に行くんだってこと。
「はぁ、話にならないわ。会長、かわって頂けます?」
「いいけど? でも副会長が会長に仕事を押し付けるのはどうかと思うわ」
奥の椅子からやれやれ、といった感じで前に出てきたのはおそらくは生徒会長。会長、と呼ばれていたし彼女が座っていた席にはご丁寧に『生徒会長』と書かれたプレートが置かれていた。
「さ、こわいおねえさんはいなくなったわよ。落ち着いて話してくれる?」
その人は佳苗の前までやってくるとちょっと背をかがめてにこっと笑った。まるで扱いが小学生だ。迷子になっていたのは事実だとしても、むくれてしまう。
「私、文化祭実行委員の会がある教室に行きたいのですけど、その生徒会の教室は何処なんでしょうか」
「あぁ、合同生徒会の方ね。それじゃあ全く逆だわ、あれは男子棟の教室だもの」
「え」
今度はくすくすと笑い始めた。さっきから失礼な人だけど、ここは大人しく反省してないとヒントすらもらえなさそうだ。
向こうの方からはわざとらしいため息も聞こえてくるし。
「新入生なら仕方ないわね。合同生徒会は男子棟三階の廊下の突き当りよ。他と違う、ちょっと立派な扉だからすぐにわかると思うわ」
「あ、ありがとうございます。失礼しますっ」
あいさつもそこそこに佳苗は教室に背を向けて廊下に逃げていった。そこから少しでも早く離れたい、ということで頭が一杯だった。これ以上あの気まずい空気を吸い続けるのは苦しすぎた。
――女子、生徒会――
離れたところから振り返ってみると、壁から下がった札にはきちんとそう書かれていた。確認さえすればなるほど納得、といったところだがのん気にうなづいている場合でもない。急がなければ今と同じような問答をまたくりかえすハメになるかもしれないのだ。
――ということは、あれが噂の――
佳苗の目の前に仁王立ちしていた人物が頭をよぎる。もし、聞いた噂が本当だとしたらそれが該当するのは彼女ぐらいだろう。それに彼女の事は前にも一度、遠目からちらとだけだけど姿を見たことがある。
紺より藍に近い大人しめの制服を、もう何十年も着続けているかのように着こなしている姿、まるで彼女だけオーダーメイドなのかと思うほど切りそろえた黒髪も相まってとてもよく似合っていた。確か遠目で見たときもあんな風にきつめの顔をしていたかもしれない。
噂の人、その名も東雲小夜。学園広し、といえども彼女以外に『様』付けで呼ばれる人は他にいないだろう。彼女が噂になるには、この学園における生徒会というシステムにも一因があった。
私立城陽学園。この学校の特異点をあげるならば、まず一つ目に男女共学でありながら男子と女子で校舎が分かれているところだ。同じ敷地内にまるで鏡に映したかのように似通った学び舎が二つ向かい合って並んでいるのだ。正門は一つ。門から続く石畳は校庭に降りる階段の手前で左右に折れてそれぞれの校舎へと続いていく。もちろん、校庭も二つ。
つまり同じ敷地内にいながら、クラブや委員会などで顔をあわせなければ学園生活のほとんどを異性と関わりあわずに過ごせてしまう、共学とは言いがたい学校であった。
生徒会も元は二つで、男子も女子も中等部から高等部までそれぞれの生徒会で面倒を見るしかなかった。しかし、いつからか二つの生徒会がお互いに助け舟を出し合い、学園行事などでは合同で企画を練ったり進行役を受け持ったりと協力体制が整いつつあった。教師達は生徒の自主性に任すだなんて無責任な事を言い始め、ついには合同生徒会が成立。一つの学校に三つの生徒会という異様な図が出来上がってしまったのだ。
もちろん、両生徒会の完全な合併という話も出た事はあったが、生徒の服装や持ち物などの風紀に関わる事はお互いに同姓同士で片付けた方が速い、という事でなしとなった。
という事で女子生徒会、男子生徒会と呼ばれる生徒会の役割は主に風紀の管理、合同生徒会は行事の進行、と分担されて本日に至るというわけだ。
そういえばそんなことを学期のはじめにクラスメイトの笹村園花さんが言っていたのを佳苗はぼんやりと思い出していた。情報通で知られる園花さんを友人に持ちながら、予習不足は否めなかった。
実行委員の会議は何事もなく終わり、ほんの少しの遅刻をとがめられなかった佳苗はほっと安心しながら正門に向かっていた。今日も桜並木の緑の葉っぱに紅い夕日が差している。花びらなんてもう枝にも石畳にも見当たらなくて立派な葉桜が穏やかな風に揺れていた。
「小夜さま、か」
校庭に沿った道を九十度右に曲がる。思い出していたのはついさっき会った一人の上級生の事。気にしなければ大したことではないのだけど、彼女の噂を知っていると印象もずいぶん変わってくるものだと思った。
いや、ある意味そのままだったかもしれない。
美人で、すらっとしていてそれで、きつい。あの表情が目に焼きついて離れなかった。怒った顔は怖いという反面、凛々しくもあった。まるでこちらの考えなんて全部見通されちゃっているかのようで、でもそれは不思議と悪い気分ではなかった。あのすんだ瞳に映った自分は赤面しているようにも見えた。
レンガ造りの門をくぐって左。横断歩道を渡って十歩進み、右手に見える階段を三段上がったら、はいただいま。
正門から数えると一分もたっていないほどの短い時間。実質的な通学時間は片道五分といったところ。そこもレンガの壁に囲まれている少し年代モノの建築物。
城陽学園の学生寮だ。造りは学校と同じく男子寮と女子寮が向かい合って建っている。もちろん、校庭を二つ分間にあけることは出来ないから、二つの寮の間はせいぜい十メートルぐらいだ。
ここには多くの学生が寝食を共にしている。しかし、寮の部屋数にも限りがある。だから。
「ただいまぁ」
「おかえり。やっちゃったって?」
「何が? 園花さん」
「せ・い・と・か・い。まさか本当に間違えるとは思わなかったよ」
こうして意地悪な同級生がルームメイトになることも、仕方のないことである。
1晴れた日の落し物
くっくっく、といやらしい笑い声。口角が釣り針で引っ張られているかのように上を向いていておまけに手で膝を叩く、何ともオーバーな笑い方だった。そんな反応をされては着替えにすら集中できなくなってしまう。
「もう、そのへんにして。大体、なんで園花さんが知ってるの?」
こらえきれない笑いを無理にこらえるような含み笑いのジェスチャーまでつけて。この人は耳新しい噂話と人を小ばかにするときだけ、こんなに活き活きとした顔をする。
「春日に聞いた」
「あぁ」
もうそれだけで事の全部が読み取れた。彼女が言った春日、とは同じクラスの美東春日さんのこと。春日さんは一年生でありながら合同生徒会のれっきとしたメンバーで、サブライターを任されている。
今日の会議は文化祭実行委員と合同生徒会のメンバーがお互いに初の顔合わせだったから、当然その席に春日さんは顔をならべていた。少し遅れていった佳苗は少しでも顔の知っている彼女の隣に座り、遅れた訳をうっかり小声で話してしまったのだ。
その後の展開は手に取るようにわかる。かばんを取りに一度教室に戻った佳苗と別れたあと、春日さんはどこかで園花さんに出会ってしまったのだ。押しの強い園花さんと正直者でちょっとぼんやりとしたところのある春日さん。何の疑いもなく事の仔細を話してしまったのだろうなぁ、恨むのは筋違いかもしれないけどせめて口止めくらいはしておくのだった。
「でもいいじゃない。あの小夜さまを間近で見られたんでしょ? きっとうらやましがる子もいると思うよ」
「そうかなぁ」
確かにあの整った顔立ちを目の前にしては胸も高まるものだけど、怒られている最中にそこまで相手の顔をまじまじと見られるわけもない。ただ怖くて綺麗な人、という認識の怖いという部分が強くなってしまっただけなのだ。
「それにそれだけで開放してくれたならいい方だよ。中等部の生徒で登校中の生徒達の目の前でスカートの丈直させられたって人もいるぐらいだから」
「うわぁ」
部屋着に着替え終わった佳苗は髪を結んでいる位置を少し下に止めなおした。いつものポニーテールのままでは疲れるし、ゴムをはずすのはお風呂と寝る時ぐらいなものだ。そうして髪をいじっているとあの肩口に切りそろえた華奢な黒髪が思い出される。
――きれい、だったな――
自分のちょっと茶色がかったくせっ毛とは大違い。髪の色には遺伝が影響しているのだろうけど、あんな涼しげな黒は見たことなかった。
「さ、準備終わったら行くよ」
「行くって、どこに?」
と、疑問に思ったとき体の中心部から嫌な気配が這い上がってきた。しかもそれは自分ではどうしようもなくて我慢することも出来ず、自分がこれからどこへ行くべきか思い知らされた。
ぐぐ〜〜……。
高らかに空腹を宣言した胃腸はまたも園花さんに大爆笑のネタを与えてしまっていた。
* * *
明くる朝。
いつも通り食堂で朝食を終えた佳苗たちは自室で制服に着替え、寮のロビーまで降りてきていた。まだ登校するには早い時間だが、運動部の生徒達が出払ってしまっているこのわずかな時間だけロビーの50インチ巨大テレビを独占できるのだ。
とは言ってもその時間にやってるのは大概ニュースかワイドショーか、母親の家事を邪魔させないための子供向け番組しかやっていない。仕方なく、今朝起きた交通事故について報道しているアナウンサーを観察しながら古めのソファーでくつろぐ事にした。
「そういえばお昼は決めた? 私は学校の食堂に行くつもりだけど」
「まだ決めてない。私もそうしようかなぁ」
テレビがコマーシャルに入ったのでチャンネルを回しつつ、佳苗は生返事を返した。学園寮組みは当然お弁当なんて作ってもらえるわけもないし、かといって自分で作れるほど朝は時間がない。もちろん、その時間を睡眠にあてたいというのが本音ではあるが。
自然、彼女らの行き着く先は学校食堂か購買のパン。始業時間から放課後までは校外に出る事は禁止されているし、歩いて数分の通学路にコンビニなんてあるわけもない。
だからどうする? なんて聞かれても答えは一つしかないも同然なのだ。
「あ、そだ、私先に行ってるね。図書館に寄っていくから」
思い出したかのように立ち上がった園花さんは右こぶしで左手のひらを叩いた。今どきそんなアクションとる人も珍しい。頭の上に電灯でもパッとつきそうだ。
小走りで出て行く園花さんを座りながら見送ったあと、ちょっと後悔した。暇にはなりそうだけど、一緒に行けばよかったかも。同じ暇ならまだ近くに友人がいたほうが良いに決まっている。
追いかけようかとも思ったが、彼女の姿はもう横断歩道の向こう、学園の正門の中へと消えて行ったあとだった。仕方なくソファーに座りなおし、チャンネルを回す。ニュースはどこもスポーツ情報ばかり。サッカーにも野球にも興味がもてない佳苗は急に手持ち無沙汰になった。
――私ももう行こうかな――
周りを見渡すと、先ほどまでの自分たちと同じような登校時間までの暇をテレビでつぶそうとする寮生たちが段々と増えてきていた。そんな中でチャンネルを独占していることになんとなく申し訳なくなってきたし、なにより数人がちらちらとこっちを見ているものだから佳苗もかばんを持って立ち上がった。
スリッパを脱いで外履きに履き替えると、ソファーには早速誰かが座っていて周りの人たちとチャンネル争いをしていた。
寮のガラスの扉を開くと、穏やかな風が一吹き佳苗の髪をなでていった。今日もまた気持ちのいい五月晴れ。日本晴れとも言うが、時期的に言えばやはり五月晴れがちょうどいい。何にしても晴れ渡った空というの気持ちがいいものだ。
階段をひょいと飛び降りると通りの向こうに見知った顔を見つけた。あれは昨日の実行委員でも会った、ちょっとのんびり屋のクラスメイト。下を向いてふらふらと歩いているのがなんだか危なっかしい。電柱にぶつかりそうだし。
「おはよう、春日さん」
「え?」
しっかり青信号をわたって、彼女に声をかけるとちょっと驚いたような声が返ってきた。下向いて歩いているのかと思いきや、どうやら本を読みながら歩いていたようだ。
「あ、おはよう佳苗さん。ごめんなさい、こんなところで声かけられるとは思わなかったから」
「ううん、いいの。それより危ないよ、本読みながら歩くの。さっきも電柱にぶつかりそうだったでしょ」
「み、見てたの?」
知り合いに自分の失態を見られていたのがよっぽどだったのか、春日さんは頬を赤くしていそいそと本をかばんの中に仕舞い込んだ。そんな恥ずかしそうな顔を見せられるとつい頭をなでたくなってしまう。ちょっと抜けてる彼女の魅力であった。
「そういえば春日さん、昨日の事園花さんに言ったでしょ」
春日さんの顔を見て思い出したが、昨日の失態が園花さんに知られる事となったのは彼女がぽろっと口に出してしまったからである。
「昨日の事……?」
そのくせ、当の本人は覚えていないし。
「だから――」
不思議そうな顔で聞き返された佳苗は、昨日のあまり思い出したくない経験を自らの口で説明しなければならなかった。
いつもより早めに着いた教室。クラスメイトはほんの数人しかいないし、園花さんもまだ用事が済んでないようで姿は見当たらなかった。
「ごめんなさい」
「いや、もういいから」
何度目のごめんなさいだろうか。正門をくぐってからこっち、佳苗は春日さんの謝罪をずっと聞き続けていた。昨日の事を話題に出したのは自分だし、彼女の性格から考えてそうなるであろうことは火を見るより明らかだった。とはいえ、このままではまるで自分が春日さんをいじめているような感覚になってくる。
何というか、そんなオーラが彼女にはあるのだ。
「大丈夫だよ、もう怒ってないから。というか最初から怒ってないから」
「ホント? そう……」
見るからにしょんぼり、としている春日さんは佳苗の右斜め前の窓側の席にかばんを置いて座った。ちょっと丸めた背中から申し訳ない、という空気がひしひしと伝わってくる。
――まいったなぁ――
別にどちらが悪いとかそんな事ではないのに。むしろ佳苗の方が遅刻で一点減点だ。
春日さんに限った話ではないが、新学年もはじまって一ヶ月。佳苗はまだ同級生達を完璧には把握していなかった。園花さんはルームメイトである分、少しは理解してきたつもりではあるけど正直自信はなかった。
「おはよう春日さん、佳苗さん」
教室の前の扉から入ってきたのは、一足先に寮を出て行った園花さん。佳苗たち二人の姿を確認してにやりとしながら近づいてくる。最も、彼女の席は佳苗の前だからこっちに来るのは当たり前だが。
「おはよう園花さん」
右隣の春日さんが返事をする。ちょっと複雑な表情をしているのは、先ほどのことがまだ引きずっているからだろう。
「春日さん、頼まれたもの持ってきたわよ。はい、これ」
「あ、ありがとう」
そんなことは気にも留めず園花さんはかばんから取り出した一冊の本を春日さんに渡した。表紙に張ってあるバーコードは、あれは図書館のものである証拠だ。
「用事ってそれのことだったの?」
「ううん、あと自分のも。昨日会った時に頼まれてね」
本を受け取った春日さんはそれを大事そうに机の中にしまいこんだ。題名までは見えなかったけど、何だか専門書のような分厚さだった。
「そういえば佳苗さん、今週の掃除当番よね」
佳苗さん、だなんて。園花さんはもう学校モードに入っている。普段は呼び捨てにしているけど、頭のお堅い先生方の手前、あまりくだけて話せないためにそういった習慣が身についたそうだ。
「そうだけど、それが?」
「ゴミ出し。裏の集積所まで袋持ってくの。わかってる?」
「あ、うん。放課後でいいんだよね」
「そう。道順わかんなかったら一緒について行こうかと思って」
子供じゃあるまいし。いくら佳苗が高等部からの新参者だからといって、そこまで物知らずなわけではない。はじめの当番の日に別のクラスメイトからちゃんと教わっておいたから、決して問題はない。
周りがざわついてきたと思えば、もう始業ベル五分前だった。今日もいつもと変わらない時間にベルは鳴る。変わらないのは、それぐらいなモノなのかもしれない。
* * *
昼休みに入った午後。机を寄せ合ってお弁当を広げる人たちもいれば、示し合わせて食堂へと足早に教室を出て行く人たちもいる。佳苗は後者であるため、席を立って廊下へと向かう。園花さんも一緒だが、春日さんも何故かお弁当の包みを持ってついてきた。
「これから合同生徒会のほうで集まりがあるの。そっちで食べないと間に合わないから」
そう言った彼女とは渡り廊下の手前で別れた。あちらは男子棟の三階へ、佳苗たちは女子棟の一階に。
軽く駆け足で去っていく背中を見て、佳苗は感心した。
「やっぱり忙しいんだね。サブライターでもそんなに仕事があるのかな」
「どうだろう、あっちの生徒会は生徒会室を私物化してるって話も聞くから」
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2008/04/27(Sun)17:38:30 公開 / ぼたもち
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■作者からのメッセージ
こんにちは、はじめまして。
ぼたもちといいます。
今回が初めての投稿という事で作品を書いてみました。
少し戸惑った部分もありますけど、良かったら続きも見てください。
よろしくお願いします。