- 『別の存在U』 作者:鶴少尉 / ファンタジー 未分類
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全角6710文字
容量13420 bytes
原稿用紙約24.5枚
〜序〜
これは、雄大君の死後の話である。(詳しくは『別の存在』をみてください。)
雄大が死んだ後も、この世界は続いた。
誰も自分がオリジナルの人間ではなく、別の存在だという事を知らずに。
気付く事がなく次の存在に変わっていく。
知らぬ間になぜか自分と他の人物がどんどん変わっていくのだ。
(ちなみに、別の存在が生まれたと、前の存在の処分方法は事故死させることだ)
この事実を知っているものは、この別の存在を作り出す装置を作った博士(爺さん)。
(博士は年をとり、死んだ事になっていて、博士の別の存在も、今では作られていない)
博士のほかには、雄大君だ。
雄大君は、博士に別の存在について告げられた後、車にはねられて死んだ。
今では知っているものなど誰もいない。
別の存在なんて言葉も無くなっているのだ。
だが、しばらくたった後に新たに生まれた雄大君の別の存在は、
なぜか博士に会ったときの記憶を持っていた。
(新たな雄大君は18歳。博士とであったときの雄大君は14歳だった。
ちなみに博士と会った頃からちょうど5人目だ。約1年に1人変わっている。
時々1年以上変わらないこともある)
これは、18歳の雄大君が、14歳のときの雄大君の無念を晴らそうとする、物語である。
〜情報〜
雄大が目覚めたとき、そこは布団の中だった。
今までの別の存在と違うところ。それは、博士との記憶を覚えている事だ。
雄大はそのことを思い出し、すごく腹立たしかった。そして、すごく後悔した。
なぜそのときの自分は行動を起こさなかったのか。
なぜ自分の存在を別の存在であると言われて狂いだしたのか。
自分がもしその場にいたら行動を起こしたであろうのに……
昔の自分が腹立たしかった。
だが、この場だからいえるのかもしれない。
もし本当にその場にいたら、それこそ何も出来なかったであろう。
雄大は苛立ちと後悔を捨てて、今から行動を起こそうと決意した。
昔の雄大の無念を晴らすために。自分が幸せに暮らしていけるように。
博士は昔、重要な事を言っていた。
それは、地震だ。
沈んだ島もあったという、あの巨大地震だ。
今の雄大は、
地震について調べていた。調べた中での情報はこれだ。
沈んだりした島以外で、一番被害が大きかった国はこの国だ。
しかも、この町がひどかった。暴走を起こすくらいひどい地震はこの町での地震くらいだろう。
それほど大きかったのだ。
博士と会った場所も思い出してみた。
この町だ。博士はこの町にいたのだ。
博士は造った人だ。(正確には、博士のオリジナルだ)
この町は離れないだろう。
つまり、この町に別の存在を作り続けている装置があるのだ。
雄大は、学校へいったりいろいろな事をして、空いた時間を捜索に回した。
自分が1年ぽっちで別の存在に変わってしまうのが嫌だった。
だから、必死に探した。
そして、見つからずに3週間ほどたったとき、とある形で友人たちと探す事になる。
〜友情〜
それは、本当に些細な事だった。
「雄大!このごろ付き合い悪いぞ。高校最後の年なんだからさ」
友人の西田が話しかけてきた。
「ああ、すまん西田ちょっと用事がな……」
「ようじ?俺も手伝うよ。何があるんだ?」
「いや、関係ないことだ。大丈夫だよ。そのうち大丈夫になる」
「関係ないってなんだよ」
雄大はいらだった
「大丈夫だって。すぐに元通りに戻る」
「理由教えろって言ってるじゃん」
「ったく。うるせぇな」
「ん?なに?」
雄大はついに
「うるさいって言ってるんだよ!」
叫んでしまった。
「え、ちょ。雄大?」
西田は驚いていた。
普段おとなしい雄大が叫んだのだ。
「大体なぁ。関係ないって言ってるんだよ。こっちの問題なんだよ。どうせ喋っても馬鹿にするんだろ?信じねぇんだろ?」
「あ、いや、……」
「信じねぇからいわねぇだけだ」
「雄大?」
「あ!すまん……」
「いやいや」
雄大は、みんなが振り返っていたのに気付いた。
「すまん。大声出しすぎた。」
「いや、おれも悪かったよ。けど、理由だけでも教えてくれ」
「わかったよ」
雄大は、西田だけにしぶしぶ全てを話した。
「なんだって!?うそだろ、オイ」
雄大はいらだった
「そういう反応がいやだから…」
西田は、その後しばらく考えて答えた。
「わかった!信じるよ。雄大が理由をつけて言うんだ。本当だろう」
「え?」
「だから信じるんだよ。お前を信じる」
雄大はしばらく理解してなかった。
自分だって信じないような話だ。こんな早く信じるなんておかしすぎる。
だが、信じるという言葉はすごく心強かった。
「本当に?」
「ああ、本当だ。お前は頭脳的に行動して、俺は体力に自信があるから労働的な感じで、ちょうどいいじゃないか」
雄大はうれしかった。ここまで信じて協力してくれるやつがいたなんて。
「ありがとう西田」
「おおよ雄大」
2人は、がっちりと握手をして、いろいろと調べだした。
「西田。怪しいところが3つあるんだ」
「よし、じゃあ今度そこへいってみよう」
次の日は休みだったので、2人は3箇所の場所に行く事にした。
後に西田がものすごい活躍をする事になる。
〜捜索/行動〜
次の日、雄大の家に西田が来た。
「雄大。今日はどこ行くんだ?」
「今日は、この3つの中の、こことここだ。時間があれば最後のひとつにも行く」
雄大が示したのは、雄大の家に近いところだった。
雄大の家は町の端。3つ目の場所は中心部
中心部に行くには時間がかかった。
「この2つがだめで、時間がなかったら、明日ここに行こう」
「わかった。バットかなんかもって行くか?壊すために」
「ああ。倉庫にバットがあるから、それをもっていこう」
西田は、わかったと言って、雄大とバットを取りに行った。
「じゃあ、行くか」
雄大が喋り、2人は自転車にまたがって出かけた。
車や人通りは少ないため、木の葉っぱのこすれる音が響いた。
2人は緊張のあまりか何も喋らず、じっと自転車をこいでいた。
「ここだ」
いきなり雄大がそういって、自転車を止めた。
西田も多少遅れて自転車を止め、木の葉っぱの音は消えた。
「あるかな?」
「さぁ?」
2人は、ぎゅっとバットを握り締めて、中に入った。
中にはなのもなかった。
昔研究所があった場所らしいが、今ではきれいさっぱり何もなかった。
多少広かったが、5分程度で見終わることが出来た。
「意外とあっさりだったな」
「そうだな」
2人はまた自転車にまたがった。
2つ目の場所へ行く途中、人々がいっぱい集まっていた。
交通事故があったらしい。
何も知らない人は、
「またか」
と、思っているようだが、真相を知っている2人は、そうは思わなかった。
「また人が入れ替わったな…」
雄大は悲しそうな目でポツリとつぶやき、2つ目の場所へと向かった。
向かう途中、事故現場を何回も通り過ぎた。
なぜか、
『お前たちもこうなるぞ』
と、警告されているような気分になった。
そして2つ目の場所へついた。
2人は、1つ目の場所と同じように、中へ入ったが、今回も何も見つけられなかった。
「ないな」
「ああ」
2人は、安堵と落胆が混ざったような心境だった。
時刻は11時半。意外と早めに終わり、3つ目も行く事になった。
その前に食事をとることになった。
食事は近くのファーストフード店でとり、食事の間にいろいろと話す事にした。
店に入って、注文をした。
頼んだものが来るまで、二人は恐怖や何やらで沈黙していた。
だが、その沈黙はその後すぐに破かれた。
それは、2人が注文したものを一口食べたときだった。
ブザァァァァァァァァ!
後ろに座っていた中年のおやじがいきなり血を吹いた。
「あ、あ…」
「うワーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
雄大の驚きの声の後に、周りが声を上げた。
『きゃー』
『な、なんだよこれ!』
『ち、血だ……うわー』
雄大は、すぐ後ろでの出来事に、ただ叫ぶ事しか出来なかった。
「はぁ、はぁ、はぁ、ぅんぐ。はぁ、はぁ、はぁ。なんだよ、これ」
すぐ後ろ、こっちを向いて座っていた客。
雄大にも、多少血がかかっていた。だが、雄大はそのことには気付かなかった。
そんなことよりも、この出来事に絶句していた。
2つ目の場所に行く途中での事故から、どんどん事故が増えていったのだ。
雄大と西田の周りで大量の人が死んだ。
雄大の横に車が来て、轢かれそうになったりもした。
上空からいろいろ降ってきたりもした。
これは本当に狙われているようにしか思えなかった。
下手していたら、自分が死んでいたのだ。
雄大はこう考えていた。
(もしかして、もう俺の別の存在が作られて?それとも、ただ殺しにきている?
迷惑になるものはつぶす?それより、製造装置だけで、勝手に作ったり出来るのか?)
雄大の考えは、西田も思っていた。
(そんなことできる装置なんてないだろうよ。どうなってるんだ?)
その後、事情聴取なら何やらを受けて、ご飯を食べるまもなく店を出た。
自転車に乗りながら、危険だとも思いながら3つ目の場所へ向かった。
今度は、2人でさっき思った事を喋りあった。
そして、装置の謎が深まっていったとき、3つ目の場所へとついた。
〜侵入〜
3つめの場所は、明らかに雰囲気ががっていた。
がっちりとガードが固められて中にはうかつに入れそうになかった。
だが、下手に帰ったら雄大たちは殺されてしまうかもしれない。
だから退く訳には行かなかった。
よく調べていた雄大は、多少の事では驚かなかった。
そして、入り込める抜け道を見つけていた。
だが、あんな事の後だから、わなのように感じて怖かった。
それでも退く訳には行かない2人は、入っていく事にした。
中は複雑になっていて、中心部には行き着かなかった。
2人は屋根裏をこそこそと、匍匐で歩いていた。
「大変だな、ここ」
「しっ。静に」
雄大が注意していた場所。
その下では、人々が集まって何かを話していた。
「ばれたのかな?」
「そうかもしれない。あ!」
雄大と西田は大変驚いた。
自分たちを捕まえるために集まっていたと思ったら、ちがかった。
「あ、あれ?」
「あれって……あれ?」
「あれ……パーティー?」
そう。パーティーをやっていたのだ。
雄大たちの侵入を知ってか知らないかは知らないが、パーティーをやっていたのだ。
歌が聞こえてきた。その陽気な歌は“ハッピバースディトゥユー”と、喋っていた。
「誕生パーティ?俺らを馬鹿にしてるのか?それとも気づいてないのか?」
「きっと気付いてないんだ。よかったな」
西田は余裕を持っていた。
「西田。気をつけるぞ。馬鹿にしているのかもしれない。」
「大丈夫だって」
「そうかもしれないが、油断は大敵だ」
「わかったよ」
2人は、それを尻目に先へ進んだ。
やっと中心部についたとき、あたりは静で人の気配がないように感じた。
2人は屋根裏から降りてあたりを見渡した。
そのとき。いきなり“ぱちぱち”と、手をはたく音が聞こえて、それとともに人間が出てきた。
〜出会い/戦闘〜
出て来た人間(男)。雄大は知らない人物だったが、西田は驚いて口をあけたままだった。
「ど、どうしたんだ?西田。おい!誰だよ。知ってるのか?」
「………」
「おい!」
「……あ」
雄大の問いかけに気付き、西田は喋りだした。
「あ、あんたは」
でてきたた男は、口を開いた。
「あんたとは、親に向けて喋る言葉か?悠人」
悠人(ゆうと)とは、西田の名前だ。
「西田?子供って?」
「あ、お、俺のおやじだ……」
「え!?」
男は西田の父親だった。
「もしかして、貴方は博士の助手か何かで?」
雄大は多少動じたが、ここにくれば何も驚かないのか、冷静に質問をした。
西田の父親は平然と答えた。
「その通り」
「な、何があったんですか?」
西田父は言った。
「ああ、それを答えるために、少し昔話でもしようか」
「え?はい」
「昔々あるところに1児の父親がいました。その父親は科学者として名前をあげていましたが、家族にはそれを教えていなかった。
その科学者は、家族に知られたくないために、自分が爺さんの博士という設定にした。
その設定が出来た後、その博士の助手として生活をしてきた。
その博士を作るに当たって作ったのが、別の存在製造装置だった。
そして、爺さんの記憶をつくり、自分が作ったと思わせた。
そしてその父親には、自分自身の野望があった。
“自分だけの世界を作る”と、いうことだった。
別の存在で記憶をつくり、自分が支配した。
その父親は成功していた。その計画が成功していた。
だが、誤算は博士とお前だった」
男は雄大に指をさした
「お、おれ?」
「ああ。お前だ。昔のお前が、ここを抜け出したクソ博士に変な事を吹き込まれ、今のお前がなぜかその記憶をもっていた。
そのせいでばれてしまってね。この場所が。だから釘を刺しておいた」
「くぎ?」
そこで、ずっと立ち尽くしていた西田が、バットを握り締めて襲ってきた。
「うおっ」
ブン!どさっ!
「わぁ。あぶねぇ。西田!なにすんだ!」
「………」
ブン!がっ!
「うっ」
西田は無言で殴りつけてきた。
2回目の殴りつけに雄大は当たった。
痛みを抑えながら西田父に叫びつけた。
「おまえ!さいしょっから、最初から西田を、西田を俺に近づけて、殺すために。西田を操って……ぐっ」
ゴス。
「はっはっはっはっは。お前さえ。お前さえ殺せばうまくいくんだ!死ね!」
ゴス
「くそ、くっそー」
頭脳的には雄大の方がうえだ。
だが、体力は西田が上。
今は操られていて頭脳もなんにもない。
完璧に無効がうえだ。
「くそ、逃げなきゃ。ここから」
「それは無理だね」
ざ!
さっきパーティーやっていた人たちだった。
「お前は逃げられない。ここで死ぬのだ」
「いやだ。いやだ。いやだ。死ぬなんて。いやだ。死ぬのはいやだーーーーーーー」
雄大はバットを持ち、痛みを忘れたかのように西田父へと向かっていった。
「悠人には向かわないのか?傷つけたのはあいつだぞ?」
「あいつは悪くない。お前が全て悪い。身勝手すぎだ。お前のせいで全て狂ったんだ!!!うおぉぉぉぉぉ」
ブン!どざっ。
雄大の傷おいた体では、大人の男には当たるわけもない。
そのうちに西田に殴られた。
ぶん!がっ!
「う゛!………がっ」
この状況では雄大に勝ち目はない。
このとき、なぜかどうでもいいことを思い浮かべた。
「おまえ、お前もオリジナルじゃないんだな」
「な、なにを?」
「そうさ。そんな若いわけないじゃないか。ぜんぜん年が変わってねぇし。昔よくみたからわかるんだ。あんたも別の存在だな…ぐっ」
西田父は驚きを隠せなかった。
その隙を逃さずに雄大は殴りつけた。
「うわぁぁぁ!」
そのとき、西田の動きは止まり、雄大は西田父を倒すだけとなった。
「や、やめろ、なぐるな!」
「うるさい。お前は許されない事をした。自分の快楽のためだけにみんなを苦しめやがって。お前はもう許されない。死んで償え!」
ブン!
バ!……バキ!
「?」
そこでは、動きを止めていたはずの西田が動いていた。
自分の意志で、操られているときとはぜんぜん違う目の色。普段の目の色で父親を守った。
「雄大。すまなかった。操られていたとしても、お前をだまし、傷つけ、最悪だな。すまん」
「え、いや、いいよ」
「だが、この男は許してくれ。われながら恥ずかしい親だけど、殺さないでくれ」
「け、けど……」
「頼む!」
西田の今まで見たことのない凄みで、雄大は一瞬ひるんだ。
「頼む」
「あ、ああ」
「ありがとう」
「けど、グーで1発殴っていいか?」
「ああわかった。それはしょうがないよな」
雄大は1拍おいてから、凄みをまして西田父に迫った。
「お前を許したわけじゃねぇ」
バスッ!
「ぐっ」
雄大のパンチは、それほどの痛みではないが、迫力と場の雰囲気で、すごく痛く感じるパンチだった。
「最後に言っておく。今から装置は壊しに行く。お前は今後何もするな。みんなの迷惑になる事はするな。もし何かやったら、今度こそ殺す」
そういった雄大は、別の存在製造装置をバットで破壊した。
これでもう、この世に別の存在が生まれる事がなくなった。
別の存在だが、別の存在だと知らない人たちは、このままずっとオリジナルの人間として生きていくのだ。
〜終〜
雄大たちがやったことを知っているものなどこの世にはいない。
だが、この世のものの命にかかわる事なので、誰もが知らなきゃいけない事実である。
とにかく、誰もが知らずにすごしている。
これからも、知る者等でてこないだろう。
雄大や西田は今でもクラスのみんなと幸せに過ごしている。
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2008/04/12(Sat)22:51:32 公開 / 鶴少尉
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■作者からのメッセージ
前作別の存在の、数年後のお話です。